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北京波の新世紀映画水路コミュのジョゼ・ジョバンニの「オー!」「墓場なき野郎ども」

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ジョゼ・ジョヴァンニ原作による仏暗黒街もののDVDソフトがを見た。

それは『 オー! 』と『 墓場なき野郎ども 』の2作品である。

ジョヴァンニといえば暗黒街出身の作家として有名だが、そもそも映画化された彼の最初の作品はボクの洋画におけるヰタ・キネマアリスと呼ぶべき映画『穴』だった。

彼の名を知らしめたのは『冒険者たち』『サムライ』という60年代の仏映画を代表的する名作映画であったが、思えばボクの生涯のベスト・ワンたる『影の軍隊』は、ジャン=ピエール・メルヴィル監督によるレジスタンスを描いた鉄の規律を主題とした映画。

なんとジョヴァンニも元レジスタンスの闘士であったという。

『穴』は脱獄映画の大傑作で、演出こそ『現金に手を出すな』のジャック・ベッケル監督だが、撮影はメルヴィルの持っていたスタジオで行われたものだった。

7歳で『穴』に出会い、14歳で『サムライ』『ギャング』『冒険者たち』を立て続けに平らげたボクはフィルム・ノワールの魅力にどっぷりと浸かることになっていく。
 
『 オー! 』、34年ぶりの再見でした。

今は食料品売り場になってしまった天王寺ステーション・シネマ(入場料80円也)で見たときもポップな映画だと思いましたが、今回見て60年代から70年代に移りゆく時代の感覚がとても濃厚に出ていることにオドロキでした。

他の作品を挙げるならば『女性上位時代』『エスカレーション』『殺人ゲーム』といったヨーロッパ製の映画にもいえることなのですが、ベトナム戦争というトラウマを経たアメリカにノー・ヒーロー、ノー・ドリームのアメリカン・ニュー・シネマが席巻しようとしていた頃、ヨーロッパではちょうど戦争の影響や戦前からの旧世代からの交代が進み、ポップ・サイケというコスチュームを纏うことで戦争(対岸の火事)の色を払拭しようとしていた、そんな時代が成せる爛熟であったのかも知れません。

『オー!』のベルモンド扮する主人公は、いわゆる大人の精神構造は所持していないようで、30歳という設定にも拘わらずどこか軽佻浮薄、ジョーク感覚で送る渡世、そんな時代のムードが伝わってくるようです。

ですが、今このことは決してマイナス材料ではなく、むしろ現在まで延々と続く“成熟を忌避する大人たち”がこの辺から現れているのだということが解って大変に面白い。

それにしてもまだ可愛く、ベルモンドのキャラクターが屈託無い少年性を感じさせて、「若いっていいなぁ」、とにかく懐かしいのです。

 『 墓場なき野郎ども 』は『穴』と同じく1960年度の映画。ジョヴァンニにとっては自作の映画化の2本目にあたるもの。このフィルム・ノワールは初見ですが、これは拾い物でした!

派手なシーンがまったく無い映画で、リノ・ヴァンチュラが妻子を抱えてイタリアからフランスへ国境線を越えようとしているギャング。

映画は彼らがフランスに帰国するまでに半分を費やしています。この映画の驚くべき点は登場人物がすべて普通の人間だということで、ギャングといえども親であり夫であり躊躇し逡巡する人間であり、恐怖にもおののきます。

監督は後年『ギャルソン』『友情』などで感情のちょっとした動きを自然体に描く映画を得意としたクロード・ソーテ。ここで彼はデビュー2作目にして早くも人間描写に長けていることを証明しております。

他のフィルム・ノワールと完全に違っていることはヒロイックな銃撃シーンが皆無なことも挙げられ、しかしビシっと引き締まっていて面白い!

そう、何に似ているかといえばキューブリックの『非情の罠』『現金に体を張れ』のテイストということになりましょう。

キャスティングでは特に記すことがあります。まずヴァンチュラの撃ち殺されてしまう妻役に見慣れない女優が出ていますが、これがジョヴァンニの実妹の特別出演。

またもう一人美形が出てきますが、これが『青い牝馬』で知られるサンドラ・ミーロ。クロード・オータン=ララ監督の同作品のポスターは彼女の大写しですが、実物を見たのは初めてでした。

彼女は、(『墓場なき野郎ども』という映画にこれほどに好感が持てた最大の理由=新人ジャン=ポール・ベルモンド)の恋人に扮しています。
 
今から30年前、日本でフランス男優といえばアラン・ドロンが人気最高。だが本国フランスではドロンは美男としての人気でトップはベルモンドだったのです。

1960年ベルモンドは『勝手にしやがれ』『二重の鍵』という当時フランスに勃発したヌーヴェル・ヴァーグの旗手であるゴダール、シャブロルの2作品に出演し若者に圧倒的に支持されましたが、同じ年にもう1本出たのが『墓場なき野郎ども』で、ここで彼は追い詰められたヴァンチュラを助ける男を胸のすく存在感で演じきっております。

ここでの2人はまるで飛車角と吉良常なのであります。

ベルモンドはヌーヴェル・ヴァーグに出る一方で、大人の観客がうなるようなさまざまな従来からあった種類の作品に出て、その柔軟な演技力で持って全年齢層に認知させたのだ、と人気の秘密が納得できました.

 『オー!』と『墓場なき野郎ども』の間には9年間という歳月があります。しかしヌーヴェル・ヴァーグという前衛が本流となってしまったほどの歳月であり、若きベルモンドが堂々たるスターとなってしまった歳月なのです。

(この2枚のDVDは最高の映像クオリティーを持しています。初公開のとき、『オー!』は日本ヘラルド映画配給。当時のヘラルドのフジ・カラープリントでは絶対に達成できないクオリティーです。

これほどにカラーが蘇るのなら邦画でも何とかしてほしいものです。こういっているとき、テレビの寅さんの連続放映では同じクオリティーを達成しておりますから、要はソフト化しようとする会社のヤル気・・・、映像ソフトという限りない財産を持つ会社、いまは希望をもって待ちます)

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