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北京波の新世紀映画水路コミュの「東京タワー オカンとボクと、時々オトン」評

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今年度の劇場映画44(邦画21)
MOVIX堺? 
公開初日 観客30人  

空前のベストセラーとなったリリー・フランキーの同名自伝小説をオダギリジョー、樹木希林主演で映画化した感動ドラマ。
原作者と同じ福岡出身の松尾スズキが脚本を担当。
監督は「バタアシ金魚」「さよなら、クロ」の松岡錠司。共演に松たか子、小林薫。
また、若い頃のオカン役を樹木希林の実の娘、内田也哉子が演じて話題に。
 1960年代、オトンに愛想を尽かしたオカンは幼いボクを連れ、小倉から筑豊の実家に戻ると、妹の小料理屋を手伝いながら女手一つでボクを育てた。
1970年代、15歳となったボクは大分の美術高校に入学、オカンを小さな町に残し下宿生活を始めた。
1980年代、ボクは美大生となり憧れの東京にやって来るが、仕送りしてくれるオカンに申し訳ないと思いながらも学校へもろくに行かず自堕落な日々を送ってしまう。
留年の末どうにか卒業したものの、その後も相変わらずフラフラした生活を送るボクだったが…。
(ALLLINE CINEMAより転載)


演出・脚本・撮影・音楽・演技・・・すべて非のうちどころがない作品が誕生した。およそ100回以上は見た予告編から、うすうす感じていた予想はそれでも木っ端微塵となった。

この作品を左右するのは最後には好きか嫌いかという究極の選択でしかないだろう。そして、その判断の根幹を貫くものは、親子関係の個人的差異であろうと思う。

松岡錠司監督は「さよなら、クロ」において素晴らしい仕事をしていたが、あれからCMの仕事などで新作がなかった。すべては完成してみると、この作品を完成させるために雌伏のときを耐えたいたようにも思える。

ここにおいて日本人の本質が描かれている。こういう作品でこそ海外での審判を仰ぐべきである、と心底思う。

この困るほどの「甘え」の偉大さはどうだろう。甘えて、甘えさせて、多くの立派ではない人間は前進していくのである。

そして、この甘えは血を分けた肉親にしか赦されないものである。

とくにボクが大学に行ってからの4年間、加えてもう1年の描写は辛かった。田舎では親は一所懸命に働いて息子が一人前になるのだと思い、祈りながら過ごしている。だが、息子は、そういうことが解っていればいるほど、違う方向にいってしまう。

「オカン、この間ボクにベッド買ってくれたとやろ。まだお金あるん?」
「いいや、これに皆〜んな使うてしもうたとよ」
と額に入れた息子の卒業証書を見せるシーン。

あれは、ボクのことだよ。少なくとも、親に、親のスネを齧り倒した輩には正視できないほどの胸騒ぎを孕ませる。

それにしても松尾スズキのシナリオが偉大だったなぁ。主宰する「劇団・大人計画」の舞台ではシニカルな片頬だけの笑いで済ませているスズキだが、材料を与えられたら、やればいくらでも出来るんじゃないか。

観終って、すべてのスタッフとキャストが同じ理解のもとに動いたのではないかと信じたくなった。すべてのアイデアが奇跡的な成果を収めて、神々しいほどだ。

たった一組の親子に起こったに過ぎないエピソードが普遍性を獲得する。

かつて無償の愛を持って自分を包んでくれた人たちがいたこと。そして自分たちがそういう存在として次代の子供たちを包むべきであることが体の奥から湧き上がってくる。

人の一生とはかくも短いものであったか。
人の一生とはかくも悲しいものであったか。

この作品の真価は、逡巡し、煩悶し、それでもとりあえずは、少しずつ前を向いて歩んできた人間にこそ強く伝わるものであろう。

人々が歩んできた時代の空気を再現するためにプロが結集する。本当の大作とは、こういうアプローチを言うものではないか。(★★★★)

病院での医事に関する描写は素晴らしいものだった。幾度と襲い来る断末魔。臨終における迫真性。

社会的にはまったく省みられない一生であったかもしれないが、立派な母としての生涯にふさわしく、真正面から人生の終焉を見据える姿勢には心から感動した。

この業火に、この責め苦に母は耐えたのである。

観客は、ボクと、オトンと、すべてのオカンを愛するひとの気持ちが一体化して、彼女の挑戦に込められるものは無力な祈りしかない・・・。


百の患者には百の家族がいる。
百の患者には百の夢がある。
立派に生きた母を報いてくれるものは子どもの幸福しかないところが遣る瀬ないよ。

関係者に感謝の言葉を捧げたいと思う。この映画、徹底的に準備に金と時間がかけられている。

たかだか四十年と言うなかれ。近過去が描けない作品は星の数ほどあるじゃないか。見ていて懐かしくて仕方がない…という作り方はしていない。だが懐かしいのである。

かつて確かに存在し、いまは消え去ったある種の人間達のそれでも生きていた存在感をきちんと描いているからである。そこには郷愁はない。

いまなお形こそないが脳裏にしずかに眠っている永遠に自分を見捨てることのない愛への悔恨と感謝。

そういった極めてあやふやなものの存在を感じている人間には堪えられない作品だ。観てくれとはいいません。

解るひとだけでいいですよ。

ご立派なひとには勿体ないや!

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