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北京波の新世紀映画水路コミュの「王の男」評

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いやでも陳凱歌の『覇王別姫・さらばわが愛』を想起する展開である。

芸人がときに身を買われていく境涯であることや、重要なモチーフとして京劇が出てくるからだが、見ていてすぐに分かるのは、この映画には重厚な『覇王別姫・さらばわが愛』のそれを望んでも仕方がないということである。

それは馬鹿にしているのではなく、たとえば東映の娯楽映画のつくりで描かれた世界であるというものであるからだ。

たとえば最初に座長から土地の金持ちに身を売るように命じられた女形のコンギルだが、『覇王別姫・さらばわが愛』ではまさに少年である彼らが金の前に蹂躙される衝撃が真っ先に観客を叩きのめすのだが、いくら凄まじい美形のコンギルでもオトナである以上「いままでなかったんかい?」と単純に思うなぁ。

韓国で17週にわたるロングラン・ヒットとなり、1,300万人が観たといわれるこの作品だが、15世紀の朝鮮王朝史上最悪の暴君といわれる王・燕山君(ヨンサングン)を、王が重用した賤民・大道芸人の目を通して描いている。

だが、映画として2時間を引っ張るには物語の腰が定まらない。大道芸人の意地を描くのか、チャンセン(カン・ウソン)のコン・ギルに対する愛情を描くのか、はたまた王そのものの苦悩を描くのか・・・、といったようにである。

このヨンサングンのあと王位についたのが「宮廷女官・チャングム」のチュンジョンだということだから、ボクの横の席に座ったオバカ・マダムが「わたし、チャングムを全部見直すわ!」という鑑賞途中の決意表明発言に直結したわけだが、この程度の描き方で解らないのなら、一生かかっても副音声で登場人物の感情を説明してやらないと、あのマダムには理解できないのだろうなぁ。

この映画が韓国で大ヒットしたと聞いて思い起こしたのは「明治天皇と日露大戦争」であった。

あの浪花節みたいな映画が空前の大ヒットした最大の原因は嵐寛寿郎が演じた明治天皇への庶民の興味だったはずで、韓国でヨンサングンを男色のことを含めて描いたことへの庶民の興味が大きかったのではないのか?

「明治天皇と日露大戦争」が映画的に優れてはいなかったが、日本人にとっての尽くせぬ興味を刺激したに違いない。

「スパイダー・フォレスト」のカム・ウソンはなかなかの演技ぶりで、上手い役者だと感心するし、イ・ジュンギはほんとうにユニ・セックス時代のヒロインであろう。

この映画を馬鹿にする気はない。むしろ娯楽映画の撮り方でよくがんばっていると思う。だが演出が総体的に若い、つまり深みが薄い。

これは嫌でも『覇王別姫・さらばわが愛』やヴィスコンティを手本にしたと思しいスタイルでは、避けて通れない不満であろう。

韓国映画の娯楽映画のレベルの一側面を痛感する作品となっている。(★★★)

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