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Gaia・ガイア 花と樹の世界コミュのラン科(蘭科、Orchidaceae)

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●ラン科(蘭科、Orchidaceae)は、単子葉植物の科のひとつで、その多くが美しく、独特の形の花を咲かせる。世界に700属 (分類学)以上15000種、日本に75属230種がある。鑑賞価値の高いものが多く、栽培や品種改良が進められている。他方、採取のために絶滅に瀕している種も少なくない。

ラン科の種はラン(蘭)と総称される。英語では「Orchid(オーキッド)」で、ギリシア語の睾丸を意味する「ορχις (orchis)」が語源であるが、これはランの塊茎(バルブ)が睾丸に似ていることに由来する。



■概要
南極をのぞくすべての大陸の熱帯から亜寒帯に自生する。被子植物の中では最も最近に地球上に現れた植物である。そのため、各バイオームのニッチ(隙間)に進出することになり、苛酷な環境に適応してきた。また、花は左右対称で、虫媒花の中では特異なほど効率の良い花形に変異している。短期間に急速に適応放散してきたため種の間の遺伝学的隔たりが小さく、種間雑種や属間雑種ができやすい。また、媒介昆虫との共進化の例が知られており、現在においてもなお急速な進化を続けていると考えられている。


■花の特徴
花弁
ラン科植物の花は、非常に独特のものである。ユリなどと同じように、六枚の花びら(外花被片3、内花被片3)があるが、全部が同じ形ではないので、左右対称になる。特に、内花被片の一枚が変わった形になっている。多くのものでは袋や、手のひらをすぼめた形や、あるいはひだがあるなど、他の花びらとは異なっており、これを唇弁(しんべん、リップ)と呼ぶ。他の内花被片二枚は同形で側花弁と言う。外花被片も唇弁の反対側のものと残り二枚がやや違った形をしている。前者を背萼片、後者を側萼片という。本来、花茎から花が横向きに出れば、唇弁が上になるのだが、多くのものでは花茎から出る子房がねじれて、本来あるべき向きから180°変わった向き、つまり逆さまになる。そのため、唇弁が下側になって、雄しべ雌しべを受ける形になる。
雄しべと雌しべ
雄しべと雌しべは完全に合体して一本の構造になっており、これをずい柱という。雄しべは一本ないし二本だけが残り、他は退化する。二本のものはヤクシマラン属とアツモリソウ属であり、それぞれヤクシマラン亜科とアツモリソウ亜科を構成する。
ヤクシマラン亜科のものは雄しべが比較的はっきり区別できて、花も左右対称ではないなど、普通の花に近く、原始的なものと考えられる。
アツモリソウ亜科のものでは、ずい柱は平らで、先端下面に柱頭が、それより根元側左右に雄しべの葯がある。
それ以外のラン科では、ずい柱先端に雄しべの葯があり、その下面に柱頭がある。
ラン科植物の花粉は、花粉塊といって、塊になっており、その端に昆虫にくっつくために粘着部分をもっているものも多い。
花粉
ラン科の花は、昆虫による受粉のために特別に進化した構造をもつ虫媒花をつけるものが多い。かなり限定された昆虫を対象にした特殊な適応が見られるものも多く、共進化の結果と見られる。


■その他の性質
ラン科植物はすべて草本で、若干の登はん性のもの(例、バニラ属)がある以外のものは、それほど大きくはならない。茎が大きな塊となって偽球茎(ぎきゅうけい)を形成するものや、そのうえに少数の葉をつける独特な形のものが色々とある。多くのものが厚く硬い葉をもつ。また、着生植物となるものが非常に多く、地上に生えるものをわざわざ”地生ラン”と呼ぶほどである。

また、根が太く、発泡スチロールのように膨らんだ感じのものが多い。根の細胞には菌類が共生して菌根を形成しており、ラン科独特の構造からラン菌根と呼ばれる。また、ラン科植物の種子はほこりのように細かく、未成熟な胚のみで胚乳もなく、ほとんど貯蔵養分を持っていない。自然下では発芽の際に菌類が共生して栄養を供給する。さらに菌類への依存を強め、自分自身は光合成をせず、菌類にたよって生きる、腐生植物になっているものが、いくつもの群に見られる。

上記の理由で、一般にランの人工繁殖は難しい。これを克服する方法として、糖含有培地を使用して無菌的にに種子を発芽・生長させる無菌播種が考案されている。ほとんどの着生ランの種子は、この方法によって容易に発芽するが、菌類依存性の高いとされ地生ランは着生ランと同じ方法では発芽しない場合が多い。腐生植物である腐生ランにいたっては栽培、移植技術すら確立されていない場合がほとんどである。

一方、近年は、シュート先端にある生長点を切り出して培養するメリクロンなど、組織培養で増殖する技術も進歩してきている。これは、種子で殖やす場合と異なり、優良な個体を大量に増殖することができるため、洋ランの営利栽培では欠かすことのできない技術となっている。

森林性や湿地性のものが多いが、草原に生息するもの、乾燥地に生息するもの、極地や高山にも分布するものがある。しかし分布の中心はやはり熱帯の湿潤な地域で、熱帯雨林では一本の木に何十種類ものランが着生する例がある。


■栽培と品種改良
欧米では、18世紀以降、熱帯性のランが多数持ち込まれ、鑑賞用として栽培されてきた。着生種はヘゴ板(木生シダ類の幹を切り出したもの)やミズゴケ類を使うなどの工夫がされた。また、より美しいものを求めて交配が行われた。ラン科では種間だけでなく、属間でも雑種ができる例があり、多くの交配種が作られた。日本ではそれらを”洋ラン”と呼んでいる。現在では、それらは東南アジアなどでも栽培され、重要な産業となっている。これらは、栽培目的の他に、切り花としても売買される。

また、中国や日本では、古くから何種かのランを珍重する伝統があり、それらは”東洋ラン”と呼ばれる。東洋ランの世界では、交配はほとんど行われず、栽培中に出現する、あるいは野外で発見される個体変異の中から、特殊なものを選び出して命名、栽培する。また、戦後には山野草の栽培がブームになり、野生ランもその対象になった。

しかし、そのために野生ランの乱獲が進み、絶滅に瀕することになった種が多数ある。他方、洋ランの世界では、現有品種の供給は十分に行われている。しかしながら、新たな品種を求める動きや、野生のものを珍重する動きなどがあり、ラン科植物の乱獲は世界的に問題となっている。現在では野生ランの国際間移動は「絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約」(略称CITES、通称ワシントン条約)で規制されている。また、熱帯雨林の開発の進行で、生息環境を失って絶滅したものも少なくないと思われる。

他に、バニラは香料の材料として栽培されている。



■様々なランの花
(エルンスト・ヘッケルによる)以下は、Robert Louis Dresslerによる1993年の分類である。古くはヤクシマラン亜科をヤクシマラン科とすることもあった。

ラン科 Orchidaceae
ヤクシマラン亜科 Apostasioideae
アツモリソウ亜科 Cypripedioideae
ネジバナ亜科 Spiranthoideae
トロピディア連 Tropidieae
クラニチス連 Cranichideae
チドリソウ亜科 Orchidoideae
ネオッティ連 Neottieae
ディウリス連 Diurideae
オルキス連 Orchideae
ディサ連 Diseae
セッコク亜科 Epidendroideae
バニラ連 Vanilleae
ガストロディア連 Gastorodiieae
アレサス連 Arethuseae
セロジネ連 Coelogyneae
マラキス連 Malaxideae
クリプタレナ連 Cryptarrheneae
カリプソ連 Calypsoeae
ポドチラス連 Podochileae
エピデンドラム連 Epidendreae
デンドロビウム連 Dendrobieae
バンダ亜科 Vandoideae
マキシラリア連 Maxillarieae
バンダ連 Vandeae
ポリスタキヤ連 Polystachyeae
シンビジウム連 Cymbidieae

■主な属
以下、日本産の属。

ヤクシマラン亜科 Apostasioideae
ヤクシマラン属 Apostasia
エンレイショウキラン属 Acanthophippium
アツモリソウ亜科 Cypripedioideae
アツモリソウ属 Cypripedium:アツモリソウ・クマガイソウ・レブンアツモリソウ・コアツモリソウ・ホテイアツモリソウ・キバナノアツモリソウ
その他
タネガシマムヨウラン属 Aphyllochis
ミスズラン属 Androcorys
ヒナラン属 Amitostigma:ヒナラン・イワチドリ
キバナシュスラン属 Anoectochilus
ナリヤラン属 Arundina:ナリヤラン
シラン属 Bletilla:シラン
マメヅタラン属 Bulbophyllum:マメヅタラン・ムギラン・ミヤマムギラン・シコウラン・オガサワラシコウラン・クスクスラン
アオチドリ属 Coeloglossum
キンラン属 Cephalanthera:キンラン・ギンラン・ササバギンラン・ユウシュンラン
バイケイラン属 Corymborkis
カイロラン属 Cheirostylis
ホテイラン属 Calypso:ホテイラン・ヒメホテイラン
エビネ属 Calanthe:エビネ・キエビネ・キリシマエビネ・サルメンエビネ・キンセイラン・キソエビネ・タガネラン・ナツエビネ・トクサラン・スズフリエビネ・ツルラン・オナガエビネ・ヒロハノカラン
シュンラン属 Cymbidium:シュンラン・カンラン・ナギラン・マヤラン・キンリョウヘン・ヘツカラン・ホウサイラン・シンビジウム
サイハイラン属 Cremaster:サイハイラン
ジョロウラン属 Disperis
イチヨウラン属 Dactylostalix:イチヨウラン
セッコク属 Dendrobium:セッコク・オキナワセッコク・キバナノセッコク・デンドロビウム
ヒメヤツシロラン属 Didymoplexis
サワラン属 Eleorchis:サワラン
コイチヨウラン属 Ephippanthus:コイチヨウラン
トラキチラン属 Epipogium:トラキチラン・アオキラン・タシロラン
カキラン属 Epipactis:カキラン・エゾスズラン
イモネヤガラ属 Eulophia:イモネヤガラ・エダウチヤガラ・タカサゴヤガラ
テガタチドリ属 Gymnadenia:テガタチドリ・ノビネチドリ・ミヤマモジズリ
オサラン属 Eria::オサラン・リュウキュウセッコク
オニノヤガラ属 Gastrodia:オニノヤガラ・ハルザキヤツシロラン
ツチアケビ属 Galeola:ツチアケビ
シュスラン属 Goodyera:シュスラン・ベニシュスラン・シマシュスラン・キンギンソウ・ミヤマウズラ
メオトラン属 Geodorum
ムカゴソウ属 Herminium
ヒメノヤガラ属 Hetaeria
ミズトンボ属 Habenaria:サギソウ・ダイサギソウ・ミズトンボ
ヒメクリソラン属 Hancockia
コハクラン属 Kitigorchis
ムヨウラン属 Lecanorhis
フタバラン属 Listera:アオフタバラン・コフタバラン
クモキリソウ属 Liparis:チケイラン・コクラン・ユウコクラン・ジガバチソウ・スズムシソウ・ギボウシラン・キノエササラン・クモキリソウ・ササバラン・
ボウラン属 Luisia:ボウラン・ムニンボウラン
ニラバラン属 Microtis
ヤチラン属 Malaxis
アリドオシラン属 Myrmechis
ムカゴサイシン属 Nervilia
サカネラン属 Neottia:サカネラン・ヤクシマアカシュスラン・カゲロウラン
フウラン属 Neofinetia:フウラン
ハクサンチドリ属 Orchis:カモメラン・ハクサンチドリ・ウチョウラン・ヒナチドリ・オノエラン
イナバラン属 Odontochilus
ヨウラクラン属 Oberonia:ヨウラクラン
コケイラン属 Oreorchis:コケイラン
ツレサギソウ属 Platanthera:ツレサギソウ・ジンバイソウ・キソチドリ・オオヤマサギソウ・コバノトンボソウ
トキソウ属 Pogonia:トキソウ・ヤマトキソウ
ガンゼキラン属 Phaius:ガンゼキラン
ジンヤクラン属 Renanthera
イリオモテムヨウラン属 Stereosandra
コオロギラン属 Stigmatodactylus
ネジバナ属 Spiranthes・ネジバナ
コウトウシラン属 Spathoglottis:コウトウシラン
カヤラン属 Sarcochilus:カヤラン
ムカデラン属 Sarcanthus:ムカデラン
マツラン属 Saccolabium:カシノキラン・モミラン・マツラン
ナゴラン属 Sedirea:ナゴラン
トンボソウ属 Turotis:トンボソウ・イイヌマムカゴ
ネッタイラン属 Tropidia
ヒトツボクロ属 Tipularia
ヒメトケンラン属 Tainia
ニュウメンラン属 Trichoglottis
タイワンフウラン属 Thrixspermum
クモラン属 Taeniophyllum:クモラン
ショウキラン属 Yoania
ハクウンラン属 Vexillabium
ヒスイラン属 Vanda:コウトウヒスイラン・バンダ
キヌラン属 Zeuxine

■海外産で、よく栽培されているもの。
コチョウラン属 Phalaenopsis
カトレヤ属 Cattleya
パフィオペディルム属 Paphiopedilum
オンシジューム属 Oncidium
マスデバリア属
アングレカム属
リカステ属
ジゴペタルム属
バルボフィラム属
エピデンドルム属
ミルトニア属
セロジネ属
オドントグロッサム属

コメント(31)

[ 撮 影 日 ] 2007.12.24

[ 撮影場所 ] 伊豆熱川バナナ・ワニ園

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