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【論説】国が生活保護費を引き下げた処分の是非が問われた訴訟で、東京地裁が違法判断を下した。引き下げの判断の過程に過誤や欠落があり、裁量権の逸脱または乱用だと認定した。同様の司法判断が３例目となったことを国は重く受け止め、制度の在り方を改めて精査してほしい。
厚生労働省は５年に１度、生活保護基準額の水準について、制度を利用していない低所得世帯の消費実態と均衡しているかを検証。２０１３年８月からの３年間で基準額を平均６・５％引き下げた。
この中で、物価動向を踏まえたデフレ調整で厚労省が独自に算定した指数が初めて使われたが、調整は専門家会議の審議を経ておらず「必要性や相当性について、客観的な数値との合理的関連性を検討する必要がある」と地裁は指摘した。
物価は全体としては下落したものの、低所得世帯にとって重要な食料費や光熱水費は上昇しており、専門家の意見も聞いた上で、合理的な手法かどうかを慎重に判断すべきだった。
生活保護は憲法２５条が保障する「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」を制度面で支えている。家計が苦しい小中学生の学用品を補助する就学援助などの水準とも連動していて、金額の下落が与える影響は十分考慮されるべきだ。
ただ、日本では生活保護制度の利用が進んでいない。受給者への過剰なバッシングなど社会の理解が進んでいない現状もある。厚労省の推計では、生活保護基準以下の所得で暮らす人のうち、実際に生活保護を受けている人の割合は２割程度で近年推移しているようだ。欧州では５割を超える国もある。国により事情は違うが、本当に必要とする世帯の生活に寄り添った制度となっているか、見直すことが重要だ。
判決後に記者会見した原告男性は、生活保護費を引き下げられた後、食事の回数を減らし、光熱費も節約していた。新型コロナウイルス禍も重なり、「国には減額した分を追加支給するなど早く対応してほしい」と訴えた。
２９都道府県で提起された同種訴訟の原告数は千人を超える。最近の物価高騰で、受給者の生活はますます追い込まれている状況もある。別の原告女性は「弱く、苦しんでいる人たちが、この国に住んでよかったと思えるような社会保障制度づくりをしてほしい」と語った。国はこのような声に耳を傾けながら、公正な基準をどう作っていくか。今後の取り組みを注視していきたい。
【論説】国が生活保護費を引き下げた処分の是非が問われた訴訟で、東京地裁が違法判断を下した。引き下げの判断の過程に過誤や欠落があり、裁量権の逸脱または乱用だと認定した。同様の司法判断が３例目となったことを国は重く受け止め、制度の在り方を改めて精査してほしい。
厚生労働省は５年に１度、生活保護基準額の水準について、制度を利用していない低所得世帯の消費実態と均衡しているかを検証。２０１３年８月からの３年間で基準額を平均６・５％引き下げた。
この中で、物価動向を踏まえたデフレ調整で厚労省が独自に算定した指数が初めて使われたが、調整は専門家会議の審議を経ておらず「必要性や相当性について、客観的な数値との合理的関連性を検討する必要がある」と地裁は指摘した。
物価は全体としては下落したものの、低所得世帯にとって重要な食料費や光熱水費は上昇しており、専門家の意見も聞いた上で、合理的な手法かどうかを慎重に判断すべきだった。
生活保護は憲法２５条が保障する「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」を制度面で支えている。家計が苦しい小中学生の学用品を補助する就学援助などの水準とも連動していて、金額の下落が与える影響は十分考慮されるべきだ。
ただ、日本では生活保護制度の利用が進んでいない。受給者への過剰なバッシングなど社会の理解が進んでいない現状もある。厚労省の推計では、生活保護基準以下の所得で暮らす人のうち、実際に生活保護を受けている人の割合は２割程度で近年推移しているようだ。欧州では５割を超える国もある。国により事情は違うが、本当に必要とする世帯の生活に寄り添った制度となっているか、見直すことが重要だ。
判決後に記者会見した原告男性は、生活保護費を引き下げられた後、食事の回数を減らし、光熱費も節約していた。新型コロナウイルス禍も重なり、「国には減額した分を追加支給するなど早く対応してほしい」と訴えた。
２９都道府県で提起された同種訴訟の原告数は千人を超える。最近の物価高騰で、受給者の生活はますます追い込まれている状況もある。別の原告女性は「弱く、苦しんでいる人たちが、この国に住んでよかったと思えるような社会保障制度づくりをしてほしい」と語った。国はこのような声に耳を傾けながら、公正な基準をどう作っていくか。今後の取り組みを注視していきたい。
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