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生活保護者の集いコミュのドスで相手の首をバサッと切りつけて、やられたほうは倒れてピクピクとケイレン…ホームレス“自立支援センター”で出会った60代男性の波乱万丈過ぎる半生

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https://bunshun.jp/articles/-/51680?utm_source=news.biglobe.ne.jp&utm_medium=referral&utm_campaign=relatedLink

 社会復帰意欲を持つホームレスに支援を行い、ホームレス状態の脱却を促す「自立支援センター」にはさまざまな事情を抱えた人々が集まる。ノンフィクションライターの川上武志氏は自身も保護を求め、自立支援センターに入所。そこでの経験を『ホームレス収容所で暮らしてみた 台東寮218日貧困共同生活』(彩図社)にまとめた。

 ここでは、同書の一部を抜粋し、川上氏が出会った男性の壮絶過ぎる半生、そして今後の人生についての展望について紹介する。(全2回の2回目/前編を読む)

◆◆◆


長年警備員の仕事をしていた山根
 7月1日、2号室に60代の新人が入った。台東寮のような環境には慣れているらしく、ものおじする様子がまったく見られない。それどころか寝床と3食にありつけた喜びからか、動きも軽快である。まるで猿のようにちょこまかと動きまわっている。それに口が達者で、アルコールで喉を潰したニュースキャスターみたいに、とにかくよく喋る。

台東寮の居室。畳のベッドが個人用スペースとなるが、文字通り1畳ほどの広さしかない 写真=筆者提供
台東寮の居室。畳のベッドが個人用スペースとなるが、文字通り1畳ほどの広さしかない 写真=筆者提供
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居室はカーテンで区切られる 写真=筆者提供
居室はカーテンで区切られる 写真=筆者提供
「わしは山根といいます。警備員の仕事を長年つづけていましてね。昨年働いていた会社では、賃金がええもんやから夜勤に入っていたんですよ。しかし無理がたたって体を壊してしまい、勤め先をやめることになりました」

 体調がもどっても働こうとせず、パチンコ三昧の暮らしをつづけていたのが失敗だったという。おまけに朝から飲むほどの酒好き。気がついたら5万円程度の家賃さえ払えなくなり、夜逃げ同然でアパートを出た。住み込みの警備員の仕事をJR駅に置いてある求人誌で見つけ、埼玉県草加市に向かった。

悪質な業者からの脱走
「着いたとたん、えらいところに迷いこんだと思いましたよ。宿舎がプレハブなのはええとしても、個室という約束なのにひと部屋4人の雑魚寝で、飯場と同じですわ。それでも翌日から働きだしたのですが、仕事に出ても1日2000円しかもらえない。あげくに経営者はヤクザとわかり、脱走を考えるようになりました。だが敵もさるもので、逃げることができんように夜には宿舎のまわりに土佐犬を放し飼いにしているんですわ」

「タコ部屋で土佐犬やドーベルマンの話はよく耳にしますよ。そこまで抜け目なく逃走を警戒しているのに、悪質な業者のもとから逃げだしたわけですね?」

「ええ、まあ」

「そのつづきを早く教えてくださいよ」

 脱走劇の顛末を知りたくて身を乗りだした。

「まあ、待ってくださいよ。ゆっくり話しますさかい」

 入所時に支給されたマグカップに入ったお茶を山根はごくりと飲み、話を再開した。

求人誌や新聞の求人欄の募集は、あくどい業者がいっぱい
「日曜日は仕事が休みでした。逃げるのはこの日しかないと考えたけど、部屋には3人がいる。荷物を全部持って出たら、ずらかるのだとすぐにばれてしまう。もし失敗したら怖いリンチが待ってますさかい、あのときほど慎重に行動したことはおまへん。紙袋とナップザックに大切な物をすべて放りこみ、『買い物に行ってきます』と同室の者に告げて外に出ると、猛ダッシュですわ」

「驚きました。まるで昭和初期の出来事を聞いているように錯覚しましたよ」

「へえ、昨日の話です」


「住み込みの場合は、注意が必要ですね」

「ハローワークなら問題ないけど、求人誌や新聞の求人欄の募集の場合には、あくどい業者がいっぱい網を張って待ってますさかい」

「しかし、ほかにも逃げたいと考えている人はいると思うのですけど、同室者に相談はしなかったんですか?」

「そんなことをしたら、いっぱつでチンコロされまんがな。あんなところには、やりたい放題に搾取されとんのに、経営者に忠義心を抱いとるアホがぎょうさんいてますさかい」

「それにしても、よく捕まらなかったものです」

「とにかく、電車に乗るまで追いかけてこんかと気が気でなかったですわ」

 その夜は公園で過ごし、翌朝、住民票を置いている荒川区役所に飛びこんだのだという。

仕事で若い頃から日本全国を飛びまわっていた
「わしは九州の福岡の出身でして、そこで所帯を持っとりました。しかし仕事の関係で出張に出ることが多く、それで寂しさを紛らわせるために女房は酒に溺れるようになりましてな。そのあげく肝臓をわずらい、50歳そこそこの若さで他界ですわ。その後はたったひとりで4人の子供を育て上げ、4人とも成長して家庭をもったのを契機に、子供から離れて自由な暮らしに飛びこんだわけですよ」

「九州の出身ですか。言葉を聞いて、関西人と勘違いしていましたよ」

「仕事で若い頃から日本全国を飛びまわっとりましたからな。わしは学歴がないので、出張いうてもほとんどが土木仕事で、稼ぎのええダム工事が主でしたわ」

「苦労されたんですね」

「あの頃は苦労とは思わなんだけど、死にかけたことはなんどかありました。足場上での作業中、足を踏みはずして30メートルほどを真っ逆さま。運よくどこにもあたらず、そのまま水のなかにドボンと落下したので、かすり傷ひとつ負うことはありませんでしたわ」

「ダム工事の現場で?」

「そうでんがな。それに、滋賀県の飯場にいたときには労働者同士の揉め事がおましてな。片方がいつのまにか取りだしたドスで、相手の首をバサッとばかりに切りつけたんですわ。噴水のように真っ赤な血が噴きだして、やられたほうは倒れてピクピクとケイレンですわ。その場には何人かおったんですが、全員が蜘蛛の子を蹴散らすように逃げだして、残ったのはわしひとりだけ。恥ずかしい話、腰が抜けて動けなかったんですわ」

警察によけいなことを喋ったら…
「その話も昭和初期ですよ」

「へえ、昭和の終わり頃の出来事でしたわ」


「それで、首を切られた人はどうなりました?」

「出血多量で即死ですわ。すぐに動かんようになってしもうて……」

 山根はそのときの情景を思いだしたらしく、目を剥いて身震いした。半袖の腕に鳥肌が立っている。

「返り血を浴びた鬼のような形相で、男がわしのところにやって来て、『俺はいまから高飛びするけど、警察によけいなことを喋ったら、あいつと同じように冥土に送ってやるからな』とわしの首にドスを押しあてて脅すもんやから、生きた心地がせなんだですよ」

「結果的にその男はどうなりました。逮捕されたのでしょうか?」

「いんや、警察に捕まったという話は聞いとらんので、逃げ切ったんと違いますやろか。殺人いうても、殺されたのは虫けら同然の飯場労働者でっさかい、警察が真剣に捜査するわけがない。どうせ名前も偽名やろうし、だいいち男の顔写真もおまへんでしたから」

台東寮で出されたある日の弁当。色の薄い海苔が乗ったご飯と、少量ずつのおかず、インスタントのみそ汁である 写真=筆者提供
台東寮で出されたある日の弁当。色の薄い海苔が乗ったご飯と、少量ずつのおかず、インスタントのみそ汁である 写真=筆者提供
 喉が渇くらしく、山根はマグカップのお茶を立て続けに飲んでいる。

テントよりも寝袋がいい
「荒川の河川敷で暮らしとったこともありまして、野宿生活もええもんやで。同じ野宿仲間がいっぱいできて、夜にはたき火を囲んで飲むのは最高や。星空を眺めとるだけで、なんぼでも飲める。酒の肴なんかいるもんかいな。そして酔っぱらったら、そのままブルーシート内にもぐりこむ。そういう暮らしでしたわ」

「山根さんが野宿生活に逆戻りするときには、テントをプレゼントさせてもらいますよ」

「最近はどこの公園でも追いだしが盛んで、テントは張りにくうなってしもうた。けど寝袋なら、どこでだってチョチョイのチョイで広げて横になることができますさかい。どうせくれるなら、テントよりも寝袋がええな。上野のドンキなら、2000円ちょいで売っとるはずや」

「それなら、一緒に寝袋もプレゼントさせてもらいますよ」

「それだけあったら、楽に1年間は生活でける。ありがとさんです。けど、ここを出たあとは、上野の〇〇Sで世話になろうと思うとります。そこで生活保護暮らしや」

その話は秘密にしたかったらしく、山根は栄養失調の猿のような顔つきで、急に室内をきょろきょろと見回しはじめた。このとき2号室には、彼と私の2人だけだった。

受給者にたったの3万円、ギリギリの生活
「そんなにたやすく保護を受けることができるのですか?」

「簡単簡単、すごく簡単ですわ。わしのような高齢者だけやのうて、〇〇Sには30代40代の半端者がごろごろしとる。わしも5年間で6回も出入りしたけど、保護を断られたことはいっぺんもおまへん。仕組みはようとわからんけど、あれだけ簡単に出すということは、福祉課の者と裏で繋がっとるんと違いますやろか」


「6回ですか? つぎは7回目ということになりますね」

「はいな。部屋は狭いけど、山谷のドヤよりもよっぽど清潔ですわ。13万9000円もらって3万ちょい手元に残ります。3食付きなので、その金は飲み代やタバコ銭ということになりまんな。それに自立支援センターの寮は6カ月間で追いだされるけど、〇〇Sの場合は10年間住みついとる者もいてますさかい」

「受給者にたったの3万円ですか。それでやっていけます?」

「ぎりぎりなんとか」

管理されないとすぐにお金を使い切ってしまう
 生活保護費の大半を巻き上げて雀の涙ほどの金額しか渡さない。あきらかに貧困ビジネスである。けれども山根の好々爺然とした底抜けな笑顔を見ていると責めているようで、口にするのははばかられた。

「でも13万9000円も受給すれば、アパート暮らしだってできますよ」

「楽勝でんがな。そやけど、〇〇Sにおるようなヤツは大金を握ったとたんすぐに酒やギャンブルに走るよって、地道な暮らしはムリですわ。管理されんと部屋代どころか食うものにも困るようになり、あげくの果てに夜逃げするのがオチですわ」

「そういうものですか?」

「はいな。自分のことをちゃんとやれん社会のゴミばかりでっさかい」

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