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生活保護者の集いコミュの「もうやめますか」 UDタクシーで車椅子女性が直面した苦難

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https://mainichi.jp/articles/20210906/k00/00m/040/224000c

「もう、(乗るの)やめますか」。難病のため車椅子で生活している東京都内の女性は、東京パラリンピック開会式の前日、タクシーを利用しようとして運転手に突然怒鳴られ、恐怖を感じたという。車椅子のまま乗り降りできるユニバーサルデザイン(UD)タクシーは、パラリンピックに向けて「共生社会の実現」を掲げた政府が普及を進め、全国で2万台以上が導入されたが、車椅子ユーザーがいつでも安心して利用できる状況にはなっていないようだ。なぜだろうか。【中嶋真希/デジタル報道センター】

パラリンピック契機に導入進む
 「もう怖くてタクシーに乗れません。でも、これが障害者にとっての現実なんです」。東京都府中市在住の森山風歩(かざほ)さん(40)はため息をついた。中学2年で進行性筋ジストロフィーとわかり、電動車椅子で生活している。トラブルがあったのは8月23日。この日は障害者向けの福祉制度の申請手続きのために、自宅から市役所へ行く予定だった。車椅子でも乗れるUDタクシーを利用しようと、タクシー会社に配車を依頼。しかし、やってきた男性運転手は、車椅子の乗せ方がわからないようだった。


 UDタクシーは国土交通省が認定しており、障害者や高齢者らが利用しやすいよう、スロープなど車椅子のまま乗り降りできる乗降口を1カ所以上設けること、乗降口付近に手すりを設置することなどの基準が定められている。政府は2017年、「東京パラリンピックを契機に障害のある人もない人も共に支え合い、多様な能力が発揮される共生社会を目指す」とする「ユニバーサルデザイン行動計画2020」を発表。その中にUDタクシーの導入促進も盛り込んだ。購入の際、一定の条件を満たせば国や東京都から補助が受けられるため特に都内で普及した。

 全国ハイヤー・タクシー連合会による今年3月の調査によると、全国でUDタクシーは2万3959台あり、うち都内は全国の半数以上の1万3080台。車体にオリパラ大会のエンブレムを施したタクシーもよく見かけるようになった。この調査では、17年からトヨタが製造・販売する「ジャパンタクシー」が9割以上のシェアを占めた。


 森山さん宅に配車されたのも、ジャパンタクシーだった。ワゴンタイプで、車椅子で乗るには、運転手が後部座席左側のドアに備え付けのスロープを設置し、運転席をスライドさせてスペースを確保した上で、車椅子を誘導し、ベルトで固定するなどの作業が必要になる。

 しかし、森山さんの自宅に来た運転手は、スロープだけ設置すると、運転席も動かさず、車椅子を押すこともせず黙って見ていたという。それでも森山さんは「事を荒立てたくない」と何も言わず、同行したヘルパーに手伝ってもらいながら、狭いスペースで座席や飛び出した料金トレーに体をぶつけながらもなんとか乗り込んだ。


強い口調で「やめますか」
東京オリンピックのロゴマークを付けて繁華街を走るタクシー=東京都新宿区で2021年7月23日午後9時57分、小出洋平撮影拡大
東京オリンピックのロゴマークを付けて繁華街を走るタクシー=東京都新宿区で2021年7月23日午後9時57分、小出洋平撮影
 乗り込んだ後は、運転手は座席と車椅子をフックでつなぐ。その際、きちんと固定されたかどうか確認するために、車椅子を揺らすことがあるが、森山さんは上半身に力が入らないため、急に揺らされるとバランスを崩して倒れてしまう。この日、ヘルパーは何度も運転手に「声かけしてから揺らしてください」と頼んだが、運転手は無言のまま車椅子をつかんで揺らしたという。

 突然揺らされてバランスを崩し、息が苦しくなったという森山さんは「まるで物のような扱いだ」と感じ、思わずつぶやいた。「そうじゃない……」。すると、運転手は急に顔色を変えて大きな声を出したという。


 「一生懸命やってるんですよ! もう、やめますか」

 運転手は怒ったような口調で、「やめますか」と繰り返した。森山さんには、降りるよう言われているように聞こえた。その後も、運転手は森山さんのシートベルトの締め方がわからない様子で、ベルトを左右に動かしたため、先端についた金具が何度も森山さんの体にぶつかった。見かねて森山さんが「やり方、わかりますか」と声をかけると、運転手は「わかってますよ」と怒鳴ったという。

 どうにかシートベルトを締め終わって出発したのは、乗車準備をし始めてから15分以上後だった。森山さんは市役所までたどりついたものの、恐怖のためか過呼吸の状態になってしまう。水を飲んで呼吸を落ち着かせることに時間がかかり、用事を済ますことはできなかった。帰宅するために同じ会社に再度配車を依頼したが、今度来た運転手は、森山さんにシートベルトを着用させることなく発車してしまった。過去にも森山さんを乗せたことがある運転手で、その際間違った方法でベルトを締められ「苦しい」と訴えたことがあり、今回着用を頼んでも聞き入れなかったという。森山さんは車が揺れるたびにバランスを崩し、何度も窓に頭をぶつけて痛かったが、黙って乗り続けた。

 道路交通法では、運転手と同乗者のシートベルト着用が義務づけられているが、座席に座らず、そのまま乗り込む車椅子ユーザーは、義務の対象とはなっていない。しかし、大型の車椅子や寝台型の車椅子などの例外を除き、ジャパンタクシーに乗車できるサイズの車椅子は、安全のためシートベルトで固定することが原則とされている。

 「(市役所まで乗せた)運転手は、スロープを出しておけばいいんでしょ、くらいにしか思っていないのでしょう。タクシー会社は、運転手がきちんと車椅子を乗せられるようになってからUDタクシーを運用してほしい。そうでなければ障害者は危険にさらされます」。森山さんはこうため息をつき、続けた。「(共生社会を目指す)パラリンピックのエンブレムをつけて走っているのに、理想だけで現実が伴ってないですよね」

「他の障害者のために声上げたい」
 森山さんは進行性筋ジストロフィーになった後の2007年に写真家・荒木経惟さんの写真集「6×7反撃」(アートン)でモデルを務め、08年に自叙伝「風歩」(講談社)を発表。作家で俳優のリリー・フランキーさんの写真のモデルにもなるなど、意欲的に活動していた。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大で、生活が一変。趣味のファッションを生かして自宅でアパレルのウェブショップを開設し、外に出るのは市役所や銀行に行く時などに限られるようになった。これまでは、自身が所有する車で移動していたが、たまにしかない外出のために車を維持することが難しくなり、手放した。以来、必要な時はタクシーで移動しているという。車椅子の乗降方法を熟知した運転手が来てくれることもあったが、やり方がわからない運転手に雑に扱われることはこれまでもあったという。

 森山さんは今回、「同じような思いをしている障害者の仲間のためにも泣き寝入りせず、声を上げていきたい」と取材に応じたといい、「(市役所まで乗せた)運転手からは謝罪の言葉はなく、タクシー会社にもこのトラブルを伝えて調査や謝罪を求めたが、まともに応じてくれなかった」と訴える。毎日新聞の取材に対し、このタクシー会社の担当者は「業務内容については答えられない」とした上で、「運転手は、怒鳴ってはいない。また、運転手はその場で謝罪したと言っているし、会社としても謝罪したという認識だ」と回答した。

相次ぐ乗車拒否「手順覚えるの難しい」
 実は、「UDタクシーに乗れない」という声は以前から上がっている。

電動車いすでUDタクシーに乗り込む男性=東京都江戸川区で2019年10月30日午後9時45分、斎藤文太郎撮影拡大
電動車いすでUDタクシーに乗り込む男性=東京都江戸川区で2019年10月30日午後9時45分、斎藤文太郎撮影
 障害者団体「DPI日本会議」の佐藤聡さん(54)によると、17年ごろから、車椅子の利用者が「乗車拒否」されるケースがあったという。調査のため、同団体が19年10月、全国各地で一斉に120人がUDタクシーに乗車する試みをしたところ、約3割の32人が乗車できなかった。車椅子で手を挙げても通り過ぎてしまったり、止まった場合も「乗せ方がわからない」「車椅子のままでは乗れない」と断られたりしたという。UDタクシー導入以降、車椅子利用者の乗車を拒否したとして、タクシー会社が行政処分や指導を受ける例も相次いでいる。

 なぜこれほど車椅子ユーザーはタクシーに乗るのが難しいのだろうか。佐藤さんはこう指摘する。「車椅子を乗せるには多くの手順があり、いざというときに運転手が乗せ方を忘れていることが問題なのです。手順も一つ一つが煩雑で、例えば、運転席を動かしたり、スロープを組み立てて設置したりするのは特につまずきやすい作業です。研修を受けても、頻繁に車椅子の人を乗せていなければ、やり方を忘れてしまうのです」

 実際、森山さんとトラブルがあったタクシー会社も、その運転手にUDタクシーの乗車経験が不足していたことは認め、「今後も勉強会を開いて技術を上げていきたい。UDタクシーは手順が多く、すぐに覚えることは難しい。ほかの会社も苦労しているのでは」と話していた。

研修徹底の難しさ
 研修の態勢はどうなっているのだろうか。UDタクシーの購入補助を受けるには、1台につきユニバーサルドライバーとして専門機関の研修を受講した運転手を2人以上配置する必要があり、ほかにも事務所で年2回以上の研修をすることなどが定められている。しかし、福祉輸送事業者による団体「全国福祉輸送サービス協会」は研修を徹底することは難しいと指摘する。担当者は「事業所での研修はあくまで自己申告で、きちんと行ったかどうかチェックするところまでにはいっていない。また、研修を受けたとしても、多くの運転手にとって車椅子ユーザーを乗せる機会が少ないのが現状で、なかなか身につかないのではないか」と明かす。

 トップシェアのメーカーとして、トヨタはどう対応してきたのか。運転手の声を聞きながらスロープの組み立て作業を簡易にするなどの改良はしてきたといい、同社広報部は「障害者の方からの要望もあり、以前は1〜2カ月に1回のペースで、社としても運転手向けに講習を実施していましたが、今は新型コロナウイルスの感染拡大でできていません。今後、状況を見ながら実施していきたい」としている。

 自身も車椅子を使う佐藤さんはこう訴える。「UDタクシーをうまく運用している事業者では、複数人の運転手でチームを組み、互いに手順を教え合いながら定期的に練習しています。乗せ方についての動画も公開されており、本当に障害者が利用しやすいタクシーにしたいという思いがあれば、工夫次第でもっと状況を改善できると思います」

 冒頭で紹介した政府の行動計画は「心のバリアフリー」に取り組むことも掲げ、「すべての人が抱える困難や痛みを想像し共感する力を培うこと」が重要だと強調している。パラリンピックが終わった今、心のバリアフリーは本当に実現したのだろうか。

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