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生活保護者の集いコミュの「底辺は切り捨てられる」都の日雇い仕事、8月休止の“事情”

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https://mainichi.jp/articles/20210816/k00/00m/040/120000c

東京都内の生活困窮者の仕事が「暑さ」を理由に失われている。都が今年初めて、都有地の清掃などの日雇い仕事を8月の1カ月間、休止したからだ。名目は「熱中症対策」だが、取材を進めると別の“事情”も見えてきた。「底辺の人間は切り捨てられる」。ホームレスたちに渦巻くのは不信感ばかりだ。【木許はるみ/デジタル報道センター】

野宿生活30年「8月の収入ゼロ」
 7月中旬、記者は都内で生活困窮者の支援をする団体の巡回に参加した。ホームレスたちに生活の変化を聞いて回っていると、男性(73)が「8月は仕事がまったくなくて」とこぼした。男性は公園の脇に段ボールを敷いて、仲間と身を寄せ合っていた。


 男性は約30年間、野宿をしている。きっかけは、家族を立て続けに亡くしたことで心労を抱え、技術職の定職を離れたことだった。「立ち直ろうと思ったときには遅かった」。路上生活を始め、仕事がある時は建設現場に住み込みで働いた。

 男性のいまの唯一の稼ぎが、都が日雇い仕事を手配する「特別就労対策事業」だ。毎月3〜4回働き、月額2万〜3万円を得る。稼ぎは食費のほか、荷物を預けるコインロッカー代、悪天候の日をしのぐネットカフェの料金に充てる。求職者は事業に登録した番号順に仕事をもらうが、当日に順番が前後することもあり流動的だ。男性は職業安定所にこまめに足を運び、自分の順番をチェックしている。


現金収入は、路上生活中の荷物を預けるコインロッカーの代金にも必要だ=東京都内で2019年7月26日、牧野宏美撮影拡大
現金収入は、路上生活中の荷物を預けるコインロッカーの代金にも必要だ=東京都内で2019年7月26日、牧野宏美撮影
 男性は春ごろ、8月の事業休止を知った。この間の収入はゼロになる。「食費を節約して、炊き出しに行く回数を増やすか、なんとかして暮らしていかないといけないですね」と話す。「昔は住所がなくても仕事に受け入れてくれるところがあったんですよ。今はどこも住所が必要。他の仕事で収入を穴埋めしようとしても厳しいですね」

「熱中症対策」きっかけは死亡事案
 都就業推進課によると、特別就労対策事業は1972年、日雇い労働者の多い東京・山谷地区の就業対策として始まった。当時、戦後や関東大震災の復興事業が落ち着き、他の仕事が減った場合の「補完」という位置づけだった。


 仕事内容は、公園や港湾埋め立て地、都道といった都有地の清掃や除草がメインだ。都が民間に仕事を発注し、民間が労働者を雇う。労働時間は5時間半、日当は約8000円だ。利用するのは、職業安定所で求職登録し、日雇い仕事の手帳を受けた人。2020年度の利用者は1529人で、9割が60代以上。前出の男性(73)のように高齢でほかの仕事ができず、事業を唯一の収入源とする人もいる。

 ところが19年5月、作業中の50代男性が倒れ、搬送先で亡くなる事案が起きた。男性は持病があり、暑さとの因果関係は不明だが、当日は暑さが厳しい日だったという。


 この事案をきっかけに、都は20年度から利用者への熱中症対策を導入した。7〜8月は事業の時間帯を午前中のみに変更。東京の暑さ指数が「危険(運動は原則中止)」を示した場合は、作業を中断し、休憩を取るようにした。

 今年度は対策をさらに強化した。7月と9月は、暑さ指数の予報で翌日が「危険」になった場合、その時点で翌日の仕事を休止する。8月については、20年度の実績で大半の日数が「危険」を記録したため、丸々事業を休止することにした。

 本来は雇用主の都合で休業すれば、休業手当が支給されるが、今回は都が仕事の発注自体をやめるため、休業手当の対象にならないという。「補償があればと思うけど、無理ですよね。屋内でできる作業にしたり、日陰を用意したり、何かできないものかな」。前出の男性(73)はあきらめを漂わせた。

要望ない、東京五輪……、休止の別事情
特別就労対策事業の利用者たちが東京都に事業休止の見直しを求めた話し合いは、「五輪特別警戒」を理由に敷地の境界で行われた=都庁前で2021年8月4日午後1時4分、木許はるみ撮影拡大
特別就労対策事業の利用者たちが東京都に事業休止の見直しを求めた話し合いは、「五輪特別警戒」を理由に敷地の境界で行われた=都庁前で2021年8月4日午後1時4分、木許はるみ撮影
 8月4日、「事業休止は死活問題」と訴える事業の利用者ら7人が、見直しを求めて都庁を訪れた。

 応対した都職員は「オリンピックの特別警戒期間のため、要請・要望は受けられない」とし、入庁を認めなかった。このため、都職員は都庁の敷地、利用者は道路に立ち、敷地の境界を挟むという異例の形で話し合った。

 職員は、あくまで他の仕事の「補完」という事業の目的を強調し、「この事業だけで生計を立てるのは難しい」と伝えた。利用者らは、暑さを避ける方法として、屋内や夕方などの仕事に変更するよう提案したが、職員は「オリンピック特別警戒中ですから、要望されても困るので、今回はお話を頂戴するだけです」とにべもなかった。

 この話し合いでは、熱中症対策とは別の“事情”も明かされた。事業の仕事内容は就業推進課が庁内の各局からニーズを聞き取って決めているが「都庁の各局から要望が出てこない」というのだ。

 職員は「(事業の対象となる)港湾埋め立て地の都有地が大幅に減少している。道路ならポイ捨てをする人が減っている。都道も排ガス規制で汚れにくくなった。むしろ(仕事を)減らすような圧力を受けている」と打ち明けた。同課によると、特に港湾埋め立て地の減少が顕著で、民間への売却や区への移譲が進んでいる。この職員は「仕事が保てるように応援してほしい」と利用者に理解を求めた。

 さらに別の要因もある。東京オリンピック・パラリンピックの開催だ。

 東京湾管理事務所によると、今年はオリパラのために港湾埋め立て地の一部を大会組織委員会などに貸し出している。貸した土地は都の管轄を外れるので、事業の対象にならないのだ。大会のため更地から駐車場に舗装された場所もある。返却後、それまで更地で行っていた除草の仕事が減る可能性もあるという。

 この日都庁を訪れた利用者の60代男性は「港湾埋め立て地にオリンピックの施設ができるから、むしろ仕事が増えるんじゃないかって、去年は現場で話していたんですよ。それなのに(清掃を)高い料金で業者に頼んでしまって。こっちに割り当ててもらえないのか」と首をかしげた。

 前出の男性(73)も「オリンピックが関係していると思ってしまいますよね」と不信感を募らせる。「(大会関係者に)僕たち、貧困者の姿を見せたくないのかなと。底辺の人間はこういう時はいつも切り捨てられますよ」

「命支える仕事」都は実態見つめて
五輪マークのモニュメント=東京都港区で2020年12月1日午前9時17分、宮間俊樹撮影拡大
五輪マークのモニュメント=東京都港区で2020年12月1日午前9時17分、宮間俊樹撮影
 都は、生活保護や就業支援などの福祉を利用するよう、相談を呼びかけるが、ホームレスの中には利用に抵抗があり、事業を頼りに生きている人もいるという現状がある。

 「『食べられなくなったら生活保護に』と役所は言うけど、そういうわけにはいかないよ」。山谷地区のホームレスの男性(68)は話す。生活保護を受給した経験があり、「12万〜13万円が支給されたが、施設に入れば手元に残るのは2万円くらいだった」と振り返る。生活保護は受給中に追加収入があれば、その分を返金しなければならない。「前職の失業保険がもらえたけど、それは役所に返すことになって。一生懸命働いてもらえるはずの失業保険を返してまで、生活保護を受けるなんて。納得できずにやめたよ」

 男性は事業の収入で生活しており「熱中症も危険だけど、収入が途絶えるのも生死に関わること」という。夏場は銭湯代を節約するわけにいかず、炊き出しの食事も長持ちしない。8月の暑さ指数は午前中に限れば「危険」を超えない日もあり、「去年みたいに今年も午前中だけの作業はできたはず」と訴える。

 男性は「事業は高齢者が多いから熱中症対策は大事だけど、民間は暑くても仕事は休まない。どうして民間はできて都はできないのか」と憤る。今後、有効な解決策がないまま「8月の事業休止が慣例となっていかないかが心配だ」と不安を抱える。

東京都立代々木公園脇の歩道で炊き出しに並ぶ人々(写真はイメージ)=東京都渋谷区で2021年7月27日午後5時36分、黒川晋史撮影拡大
東京都立代々木公園脇の歩道で炊き出しに並ぶ人々(写真はイメージ)=東京都渋谷区で2021年7月27日午後5時36分、黒川晋史撮影
 NPO法人「自立生活サポートセンター・もやい」(東京都新宿区)理事長の大西連さんは「都が日雇い仕事の補完として事業を実施していても、事業の現金収入だけで生活し、命を支える最後の仕事となる人がいるのが実態です。都はそれを自覚する必要があります」と指摘。「いろいろな状況で福祉を受けずに、今の暮らしをしている人たちがいます。そうでなければ、全国でこれほど生活困窮者はいません。福祉があるから、と簡単に言える状況ではありません」と説明する。

 「熱中症や感染症の予防が大事だというのは当然ですが、例えば、屋内での作業を用意するなど、代替の手段を工夫してほしいです。屋内の作業があってもいいのです。真冬や雨の日も対応ができます。今年は新型コロナウイルスのワクチン接種の会場など、公共的な仕事は増えているはず。仕事を民間の派遣会社などに委託するだけでなく、福祉的就労、雇用対策と柔軟に組み合わせて仕事を提供してほしいです」と話した。

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