運営費の一般財源化以降、入所者が減少する県内の養護老人ホーム。施設側は「措置控え」の実例を挙げ「需要はあるのに、弱い立場の人たちの最後の受け皿がなくなりかねない」と強い危機感を示す。それに対し市町村からは「対象者はいない」「予算の範囲内でしか措置できない」と説明しており、地域の高齢者の実態把握と予算配分の課題が浮き彫りとなっている。
「措置費を捻出する予算が正直、ない」。自治体担当者からの一言に県内の養護老人ホームの相談員はやりきれなさを感じた。ある女性の措置入所が認められなかったのだ。
女性は精神科病院に入院している６０代。病状は安定しており退院は可能だが、介護者がいないなどの理由で自宅で暮らすことが難しく「社会的入院」を続けていた。病院のケースワーカーは地域生活に移行するため自治体に相談したところ、養護老人ホームへの措置入所を勧められた。
施設を見学すると本人も気に入り、入所に向けた手続きを取ろうとしていた矢先、自治体担当者からケースワーカーに「措置入所はできない」と連絡。相談員が自治体に問い合わせると、財政上の理由だった。女性は現在も病院に入院しているという。
養護老人ホームへの入所ではなく、生活保護を受給させる例も増えている。県内の市町村担当者は「有料老人ホームへの入所、生活保護を維持しての民間アパートでの居住確保が可能ならそれらを検討し、確保できない場合、養護老人ホームへの入所が妥当と考えている」と話す。
生活保護も自治体の負担はあるものの、２分の１は国が負担し、残りの２分の１を県と市町村で負担するため、全額市町村が賄う養護老人ホームへの措置より、負担は少なくて済む。
全国老人福祉施設協議会養護老人ホーム運営委員会の阿比留志郎委員長も「全国的に養護老人ホームへの措置ではなく、国の負担がある生活保護を受給させ、無認可施設に入居させる傾向だ。低所得の高齢者を狙う『貧困ビジネス』の温床となっている部分もある。本来ならセーフティーネットとしての養護老人ホームを活用すべきだ」と主張する。（玉城江梨子）
（琉球新報）
2011年6月8日
「措置費を捻出する予算が正直、ない」。自治体担当者からの一言に県内の養護老人ホームの相談員はやりきれなさを感じた。ある女性の措置入所が認められなかったのだ。
女性は精神科病院に入院している６０代。病状は安定しており退院は可能だが、介護者がいないなどの理由で自宅で暮らすことが難しく「社会的入院」を続けていた。病院のケースワーカーは地域生活に移行するため自治体に相談したところ、養護老人ホームへの措置入所を勧められた。
施設を見学すると本人も気に入り、入所に向けた手続きを取ろうとしていた矢先、自治体担当者からケースワーカーに「措置入所はできない」と連絡。相談員が自治体に問い合わせると、財政上の理由だった。女性は現在も病院に入院しているという。
養護老人ホームへの入所ではなく、生活保護を受給させる例も増えている。県内の市町村担当者は「有料老人ホームへの入所、生活保護を維持しての民間アパートでの居住確保が可能ならそれらを検討し、確保できない場合、養護老人ホームへの入所が妥当と考えている」と話す。
生活保護も自治体の負担はあるものの、２分の１は国が負担し、残りの２分の１を県と市町村で負担するため、全額市町村が賄う養護老人ホームへの措置より、負担は少なくて済む。
全国老人福祉施設協議会養護老人ホーム運営委員会の阿比留志郎委員長も「全国的に養護老人ホームへの措置ではなく、国の負担がある生活保護を受給させ、無認可施設に入居させる傾向だ。低所得の高齢者を狙う『貧困ビジネス』の温床となっている部分もある。本来ならセーフティーネットとしての養護老人ホームを活用すべきだ」と主張する。（玉城江梨子）
（琉球新報）
2011年6月8日
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