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生活保護者の集いコミュの福祉関係者にも知られていない生活困窮者自立支援制度の存在意義

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https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/72556

制度の発足から7年を迎えた生活困窮者自立支援制度。自治体によって活用に濃淡はあるが、生活保護と異なり、支援の対象を限定しない同制度が、じわじわと増える困窮者の下支えになっているのは間違いない。

 それでも、7年も経てば制度にまつわる様々な課題が表に出る。そのため、厚生労働省は今年6月から、社会保障審議会(生活困窮者自立支援及び生活保護部会)で見直しに向けた議論を進めている。

 日本全体が低成長に陥る中で、生活困窮者を社会全体でどのように支えればいいのか。そして、生活困窮者自立支援制度はどうあるべきなのか──。社会保障審議会の委員を務める生水裕美氏(元滋賀県野洲市市民部次長、一般社団法人いのち支える自殺対策推進センター地域連携推進部 地域支援室長)と、神奈川県座間市生活援護課で独自の支援体制を構築した林星一氏(現福祉部参事兼福祉事務所長兼福祉長寿課長)が激論を交わした。(聞き手:篠原匡、編集者、ジャーナリスト)

審議会委員が衝撃を受けた女性モデルの一言
──現在、社会保障審議会で生活困窮者自立支援制度と生活保護制度の見直しに向けた議論が進んでおりますが、現状、どのような論点が浮上しているのでしょうか。

生水裕美氏(以下、生水):その内容については後ほどお話ししますが、その前に今日、どうしても言いたいことがあって。

──ぜひお願いします。

生水:8月24日に開催された会合で、児童養護施設などを出た若者の居場所等の活動に取り組まれているモデルの田中れいかさんが参考人として登壇されました。田中さんご自身、社会的養護の下で育ったという背景をお持ちです。

 その時に、田中さんがこう言いはったんです。「(生活困窮者自立支援制度については)全く知らなかった。こんなものがあったんだ。日本はすごいと思ったぐらいのテンションだった」と。

 この言葉に、委員のみんなが衝撃を受けてね。

 生活困窮者自立支援制度は平成27(2015)年4月に始まり、既に7年が経過しています。それなのに、実際に支援に関わる方に制度の存在が届いていなかった。これは、本当に衝撃的でした。

 その時に、同じ委員を務める認定NPO法人抱樸(ほうぼく)の奥田知志理事長が、「困窮制度は山の上のそば屋ではないか」と言われたんですね。いくらおいしいそばを用意しても、その存在が知られていない。いくらおいしくても、遠ければ食べてもらえないんだ、と。


 制度改正について議論しているのに、そもそも制度が知られていないという衝撃。制度自体をどうしていくかという論点はもちろん重要ですが、「全く知られていない」という課題をどうしていくのかというのはとても大事な論点です。


社会保障審議会の委員を務める生水(しょうず)裕美氏
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神奈川県座間市生活援護課で独自の支援体制を構築した林星一氏

制度の発足から7年を迎えた生活困窮者自立支援制度。自治体によって活用に濃淡はあるが、生活保護と異なり、支援の対象を限定しない同制度が、じわじわと増える困窮者の下支えになっているのは間違いない。

 それでも、7年も経てば制度にまつわる様々な課題が表に出る。そのため、厚生労働省は今年6月から、社会保障審議会(生活困窮者自立支援及び生活保護部会)で見直しに向けた議論を進めている。

 日本全体が低成長に陥る中で、生活困窮者を社会全体でどのように支えればいいのか。そして、生活困窮者自立支援制度はどうあるべきなのか──。社会保障審議会の委員を務める生水裕美氏(元滋賀県野洲市市民部次長、一般社団法人いのち支える自殺対策推進センター地域連携推進部 地域支援室長)と、神奈川県座間市生活援護課で独自の支援体制を構築した林星一氏(現福祉部参事兼福祉事務所長兼福祉長寿課長)が激論を交わした。(聞き手:篠原匡、編集者、ジャーナリスト)

審議会委員が衝撃を受けた女性モデルの一言
──現在、社会保障審議会で生活困窮者自立支援制度と生活保護制度の見直しに向けた議論が進んでおりますが、現状、どのような論点が浮上しているのでしょうか。

生水裕美氏(以下、生水):その内容については後ほどお話ししますが、その前に今日、どうしても言いたいことがあって。

──ぜひお願いします。

生水:8月24日に開催された会合で、児童養護施設などを出た若者の居場所等の活動に取り組まれているモデルの田中れいかさんが参考人として登壇されました。田中さんご自身、社会的養護の下で育ったという背景をお持ちです。

 その時に、田中さんがこう言いはったんです。「(生活困窮者自立支援制度については)全く知らなかった。こんなものがあったんだ。日本はすごいと思ったぐらいのテンションだった」と。

 この言葉に、委員のみんなが衝撃を受けてね。

 生活困窮者自立支援制度は平成27(2015)年4月に始まり、既に7年が経過しています。それなのに、実際に支援に関わる方に制度の存在が届いていなかった。これは、本当に衝撃的でした。

 その時に、同じ委員を務める認定NPO法人抱樸(ほうぼく)の奥田知志理事長が、「困窮制度は山の上のそば屋ではないか」と言われたんですね。いくらおいしいそばを用意しても、その存在が知られていない。いくらおいしくても、遠ければ食べてもらえないんだ、と。


 制度改正について議論しているのに、そもそも制度が知られていないという衝撃。制度自体をどうしていくかという論点はもちろん重要ですが、「全く知られていない」という課題をどうしていくのかというのはとても大事な論点です。


社会保障審議会の委員を務める生水(しょうず)裕美氏
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神奈川県座間市生活援護課で独自の支援体制を構築した林星一氏

特例貸付は残高が1兆4000億円に激増
林:熱量が小さいということはないと思います。それこそ、生水さんなど制度が始まる前から困窮制度に取り組んでいる方はたくさんいましたから。

 ただ、介護保険の時と比べれば、関心の大きさはやはり違ったと思います。介護保険の時は、新たな保険料の徴収などもありましたので、国民の一大関心事になっていました。それだけに、広範な議論も起きましたが、生活困窮者自立支援制度の場合、そこまでの大きなうねりにはなっていません。

 私自身、制度が始まった2015年4月に担当になりましたが、その前の生活保護のケースワーカー時代は、「何か遠くでやっているな」「どうも新しい制度が始まるみたいだな」という程度の認識しかありませんでしたから。

 始まりからしてそうだったので、制度の裾野をいかにして広げるか、必要としている人にいかにして知ってもらうか、という点はずっと課題だったと思います。

 本当は、実際の自治体の取り組みがとても大きかったはずですが、生まれたばかりの制度をどのように動かしていくかというところでみんな精一杯で、制度を認知させるために自治体が何をすべきかという議論は小さかったかもしれません。


 今回の社会保障審議会における検討は、前回の法改正の際に、附則として改正法施行後5年を目途に検討を加え、その結果に基づいて所要措置を講ずるものとするとされていることが根拠となっています。その間にはコロナ禍もあり、前回改正時とは大きく状況が異なっていると思います。

生水:その話で言うと、今回のコロナ禍が認知の一つの契機になったという側面はあります。

 例えば、離職などによって経済的に困窮し、住居を喪失する、喪失する恐れがある人に一定期間、家賃相当額を支援する住居確保給付金という制度が生活困窮者自立支援法にあります。

 この住居確保給付金、コロナ前は本当に惨憺たる状況で、野洲市でも年間4件というようなレベルでした。それが、コロナが始まった令和2(2020)年度には59件に跳ね上がったんです。全国レベルでは、コロナ禍の前と比較して34倍増というすさまじい数の利用申請がありました。

 生活福祉資金の特例貸付もそうです。コロナ禍によって、貸付残高は1兆4000億円に達しました。

 生活困窮者支援制度や住居確保給付金は一般的な存在ではありませんでしたが、毎日テレビなどで大臣が言及し、相談者が窓口に押し寄せることで、制度が広く知れ渡っていきました。これは、コロナ禍が制度を広く知らしめたところかなと思うんです。

──制度がなければ、どうなっていたのかという話ですよね。

「コロナ禍で、あってよかった困窮法」
生水:ほんまにその通りです。誰も断らない相談体制、誰をも受け止める相談の窓口である生活困窮者自立支援制度は、コロナ禍において最も役に立った制度だと思います。

「あってよかった困窮法」と言っているんだけど、これがなければ、役所の中で「ウチではありません」「あちらに行ってください」ということが起きていただろうな、と。

 だから、どう広めていくかという話ですが、困っている人にストレートに伝わらなくても、その方のまわりにいる人たちに、困っている人がいればつないでくださいね、相談を促してくださいね、とアピールしていくことが必要だと思います。

 高齢者であれば地域包括支援センター、その他にも民生委員さん、ヘルパーさん、地域の自治会長さん、子どもであれば小学校のスクールソーシャルワーカーといった方々です。

 これは、自治体の単一の課にはできないことなので、庁内連携を活用して、機能的に動かなければだめなのですが、この庁内連携がなかなか進まないと聞いています。


 私は前回の審議会で、自治体の庁内連携には情報共有が必要であると訴えました。結果、平成30(2018)年度改正で、支援会議の設置にもつながりました。

 ただ、支援会議を設置する自治体は4割程度にとどまっています。関係機関の情報共有が庁内連携の一つの肝なのに、「必要ない」と回答している自治体があるのにびっくりしました。

 前回の審議会でも「どういうことやねん」と発言したんだけども、なかなかね。

林:制度を知ってもらうという点では、やはり近いところから始めるしかないですよね。

 例えば、自治体の中で知ってもらって、次に社会福祉協議会のような関係機関で知ってもらって、さらに関係機関がつながっている地域の方々に知ってもらう。そうやって泥臭く、徐々に広げていくしかないと思います。

 この間、地域の老人クラブの会合に行った時に、老人クラブの方が篠原さんの本を持っているんですよ。サインくださいって。「いや、著者じゃありませんから」というやりとりをしたんですけどね(笑)。

 ただ、それがきっかけで、今度老人クラブの連合会でお話をする機会をいただいたんです。老人クラブに参加されている高齢者は地域でいろいろ活動されている方も多いので、そういった方々を通して地域に制度が認知されていく。

 こういうつながりを、自治体の職員が泥臭く広げていくしかない。

特例貸付の償還で始まる新たな課題
生水:役所は、たくさんのチャンネルを持っているんです。教育もあれば、医療や商工観光、福祉もある。その先には、農業団体や自治連合会、PTAのような組織もあります。

 そういう役所の総合力をフル活用すれば、地域の様々な人とつながることができると思うんです。そのためには庁内連携。これを機能的に進めることが、困窮制度を知ってもらう上でとても重要だと感じています。

──実際に困窮者とつながったとして、支援していくためにも庁内連携は不可欠です。

生水:来年1月から、特例貸付の償還が始まります。その時に、償還免除を受けられない人をどう支援していくのかという問題が浮上します。また、償還を免除された方も、低所得だからこそ免除されているのであって、免除で終わりではなく、その方の生活再建も進めていく必要があります。

 その際には、社協との連携だけではなく、いろいろな滞納もあるだろうから、税金や水道、市営住宅など役所の債権に関わる部署とも協力して支援していかなければなりません。

──まさに野洲市がやってきたことですね。

生水:そうです。これは難しいことではなくて、職員の意識改革さえできれば、「それがいいことなんだ」と思えば、組織は動くんです。予算を立ててシステムを導入するというような話ではなく、プラスアルファのお節介をしましょう、という話なので。

※野洲市は生活困窮者支援を手がける市民生活相談課を軸に、市営住宅を担当する住宅課、上下水道料金に関わる上下水道課、給食費を管理する学校教育課、県市民税や固定資産税などを扱う納税推進課など、税金や公共料金など困窮者の「支払い」に関連する部署が連携して困窮者を支援する仕組みがある。納付相談を通して困窮者を発見した際に、市民生活相談課につないで一体となって支援する「多重債務者包括的支援プロジェクト」だ。この仕組みをベースとして「野洲市債権管理条例」も設置されている。

 少し前に、ひきこもりの方から相談があって。就職に失敗してひきこもりになってしまったけれども、社会に出て行かなければと悩まれて。そこでSNSの広告で見た副業サイトに申し込んだものの、やれ情報商材だ、サポート費が必要だとどんどんお金を請求されて。

 この相談について、契約トラブルは解決できても、その方のひきこもり状態をどのように支援するのかという点については消費生活センターでは対処できません。


 だからこそ、もう少し踏み込んで、消費者被害の背景や滞納の原因に借金はないのかといったことを、役所のいろいろな部署と連携しながら対応していく必要がある。

 平成11(1999)年に、消費生活相談の相談員として野洲市に入った後、役所の内外に仲間を増やし広げていくということを繰り返してきました。一人では無力だけど、みなさんに助けてもらえるという安心感が私の支えになっています。

──野洲市や座間市は生活困窮者の自立支援を積極的に進めていますが、全国の自治体で見れば、取り組みには濃淡があります。これは、自分たちの地域に困窮状態の人がいるということを認知していないのか、それとも理解しているけれどもリソースが足りていないのか、どう考えればいいでしょうか。

生活困窮者自立支援制度の専従職員が必要な理由
生水:公務員の業務はものすごく多いんです。国から下りてくる業務は、コロナのワクチン接種や特別定額給付金、マイナンバーなど様々なものがあります。一方で、職員はどんどん減っていて、一人当たりの業務は増える。その中で、業務外のことをする余裕はなかなかありません。

 もちろん、自治体のみなさんは自分たちの地域の状況を理解していて、何かしらの手を打ちたいと思っているでしょう。ただ、もう業務がパンパンなのでね。決して職員がサボっているとか怠慢だということではなく、みんなギリギリなんです。

 そう考えると、自治体の正規職員を増やして体制を整備していかないと、今の状況は変わらないのかもしれませんね。

林:私は座間市役所に入る前は民間企業に勤めていましたから実感していますが、役所は一人ひとりの役割が多いんですよ。いろいろな事業を持っている。そのため、一人の職員が一つのことを深く考える時間を確保することが難しい。

 困窮制度の話に立ち返ると、生水さんが言われたような庁内連携や地域の実情に合った困窮制度の組み立てを構想するには、一人の職員がいろいろな業務を兼務している状況では厳しいと思います。やはり、制度の設計やマネジメントを考える専従職員がいないと。

 私は専従職員として経験しましたが、福祉関連の部局だけで考えても何も進みません。居住支援であれば住宅関連の部局、成年後見人などが絡んでくれば、高齢者や障害者の部局と連携を取る必要があります。


 また、「中間的就労」と言われる認定就労訓練制度を立ち上げるために、そういった取り組みを進める団体に対して、市役所として優先発注をしましょうという話もありますので、役所内の調整が必要になります。

 さらに、生活困窮者自立支援制度には、「生活保護受給者等就労自立促進事業」というものがあります。これはハローワークとの連携で、この事業を活用すれば、相談者に就労支援ナビゲーターが就くというメリットがあります。その際に、ハローワークに支援を依頼するために、市役所の担当者が連絡文書を作成するといった作業もあります。

 今挙げただけでも、これだけあるわけですよね。ところが、アンケート調査などを見ると、全国の自治体の半分は専従職員を置いていない。

生水:生活困窮者自立支援制度は、家計改善支援や就労準備支援、子どもの学習・生活支援、一時生活支援など様々な事業があります。そのため、担当者が自分たちの地域の実情を鑑みて、どの事業とどの事業を組み合わせるのか、既に支援している地域のみなさんにどう仲間になってもらうかなど、政策を立案し、全体をコーディネートする必要があります。国の制度を活用し、自分たちの地域に合う制度をつくるんですね。

 これは自由に構想できるので、とても面白い仕事です。人材育成という視点をもって職員を配置すれば、職員も大きく育つでしょう。ただ、今のように職員の数が減っている中、兼務でできるかと言われれば、かなり難しいと思います。そこに専念できないので。

 私も審議会の中で、何度か専従の職員配置が必要だ、政策立案から運用までコーディネートできる職員が必要だという話は何度かしていますが、専従職員の配置を法定化するまでには至っていません。

給付ではなく相談支援に光を当てた生活困窮者自立支援制度の意味
生水:併せて、会計年度任用職員の問題もあります。困窮者支援の現場だけでなく、市役所全体がそうですが、正規職員が減る中で、会計年度任用職員、いわゆる非常勤職員が増えています。

 会計年度任用職員は1年更新の5年契約という雇用形態なので、身分が不安定です。しかも大半が女性。様々な相談に乗っている最前線の職員の雇用が不安定だという状況はどうにかできないかと思います。これは、委託を受けている外部の組織も同じではないでしょうか。

 私は待遇改善には正規職員にすべきだという考えですが、国の制度はそうではないので難しいですね。

──大きな流れは、「もっと効率化すべし」という方向性です。

生水:ここはみなさんに考えてほしいのですが、公務員不要、経費削減が本当に国民のみなさんのためになるのかということです。

 公務員の数が減ることで行政サービスの質が低下するということもありますし、正規職員の代わりに非正規の会計年度任用職員が増えることで、様々な現場の相談員が不安定労働になるという問題もあります。ここの待遇改善は、自治体における大きな課題だと感じています。審議会でも、生活保護ケースワーカーの非正規問題が挙がっていました。

林:生活困窮者自立支援制度で重要な点は、社会保障の中で相談支援というものを一つの柱として位置付けたところにあります。今まで相談というと、何かの給付に紐づいたおまけのような存在でした。要は、制度や給付を利用するために相談するという形が中心だった。

 その中で、この制度が新しかったのは、相談する、相談を受け止めるということ自体が一つの行政サービスになったことです。機能不全を起こしている社会保障をつなぐ一つの柱にするという文脈で、相談支援に光が当たったんです。


 その担い手である現場の相談員を大切にしなければならないという指摘は、その通りだと思います。

──現在、行われている社会保障審議会の議論はどういう方向にまとまっていくのでしょうか。(続く)

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