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生活保護者の集いコミュの「正社員で働きたい」発達障害27歳男性が夢見る事

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https://toyokeizai.net/articles/-/596073

取材中、「すべてを諦めています」とも言ったトシキさん。それでも、後になって「正社員になって自分の障害をちゃんと理解してくれる職場で働きたい。そして、人間関係に恵まれて楽しく毎日仕事がしたい」と自身の希望をつづったメールを送ってくれた(筆者撮影)
現代の日本は、非正規雇用の拡大により、所得格差が急速に広がっている。そこにあるのは、いったん貧困のワナに陥ると抜け出すことが困難な「貧困強制社会」である。本連載では「ボクらの貧困」、つまり男性の貧困の個別ケースにフォーカスしてリポートしていく。
今回紹介するのは「パワハラでこれまでに15社以上転職を繰り返してきました」と編集部にメールをくれた27歳の男性だ。
「むかつく」「消えればいいのに」
ブラック企業からの洗礼やパワハラ地獄を味わってきた――。発達障害のひとつ自閉症スペクトラム(ASD)でうつ病も患うトシキさん(仮名、27歳)はこう訴える。ラーメン店や市役所の臨時職員、ホームセンターでの接客、コンビニアルバイトなど、これまで15回以上、転職を重ねてきたという。


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全国チェーンのラーメン店では、体育会系の店長から「君がいるせいでみんな迷惑してんだよ!」「代わりはいくらでもいるんだからな」と突っかかられた。ある市役所では先輩職員から「あなたと一緒にいると胃がきりきりする」「むかつく」「消えればいいのに」と暴言を浴びせられたうえ、上司からは長時間にわたって背後で業務を監視された。

正社員として就職した会社では、先輩社員に質問しても「そんなこと自分で調べれば?」といじめられたり、机をたたきながら「余計なことをしないで!」と怒鳴られたりした。障害者枠で採用された自治体では、上司から「われわれには職務専念義務があるんだ」「障害があるとか関係ないよ!」とパワハラを受けたという。

1日で辞めたこともあれば、うつ状態になり、休職の末に退職したこともある。解雇も経験した。5年ほど前、精神科を受診し、発達障害と診断された。

話を聞き始めてから3時間近くが経とうとする中、私にはひとつの違和感があった。それはトシキさんの話に、いじめやパワハラの前段にあるはずの仕事上のミスやトラブルに関するエピソードがほとんどないことだった。もちろん初対面で不快な態度を取ってくる人や、理屈抜きで相性の悪い人はいる。ただ多くの職場で突然自分ばかりがパワハラやいじめを受け続けるという可能性は低いのではないか。

私がそう指摘すると、トシキさんは一転して口が重くなった。それでも、私が重ねて促すと、次のような経験を話してくれた。

離席は1時間に1回、15〜20分ほど
ラーメン店では、同僚たちが注文の聞き取りやレジ打ちをそつなくこなす中、自分だけミスが多かった。自治体では、刷り上がったパンフレットの誤植部分に黒線を引くように指示された際、誤った部分を黒塗りにして100部ほど無駄にしてしまう。このときのことをトシキさんは「口頭で指示されたのですが、ここだったかな?と迷いつつもそのまま作業してしまった」と振り返る。


小学生のときからいじめられ、社会人になってからはパワハラ地獄。「死んだほうがいいのかなと思い続けてきた」と訴えるトシキさん(筆者撮影)
障害者枠で働いた自治体でのトラブルのきっかけは、トシキさんが服用していた薬剤の関係で頻繁にトイレに行かなければならないことだった。離席は1時間に1回、15〜20分ほどだったという。たびたび席を外すトシキさんに向かって上司は「1時間に20分休憩を取っていたら、3時間で1時間になるんだぞ!」と怒る。これに対してトシキさんは「トイレの回数が多いことは事前に伝えています。生理現象なのに、回数や時間まで監視するのがパワハラではないでしょうか」と反論する。

トシキさんは自身のミスについて話すとき、不本意そうにみえた。私が「疲れましたか?」と尋ねると、トシキさんは強い口調でこう訴えた。

「責められるのは嫌いなんです。ミスは申し訳ないと思っていますが、障害があるんだから仕方ないじゃいないですか。好きでやっているわけじゃありません」

トシキさんの言うことはおおむねもっともだと思う。それにトシキさんが渡り歩いてきた中には明らかに悪質で労働環境に問題のある職場もあった。

ラーメン店では、約160席ある店舗をわずか4人のアルバイトで調理から皿洗い、接客までを切り盛りしなければならなかった。事務職として採用されたのに、工場の製造ラインに回されたり、日勤の正社員として入社したはずなのに、実際には夜勤専門の契約社員だったりしたこともある。「トイレ掃除はバイトにさせろ」など非正規労働者に対する差別的な発言も受けたという。

一方でミスが多ければ、周囲の同僚や上司の負担は増えるし、時には金銭的な損害が発生することもあるのではないか。もし同僚がトイレに行くたびに20分も離席すれば、私も戸惑うと思う。

「共生」のために必要なこと
本連載には発達障害で貧困状態にあるという人からの取材依頼は多い。多くはパワハラなどに遭い、仕事が続かないというものだ。そうした人たちに話を聞くとき、私は必ずパワハラのきっかけになったと思われるミスやトラブルについて尋ねる。ただそれはパワハラの理由を知るためではない。発達障害当事者の発想や思考回路を、私自身が知りたいし、広く知ってもらいたいと考えるからだ。

その点、トシキさんのトイレをめぐるトラブルは興味深かった。トシキさんの主張は間違っていない。一方で私たち定型発達(発達障害のない状態)の人間の多くは「まさかここまで頻繁にトイレに行くとは」と驚くだろう。共生とは、こうした日々生まれる溝を、両者が歩み寄ることで埋めていく作業の積み重ねなのではないか。

少し話はずれるが、私はマイノリティーに対する差別や学校や職場でのいじめが許される理由などないと思っている。差別される側やいじめられる側にも原因があるというロジックは、加害者側が自らの行為を正当化する際の常套句だ。被害者側が責められる理由はないし、トシキさんが受けたパワハラも発言した側が100%悪い。

ただ働くうえでのケアレスミスをなくす努力は、ある程度必要だろう。不安定な非正規労働者や悪質企業がはびこる中、安易に「働かざる者食うべからず」という価値観を持ち出す気はない。しかし、働いて賃金を得る以上、それに見合った結果を求められるのは仕方がない面もある。

これまでの取材を振り返ると、少なくない人が発達障害と診断されたときに受けた知能検査の結果などを持参してくれた。彼らは職場でもそうしたデータを基に、周囲に自身の得手不得手を説明することで理解を得たり、ミスやトラブルを防ぐための試行錯誤を繰り返したりしていた。

一方でトシキさんは精神科でどのような面談や検査を受けたか「記憶がない」と言う。せっかく診断を受けたなら、それを利用してより客観的、具体的な説明をしてくれると、上司や同僚も障害について配慮をしやすいのではないか。

そうしたことを、私はトシキさん伝えた。トシキさんが共感してくれたかはわからない。

社会人になってからも続く「いじめ」
トシキさんは地方都市の出身。自らの家庭を「生まれたときから機能不全家族」と振り返る。同居する父方の祖母と母親はいさかいが絶えず、父親はギャンブルで借金をつくった。母親のストレスは子どもたちに向かい、ささいなことで殴られたり、首根っこをつかまれて浴槽に沈められたりした。兄は学校でのいじめをきっかけにひきこもり状態になり、親やトシキさんに暴力をふるい、たびたび警察沙汰になったという。

トシキさん自身も学校でいじめに遭った。肌の白さを「ゾンビみたい」とからかわれたり、唯一仲のよかった同級生と一緒にいると「お前らホモだろ」と遠巻きにされたりした。筆箱の中身をゴミ箱に捨てられ、黒板に「きもい」「地獄に落ちろ」と書かれ、過呼吸になって病院に搬送されたこともあったという。

いじめは小学校から専門学校を卒業するまで途絶えることはなく、それは社会人になってからも続いている。「なんで生きているのかわからない。消えてなくなりたい。ずっとそう思ってきました」。

トシキさんはトイレの問題でトラブルとなった自治体を半年余り休職した後に退職。今は別の公共機関の障害者枠で働いている。今年に入ってから毎月約5万円の障害年金を受け始めたので、なんとか1人暮らしができているものの、契約は1年更新の非正規採用。いつ雇い止めになるかわからず、依然として将来像は描けない。

取材で話を聞く間、私たちの間に流れたのは優しい時間ばかりではなかった。特にトシキさんのミスや振る舞いが周囲に与えた影響について尋ねると「私が受けてきた痛みは、私にしかわからない」とかわされてしまった。

一方でトシキさんは「人間、独りでは生きていけない。寂しいんですよ。私だって理解されたい」とも言っていた。おそらく本音はこちらのほうなのだと思う。

発達障害と診断される人が増えている背景には、不寛容化する社会がある。「少し変わった人」を「わがまま」「使えない」という理由で切り捨てることで、はたして社会は豊かになれるのか。それは定型発達の人をも委縮させるだけではないのか。行きすぎた効率化というふるいにかけられて残るのは、本当に「優秀な人」なのか。すでに答えは明らかになりつつある。

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