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生活保護者の集いコミュの元担当者は語る 生活保護行政はなぜ、叩かれるのか

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https://news.yahoo.co.jp/articles/85f64ff680ba06ec3ec2a34d486e73b820e33c6d

 前回「人権よりも自治体の縄張りが優先される生活保護制度」は、生活保護の現場で自治体の都合が優先され、人権が軽視される現実をお伝えした。問題はなぜ起きるのか、どうすれば改善できるのかを考えてみたい。



社会のルールを守らない人を救う必要はあるのか
 なぜ、自治体は住居喪失者に差別的な対応を取るのか。その本音に迫るのは簡単なことではない。

 自治体は、公式には差別的な対応を取っていることを認めない。それが社会的批判を招き、ひいては自分たちの身を危険にさらすことを知っているからである。関係者も口が重いので、メディアや有識者会議でその実態が伝えられることも少ない。研究の蓄積もない。こうしたなかで、確定的なことをいうのは難しい。

 だから、ここから話すのは、あくまで筆者の個人的体験から導き出された見解である。約20年の間、行政職員として生活保護の実態をみてきた。そのなかで直接的に、あるいは婉曲的に「社会のルールを守らない人を救う必要はあるのか」という問いを投げかけられてきた。偏見に基づく差別だと批判されることを承知で、その内容をお伝えしていきたい。

 住居喪失者は「不正受給予備軍」としての特性をもっている。生活保護費を渡した途端にいなくなってしまう、家賃として渡した保護費を他に浪費して家賃を滞納する、日雇い就労で賃金を得ても申告をしない、別の自治体でも生活保護を利用して二重取りをする。都市部で生活保護の担当の経験があれば1度や2度はこうした事例を担当したことがあるし、もっと多くの経験をした者もいるだろう。「信じたのに裏切られた」という経験が続けば、担当者は利用者を疑いの目で見るようになる。

 足立区も、支援団体から最初の抗議を受けた時点では、対応の正当性を主張していた。東京新聞の取材には、「ホテルとは別の場所で主に生活しているのではないかと判断した。別の自治体で生活したなら、生活保護を重複して利用することが懸念される」と説明している(東京新聞、2020年10月28日)。

 さらに、住居喪失者には、明確に不正とは言えなくても、社会規範からみれば眉をひそめる行為も目立つ。パチンコや酒などに依存して生活費を浪費する。まだ元気なのにあれこれと理由をつけて働かない。体の不調を訴えるわりに病院は受診せずに医師の指導に従わない。

 仮に、アパートに移った後にも問題は続く。物を捨てられずに自宅をゴミ屋敷にする。ごみ捨てのルールを守らず、深夜に大音量で音楽を流して近所からクレームが入る。訪問や面接の約束をしても、連絡もせずにすっぽかす。長時間のクレームで職員を拘束する。威圧的な言動や暴言が日常的にあり、時には暴力を伴う。居心地が悪くなれば、すべてを放り投げて姿を消す。

 住居喪失者の全員にこうした特性がある訳ではない。しかし、自己管理能力に欠け、社会のルールを守らない人の割合は、一般と比べれば明らかに高い。困った人たちへの対応に、担当者は日々心を削られている。

「とにかく役所が何とかしろ」という社会
 担当者の苦労はそれだけではない。「困った人たち」は行く先々で迷惑をかけ、関係者の神経を逆なでする。家賃を滞納して不動産会社や大家を困らせる。騒音や悪臭で近所の人の生活を乱す。病院の窓口で大声を出して窓口職員を泣かせる。収入をごまかして生活保護を利用していることを友人や知人に自慢げに吹聴する。

 迷惑をこうむった関係者から「生活保護だから」という理由で、役所にクレームが寄せられることは決して珍しいことではない。家賃滞納や騒音や悪臭、窓口でのハラスメント行為などは、本来、本人に対して改善を求めるべきものである。しかし、関係者は口を揃えていう。「本人に言っても駄目だから、役所に言っているのだ」と。

 時には広報公聴部門や市長への手紙といった形で上層部に声が届けられ、「しっかり対応しろ」というお達しが来ることもある。このようなケースで適切に対応できるかどうかは、役所内での評価に直結する。「何とかしろ」というプレッシャーが担当者に重くのしかかることになる。

 厚生労働省や都道府県の担当者も味方になってくれるとは限らない。利用者を信じてアパートを借りるための費用を出しても、持ち逃げされれば「担当者の見立てが甘かった」と苦言を呈されることになる。

 監査でチェックされるのは「不適切な支出が行われていないか」が中心で、「必要な人をきちんと救うことができているか」という視点はほとんどない。役所内での評価という点でいえば、「なるべく保護費を出さない」という対応が最適解となる。

 住居喪失者の立場に寄り添った対応をするのは、担当者にとっては一連のリスクを引き受けることを意味する。正直に言えば、私も担当者として働いていた時は、住まいのない人の相談を受けるときは「この人は大丈夫だろうか」と心配ながら話を聞いていた。相手の話を全面的に信用することはできなかった。自己の保身の気持ちがなかったといえば、噓になる。

孤立する生活保護の担当者
 利用者からも、市民からも、役所の別部門からもクレームが寄せられ、無理な対応を要求される。こうした実態は、自治体職員に広く共有されている。収税や用地買収、産業廃棄物対応などと並んで、生活保護業務は不人気部署ランキングの常連である。

 調査研究でも、生活保護の担当者は他部署に比べてメンタルヘルスに課題を抱えている人の割合が多いことが明らかになっている(「生活保護現業員のメンタルヘルスとその関連要因」(2014年))。

 このため、異動を希望する職員は少なく、仮に異動になっても、なるべく早く他の部署に移れるよう異動願いを出すことになる。

 人事担当者も仲間から恨まれたくはない。結果として、不人気部署に配属されるのは実態を知らず文句を言わない職員、すなわち、大学を出たばかりの20代の新規採用職員ばかりとなる。

 興味がある人は、閉庁間際に役所にある生活保護の担当課を覗いてみるといい。疲れた表情をした若手職員の姿を見ることができるだろう。閉庁間際と言ったのは、日中は家庭訪問や関係機関との会議に忙殺され、自分の机で事務作業をするのも難しいからである。

 人権保障の視点から生活保護行政を批判する人は、「なぜ困っている人に寄り添った対応ができないのか」「なぜ、傷ついた人をさらに鞭打つような質問を重ねるのか」「人にはそれぞれ事情がある。その事情を踏まえて対応すべきである」という。

 一方で、不正受給を許せないと批判をする人は、「生活状況を把握できない人に保護費を渡すなんてとんでもない」「連絡をせずにいなくなったのは、本人の責任。考慮する必要などない」という。

 こうした言葉に、「よき公務員でありたい」と思う真面目な新人職員ほど傷つき、心を病むことになる。

 孤立し、追い詰められた生活保護の担当者の苛立ちや怒りは、その原因となる利用者に向かう。幸いにして、批判するに足る特性をもつ利用者には事欠かない。「無駄な税金の支出を抑えて、『本当に必要な人』にだけ保護費を渡すのがよい公務員である」と自分の仕事を定義づければ、無駄に悩む必要もない。

 こうして弱い立場にある者が、更に弱い立場の者を責める構造ができあがることになる。

「現状を変えたい」と思う人たちの応援を
 嫌われものの生活保護の職場だが、自治体によってはもう一つの機能を持たせているところがある。その機能とは、「将来有望な新人を鍛える修行場」である。

 生活保護とは人の生き死に直結する。「最後のセーフティネット」といえば聞こえはいいが、建前を外せば、人のもっとも嫌な面を毎日のように見ることになる。人権保障と不正・不適正受給の防止という矛盾する二つの政策目標の両立を迫られ、正解のない問題に対して、何とか折り合いをつけなければならない。

 こうした経験は、行政職員としてキャリアを歩んでいくうえで大きなプラスになる。注意深くみていくと、行政出身の首長や、首長を補佐する幹部職員のなかには、若いうちに生活保護業務を経験したことがある人が少なくない。そして、そのうちの何人かは、権限をもったあとに現状を変えるための具体的なアクションをしていく。

 一連の経過を丁寧にみていくと、足立区では、現場レベルで「適正な対応だった」という取材対応のあと、一転して、問題があったことを認めている。今回の事件は東京新聞が継続的に記事にしているが、他社の追随はなく、社会問題といえるほど批判の声が強かった訳ではない。外圧のないなかで、行政が方針を変えることは珍しい。

 経験上、このようなケースでは上層部のキーパーソンによる関与がある。足立区の場合は、途中で責任者が福祉事務所長から副区長に変わった。

 その後は、支援団体からの抗議文書の受け取り、当事者への謝罪、同団体との意見交換会など、一貫して副区長が区の責任者として前面に立っている。検証報告の公表までに、副区長のリーダーシップが大きく影響していることは想像に難くない。

 足立区の長谷川勝美副区長のキャリアの振り出しは、生活保護のケースワーカーである。

 「現状を変えたい。困っている人に寄り添う行政でありたい」――。そう思う行政の担当者は少なくない。それを見極め、よい取り組みであれば正当に評価し、応援をする。そうした社会であってほしいと、筆者は思う。

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