ログインしてさらにmixiを楽しもう

コメントを投稿して情報交換!
更新通知を受け取って、最新情報をゲット!

生活保護者の集いコミュの「貧困は女性のせい?」桐野夏生さんが語るジェンダー格差への怒り

  • mixiチェック
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
https://mainichi.jp/articles/20220225/k00/00m/040/168000c

 「苦しみ悩む人たちの中に入って、彼らの物語を書くしかないと思っています」。小説を生み出す自らの取り組みを、作家の桐野夏生さん(70)はそう話す。男性中心の格差社会であえぐ女性たちの怒りや痛みをすくい取り、時に衝撃的な筆致で表現してきた。最新刊でも若い女性の貧困と生殖医療に焦点を当てる。一方、昨年には日本ペンクラブ初の女性会長に就任。女性の仕事やジェンダー格差、ネット上での中傷などに関する発信にも意欲を見せている。桐野さんの“現在地”とは。詳しく聞いた。【和田浩明/デジタル報道センター】

若い貧困女性の代理母で新作
 3月4日刊行の新刊「燕(つばめ)は戻ってこない」(集英社)。まず、物語のあらすじを簡単に説明しておこう。


 主な登場人物の一人は、東京都内で暮らす地方出身の契約社員で29歳の大石理紀(リキ)だ。病院事務の月給は手取り14万円。爪に火をともす「お先真っ暗」な生活を送っている。

 そんなリキは友人に勧められ、卵子提供で収入を得ようと訪れたクリニックで、代理母になることを打診される。不妊治療が頓挫した元バレエダンサーの43歳、草桶基(くさおけ・もとい)が「自分のDNAの存在を見たい」と、一つ上の妻・悠子を説得して持ち掛けた話だ。費用を持ったのは息子の子供に遺産を残したい基の母・千味子だった。


 リキは1000万円の約束で「子宮を売る」。人工授精は成功し出産に至るが、自らの中に湧き上がった赤子への感情に突き動かされたリキが取る驚きの行動で作品はラストを迎える。

桐野夏生さんの最新刊「燕は戻ってこない」=集英社提供拡大
桐野夏生さんの最新刊「燕は戻ってこない」=集英社提供
 「無我夢中、五里霧中で書きました。これでいいのかもわからないんですよ」と言う桐野さん。今作の月刊誌連載は2019年に始まったが、女性を取り巻く環境は悪化の一途をたどっている。日本の少子化が進む中、男性政治家などから子供を産まない女性を責めるような発言も後を絶たない。一方で生殖医療の長足の進歩の陰で、卵子提供や代理出産での貧困女性の搾取が起きている。こうした現状について作品を通じて問題提起をしたかったのだという。


「生殖医療と性差別を考えて」
 「この小説をきっかけにして、子供は誰のものか、生殖医療はビジネスとして成り立つのか、技術の進歩に人の心は追いつくのか、といった問題を考えてほしいと思っています」。特に男性に読んでもらい、意見を聞きたいという。「不妊治療で悩む方も、パートナーがつらい目に遭っている方も多いと思います。(生殖医療の利用拡大で)生まれた子供の側も生まれ方や育ち方に悩む事例も増えるでしょう。大きな問題だと思うので、女性の側だけでなく、男性の側にも考えてほしいんです」

 そのうえで、代理母を利用する背景にある考え方が「男性側の遺伝子さえ残せば、女の人はどうでもいい」というものであるならば、「非常に差別的なものになる危険性もあります」と警告。同時に、「現時点で何かを結論づけるのでなく、これからも考えていきたいです」とも語った。


時間に追われる女性たちの人生
 桐野さんの作品には、今回の作品も含め、性差別的な社会の中で生き延びようともがく女性たちへの連帯感に満ちたものが少なくない。この点について考えを聞くと、こんな答えが返ってきた。「女性は圧力をかけられるような形で切迫した時間を生きている。昔は『適齢期』という言葉がありましたし、今でも結婚しろと言われる人もいるでしょう。自分はもうじき産めなくなるんじゃないかという危機感を募らせている人もいるはずです。子供を持つべきか悩みながら仕事をしている人もいる。女性の一生にはたくさんの問題があるし、難しい」。この厳しい状況への懸念が、書くことの動機の一つなのだという。

 日本はスイスのシンクタンク「世界経済フォーラム」が21年3月に発表した男女格差を測る「ジェンダーギャップ指数」の最新ランキングで、156カ国中120位にとどまるなど、主要7カ国(G7)の中でも最低だ。

 こうした現状を桐野さんはどう見るのか。「ジェンダー」という言葉が、世界的なセクハラ告発の動き「#MeToo」運動などによって一般に知られるようになったことは喜ばしいという。一方で、女性の貧困問題では本人の努力や学歴不足などに原因を求める「自己責任論」が残り、社会制度や経済的問題に関する議論が深まっていないといら立ちも感じている。入学試験で女性合格者数が意図的に抑えられていた東京医科大学の問題など、差別的扱いによって学歴面で不利になる事例にも触れながら、「大きな問題にまで踏み込んで変えていかないといけないと思っています」と話した。

ネット誹謗中傷は「ひきょう」
インタビューに答える日本ペンクラブ会長で作家の桐野夏生さん=東京都千代田区で2022年2月17日、吉田航太撮影拡大
インタビューに答える日本ペンクラブ会長で作家の桐野夏生さん=東京都千代田区で2022年2月17日、吉田航太撮影
 こうした議論の活発化には、年齢や性別、社会的立場にかかわらずフラットに対話しうるオンライン環境の整備が貢献することも期待されていた。

 しかし、実際には匿名の誹謗(ひぼう)中傷が横行し、標的になった人の中には心理的に深く打撃を受けたり、自殺したりする例もある。発言した女性が攻撃される事例も目立つ。桐野さんは「権利を主張すればするほど、反発する人が増えるということはあるのでしょう。しかし、特定のジェンダーの人を特に攻撃するのはひきょうです」と強い調子で批判した。

日本ペンクラブでもジェンダー視点推進
 桐野さんは昨年5月25日、日本ペンクラブの第18代会長に選出された。1935年の設立以来、女性会長は初めて。日本ペンクラブは国際ペンクラブの一翼を担い、言論、表現、出版の自由の擁護や、文学を通じた国際交流の推進などに取り組む。会員は作家や編集者、ジャーナリスト、新聞社や出版社など1400人・機関を超える。

 桐野さんが会長として特に力を入れている分野は、女性作家委員会の活動強化だ。昨年12月には「紛争地の難民の現状を桐野夏生が聞く――アフガンとレバノンで考えたこと」と題したイベントを開催。レバノンでのシリア難民の臓器売買を伝えた映像作家の金本麻理子さんと、イスラム主義組織タリバンが暫定政権を樹立したアフガニスタンで同年夏に活動した国際医療NGO「国境なき医師団」の看護師、白川優子さんの話を聞いた。

 桐野さん自らが司会を務め、2人に多くの質問を投げかけるなど意欲的な姿勢が目立った。内容は動画サイトで生配信され、1万2000回以上も視聴されている。

 同委員会では年3回程度のペースでこのようなイベントを行う計画だ。今後のテーマとしては、作家のジェンダー観やネット上での中傷の問題などが検討されているという。

 さらに、女性作家委員会という名称も、性別や性的指向を乗り越え考え直すとともに、広い視野で男性なども巻き込む観点から、「ジェンダー委員会」などの通称を導入することも議論されている。

 桐野さんは日本ペンクラブの活動について、こう話す。「表現の自由に関する声明を出すのはよいこと。ただ、それだけでは形骸化しやすいと思います。社会に対する発信や、会員に対するサービスなどの充実で日本ペンクラブの存在感を高められればよいと考えています」。「いま」に大胆に切り込む桐野さんが、著作を通じ、また日本ペンクラブを通じて、社会に対してどのように働きかけていくのか。今後の活動から目を離せない。

きりの・なつお
 1951年生まれ。98年「OUT」で日本推理作家協会賞、99年「柔らかな頰」で直木賞、2003年「グロテスク」で泉鏡花文学賞、04年「残虐記」で柴田錬三郎賞、06年「魂萌え!」で婦人公論文芸賞、09年「女神記」で紫式部文学賞、10年度に「ナニカアル」で島清恋愛文学賞と読売文学賞。15年に紫綬褒章受章。21年日本ペンクラブ会長に就任。

コメント(0)

mixiユーザー
ログインしてコメントしよう!

生活保護者の集い 更新情報

生活保護者の集いのメンバーはこんなコミュニティにも参加しています

星印の数は、共通して参加しているメンバーが多いほど増えます。