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生活保護者の集いコミュの劣化した生活保護制度は「解体」を 貧困研究の第一人者が語る真意

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https://digital.asahi.com/articles/ASQ2B35S1Q1DULZU00D.html?pn=13&unlock=1#continuehere


多くのホームレスが段ボールなどの上で寝泊まりしていた新宿駅西口の地下道に立つ岩田正美・日本女子大名誉教授=東京・新宿、竹花徹朗撮影
写真・図版
異議あり 日本女子大名誉教授・岩田正美さん
 「最後の安全網」と言われる生活保護制度を「解体」し、社会保障全体の中で抜本的に見直すべきだ――。貧困研究の第一人者がそんな提言を著書にまとめて公表した。戦後日本の「最低限度の生活」(ナショナルミニマム)を保障してきた制度を評価し、その重要性を説いてきた学者がなぜ? 「解体」提言の真意を聞いた。

八つの扶助 「単品」では使えず
 ――コロナ禍のなかで「生活保護は権利」と国も呼びかけ、利用すべき人は増えています。なぜいま「解体論」なのでしょうか。

 「これまで私は、生活保護の意義を理解してもらおうとしてきました。あえて『解体』を言うのは、制度が劣化して、『いま貧困状態にある』人が利用できていないからです。コロナ禍が深刻化して2年近くになりますが、保護人員、保護率は上昇していません。『安全網』として頼れる制度なら、はるかに多くの人が利用しているはずです。もうだめだ、解体して抜本的に見直すほかないと考えました」

 ――それほどまでに生活保護が「使えない」のは、なぜでしょうか。

 「生活保護の根底には、戦前から続く貧困救済の考え方が残っています。最後の最後に……という点が強調され、生活費に事欠いたとき気軽に使える制度ではありません。預貯金も資産もなにもかも失って、万策尽きた困窮者が申請し、衣食住をまるごと保障する仕組みです。生活保護には、生活扶助、住宅扶助など八つの扶助がありますが、これらをニーズに応じて『単品』で使うことはできない。こうした制度のあり方が根本的な問題だと思います」

 ――社会保障は、保険料を負担してサービスを受ける社会保険を中心とし、経済的な理由で自己負担が難しい場合などに、税を財源とする生活保護でカバーする構造だと思います。その位置づけに課題があるのでしょうか。

 「日本の社会保障は、医療・介護・年金といった社会保険を中心に発展してきました。しかしそれを補うはずの生活保護は、あまりに遠い、特殊な位置に置かれている。非正規雇用の増加などで『皆保険・皆年金』からこぼれ落ちる人が増えているのに、そうした人が生活保護をきちんと利用できていません」

 ――取材をしていると、生活保護への偏見、スティグマ(烙印(らくいん))が最大の壁になっていると感じます。

 「そのスティグマも、『最後の……』という制度のあり方と深く関わっています。なにもかも失った困窮層が対象なので、どうしても家賃や公共料金、税金の滞納、多重債務などの問題を抱える人が多くなります。そのため、社会の中心から外れた人が利用するという負のイメージをぬぐいさることが難しいのです。本来は、そこまで追い詰められる前に、使いやすい所得保障制度をおいておく必要があると思います」

生活保護制度の「解体」を提言する岩田正美さん。では、どのような制度設計を考えているのでしょうか。記事の後半では、失業者への支援策や、住宅扶助のあり方を考えます。

 ――八つの扶助をどう「解体」するのでしょうか。

ここから続き
 「八つの扶助は、生活扶助以外は医療や教育など特定のニーズへの保障です。それを一体型ではなく、ニーズに沿って部分的に利用できるように変えるということです。そのためには、八つの扶助をときほぐして、多くの人が利用している社会保険などの低所得者対策に溶け込ませるように配置したほうがよいと考えています。一部は年金制度にくっつけて、一部は国民健康保険にくっつけて、というイメージです」

 ――具体的には。

 「医療扶助、介護扶助は、それぞれ国民健康保険、介護保険に取り込み、利用者負担や保険料がゼロになる『負担ゼロ』の所得区分を新たにつくります。また高齢者への生活扶助を代替するものとして、年金制度のそばに『年金支援給付』を設けます。無年金あるいは年金があっても最低生活費に届かない人は、この給付を受ける仕組みです」

 ――仕事を失った現役世代への支援はどうなりますか。

 「失業者への所得保障は雇用保険と連動させます。現在は、月10万円の給付金をもらいながら職業訓練を受ける求職者支援制度があります。この給付金支給を職業訓練から切り離し、『求職者支援給付』として独立させます。これが生活扶助の代わりになります。ただ、貧困に陥る原因は失業だけではありませんから、『生計維持給付』のような一般的な給付も残す必要があるでしょう」

 「義務教育の教育扶助については、家計の苦しい家庭への学用品費などを援助する『就学援助』制度を拡充させ、現行の生活保護基準より少し上の層までカバーすればいいと思います。貧困に陥るリスクが高いひとり親家庭は、遺族基礎年金を見直して、新たに『ひとり親世帯等基礎年金』にしては、と考えています。児童扶養手当はここに吸収します」

 ――家賃補助にあたる住宅扶助は。

 「日本の社会保障のおかしいところは、『住宅手当』がないことです。2015年に施行された生活困窮者自立支援制度のなかに、求職者支援策として期間限定の『住居確保給付金』があります。これと住宅扶助を組み合わせて、新たに期間制限のない『住宅手当』をつくります。若年から高齢期まで使える、全世代型の社会保障です」

費用換算できないほどの損失が生じる
 ――「解体」によって財政負担はどうなりますか。

 「財政負担の変化という点では、『解体』後の医療扶助や介護扶助は基本的にお金の付け替えです。一方、新たに創設する住宅手当には相当の財源が必要になりますし、制度を使いやすく再配置すれば利用者が増え、財政支出が増えることは予想されます。しかし貧困拡大を放置し、児童虐待などの社会問題が深刻化、複雑化すれば、費用換算できないほどの社会的な損失を生じます。一定の財政負担は避けられないと思います」

 ――生活保護の機能不全については同感ですが、現行制度を利用しやすくする、制度の支援領域を広げるという見直しではダメでしょうか。

 「『水際作戦』と言われる自治体窓口の不当な対応を解消したり、扶養照会など利用を阻む運用を見直したりすることは、もちろん大切です。ただ伝えたいのは、生活保護制度だけをみていてはダメだということです。どんな貧困をどんな制度がキャッチすべきか。必ずしも生活保護でなくてもいい。様々な扶助を社会保険の仕組みのそばに置き、特別な位置づけに追いやらないほうが、最低生活保障を強化できると思います」

 ――課題はあっても、生活保護で暮らしをつなぐ人がいます。財政難による国の社会保障費抑制の流れのなかで、「解体」で安全網が弱体化する懸念はありませんか。

 「解体後の社会保障は、いまの生活保護の『最低限度』を下回らないことが大前提です。懸念や批判はあるでしょうが、これまでそれを怖がりすぎたと思います。働き方や暮らしの変化に対応していない制度は変えなければならない。見直さないままで困るのは、私たちの社会なのです」

     ◇

 日本女子大名誉教授。厚生労働省社会保障審議会委員、同審議会生活保護基準部会部会長代理などを歴任、生活保護行政に有識者として関わった。「貧困の戦後史」など著書多数。2021年11月「生活保護解体論 セーフティネットを編みなおす」を出版。

生活保護制度とは
 憲法25条の「生存権」の理念に基づき、「健康で文化的な最低限度の生活」を保障する制度。現行制度は1950年に制定された。預貯金などの資産を活用しても、国が定める最低生活費を収入が下回る場合に利用できる。最低生活費と収入の差額が保護費となる。申請窓口は自治体の福祉事務所が担う。

 支給されるお金は、食費や光熱水費などの「生活扶助」、家賃にあたる「住宅扶助」、義務教育の学用品費などをまかなう「教育扶助」、医療費用の「医療扶助」、介護費用の「介護扶助」、出産費用の「出産扶助」、就労に必要な技能習得費などをまかなう「生業扶助」、「葬祭扶助」の8種類。

 2021年11月時点で約203万9千人(約164万4千世帯)が利用し、保護率は1・63%。高齢者世帯が半数以上(55・5%)を占め、障害者・傷病者世帯(24・8%)、母子世帯(4・4%)、その他の世帯(15・3%)となっている。

 生活保護基準を下回る低所得世帯のうち、実際に制度を利用している世帯は2〜4割程度とみられ、家族に仕送りの可否を問い合わせる「扶養照会」や、資産要件の厳しさなどが、申請の壁になっていると指摘されている。

取材を終えて
 「生活保護は嫌だ」。年末年始の食料支援の会場でも、そんな声を聞いた。その日の食や住む場所がなくてもなお忌避される制度を、本当に「最後の安全網」と呼べるのだろうか。

 生活保護「解体」という大胆な提言には異論もあるだろう。ただ最低生活保障の機能不全への危機感を共有する人は、少なくないはずだ。賛否は別として、提言を社会保障改革の議論に生かすべきではないか。(編集委員・清川卓史)

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