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生活保護者の集いコミュの「いつまでもただ飯を食ってごろごろしていないで…」ホームレス更生施設“自立支援センター”からの再起を図る男性の“意外な仕事観”

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https://news.biglobe.ne.jp/entertainment/0131/bso_220131_3920895343.html

 ホームレスとなった人々に、一時的な宿泊場所と食事などを提供、生活指導や就労指導を行うことでホームレス状態の脱却を図る「自立支援センター」という施設がある。施設は東京都、神奈川県、大阪府、愛知県、福岡県に所在し、各自治体・各施設によって利用期間や定員、支援内容はさまざまだ。


 2019年5月15日、ノンフィクションライターの川上武志氏は保護を求め、台東区・上野の自立支援センター台東寮(現在は閉鎖されている)に飛び込んだ。自立支援センターでの生活はいったいどのようなものだったのだろう。ここでは、同氏の著書『 ホームレス収容所で暮らしてみた 台東寮218日貧困共同生活 』(彩図社)の一部を抜粋。自立支援センターから就職を目指した男性の仕事観について紹介する。(全2回の1回目/ 後編 を読む)





◆◆◆


ショーコーとの出会い

 6月の声を聞いたとたん、見学者の姿を頻繁に見かけるようになった。個人や少人数で訪れることはなく、いつも20名前後の団体が押しかける。台東寮のような施設はアンタッチャブルな存在と思っていたので、平然と見学者を受け入れることに違和感を覚えた。




JR上野駅・不忍口。通路脇はホームレスの荷物で溢れている 写真=筆者提供


 それにわざわざこんなところまで来なくても、上野公園に行けば野宿焼けして悪臭を振りまいている筋金入りのホームレスにいくらでも会えるのだが、ホームレスの更生施設は一見の価値があるということなのだろう。


 私がショーコーと初めて言葉を交わしたのは、満足に就職活動をしないでまごまごしているうちに、寮生活もまもなく1カ月になろうとしていた6月11日のことである。杉山たちと揉めた直後(編集部注:自立支援センターの入居者。会話時の声の大きさをめぐって筆者とトラブルになった)だったので2号室にいるのがなんとなく気まずくて、夜遅く1階の娯楽室でテレビを観ているときに彼から話しかけてきたのだった。


 2018年7月6日にようやく死刑が執行された元オウム真理教の教祖・麻原彰晃と同じような長髪で体型もよく似ていることから、彼は仲間たちからショーコーと呼ばれている。


 ただ台東寮のほうは本家のようなアクの強い顔立ちではなく、いかにも人柄のよさそうな、善良そのものといった顔立ちをしている。いつもにこにこしていて、寮生活を目いっぱいエンジョイしているように感じた。自立支援センターを利用するのは3度目だという。2度目というのはけっこう多いが、さすがに3度目は滅多にいるものではない。私はもちろん今回が初めてである。


最初に飯場に入ったのは、17歳のとき

 前回は6カ月間滞在して、そのあと飯場に入ったらしい。仕事は土方である。自立支援センターの寮には、退所したあと半年間は入所できないきまりになっているので、飯場で半年余り辛抱して台東寮に入った。舞いもどってくるのは、居心地がいいからということになる。ただ以前は台東寮ではなく、足立寮だったらしい。


「このあと台東寮を卒業しても、再び半年間飯場暮らしを送ったあと、4度目を狙ってんじゃないの?」


「それが、4度目は勝手が違うんです。入所はさせてくれるけど、わずか2週間で追いだされるんですよ」


「たった2週間というのは厳しいね」


 仏の顔も3度ということなのだろう。


「厳しいなんてもんじゃないですよ。死活問題です」


「大げさだな。それで、飯場暮らしは長いの?」


「最初に飯場に入ったのは、17歳のときです。でも飯場暮らしばかりではなく、実の親父が渋谷のほうで飲み屋をやっていたので、手伝ったことはありますけど」


「実の親父って、ほかに義理の父親もいるってこと?」


「小さい頃は親戚の家をたらいまわしにされていましたからね。だから、お父さんやお母さんと呼ばされた人は何人かいますよ。その頃、おじさんと呼んでいたのが実の父親で、それを知ったのは中学を卒業したあとでした。母親の顔はいまだに見ていませんけど」


 かなり複雑な家庭環境で育ったようである。


「もうあんなところは嫌だよ」

「その飲み屋の仕事をつづけていればよかったのに」


「親父が病に倒れたときに店を閉めたんですよ」


「そうなんだ」


「実の父親は遊び人で身勝手な男だったみたいですが、年取ってからは角が取れて、いかにも人柄のいい感じでした。でも頑固さは失っていなかったようで、ときどき腹が刺すなんていって苦しんでいても病院に行かず、正露丸を1度に10粒ほど口に放りこんで、ほら痛みがおさまったなんて笑っていました。だけど、やがて痛みに耐えられなくなり、やっと病院に行ったときには末期の胃がんでした」


「……」


「2年前に親父が亡くなって、また飯場に逆戻りですよ。だけど、もうあんなところは嫌だよ。どこの飯場に行っても必ず頭をポカリとやられるんだ。態度が悪いとかインネンをつけられて」


 いじられるキャラ。どこで暮らしても、さんざんいじめられたのだろう。一瞬、泣きそうな顔つきになったが、すぐに薄日が差すような笑みに変えた。そして自分の不幸を笑い飛ばすように、大口を開けてゲラゲラ笑いだした。


「飯場暮らしだけが人生ではないでしょう。せっかく更生施設に入ったんだから、思い切って就職してみたら?」


「就職ですか……」


「会社勤めは嫌いなの?」


 早い者は入所後1カ月前後で就職先を見つけるというのに、彼は4カ月を過ぎてもまだ一度も会社の面接を受けたことがないのだという。技術力のまったくない底辺労働者暮らし。そこから抜けだすのは容易ではないだろう。


毎日のように訪ねてくるように

「ほんとうは生活保護がいいんだけど、健康でどこも悪いところがないので困っているんですよ」


「まだ30代だろ? 生活保護って年齢ではないよ」


「失礼な。これでも今年46歳ですからね」


「そんな年齢なの? 立派に中年じゃないの」


「そうですよ」


「だけど、若く見られて失礼なはないだろ」


「そうですね。喜ぶべきですね。アハハハハ……」


 白い歯を覗かせて、楽しそうに笑っている。


 やがてショーコーは、2号室の私のところに毎日のように訪ねてくるようになった。ベッドの隅の指定席に腰を下ろすと、さっそく彼は火がついたように喋りだした。口から先に生まれてきたというか、よく燃えるたき火のように饒舌である。話の内容はとりとめなく、飯場のことを語っていたかと思うと、つぎには台東寮の話というように、とにかく話題がピンポン玉のように跳ね飛ぶ。頭に浮かんだことをそのまま喋っているのである。


「1号室だけ2段ベッドで14人も詰めこまれているんですけど、なぜだかわかります?」


 父親が亡くなった直後から伸ばしはじめたという長髪をかき上げながらいった。


「さあ、なぜだろうか」


「入所時に、問題ありそうだと判断された者は1号室に放りこまれるんですよ。事務所のすぐ隣ですので、たとえ騒動を起こしても対処しやすいですからね」


「そうなの。この寮に2段ベッドの部屋があるなんて知らなかったよ。だけど2段ベッドだと、上のベッドの者が寝小便をしたら、下の人はたまったもんじゃないな」


「クフフ、そんな事件が実際にあったみたいですよ」


「下の者にとっては大事件だよ。おや、雨か、なんてね。アッハハハ……。ところで、素行が悪そうな連中と2段ベッドは関係あるの?」


「それは、ないですよね。アハハハハ……」


隔離室のような8号室に収容された、ヤバい男

 私が職員ならまちがいなくショーコーを1号室にぶちこむのだが、彼は5階の5号室に住んでいる。


「1号室よりもやばいヤツが入っているのが魔の8号室です。この部屋は基本的に2人部屋なんですが、いまはサングラスの男がたったひとりで個室生活を謳歌していますよ」


「そうか、彼は8号室の住人だったのか」


 5階の倉庫・リネン室のその奥に、まるで隔離室のような8号室がある。


「知っているんですか?」


「いつも食堂でサングラスをかけているんだから、嫌でも目につくよ」


「食堂や廊下だけでなく、風呂場でもサングラスをはずさないんだから変わっているよね。もしかすると、就寝中もかけてたりして」


 ショーコーによると、最初彼は4号室にいたらしい。風呂上がりにドライヤーを使用していて「音がうるさい!」と同室の者から怒鳴られ、パニックになった。火がついたようにわめきだし、駄々っ子のように両手を振りまわして暴れだしたのだ。


 報告を受けて駆けつけたスタッフも、わめき散らしている姿を目にして「この男はやばい」と判断したに違いない。すぐさま彼を別室に移動させることにした。数名のスタッフに連行されるようにして、空室となっていた8号室に収容されたのだった。


「いまは怒鳴る者もいなので、思う存分にドライヤーを使用していると思いますよ」


苦手な女性職員

 ショーコーは甲高い笑い声をひびかせた。声がしだいに大きくなっていくのも問題だった。昼間なので杉山はいなくても、同室者に迷惑なのではとヒヤヒヤする。「もっと声を抑えてよ」と注意しても、話しこんでいるうちにいつのまにか大声になってしまう。


「苦手な職員っています」


 また話題が変わった。でも、付き合うことにする。


「顔を見るのも嫌だというような職員はいないけど」


 門限に遅れて面罵された暴力団員顔をした職員の姿は、あの日以来見かけることはなかった。退職したのだろうか。それともほかの施設に移ったのだろうか。とにかく、嫌な職員がいなくなってほっとしていた。


「いるの?」


「気に食わない職員は何人かいますよ。そのなかでも特に、女性職員の岸川が苦手なんです。嫌いというよりも、とにかく苦手。きつい性格をしていますからね」


「彼女から何かいわれたみたいだね。詳しく聞かせてよ」


「ほんとうに働く気があるんですか?」

「ええ、いっぱいけちをつけられましたよ。2カ月ほど前の夕食のときのことですけど、早く食堂に行きたいので部屋を出て階段のところで待っていたんです。すると岸川が現れて、『どこで待っているのですか。そこは部屋ですか』なんて嫌味をいわれましたからね」


 部屋順に食堂に向かう規則になっているので、職員が来るまで室内で待機しなければいけない。


「それは仕方ないよ。規則を守らなかったあんたが悪いんだから」


「でも、もっと穏やかに注意するなら文句はないけど、言い方が問題ですよ。それから別の日には、おいらの長髪を見て、『髪を切らないと、どこにも就職できないですよ。ほんとうに働く気があるんですか?』と睨まれましたからね、最悪の女ですよ」


 話しながら頭をぼりぼり掻いているので、長い髪からフケが雪のように舞い落ちている。


「ミス台東寮も容赦がないな」


「ミス台東寮って、岸川のことですか?」


「そうだよ。ほかに対抗馬っている?」


「いないですけど……。だけど、ほめ過ぎですよ」


「それよりも、いっぱい彼女からけなされたとのことだけど、ほかにもあるの?」


「そのほかにはですね、入浴のあとパンツ一丁で浴室を飛びだしたら、運悪く岸川に見つかってしまい、『あんたは原始人か』とまたまた睨まれました」


「確かに原始人はきついね」


 笑いが込み上げてくる。


「そうでしょう。いくら顔がよくても、あれでは……」


「だけど注意してくれるってことは、よくなる可能性を感じているからだよ。どうでもいい宿泊者には、注意さえもしなくなるからね。そうなったらおしまいだよ」


「もしかしたら岸川のヤツ、おいらに気があるのかな?」


 目を細め、両頬が笑みでぷくぷくしている。


「そうかもね」


 それだけは絶対にないと断言できる。


自室に戻る合図

 長話は同室者の迷惑になる。嫌な思いをさせずに出て行ってもらう方法はないかと考えていると、数日前に買ったバナナが残っていたのを思いだした。貴重品棚のうえから取りだして「食べる」と聞くと、「バナナは大好物なんですよ」という返事がもどってきた。


「これをあげるから、自分の部屋で食べてよ」


 残っていた2本を渡すと、握りしめて2号室から出て行った。それからは、4本100円のバナナを買い置きすることにした。そして頃合いをみて渡すと、「そろそろ自室に帰ってよ」という合図になった。バナナが目の前に現れると、彼は満足そうな笑みを浮かべて引き上げていった。


 6月17日の昼少し前、ショーコーはドアから半分だけ顔を覗かせて泥棒猫のように室内の様子をうかがったあと、抜き足差し足、忍び足で入って来た。なかなかに芸達者である。もしお笑いの世界や役者の道に進んでいたら、存分に天分を発揮できたのではないだろうか。少なくとも、生活保護など考えなくてもいい生き方ができたはずである。


 パントマイムのような軽妙な動きで少しずつ近づいてきて、ベッドの傍らに立つと、いたずら小僧そのものといった感じでいきなり大声を上げる。


「なんだ、年寄りをびっくりさせんなよ。心臓麻痺を起こしたらどうするのよ」


「ほんとうは、とっくの昔に気づいていたでしょう?」


 中学生の頃から少しも年を取っていないような笑顔である。


「いや、全然。ドアのところから覗いていたなんて、少しも気づかなかったよ」


「やっぱり見てたじゃないですか」


 ショーコーはゲラゲラ笑ったあと、急に真剣な顔つきになった。


食品加工会社へ面接に

「実は今日の午後2時に面接を受けることになりました」


 いつになく神妙な面持ちでつぶやいた。無精ヒゲをきれいに剃っている。


「やっと就職する気になったようだね。いいことだ」


「職員の武田さんから説教されたんですよ。いつまでもただ飯を食ってごろごろしていないで、ここに面接に行けって、ハローワークの求人票を渡されました」


 いっこうに仕事を探そうとしないので、見かねた職員が怠け癖のある彼の尻を叩いて職に就かせようとしているのだ。


「どんな会社なの?」


「食品加工会社って書いてました」


 自慢の長い髪をかき上げながらいった。


「よさそうな会社じゃないの」


「従業員は男性ひとりに女性が2人の会社です」


「小さな会社なんだね。でも、従業員が少ないほうがいいと思うよ。ヘンな従業員がいる確率が低くなるんだから。根性の悪い先輩がいると地獄だよ」


 会社は中央区人形町にあるのだという。


「面接にはネクタイにスーツ姿で臨みますよ。この写真と同じ黒いスーツです。もう借りてますからね」


 履歴書に貼りつけた写真をバンバン叩きながら叫んだ。あまり乗り気でなく曇っていた顔が、いつのまにかにこにこ顔になっている。気持ちの切り替えが早いのも、彼の特徴だった。


「髪を切ったら、採用する」

「この暑いのにスーツはないだろ?」


「でも、武田さんが身なりをビシッときめて行けって」


「スーツでなくても、清潔な格好ならいいんじゃないかな。ただ、足もとは必ず靴をはかなきゃな。サンダルじゃ駄目だよ」


 夕方、ショーコーが背広姿で顔を見せた。面接の興奮が収まっていないらしく、顔がてかてかしている。


「おっ、似合うじゃないの。どこの会社員かと思ったよ。それで、面接はどうだった?」


「髪を切ったら、採用するといわれました」


「それなら採用されたようなものだよ。それで、どんな感じの会社だった?」


「会社というよりも、普通の商店でした」


「仕事って、店員さん?」


「いえ、商店の2階で鶏肉やモツを串に刺すだけの単純な作業なんですよ。それを、あちこちの焼き肉屋に卸しているみたいで」


 肉を串に刺す仕事と聞いたとたん、昔読んだことのある『赤目四十八瀧心中未遂』という長編小説が脳裏に浮かんだ。この作品で、車谷長吉は直木賞を受賞している。


「10年ほど働いていたブラジル人が母国に帰ることになり、従業員の欠員ができたので募集したといってました」


就職するか否か

 就職するかどうかで迷っている顔つきをしている。


「そのブラジル人は男性?」


「ええ、そうです」


「なら、従業員は女性ばかりということになるね。それに串に刺すだけなら、椅子に座ってできるから楽でいいね」


 小説の主人公は、陰気な室内でたったひとりで作業していた。


「2階の作業場をちょっとだけ見たんですけど、2人とも立って串を刺していました」


「……」


「結構、きつい仕事だと思いますよ。それに、生肉の匂いもするだろうし……」


「おいらの代わりに就職します?」

「だけど、就職すれば飯場に行く必要がなくなる。飯場暮らしをやめれば殴られることもない。ごく普通の生活が送れるよ。それに、職場は女性ばかりなんだから楽しいと思うよ。まさに両手に花というやつだ。羨ましいね。代わりにこちらが就職したいぐらいだよ」


「ひとりは60代で、もうひとりは70代ですよ。花というよりも、化け物に近いかな」


「あっ、そうなの」


「おいらの代わりに就職します?」


「いや、やめとくよ。臭いの苦手だし……」


「おばさんたちのことですか?」


「違う違う。鶏肉やモツのことだよ」


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ドスで相手の首をバサッと切りつけて、やられたほうは倒れてピクピクとケイレン…ホームレス“自立支援センター”で出会った60代男性の波乱万丈過ぎる半生 へ続く


(川上 武志)

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