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生活保護者の集いコミュの「ネカフェ生活20年」の元水商売女性が定職について自立するまで

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https://friday.kodansha.co.jp/article/224800

昨年3月10日付のFRIDAYデジタルで紹介した50代女性のメグさん(仮名)が、30年ぶりに“普通の生活”を取り戻していた。インターネットカフェで夜を過ごし、雪の日も台風の日も新宿歌舞伎町の路上で客をとっていた生活に区切りをつけ、昨年8月からホテルから直接雇用された。いったい何が、彼女を変えたのか。

「この数カ月で1年分くらいの『ありがとう』を言っていますよ」

昨年、メグさんは、背筋をのばして少し照れ臭そうに話しはじめた。

関西出身のメグさんは20代でファストフード店の正社員職を見つけ、結婚を前提に交際していた男性もいた。しかし、二人の新居に母親が「同居したい」と言い出したことをきっかけに破談。家を飛び出して水商売に浸かり、デリヘル嬢として生計を立てていた。

病気をしたことで鬱状態になっていたメグさんは、気分を変えるために友人から3万円を借りて上京。遊びで遣ってしまった旅費を取り返したら関西に戻るつもりで、歌舞伎町の路上に立った。東京に来たのは7年ぶり。新規参入の若手が増え、一回の料金が3分の1に激減した。50代になっていたメグさんはさらに収入が減り、関西に戻ることすらできなくなった。生活費どころか、ネットカフェ料金を稼ぐために雨でも台風でも路上に立たざるを得なかった。

2020年には新型コロナウイルスが蔓延しはじめる中で、毎日「立ちんぼ」をして何とか食いつないでいたが、1年が経過しようとする頃には限界を迎えた。

思いもよらず自分の生活を変えるきっかけになったのは、同年の大晦日から2021年の年始にかけて新宿区立大久保公園で実施されていた「年越し支援・コロナ被害相談村」。少し話をするだけで食料がもらえると聞いて、友人に付き添って行ったことだった。

ギリギリの生活だったが、まだ家賃と食費以外にも、タバコ代と少しだけ遊ぶ小遣いも稼ぐことができていた。ネットカフェでは、テレビは視聴し放題でシャワーの使用も無料。光熱費の心配をする必要はなく、掃除もゴミ出しも店舗まかせだ。「生活のリズムを変えることなく、そのままでなんとかいける」と自分の中では余裕があった。

ところが、相談村を訪れた直後の2021年1月、コロナ感染が急拡大したことを背景に政府が緊急事態宣言を発出。夜間の飲食業による客商売は大打撃を受け、路上で客を取るメグさんも、全く稼げなくなった。友人に付き添って行ったはずが自分も相談することになり、まさか生活保護を利用することになるとは思いもよらなかった。

「1月は本当にやばかったけど、生活保護はどこか体が悪かったり働けない人が利用するものだと思っていた」と話すメグさんは、相談員と生活保護申請をすませてから1週間ほどで利用が決まった。驚きだった。その後はトントン拍子で、住民票を取り寄せて身分証明書を作った。

メグさんだけでなく、この国に住む私たちには「生存権」がある。

全ての人に「健康で文化的な最低限度の生活」が保障されなければならず(憲法25条)、十分に食事が採れなかったり住居がなかったり、人間として「最低限度の需要が満たされていない」場合には、その生活を保障する責務は国にあると生活保護法には定められているのだ。

「やっと人間として認められた」

身分証明書を手にしたメグさんが語った言葉だ。その後、生活保護費が振り込まれる銀行口座も開設した。過去に、振込詐欺に悪用され口座が凍結してしまった問題について相談すると、弁護士から「時間はかかるが口座開設は可能だ」と事例を示しての説明があり、希望が持てた。

ただ生活保護を利用しての生活はラクではなかった。月およそ13万円の保護費から、家賃、光熱費、食費や携帯電話代を払うと、到底、「健康で文化的な生活」は営むことができない。多くの利用者は、食費や光熱費を削る生活を強いられると聞く。そのことが、生活に余裕を持たせるために自立しようと、メグさんの心を動かした。

「相談に乗ってくれる人がいたから、真剣に考えてくれる人がいるから、それに応えるように、じっくりやってみよう、がんばってみようと考えられるようになりました。今まで何十年と、いい加減にその日暮らしをしていたけれど、今は心配してくれている人たち(支援者)がいる。『米や食べ物がないから欲しい』だけじゃダメだなと」

宿泊施設のフロントと清掃の仕事の募集要項を見つけ、30年ぶりに履歴書を書いた。「掃除くらいならいけるやろ」と思っていたら、面接ではフロント係をやってみないかと提案があった。

担当業務の内容は、宿泊客から料金をもらいパソコンに入力した後に鍵を渡す、という流れだ。フロントの仕事は経験がなく、不安も同居した。それまでの仕事(水商売)も、ある意味、客商売であることは変わりないが、どことなく「適当にやっていればいい」という意識があったかもしれないと、メグさんは振り返って思う。昨年の8月中旬、25歳の時に派遣で工場労働をして以来、初めて昼間の定職に就くことになった。


Gotoトラベルについて利用客に対応するホテルのスタッフ。コロナ禍でホテルの業務は一気に増えた(写真はイメージ、共同通信)
仕事のために自分が提供されていた場所を、今度は提供する側になった成り行きには、なんとなくこそばゆさも覚えるが、慣れてしまえばこの仕事の方が断然、体の負担は少ない。

久しぶりに昼間の定職についたことで、気づかされたことがあった。定期収入があることが、信用につながるということだ。水商売での収入は、毎日、ゼロと数万円の間を変動する。悪天候で稼ぎがない時には、友人にネットカフェ代を借りることもあった。ただ、返金できるのがいつか保証はできない。

「『俺はお前のATMじゃない』とよく言われていた」とメグさんは笑ったが、「定期収入があるということに対して、人はこんなに信用してくれるんだと。月末に給料が入るため、返済の予定が立つから貸してもらえる。昼間の仕事をすることは、周りの目が違いますね」と噛み締めて言った。

安定した収入を得られないため、仕事で夜半に街頭に立ち風邪や発熱などで体調を崩した時でさえ、医者にかかることを躊躇した。解熱剤など市販の薬を探すしかなく、病院に通うことは選択肢になかった。

「何十年も自分の体を使って稼いで、どこそこが痛いと言っても病院に行けなかった。この際、全部診てもらおうと病院に通い始めたけど、今までは生きるために体を酷使していたから、体はボロボロですね。病院って、大事なんだと思いました」

自分の部屋を持つのも30年ぶりだ。

「普通に布団で寝られること。ネットカフェでの生活でも雨風は凌げたけれど、自分の部屋じゃない。生活の面ではキツキツだけど、自分の城を持てたこと、自分の布団で眠れるのが一番ホッとする」


撮影:Unfiltered
メグさん自身は、自分の仕事に誇りを感じ、それを恥じたことは一度もない。ただ、仕事を聞かれたときは「立ちんぼやっている」とは言えず、「男の人とデートする仕事」とごまかした。そのことを聞いた周囲の人からは「結局、売春でしょ」と言われた。「ホテルのフロントの仕事」だと堂々と言える今では、警察に怯えることもなく、安心して働くことができるようになった。

その日暮らしで、毎日食費を稼ぐのもままならないことがあったとき、役所や民間団体に相談しようとは思わなかったのはなぜか。メグさんは言う。

「生きていくだけで手一杯だったから、そういうことには考えが及ばない」

ただそれだけだ。

たまたま新型コロナウイルスの感染拡大で生活に困窮している人が増えたため、各所で相談会が開かれるようになり、偶然、メグさんたちが溜まり場にしている公園でも相談会が開催された。身近で目にしなければ、ニュースの中での出来事として、あえて足を運ぼうとは考えないと言う。

「今までそういうことがあったとしても蚊帳の外だった。他人事として見ていた。年末に相談会に行かなかったら、いまでも『立ちんぼ』やっていたと思う」

メグさんは、今いちばん「人」を大切にしていると言う。

「人って大事なんだと思いました。こういう相談会をきっかけとして知り合った人が、いい方向に導いてくれた。いまの生活になったのは、付き添いで行ったからだけど、そこでその人たちに出会えたことで普通の生活にたどり着けた」

以前は、第三者からの助言なんて、自分の心に入ってこなかったものだが、生活保護申請や身分証明書の手続きだけでなく、銀行口座の開設についても、今回の相談会で出会った女性たちが時間をかけて話を聞いてくれたことがメグさんの心を大きく変えた。

メグさんは今、キャリアアップを目指して、ホテルのフロント業務より時給がより高い仕事への就職活動中だ。

取材・文:松元千枝

ジャーナリスト。人権や労働など社会的正義に関する問題を主に取材する。共著に『マスコミ・セクハラ白書』(文藝春秋)、『マンガでわかるブラック企業』(合同出版)など、共同翻訳には『ストする中国』(彩流社)があり、2021年1月に共同翻訳『世界を動かす変革の力——ブラック・ライブズ・マター共同代表からのメッセージ』(明石書店)を出版

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