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生活保護者の集いコミュの東大合格に「文化資本」はいらないのか。貧困の現場で考えた、目に見えない格差とは

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https://www.businessinsider.jp/post-248686

2021年、法学者の木村草太氏のこんなツイートが物議をかもした。


「東大入試に文化資本なんていらないよ。それが大きな影響を持つのは、エッセーや面接が重視される入試。

東大一般入試なんて、塾一辺倒で、部活もボランティアもやったことなくて、コンサートや美術館に行ったことなくても、過去問が解ける学力さえあれば受かるんだから」

木村氏は、文化資本がなくとも、学力さえあれば東大に合格できる、と主張する。しかし当時、このツイートには、文化資本が与える影響は簡単には言い切れない、進学を目指すかどうかに親や家庭環境の影響は大きい、などの批判も集まっていた。

同氏は翌8月28日付けの投稿で、「ここ数日の反応から、家庭環境を重視する主張に接し、「公教育」の空洞化について考える必要があるのではないかと、思い至っています」とコメントした。

進学でわかった「二つの世界」
団地

低所得世帯と高所得世帯の違いは所得だけではない。教育、習慣、文化などの環境面においてあらゆる差が存在する。

Shutterstock/masajla

こうしたTwitter上での議論を見ながら筆者は、複雑な心境だった。

筆者自身、親や親戚に大卒者はおらず、家にも学習環境はなかった。そういった生い立ちではあったが、東大とはレベルは違うものの関西の国公立大学に進学した。逆境をはねのけて難関大に合格する生徒も実際にみてきた。

しかし一方で、幼い頃に経験する「文化資本格差」がいかに人のその後の人生を左右するか、身をもって体験してきた。

筆者は中国地方の貧困家庭で育った。生まれ育った県営住宅の団地には低所得世帯が集まっていた。

みなお下がりのよれた服を着ていたり、家の掃除がされず部屋が荒れていたりと団地内の家庭環境はとても似ていた。しかし、進学校の高校、大学へと進学すると、周囲は高所得の家庭ばかりになった。

大学の友人は多くが親も大卒。資格や免許を取って計画的に貯金をし、社会人になると健康保険や生命保険に入る。一方、中学まで一緒だった貧困家庭の子どもたちは、多くが高卒で非正規雇用に従事する。

同時に存在する二つの世界には明らかに壁があり、違いがある。

それは単に、所得という数値化できるものだけではなかった。

教育、習慣、文化。

例えば、習い事をさせてもらえるかどうか、家に本があるか。大学に進学することを応援してくれるか、高卒で働くことを勧められるかどうかなど、そこにはあらゆる違いがあった。

低所得者には、時に自己責任論が向けられる。なぜ生涯賃金を考えて大学に行かないのか、貯金しないのか、正社員にならないのか、などだ。しかし、こうした、一見本人の意思や選択の結果に見えることにも、環境の影響があるのではないだろうか。

親から子へと伝わる「文化資本」
正装でピアノを弾く少女。

学習力や職業、投票行動などから投資や貯蓄などの資産形成の手法、健康状態、犯罪をするかどうかに至るまで親子で行動が似る。

Shutterstock/Jaren Jai Wicklund

そもそもこの一見実態の見えづらい「文化資本」とはなんなのか。その格差があるというなら、経済学では、文化資本はどのように捉えられているのか。

東京大学経済学研究科の山口慎太郎教授によると、文化資本とは、噛み砕いて言うと、「お金以外の、豊かな人生を送るために必要なものや能力」と定義されるという。

豊かな人生とは経済的なものをさすだけではなく、健康や人間関係の充実も含まれる。

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モノ(本・美術品など)、価値(学業重視・学歴期待など)、行動様式(努力・欲求充足の方法など)がそれにあたる。この文化資本は、子どもの学力と関係があることが、研究により示唆されている。

文化的資本格差

画像:山口慎太郎教授への取材をもとにBusiness Insider Japan作成

2017年に文部科学省が発表した調査研究によれば、保護者の最終学歴が父親、母親ともに高いほど子どもの学力が高い傾向が見られる。

また親の学歴や世帯収入以外でも、子どもの学力に影響を与える要因が指摘されている。例えば世帯収入が高いほど、蔵書数も多い傾向にあり、蔵書数が多いほど学力が高いことが示されている。

このほかにも「子どもに本や新聞を読むように勧めている」「子どもと社会の出来事やニュースについて話をする」などにあてはまる親は、子どもの学力が高いという傾向が指摘されている。

このようにそもそも、学力自体が文化資本の影響を受けると考えられている。

さらに、親から子どもに受け継がれるものについて、山口教授は以下のように指摘する。

「親子であらゆるものがすごく似ることが、データで明らかになっています」

山口教授によると、学習力や職業、投票行動などから、投資や貯蓄などの資産形成の手法、健康状態、犯罪をするかどうかに至るまで、親子で行動が似るという。

この背景には、親は子どもの生き方のロールモデルとならざるを得ないという事実がある。

健康にさえも環境の格差
病院で点滴を打たれている男性。

高所得家庭と低所得家庭では健康にも格差が生まれ、その格差は世代間で受け継がれていく。

Shutterstock/Thaiview

2016年にスウェーデンの研究者らによって発表された調査によると、子どもの健康を決定づける要素として遺伝は重要である一方で、育ての親による教育も大きな影響をもたらすことがわかったという。

山口教授はこう指摘する。

「経済的に豊かだと、良いものを食べられたり良い医療サービスが受けやすかったりするのもありますが、子ども本人が教育を受けることで、健康に対する意識が高まり、健康的な行動を取るようになります」

高所得家庭と低所得家庭では、所得や学力といった数値化しやすいもの以外にも、社会で生きる力、全ての土台となる健康自体にも格差が生まれ、その格差は、世代間で受け継がれていく。

また、一般的に虐待の連鎖も指摘されているが、虐待の後遺症で精神疾患を抱え、フルタイムで働けずに経済的に困窮する例もある。

教育は人間の行動を生み出す根っこの部分
円になって遊んでいる幼稚園児たちと先生。

保育園や幼稚園に行くと子どもの発達が良くなり、幼い子どもであるほど変わりやすく、教育の影響が長続きしやすいという。

Shutterstock/maroke

では、そんな負の連鎖を止めるためにはどうすればいいのか。一番大切なのは「教育」だ、と山口教授は強調する。

「教育を受けると、健康に関する情報を求め、それを理解できるようになる。セルフコントロールも身についていくため、お酒を飲みたいけれど、飲み過ぎたら良くないと分かるから自制できる、というふうに。教育は人間の行動を生み出す根っこの部分です」

そして、教育のなかでも、特に幼児教育が大事だと、山口教授は言う。

「保育園や幼稚園に行くことで子どもの発達がよくなる、というのはたくさん研究結果が出ています。幼い子どもであるほど、変わりやすく、教育の影響が長続きしやすいのです。嫌なことがあっても叩いてはだめ、など、感情のコントロールを教わると、一生モノの財産になります」

幼少期の教育がその後の人生に大きく影響を与える、すなわち子育てにも目に見えない「格差」が生じている。教授によると、貧困家庭では「子どもを叩いてしつける傾向が強い」という。

「要因としては、子育てやしつけに関して知識がないことや、経済的に困窮していることで精神的余裕のなさにつながることなどが考えられます。親に叩かれて育った子どもは、他の子どもを叩く傾向が強くなります。叩くことがそんなに悪いことだと分からないのです(※)」

(※前出の文化資本の説明図の「行動様式」にあたる)

このような子どもへの接し方で、自己肯定感の育くまれ方も変わってくる、と教授は指摘する。褒められずに育つと、自分の能力や可能性を信じることができなくなる。そうして、社会で生きていくための自己肯定感にさえも、格差が生まれてしまう。

「自分が努力すれば、解決できるんだという実感がある人と、やったって上手くいかないと思っている人だと、努力するかどうかもは違ってきます。長期的に見ると、目に見える差になっていくのです」

筆者も経験したように、貧困家庭の子どもは様々な場面で「諦め」を経験する。制服や学習道具が買えない、習い事はもちろん運動部などもお金がないという理由でさせてもらえない。

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そして中には行きたい高校も、経済的な理由で諦めざるを得なかったり、大学進学などの進路も、親に反対されたり、学費が工面できずに断念することもある。そればかりか、自ら選択肢として考えられなくなっていく。

生まれによって好きなことを我慢し続けると、自分は幸せになってはいけない、どうせなれない、という悲観的な考えに陥ることもあるのだ。

生活保護の「申請主義」がなぜ問題なのか
書類に署名をして手続きをする男性。

振り込みの頻度を増やして、常に口座に一定のお金がある状況を作り、長期的、計画的なお金の使い方を少しずつ学べるようなサポートが必要だと山口教授。

Shutterstock/mapo_japan

目に見えない「文化的資本格差」を解消するために政府ができることは、幼児期の教育だけではない。給付金や生活保護の申請に必要な書類等が煩雑で、低所得者の申請のハードルの高さも、問題視されている。

山口教授は「(文化資本格差という点で考えると)今の申請主義のやり方が問題」だとみる。

「資料を読み解き、書類を書く力はまさに学力です。保育所の利用の研究をしているのですが、まず利用の手引が分厚い50ページくらいのものもあります。能力が高い人や稼げる人ほど、行政サービスを利用しやすいようになってしまっている」

こうした課題を解決するため、カナダ・トロント大学のフィリップ・オレオポロス教授は、税務申告代理サービス企業「H&Rブロック」と連携し、アメリカ連邦政府による大学進学向け奨学金「FAFSA」の申請書類を自動で埋め、申請までオンラインで済ませられるソフトウェアを作った。

こうすることで、実際に奨学金の申請率・採用率とも上がり、低所得者層の大学進学率も上がったという。

山口慎太郎教授

東京大学経済学部の山口慎太郎教授。専門は家族の経済学や教育経済学。

撮影:西山里緒

さらに幼少期からの家庭環境、親から受け継ぐ文化資本の差が、大人になって社会生活を送る上での大きな格差になりうる。その最たる例が、「お金の使い方」ではないだろうか。

一般的に、貧困層は例えば浪費していたり、貯金をしなかったりなど、お金の使い方が下手、と言われることが多い。

低所得者層の経済観念の乏しさをあげ、自己責任に帰する声もある。が、貯蓄行動や資産形成において親の影響を大きく受けることを鑑みると、経済観念の乏しさこそが貧困の連鎖の結果であり、本質であるといえそうだ。

この問題へどんなアプローチがあるのだろうか。山口教授は「まず金融リテラシー教育」とした上で、生活保護費をもっと小分けに支給することも有効なのではないか、と指摘する。

「お金の心配を常にしていると、使い方をゆっくり考える暇がありません。行政からしたら、まとめて振り込んだほうが事務負担が減るというメリットはありますが、振り込みの頻度を増やして、常に口座に一定のお金がある状況を作り、長期的、計画的なお金の使い方を少しずつ学べるようなサポートが必要ではないでしょうか」

所得の格差が文化資本の差を生み、文化資本の差が、健康状態、自己肯定感、金融リテラシーといった、生きる力に影響を与える。

いわば、素地、ベースの格差を生むということだ。

現代社会にはびこる「自己責任論」。しかしその背景に、数字には現れない「文化資本」の格差があることは、あまりにも見過ごされてはいないだろうか。

金銭的な支援のみならず、金融リテラシーの教育や、幼児教育の義務化、奨学金制度の充実、申請書類の簡素化などを通して、文化資本の格差の是正をしていくことも必要なのではないだろうか。

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(文・ヒオカ)

ヒオカ:1995年生まれ。"無い物にされる痛みに想像力を"をモットーに、弱者の声を可視化するライターとして活動中。

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