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生活保護者の集いコミュの虐待された子どもの教育を奪う、生活保護の皮肉な事情

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https://news.yahoo.co.jp/articles/5217b940369cc1d3a9d9953376993e01bd4cf521?page=1

● 虐待トラウマに苦しみながら 人生を諦めなかった青年の歩み

 2021年現在、生活保護を受けながら大学等の昼間部に在学することは、ごく一部の例外を除いて禁止されている。夜間部や通信制なら認められる場合もあるが、就労しつつの「余暇活動」という位置づけだ。中村舞斗さん(32歳)は、子どもや若者の支援に取り組む人々や団体とともに、この制度運用を変えるために働きかけを続けている。モチベーションの源は、この問題に苦しんだ自分自身の経験だ。

 虐待やネグレクトを日常的に受けつつ育った中村さんは、高校生だった16歳の時、児童相談所の介入を受けて家族のもとを離れた。しかし、それで問題が解消したわけではない。トラウマ障害のため精神的に不安定だったことが最大の障壁となり、児童養護施設には入所できず、中村さんは精神科病院の入院病棟を生活の場とするしかなかった。高校は中退することになった。

 病院から退院すると、18歳になっていた。18歳までの児童を対象とした支援制度や施設は利用できない。18歳以上の若者を対象とする自立援助ホームも、精神的なケアを必要とする中村さんの受け入れには難色を示した。

 虐待の当事者であった家族のもとに一時身を寄せるなどの紆余(うよ)曲折の中で、中村さんは20歳で通信制高校を卒業して就職した。そして進学資金を貯蓄し、22歳で看護大学に進学。アルバイトと日本学生支援機構奨学金の借り入れが頼りの、ハードな学生生活を送り始めた。

 しかし、乳幼児や妊娠・出産・育児について学ぶことは、中村さんの虐待の記憶を刺激し、トラウマ障害を悪化させた。その結果、アルバイトが困難になり、収入が激減した。

 学費を支払うと生活費がなくなる。とはいえ、学費負担を先送りするために休学すると、奨学金が停止されるので生活自体ができなくなる。中村さんは、福祉事務所に生活保護の相談に行った。すると、窓口にいた職員が「大学はゼイタク品」と語り、生活保護を利用する場合は大学を退学する必要があることを説明した。現在の制度運用のもとでは正しい説明なのだが、絶望した中村さんは自殺を図った。幸いにも未遂に終わったが、大学は中退することとなった。残ったのは、奨学金という名の借金だけだった。

 中村さんは、トラウマを治療した後で再び就労し、自分と同じような経験を持つ若者や子どもたちのための活動「虐待どっとネット」を始動させた。「虐待どっとネット」は2021年7月にNPO法人化し、さらなる活動の展開に向けて足場を固めつつある段階だ。


● 大学進学はゼイタク? 子どもたちの願いは「選択肢をください」

 子どもが成長して大人になるまでの歩みは、困難な障害物レースに例えられる。虐待やネグレクトを受けている子どもたちは、重荷を背負わされた上で、他の子どもたちよりも障害の多いコースを走らされているようなものである。

 家出や施設入所などを子ども自身が望んでも、あまりにも幼すぎると実行は困難だ。実行して成功する年齢は、15歳前後より上であることが多い。そして児童支援制度の数々を利用できるのは、「児童」である18歳までの期間のみ。虐待される環境からの脱出に成功すると、その瞬間、独り立ちへのカウントダウンが始まる。

 さらに、子ども自身が虐待を認識していない場合も多い。虐待は、「しつけ」「教育」「あなたのためを思って」といった名目で行われるものである。子どもが「自分は虐待されている」と気づいたときに20歳を超えていると、もはや、被虐待児童を対象とした支援制度はまったく利用できない。

 日本の児童支援・若者支援・学生支援は、年齢で細かく区切られている上に「想定外」の部分が多く、各自の事情に沿って隙間なく組み合わせることが可能とは限らない。その上、本人たちの心身には「虐待によるトラウマ」というハンディが厳然として存在する。ハンディを背負っての歩みには、より多くの時間がかかるかもしれない。

 しかし大学等の学費免除や奨学金などの制度は、そんな若者たちの存在を十分に考慮できていない。留年や休学は、しばしば「カネの切れ目」になる。すると生活が成り立たなくなり、学業継続も復学も困難になる。

 もし、生活保護で生存の基盤を支えながら大学等に在学することが可能になれば、状況は一変する。加えて、大学等が経済的支援を十分に提供すれば、日本史上最強の学生支援が生まれる。経済的な不安と無縁に、大学等で次のステップへの力を身につけることが可能になれば、少子化と人口減少が進み続ける日本は明るい未来像を描けるだろう。

 中村さんたちの願いは、「私たちに選択肢をください」だという。就職して職業人として歩み始めるために大学等で学ぶステップをたどる「選択肢」を手にしたいという望みは、「ゼイタク」なのだろうか?

 大学等進学率に取り残される 「最低限度の生活」の内実

 現在のところ、生活保護制度における大学昼間部在学の扱いは、高級マンションや高級外車と同じ「ゼイタク品」だ。生活保護を利用するのなら、大学昼間部には在学しない原則となっている。

 本来、生活保護は、本人が利用できるものを利用し尽くしても「健康で文化的な生活」を営めない場合に、不足分を補足する制度である。多額の現金に換金できる不動産や自動車の売却が求められるのと同様に、大学昼間部で学ぶことのできる健康な心身があるのなら「その心身を生かして働いてください」ということになる。

 生活保護制度が施工された1950年は、高校進学が「ゼイタク品」扱いだった。日本の義務教育は小学校と中学校のみであり、当時の高校進学率が42.5%にとどまっていたことを考慮すると、妥当であったかもしれない。しかし1970年、高校進学率が80%を超えて82.1%となったため、厚生省(当時)は生活保護での高校進学を認めた。1970年当時、すでに「高校まででは物足りないのでは」という議論があったにもかかわらず、51年後の2021年現在、生活保護のもとで大学等に在学することは認められていない。

 日本の大学等への進学率(浪人を含む)は、2016年に80.0%に達した。2020年には83.5%に達しており、もはや「ゼイタク品」ではない。しかし、同年の生活保護世帯の大学等進学率は37.3%にとどまっている。

 厚生労働省社会・援護局保護課の担当者は、「大学に進学することを応援することは、政府の立場として当然です」と述べつつも、「生活保護での大学進学は、一般低所得世帯との均衡を考えると、『健康で文化的な最低限度の生活』に含まれているとはいえません」と語る。

 2018年から、生活保護で暮らす家族と同居したまま大学等に進学する場合、本人は生活保護の対象から除外するものの、世帯人員の減少に対応させて家賃補助を減額することはしない取り扱いが開始されている。この取り扱いは「大学等の学生に対する家賃補助の部分的適用」とみることもできる。しかし、進学にあたって家族と別居する場合、その若干の支援も適用されない。

 虐待を受けていた学生は、虐待していた家族と同居するわけにはいかない。家族からの経済的支援がある場合、虐待の継続という代償を支払うことになるだろう。従って、1人で困窮しながら学生生活を送ることになる。しかし厚労省保護課の担当者は、「現在のところ、そういう方の支援は考えていません」という。生活保護に含まれる生活費・家賃補助・医療費などのうち葬祭費用を除く7つのメニューを必要に応じて単体で提供すること(単給)についても、現在のところは考えていないということだ。

 むろん、厚労省と生活保護制度だけが、すべてを背負う必要はない。大学等の学籍があるのなら、在学している大学等と文科省による支援も考えられる。学費免除や給付型奨学金などの支援は、不足しているとはいえ、年々、少しずつ充実してきている。しかし、隙間や谷間が大きすぎるため、取り残される人々が多すぎるのだ。

● 虐待を逃れた子どもたちから いきなり翼をもぎ取る社会

 中村さんとともに政府や行政への働きかけを続けている弁護士の飛田桂(ひだ・けい)さんは、さまざまな困難のもとにある子どもたちを支援し続けてきた立場から語る。

 「虐待から自力で逃げてきた子どもたちは、短大生や専門学校生であることも少なくないです。とりあえずはシェルター等で一息つけたら、その次を探すわけですが、自立援助ホームは数少ないため入所できるとは限りません。本人の収入源もないわけですから、結局は生活保護でアパート入居となる場合が多いです。そこで初めて、住民登録ができます。学校は、退学や休学ということになります」(飛田さん)

 自分の将来や進学の夢を思い描きながら虐待に耐え、成年近い年齢になって逃げることに成功すると、そのとたんに高校以後の教育を断念しなくてはならない。飛田さんは、「支援していて、絶望感がありました」という。

 住民登録ができないと、心身の傷を治療することもままならない。医療機関や薬局の情報が、家族のもとに流れてしまうこともある。本人が国民健康保険に加入することもできない。生活保護の医療費補助を単体で利用することも難しい。

 「中村さんも私たちも、特別な施しを求めているわけではありません。子どもたちが置かれた環境によって奪われてしまっている権利を、回復してほしいだけです」(飛田さん)

 最も困難な若い時期に、一時的に生活保護を利用して高校以後の教育を受けると、将来にわたって生活保護の必要性から遠ざかる可能性も高い。

 「今、虐待から逃げて大人たちに助けを求めると、退学や休学という形で、いきなり翼をもがれるわけです。貧困の連鎖から脱却できず、ずっと生活保護で暮らす可能性も高いです。羽ばたこうとしている人たち、これからが大切な人たちにお金をかけない社会って……何なんでしょうか」(飛田さん)

 このままで良いわけはない。それだけは確かだ。

 (フリーランス・ライター みわよしこ)

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