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生活保護者の集いコミュの「生活保護を受けたくない」と言わせてしまう社会の「空気」

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https://webronza.asahi.com/national/articles/2021121000005.html

12月2日、寝たきりの姉(84)を殺害したとして殺人罪に問われた妹(82)の裁判で、東京地裁は懲役3年執行猶予5年の判決を言い渡した。

 姉妹には親しい親戚や知人はおらず、1カ月10万円ほどの年金だけで暮らしていたという。ケアマネージャーが生活保護の受給や姉を施設にあずけることを勧めても、妹は「税金をもらって生きるのは他人に迷惑をかける」として断っていたということである。

 そのうち姉の体調が悪化。「これ以上介護できない。迷惑をかけないためには終わらせるしかない」と考えて殺害。警察に自首したという。

 介護問題と貧困問題が合わさった、まるで森鷗外の「高瀬舟」のような悲劇だが、やはり一番気になるのは、妹が「迷惑をかける」として福祉を拒んだ結果、殺人という最大の「迷惑」を世間にかけてしまったことだろう。

生活保護に対する偏見と人々の自尊心
 もちろん僕の意見は「生活保護などの救済措置を受けることは、権利であって迷惑だと考える必要はない」である。

 だが、実際「生活保護など受けたくない」という人は少なくない。

 理由は概ね2つだろう。

 1つは世間の生活保護に対する偏見である。

 僕が思い出すのは、2012年に芸能人の親族の生活保護受給が報じられたことを発端にした生活保護バッシングである。

 多くの人たちが「芸能人はたくさんお金を稼いでいるのに、親族を養わず、生活保護を受けさせているのはズルい」と批判し、一部メディアなども「不正受給が蔓延」「モラルがない」といった記事で煽り立てた。

生活保護問題で次長課長・河本さん会見 201205月25P日
拡大親族の生活保護受給がバッシングされ会見を開く芸能人=2012年5月
 また、そうした批判者の中には国民の生活を守るべき立場にいるはずの政治家たちもいた。

 特に自民党の片山さつき氏は様々な場でモラルの問題や努力不足などを語り、生活保護バッシングの波に乗りたいメディアから重用された。

 自民党の世耕弘成氏は、「生活保護を受給する人はフルスペックの人権を認めてほしいのか」と発言、権利の制限を訴えた。

 また自民党の石原伸晃氏は「報道ステーション」に出演し「ナマポ」という生活保護を揶揄するネットスラングを用いて、生活保護を簡単に「ゲットできる」ことを是正したいなどと主張した。

 こうした、政治家や多くの市民による無責任な発言が、生活保護受給に対するネガティブなイメージを与えてしまい、そうした発言におびえた人たちが受給に消極的になってしまったのではないだろうか。

 そしてもう1つは「他人の施しは受けない」という人々の自尊心である。

 日本人には、自分の努力で得た金で食べられるようになって一人前という考え方が根強くある。そして世の中の大半の人はそうした金で立派に生活をしているように見える。殺人を犯してしまった妹の目に見える世間もそうだったのだろう。

 しかし本当に世の中の大半の人は税金などに頼らず、自分たちの力だけでお金を稼いでいるのだろうか。そして、自分の努力したお金で食べることが真っ当で、国からもらったお金で食べることは不当なのだろうか?

困っている企業には税金が投入されているのに……
生活保護の相談窓口=佐賀市役所
拡大生活保護の受給は「税金をもらって他人に迷惑をかける」ことなのか
 2012年に生活保護バッシングに“参戦”し、生活保護を「ナマポ」などと呼んで揶揄した石原伸晃氏が代表を務める選挙区支部が、2020年の収支報告書で約60万円の「コロナ助成金」を受け取っていたことが明らかとなった。彼の生活保護バッシング時の言葉を借りれば「コロナ助成金、ゲットしちゃった」といったところだろうか。

 それはともかく、新型コロナの問題で2020年は多くの会社や商店がコロナ関連の助成金を得ることで、食いつないでいたはずだ。このように日本の行政は企業などの経営に問題があれば割と普通にお金を出す。各種助成金や補助金を受給している中小企業も多いだろう。

 また、コロナと関係なく、大企業はいわゆる「ハコモノ行政」や産業振興などで行政と様々な事業を行っている。

 ハッキリ言えば日本の企業の大半は何かしら公的な“扶助”を受けていると言ってもいいだろう。中小企業はもちろん、中にはニュースになる「中抜き前提の事業垂れ流し」や「モリカケ」のようなグレーな支援も含めて、会社の維持には多額の税金が投入されているのである。

 そして当然、そうしたお金はそこで働く労働者たちの給料にも繋がっている。結局のところ私たちの生活は、税金が投入されることで保たれているのである。

 企業が困っているときには当たり前のようにジャンジャン税金が投入され、そのお金が個人の生活を支えているのに、企業と結びつきのない貧しい個人が困っているときに税金が投入されると、不正だモラルだと言い出すのは、僕にはダブルスタンダードであると思える。

 企業への支援で大きな恩恵を受けるのは、経営者や正社員など企業との結びつきが強い人たちであり、フリーランスや派遣などの非正規労働者、そして働けない人たちなどは、あまり恩恵を受けることができない立場である。

 特に生活保護の受給条件に合うような境遇にある人たちは、ほとんど恩恵を受けていない状態にある。企業に所属していれば当たり前のように受けられる税金からの“施し”を、生活保護という形でもらって一体何が悪いのだろうか。

 そもそも、82歳の女性が寝たきりの84歳の姉を抱えて、十分な生活ができる賃金を得られるような労働に就くことは、大変難しいだろう。

 しかし、自分の努力で得た金で食べられるようになって一人前という考え方に凝り固まった社会は、なんと82歳の女性にすら働いて稼ぐことを求めてしまったとも言えるのである。

 そんな社会が成り立つはずはないし、おかしいに決まっているのに声を挙げる人は極めて少ないというのが現状だ。

 今回の事件は、まさに生活保護という、ごく当たり前の権利を無責任に否定したり、行政や経済の意味を理解できない人たちの「空気」によって発生した事件である。

 普段の生活では無害な空気も、周囲から強い圧力を与え続けられていれば、いずれ人間をも潰してしまう。

 ただ素朴に生きて天寿を全うしたかったであろう姉妹に起きた悲劇は、私たちの社会で形成された空気が原因の事件であると、僕は考える。

赤木智弘(あかぎ・ともひろ) フリーライター
赤木智弘
1975年生まれ。著書に『若者を見殺しにする国』『「当たり前」をひっぱたく 過ちを見過ごさないために』、共著書に『下流中年』など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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