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生活保護者の集いコミュの生活保護受給者は“テキトーに生きてきたんだろ”とSNSで…取材で見えてきた「医療現場でのフクザツなまなざし」 「ビターエンドロール」作者・佐倉旬さんインタビュー #2

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https://bunshun.jp/articles/-/50024

新型コロナウイルス感染症により、かつてなく注目が集まった医療現場。月刊アフタヌーン(講談社)で連載中の「ビターエンドロール」では、病院に勤務し、病気や障害によって生活に問題を抱える人の社会福祉支援を行う医療ソーシャルワーカーの活躍が描かれる。

 前編では、著者の佐倉旬氏と担当編集者の真並紗樹子氏が、取材の中で出会った医療ソーシャルワーカーや「断酒会」への参加を通じて自覚した偏見を、創作に生かすまでの矜持について伺った。

 佐倉氏は「なんにでも怒っているし、怒って描いていたい」と話す。後編では、佐倉氏の作品の根底にある怒りや願いに触れていこう。(前後編の後編/前編を読む)


◆ ◆ ◆

「“本当に困ってる”って何?」SNSでの発信を見て…
――第3話、生活保護の回で「“本当に困ってる”って何?」というセリフに、ドキッとしました。今回インタビュアーをしている私自身は普段看護師として病院で働いているので、患者さんが困っていると訴えることが「本当」かどうかジャッジしようとする風潮、確かに医療の中にあるなって。

「ビターエンドロール」3話
「ビターエンドロール」3話
この記事の画像(4枚)
佐倉 医療ソーシャルワーカーさんの直面する問題を調べていくと、自己責任論みたいな話も絡んできます。

 SNSで、生活保護の方に「テキトーに生きてきたから悪いんだろ」と言っている人もいます。

 それを一概に、「そんなこと言うな」って責めることは絶対にできないと思ったけれど、でもそれではいけないとも思う。答えは分からないけど描こう、入れようという気持ちはありました。

 社会って、毎日24時間、健康体で、8時間勤務ができて、朝から夜まで働けて、元気で家事ができて、という人を想定して作られている。そこから一歩外れてしまうと、一気に生きることが困難になる。普通の生活っていうけど、「普通」って厳しくないですか。

 私は今健康体なので、世の中でいう普通の枠組みで、下駄を履いている状態で生活をしていると思っています。でも、いろんな例を見た時に、いつ自分が病気になるか分からないし、何かのきっかけで自分が普通の枠から外れてしまった時に、生きられないと辛い。

 病気や障害を抱えて、いわゆる「普通」でいられない理由がある人が、あまり心配なく過ごせる社会は、結局皆が生きやすい社会だと思います。社会変わっといてくれよって気持ちはありますね。

 あとは私、感動ポルノが苦手なので、多分それが出ているのかな。


「分かるよ」というレッテル貼り
――確かに。登場人物の動きに関しても、医療モノの漫画は、読み手の感動を優先して、現実にはあり得ない行動を取ってしまうものが圧倒的に多いと思うのですが、「ビターエンドロール」は、あくまで診療報酬の範囲内で登場人物が動いていて、決して出しゃばらないところが印象的でした。

「ビターエンドロール」3話
「ビターエンドロール」3話
佐倉 フィクションを作る、物語を作るって、物語を消費することにも近いと思います。

 どれだけ物語を気持ちよく消費するかを考えたら、それこそ感動ポルノ的なものに近付けていった方が、「ああなんていい話なんだ、感動した」で終われると思うんですけれど、でもそれが嫌なんです。

――その「嫌」の根源は何なんでしょう。

佐倉 例えばプライベートで誰かと喋ってて、なんか、「あっ分かるよ君ってそういう人だからね」みたいなこと言われた時、めっちゃ腹立つんですよね。

「あー分かる、分かるよ」って、簡単にそう言うのは、ある意味、それ以上分かろうとはしていないってことだと思います。簡単に「分かる」って思うためには、例えば「アルコール依存症ってこうですよね」とレッテル貼りをすることになると思うので。

 でもそうすると、個人の細かいことを置き去りにして「病気」という箱に仕舞ってしまう。たくさん置きざりにしたものがあるのに、「ああ、こういうことなんだ、めでたしめでたし」とされると、それが腹立つのかな。
男社会から排除されそうな主人公にしたかった
――いま、「腹立つ」がキーワードになっているように思いますが、作中で主人公はむしろいつも号泣していますよね。号泣している設定はどこから?

佐倉 今の社会で男の人が感情を表現していくのってまだ足りてないなと思うところがあって。

 感情を表現するにしても、ここまでなら許されるだろうという規範が、どうしても男性の中にあるんじゃないかなと。自分が男性の主人公を描くなら、そういった規範に沿う人じゃなくて、むしろ男性社会だったら排除されそうな人の方が良いと思ってこうしました。


「ビターエンドロール」1話
「ビターエンドロール」1話
 前に知人にそれを言ったら、「でもそういう主人公、新しくないよ」と言われてしまって、それを言われた時は最初、あっ新しくないのか、じゃあやる意味はないのかな、と少しへこんだんですけれど、その後、でもまだ足りてないからいいじゃんって思って。

依存症、生活保護…バッシングを受ける可能性
――依存症や生活保護といったテーマを扱うことで、バッシングを受ける可能性もあるかと思うのですが、その辺りに関してはどうお考えでしょう。

真並 今読んでくださっている方々は、割とこういった題材に関心がある層なので、テーマに対する反発は受けていないですね。でも、もっといろんな人が手に取ってくれるようになると、そういう声ももしかしたら入ってくるかもしれないと思っています。

佐倉 そんなに簡単に人の考え方を変えられるとは思ってないけれど、1回読んだものって、本人が望んでいなくても、多少は血肉になってしまうじゃないですか。

「ビターエンドロール」3話
「ビターエンドロール」3話
 誰かが、私の本を読んでバッシングをしたとしても、その後、その人が手に取る何十冊のうち、「自己責任論って本当に正しいのかな」という本の割合が増えていったら、その人の考え方の振り切れ具合が、中庸くらいにはなるんじゃないかなって思います。そのたくさんの中の1冊になれたら良いなと。

「その人が、そうなってしまったのはなぜ?」
――今、連載が続いている中ではありますが、「ビターエンドロール」全体を通して社会に伝えたいメッセージは?

佐倉 それ、私は先に真並さんに喋ってもらいたい。

真並 私自身は今のところ幸運に、健康に働けている立場の人間なんですけれど、でも周りや自分の身内を見る中で、何か病気や怪我で躓いたり、世間でいうマイノリティ側になった時、生きるのが大変だということは感じていて。何とかしないといけないって思いながらも、じゃあ自分が日々、何ができるのかはよく分からない、と思っている人って、私を含めて多いと思います。


 作品に共通して、当事者の方のことだけでなく、常に周りの人達の理解が必要なこと、周りは何ができるか、という点も取り入れているので、考えるきっかけになっていく本になっていけばいいな、と思いながら作っています。

佐倉 私は、怒っている人達、社会的に声を上げている人達のことを、今までは傍から見ているだけに近かった。今回、自分自身も見つめる契機になる本が出せて良かったと思っています。なんにでも怒っているし、これからも怒って描いていたい。

 他人の状況や人生に、思いを馳せる感じですかね。もし、何か困った状況に在る人をみた時、「その人の問題だから」で済ますのではなく、「その個人がそうなってしまったのはなんでなんだろう?」という問いかけを、なるべく丁寧に積み重ねていきたいです。

「医療ソーシャルワーカー」の存在は、調べる中で知ったと話す佐倉氏・真並氏。ふたりの言葉には、他者への真摯な愛情に裏付けられた怒りと、社会への切実な願いが籠る。

 続く#3では、「ビターエンドロール」2話を特別公開する。

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