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生活保護者の集いコミュのコロナ禍がもたらした“飢餓レベルの貧困”…それでも生活保護を申請しない人々のリアルな“苦悩”とは 『貧困パンデミック 寝ている『公助』を叩き起こす』より #2

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https://bunshun.jp/articles/-/48788#photo_1

 2020年春以降、生活困難な層が急速に拡大し、貧困の現場でも緊急事態が到来した。新宿を中心に路上生活者や幅広い生活困窮者の相談・支援を行う稲葉剛氏が実際に見聞きした窮状とはどれほどのものなのだろう。

 ここでは「市民の力でセーフティネットのほころびを修繕しよう!」を合い言葉に活動する「一般社団法人つくろい東京ファンド」代表理事を務める稲葉剛氏の著書『貧困パンデミック 寝ている『公助』を叩き起こす』(明石書店)の一部を抜粋。飢餓レベルの貧困にあえぐ人々の実情について紹介する。(全2回の2回目/前編を読む)

コピーライトiStock.com
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◆◆◆


従来とは異なる層の人たちが炊き出しの列に並ぶ
 この冬、全国各地で続けられている生活困窮者支援の現場で異変が生じている。

 支援を求めて集まる人が増加しているのに加え、従来とは異なる層の人たちが炊き出しの列に並ぶという現象が起こっているのだ。

 この正月、東京・四谷の聖イグナチオ教会のホールを借りて、「年越し大人食堂」という企画が2日間(1月1日と3日)、開催された。

 仕事が途切れ、公的な福祉の窓口も閉まる年末年始は、生活困窮者にとって厳しい時期である。「年越し大人食堂」は、その時期に温かい食事を介して気軽に相談できる場を作ろうという趣旨で、一年前の年末年始に初めて私たちが企画したものである。この時は、普段、ネットカフェに暮らしている若者や路上生活の高齢者など、各回数十人が集まり、料理研究家の枝元なほみさんが作ってくれた美味しい食事をみんなでいただいた。

 それから1年。コロナ禍の影響で貧困が急拡大する中で開催された今回の「年越し大人食堂」には、元旦に270人、3日に318人と、前年の数倍にのぼる人が集まった。

 コロナ対策のため、今回はお弁当の配布という形になったが、枝元さんがボランティアとともに奮闘し、各回300〜400食ものお弁当を作ってくれ、全員に食事を提供することができた。

 会場には中高年の男性の姿に混じって、お子さん連れで来た人や若者、外国人の姿も目立っていた。話を聞くと、3人家族の全員が食べ物の確保に苦労をしており、各地の炊き出しをはしごして食料を集めている、という声もあった。

 老若男女が食事を求めて列を作る光景は、飢餓レベルの貧困が広がり、私たちの社会の底が完全に抜けてしまっていることを意味していた。それは、これまで生活困窮者支援を27年間続けてきた私も見たことがない光景だった。

行政窓口の年末年始対応が一部で実現、支援の力に
 お弁当が配布されている会場の隣のホールで開催された生活・労働・医療・法律に関する相談会にも、元旦に45人、3日に72人もの方が相談に訪れた。相談会でも、所持金がすでに尽きている、充分な食事も摂れていない等、深刻な内容の相談が多かった。

コロナ禍の影響で貧困が拡大する中で年末年始を迎えるにあたり、厚生労働省は各自治体に対して、通常、閉庁期間となる年末年始も福祉の窓口を開けておくことを依頼していた。この呼びかけに応える形で、東京都内でも一部の区市が年末年始期間も日を決めて窓口を開けるという対応を行った。特に豊島区と江戸川区は、年末年始の6日間、休みなく窓口を開けて、生活保護の申請を受け付けたり、住まいのない人に東京都が用意したビジネスホテルを紹介したりという対応をしてくれた。

 一部の区が窓口を開けてくれたおかげで、年越し大人食堂等、年末年始に各支援団体が開催した相談会では、現場からすぐに行政の窓口に行き、公的支援につなげるという対応が可能になった。

 コロナ禍という特殊な状況とは言え、人々の命と生活を守るために、これらの自治体が積極的な対応を行ったことは特筆すべきことである。こうした動きが来年度以降もぜひ広がってほしいと願っている。


生活保護の利用を忌避する要因は何か
 だが、ここでもネックになったのは、相談者の中に生活保護の申請を忌避する人が多いということであった。

 「生活保護だけは受けたくない。他に方法はないでしょうか」

 昨年春以降、生活困窮者支援の現場で、この言葉を何度聞いたであろうか。

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 年末年始の活動でも、すでに住まいがなく、所持金が数十円、数百円しかないという状態の人から同じ言葉を聞かされる機会が多々あった。

 この忌避感の背景を探るため、私が代表理事を務める一般社団法人つくろい東京ファンドでは、年末年始の各相談会に来ている人を対象に緊急のアンケート調査を実施した。 

 このアンケート調査には、165世帯の回答があり、うち男性は150人(90.9%)、女性は13人(7.9%)、その他・無回答が2人(1.2%)であった。

 アンケートの回答者は食料支援や生活相談のために相談会会場に来ていた方々なので、生活に困窮している状態にあり、ほとんどが生活保護の利用要件を満たしていると推察される。

 しかし、現在、生活保護を利用していると答えた人は全体の22.4%にとどまった。13.3%は、過去に利用していたが、現在は利用していないと答え、64.2%は一度も利用していないと回答した。

 路上や公園、ネットカフェ、カプセルホテル等の不安定な居所に暮らす不安定居住層は、回答者全体のうち52.1%、生活保護利用歴なしの人々の中では54.7%を占めていた。

現在、生活保護を利用していない人(128人)に、利用していない理由を聞いたところ、最も多かった回答は、「家族に知られるのが嫌だから」で34.4%にのぼった。20〜50代に限定すると、「家族に知られるのが嫌だから」は77人中33人(42.9%)にのぼっていた。

生活保護を利用していない理由についての集計結果 図=つくろい東京ファンド
生活保護を利用していない理由についての集計結果 図=つくろい東京ファンド
 多い回答としては、「相部屋の施設に入所するのが嫌だから」(18.6%)があった。不安定居住層では、「相部屋が嫌」をあげた人が74人中21人(28.4%)を占めていた。

「生活保護の制度や運用が以下のように変わったら利用したいですか?」についての集計結果 図=つくろい東京ファンド
「生活保護の制度や運用が以下のように変わったら利用したいですか?」についての集計結果 図=つくろい東京ファンド
 「生活保護の制度や運用が以下のように変わったら利用したいですか?」という問いに対しても、「親族に知られることがないなら利用したい」という選択肢を選んだ人が最も多く、全体の約4割にのぼった。「すぐにアパートに入れるなら利用したい」を選んだ人も約3割いた。


最大の阻害要因である扶養照会
 また、現在、もしくは過去に生活保護の利用歴のある人たち(59人)に、扶養照会に抵抗感があったかどうかを聞いたところ、「抵抗感があった」と回答した人は54.2%で半数以上にのぼった。

生活保護の不要照会に抵抗感があったかどうかについての集計結果 図=つくろい東京ファンド
生活保護の不要照会に抵抗感があったかどうかについての集計結果 図=つくろい東京ファンド
 扶養照会とは、福祉事務所が生活保護を申請した人の親族に「援助が可能かどうか」と問い合わせることである。照会は通常、2親等以内(親・子・きょうだい・祖父母・孫)の親族に対して、援助の可否を問う手紙が郵送される。過去におじやおばと一緒に暮らしていた等の特別な事情がある場合は、3親等の親族に連絡が行くこともある。

 問い合わせの結果、親族が生活保護基準を上回る金額を援助するということになれば、「民法(明治二十九年法律第八十九号)に定める扶養義務者の扶養及び他の法律に定める扶助は、すべてこの法律による保護に優先して行われるものとする。」という生活保護法4条2項の規定に基づいて、親族による扶養が優先されることになる。

 厚生労働省は、DVや虐待があった場合は問い合わせを行わず、20年以上、音信不通だった場合や親族が70歳以上の場合など、明らかに扶養が見込めない場合は問い合わせをしなくてもよいと各自治体に通知をしているが、この通知を遵守せず、「申請したら親族に連絡をさせてもらう」と言って、申請をあきらめさせようとする自治体も一部に存在している。

 生活保護の利用歴のある人からは、この扶養照会について以下のような声が寄せられた。福祉事務所が親族に連絡をとった結果、親族との関係が悪化したと話していた声も複数あった。

・家族から縁を切られるのではと思った。

・親子の関係切れてる人ほとんど。放っておいてほしい。

・知られたくない。田舎だから親戚にも知られてしまう。

・ 困ります。一回きょうだいが迎えに来て困った。その時もお金を一回置いていっただけ。どうにもならない。

・ 以前利用した際、不仲の親に連絡された。妹には絶縁され、親は「援助する」と答え(申請が)却下された。実家に戻ったら親は面倒など見てくれず、路上生活に。

・はずかしい。やるせない。

・嫌ですよ、そりゃね。両親は亡くなってるが、きょうだいはもう別々なので。

・ 嫌だった。追い返され諦めていた。もう一回申請するか悩んでいるが、扶養照会が嫌。

 現在、利用していない人からも下記のような声が寄せられ、この仕組みが制度利用の阻害要因になっていることが浮き彫りになった。

・(親族に)知られたらつきあいができなくなってしまう。

・今の姿を自分の娘に知られたくない。

・都内にきょうだいが4人もいる。扶養を受けろといわれる。

・親があれば親を捨て、車があれば車を捨てる。保護のイメージ。

・親に心配されたくない、地元に戻ってこいと言われかねない。

・扶養照会があるから利用できないでいる。

扶養照会をしても実際の扶養に結びつく例はほとんどない
 私は、扶養照会は生活保護申請のハードルを上げるだけで、有害無益であると考えている。家族関係が希薄化している現代社会では、照会をしても実際の扶養に結びつく例はほとんどないことがわかっているからだ。

 足立区によると、2019年度の生活保護新規申請件数は2275件だったが、そのうち扶養照174会によって実際の扶養に結びついたのはわずか7件(0.3%)だったという。荒川区に至っては、2018年度、2019年度とも扶養照会によって実際の扶養に結びついた件数はゼロであった。都市部の自治体では、どこも同様の傾向にあると考えられる。


 自治体によっては、申請者の親族関係を調査するため、専門の職員を雇用しているところも存在する。それでこの実績なのだから、調査にかけた職員の人件費や、問い合わせのための郵便の送料等がほとんど全部、無駄になったことになる。

撤廃に向け、まずは運用限定を
 私は前時代的な扶養照会という仕組み自体をなくすべきだと考えているが、現在の政治状況ではすぐに完全撤廃することは難しいと判断している。

 2012年には芸能人の親族が生活保護を利用していることを一部の自民党議員が取り上げ、生活保護へのバッシングを展開するという事態が生じた。翌13年には、このバッシングの影響で、福祉事務所が親族への圧力を強化することを可能にする法改正まで行われてしまった。

 扶養照会の完全撤廃は、明治時代に作られた民法を現代に合わせて、どう変えるべきかという議論にもつながるため、時間がかかるであろう。


 そこで、コロナ禍で生活困窮者が急増しているという現実を踏まえ、まず扶養照会の運用を最小限に限定することを求めたい。

 具体的には、生活保護を申請した人が事前に承諾し、明らかに扶養が期待される場合にのみ、照会を実施するとしたらどうだろうか。

 これならば、厚生労働省が新たな通知を発出するだけで実現できるはずだ。

 私たちは、「困窮者を生活保護制度から遠ざける不要で有害な扶養照会をやめてください!」というネット署名を展開している。ぜひご協力をお願いしたい。

(※追記)扶養照会の運用改善を求めるネット署名には約5万8千人が賛同した。こうした声を受け、厚生労働省は2021年2月、音信不通が10年以上続いている等の事情がある場合は扶養照会を行わなくてよいこと、DVや虐待がある場合は親族に連絡をしてはならないこと等を求める通知を地方自治体に発出した。さらに3月末には、生活保護を申請した本人が親族への照会を拒否する場合は、事情を丁寧に聞き取ることを求める通知を発出。本人の意思が一定程度、尊重される運用に改善されることになった。

本書『貧困パンデミック』からの掲載箇所は、朝日新聞社の言論サイト「論座」の長期連載企画『貧困の現場から』を基に編集されたものである

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