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生活保護者の集いコミュの「まず自助」はコロナ禍最悪のメッセージ 政治は「公助」を

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https://mainichi.jp/articles/20210919/k00/00m/010/006000c

 菅義偉首相が自民党総裁選(29日投開票)に出馬せず、退陣する。1年前に目指すべき社会像として「自助、共助、公助、そして絆」「まずは自分でやってみる」と掲げたが、「自助優先」とも受け取られ、批判が上がった。「コロナ禍で困窮が広がった社会への最悪のメッセージだった」と評するのは、ホームレスの人の支援に長年携わってきたノンフィクションライターの北村年子さん(59)。首相退陣を前に、政治が自助を強調したことの影響を振り返ってもらった。【山下智恵/デジタル報道センター】

助けが必要な人の口を塞ぐ発信
 ――菅首相が昨年9月の就任記者会見などで「自助、共助、公助」と発言したことをどう受け止めましたか。


 ◆率直に言って、自己責任論が強化される、困っている人が「助けて」と言いづらくなると受け止めました。「まずは自分でやる」なんて誰でも分かっているのです。でも、つまずいたとき、転んだとき、多くの人は一人では起き上がれない。しかも、発言がなされたのは、新型コロナウイルスの感染拡大で、急速に人々の困窮が深まり、孤立を深めていた頃で、「困ったときは頼っていい」というメッセージが必要な時期でした。そんなときにリーダーがあえて「まずは自分でやりなさい」と、助けが必要な人の口を塞ぐ。最悪のメッセージだったと思います。

自民党総裁選への不出馬を決めた理由などを記者会見で説明する菅義偉首相=首相官邸で2021年9月9日午後7時37分、竹内幹撮影拡大
自民党総裁選への不出馬を決めた理由などを記者会見で説明する菅義偉首相=首相官邸で2021年9月9日午後7時37分、竹内幹撮影
 私が思う「自助」は、自立するためにも、応援してくれる人や居場所の存在、つまり「ホーム」があってこそ成立するものです。ホームレスとはそもそも人ではなく、状態を表す言葉で、家がないという経済的困窮に加えて、助けを求められる家族や友人といった人間関係をなくしている状態です。私はこれまで、性の悩みを話せない少女たちや、子どもをたたいてしまう悩みを抱えた母親たちなど、当事者同士による「自助グループ」を開催してきました。これはアルコール依存症患者の取り組みから始まったものです。当事者が集まり、悩みを語り合い、あるがままの自分を受け止めてもらうことで力を得る。つまり互いにエンパワーメント(力づけ)し合うことで、それぞれが回復の道筋へとつながっていきます。


 自助の根幹にはこうした相互扶助、つまり共助があり、公助が整っていることを前提としています。そこは自己責任を問われる場所ではない。自助とは「自分でどうにかする」ことではなく、こうした支えを持つことのはずです。

自己責任論、福祉につながる障壁に
 ――自助を強調する弊害はどこに表れるのでしょうか。

東京都立代々木公園脇の歩道で炊き出しに並ぶ人々=東京都渋谷区で2021年7月27日午後5時36分、黒川晋史撮影拡大
東京都立代々木公園脇の歩道で炊き出しに並ぶ人々=東京都渋谷区で2021年7月27日午後5時36分、黒川晋史撮影
 ◆菅首相は公助の責任者です。しかし、この間、子どもや女性、ホームレスの人々などの貧困に対し、率先して対策に取り組んできたでしょうか。


 子育て世代の母親たちと話すと、コロナ禍で非正規雇用を中心に軒並み収入減に苦しみ、失業し、さらに子どもの感染への不安ものしかかっています。若者世代すらホームレス化する中、彼女、彼らが頼るのは子ども食堂や生活困窮者に食料を提供する「フードバンク」など民間の活動です。生活困窮者が増加し、民間の支援者が必死で活動する中、生活保護の利用申請件数は微増にとどまっています。

 積極的に受給を勧めるメッセージや、使いやすい制度への改革はありませんでした。他の制度も含め、公的支援が拡充した実感はありません。自助を強調して、公助の部分の責任を丸投げしており、責任放棄です。


フードバンクによる食料支援のテント前に並ぶ大勢の人たち=群馬県高崎市高松町で2021年5月27日、鈴木敦子撮影拡大
フードバンクによる食料支援のテント前に並ぶ大勢の人たち=群馬県高崎市高松町で2021年5月27日、鈴木敦子撮影
 コロナの感染拡大以前から、さまざまな支援の現場で、どれだけ生活保護などの公助を勧めても、なんとか自分で生活をしようとするホームレスの人々やシングルマザーの人と多く出会ってきました。食事にも事欠くのにかたくなに福祉を拒む根本には、菅首相が言う「まずは自分で」に通じる自己責任的な考え方が社会に浸透しているからだと思います。

 政治や社会を覆う経済至上主義の中で「稼ぐ人に価値がある」「頑張っていなければ価値がない」との考えが強化されてきました。菅首相をはじめ、政府の理念もここにあります。この考えは、憲法が保障している「生きているだけで価値がある」という基本的人権の考え方とは相いれず、生活保護をはじめとした福祉につながる障壁になっています。

DaiGo氏の差別発言に通底
 ――8月には「メンタリスト」の肩書で活動し、若者らに人気のDaiGo氏が動画投稿サイトで、生活保護受給者やホームレスについて、貧しさや障害など「厳しい環境で頑張って成功している人」などと比較する形で「ホームレスの命はどうでもいい」などと差別する発言をし、問題になりました。政治の「自助優先」のメッセージは社会の風潮に影響を与えていると思いますか。

差別発言について謝罪する「メンタリスト」のDaiGo氏のユーチューブの画面=2021年8月13日午後10時24分拡大
差別発言について謝罪する「メンタリスト」のDaiGo氏のユーチューブの画面=2021年8月13日午後10時24分
 ◆私は1990年代以降、多くのホームレス襲撃事件を取材してきました。最近では、2020年3月に岐阜市で野宿生活をしていた81歳の男性が複数の少年に襲撃される事件が起きました。人命が失われる事件は7年以上途絶えていただけに衝撃でした。これまで襲撃事件の裁判や加害者との面会、文通などを通して、加害する側の内面を見つめてきましたが、DaiGo氏の差別発言は、まさに襲撃する側の心理を象徴するようなものでした。

複数の少年に襲撃されて亡くなった81歳の男性が暮らした橋の下には、事件から1年がたっても花が供えられていた=岐阜市河渡の長良川河川敷で2021年2月28日午後2時56分、熊谷佐和子撮影拡大
複数の少年に襲撃されて亡くなった81歳の男性が暮らした橋の下には、事件から1年がたっても花が供えられていた=岐阜市河渡の長良川河川敷で2021年2月28日午後2時56分、熊谷佐和子撮影
 彼らは競争にさらされ、比較し合い、優秀でない自分を卑下する。人より優位に立たないと価値がないと考え、挫折や負けを許せない。そんな自己否定の中で増幅した無意識の劣等感から、より弱くて頑張っていないように見えるホームレスの人に対して憎悪を発散することで事件が起きています。他人を見下す意識は、まず自分の劣等感から生まれているのです。岐阜市の事件でも、襲撃した元少年の一人は、野球推薦で大学に入り、けがで野球部を退部後に大学も退学するという挫折をしています。

 DaiGo氏の一連の発言を見ていても「自分はこれだけ頑張っている」という自負と、一方で高い人気や収入を得てもなお、命の価値を比較して優劣をつけずにいられないような哀れさも感じるのです。生活保護への偏見や反発もこういった価値観から生まれています。勝たなければ、努力をしないと価値がない、という感覚は、広く社会に浸透しています。その意味で、菅首相の発した「まずは自助」のメッセージと、DaiGo氏の発言は根底では通じるのです。今に始まったことではありません。

「まず公助」の政治を
 ――「自助、共助、公助」の在り方について、自民党総裁選、その後の衆院選で、どのような議論をすべきだと思いますか。政治から、どのようなメッセージを発すべきだと考えますか。

「たからづか子ども食堂」で振る舞われた握りずし=兵庫県宝塚市安倉西2で2020年11月16日午後6時36分、土居和弘撮影拡大
「たからづか子ども食堂」で振る舞われた握りずし=兵庫県宝塚市安倉西2で2020年11月16日午後6時36分、土居和弘撮影
 ◆先に述べたように「まずは自助」は国民に対する政府の責任放棄。この考えを踏襲するのか、あるいは「よく耐えてくれた。今度こそまず公助でやる」と本気で国民を守るのか、明らかにしてほしい。

 私の原点は12歳の頃。病気で働けなくなった父親に対して「大人なのになんで働けないの?頑張れないの?」と責めてしまったことです。父はその後、命を絶ちました。その後悔が深く心に残っています。「助けてと言っていい」「生きていてくれるだけで、ありがとう」と全ての人に伝え続けていきたい。

 国は、私たちが苦しいときにこそ力をくれる「ホーム」であってほしい。追い詰められている人をさらに追い詰め、助けを求めようとする口を塞ぐようなメッセージだけは送らないでほしいと思っています。

きたむら・としこ
ホームレスの人の支援に携わるノンフィクションライターの北村年子さん=本人提供拡大
ホームレスの人の支援に携わるノンフィクションライターの北村年子さん=本人提供
 1962年、滋賀県生まれ。文芸誌・女性誌の編集者を経てノンフィクションライターに。ホームレスの人の支援活動に長年携わる。各地で相次ぐホームレス襲撃事件を取材し、「ホームレス問題の授業づくり全国ネット」を2008年に設立、代表を務める。著書に「『ホームレス』襲撃事件と子どもたち いじめの連鎖を断つために」など。

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