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生活保護者の集いコミュの一貫した「麦踏み」の発想 退陣する菅首相 小田嶋隆さんに聞く

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https://mainichi.jp/articles/20210909/k00/00m/010/129000c

「菅さんに一貫していたのは、弱い立場の人への感受性の乏しい『麦踏み』の発想ではないでしょうか」。退陣の意向を表明した菅義偉首相についてこう評するのは、コラムニストの小田嶋隆さん(64)。7月下旬に脳梗塞(こうそく)で救急搬送され、約3週間、入院した。幸いにも経過は順調で仕事に復帰できたが、病を得て改めて思うのが、菅首相の政治姿勢の怖さという。就任1年で退陣することになったが、その言動が社会に残した影響は小さくないと感じている。【金志尚/デジタル報道センター】

7月に脳梗塞で救急搬送
 「もうすっかり良くなりました。入院したときはしゃべりも怪しかったし、右手と右足が若干不自由だったんですけど、みるみる回復して。血栓を溶かす薬がよく効いたようです」


 オンライン取材の画面越しに記者と向き合った小田嶋さんは開口一番、こう切り出した。顔色も良さそうだ。

脳梗塞を発症し、入院中の小田嶋隆さん=東京都内の医療機関で2021年8月3日、本人提供拡大
脳梗塞を発症し、入院中の小田嶋隆さん=東京都内の医療機関で2021年8月3日、本人提供
 異変に気づいたのは7月27日午後2時ごろ。「自宅のパソコンでツイッターを見ていたのですが、うまく字が読めないんです。何か変だぞと、すぐに(119番の)電話をしました」。東京都内の医療機関に搬送され、即入院。最初の3日間は高度治療室(HCU)に入り、予断を許さない状態だった。その後は徐々に回復し、転院を経て8月13日に退院した。


 後から振り返ったとき、重要だったのが入院したタイミングだ。新型コロナウイルスの都内の新規感染者数は、7月23日の東京オリンピック開幕とともに急増し、7月31日には初めて4000人を突破していた。

 「私は救急車を呼んでから20分ほどで病院に搬送されましたが、あと3、4日発症が遅かったらどうなっていたか。(コロナ感染者からの)救急要請がかなり立て込んできていたので、救急車がすぐに来なかったかもしれません。だから結果から言えば幸運でした。もし3時間とか待たされていたら、面倒な後遺症が残った可能性もありましたから」


 脳梗塞は部位は違うが2年前にも発症しており、今回が2度目。入院中は、普段あまり考えないことに思いを巡らす機会になったと振り返る。

 「日常生活では2週間以上先のことはあまり意識しないじゃないですか。私の場合は、仕事のことなど1週間単位でしか考えていませんでした。だけど入院すると急にその時間軸が変わるんです。『10年前、自分はどうやって生きていたんだろう』とか『5年後に俺はどうしているんだろうか』とか、何年、何十年という単位でものを考えるようになるんです」


 図らずも、人生の意味といった根源的な問いに向き合うことになった小田嶋さん。病室にテレビはあったが、東京オリンピックの中継は一切見なかった。そもそも見る気が起きなかった。一方、コロナ感染者が急増していることはニュースなどで伝わっていた。医療体制は日々逼迫(ひっぱく)の度を深め、タイミング一つ違えば自分もどうなっていたか分からないと知った。

病を経て思う自助優先=政治の「企業化」の怖さ
 無事に元気になれたが、病人という弱い立場になり、菅首相が昨年10月の所信表明演説などで目指す社会像として強調した「自助・共助・公助」という順番に、改めて恐ろしさを感じたという。

小田嶋隆さん=東京都千代田区で2020年10月6日、武市公孝撮影拡大
小田嶋隆さん=東京都千代田区で2020年10月6日、武市公孝撮影
 「何か困ったときや、苦しいときに公である国が手を差し伸べてくれることが、国が国としてあり、私たちがその国の住人であることの意味じゃないですか。そこを、まず自助、つまり『転んだら自分で起きろよ』と言うんだったら、その国の住人である必要はありません」

 自助を優先し、公助を後回しにするというのは、すなわち無駄を省き、選択と集中によって物事を進めることだと、小田嶋さんは捉えている。

 「政治を企業経営みたいに合理的にやろうよ、という新自由主義的な発想です。不採算部分を削るなり、人を減らすなりすれば、経営がスリムになります。企業なら弱い部分をどんどん切り捨てて、強い部分だけを強化すれば生き残っていける部分があるかもしれません。でも、政治がそれを言ったらおしまいです。弱い者も弱くない者も、病気の人もそうでない人も全部包摂して、国というものがあるわけだから。社会的包摂と言われるものを持たないとなると、国は成り立ちません」

やまゆり園事件にも通じる考え
 菅首相は、実業家や企業経営者などを重用し、政府の有識者会議のメンバーとして起用するなどしてきた。その中には庶民感覚からかけ離れた言動をしてきた人もいる。菅氏のブレーンと言われる竹中平蔵パソナグループ会長(慶応大名誉教授)は昨年10月のテレビ番組で、「正規雇用と言われるものはほとんど首を切れない。首を切れない社員なんて普通雇えない。それで非正規というものを増やしていかざるを得なくなった」と発言した。

 今年8月に政府の規制改革推進会議の議長に選ばれた夏野剛・KADOKAWA社長(慶応大特別招へい教授)は、2012年にツイッター上で「税金を払っていない人の2倍の投票権を、税金を払っている人に与えていい」との考えを示した。こうした言葉からうかがえるのは、弱い人の立場を軽視した、経済合理性や生産性重視の考えだろう。

 小田嶋さんは「菅さんは、同様に新自由主義的な主張をしている日本維新の会の幹部とも仲が良いので、思想的にはそっち側なのでしょう。だけど、それで結果的にどうなるかというと、福祉とか社会保障がどんどん削られて国民が疲弊し、結果的に国の体力も落ちていくということだと思います」と話す。

自民党臨時役員会に臨む菅義偉首相(右)と二階俊博幹事長。菅首相は党総裁の任期満了に伴う総裁選に立候補しない考えを表明した=東京都千代田区の同党本部で2021年9月3日午前11時34分、竹内幹撮影拡大
自民党臨時役員会に臨む菅義偉首相(右)と二階俊博幹事長。菅首相は党総裁の任期満了に伴う総裁選に立候補しない考えを表明した=東京都千代田区の同党本部で2021年9月3日午前11時34分、竹内幹撮影
 その行き着く先として懸念されるのは、人の生きる価値を「国や経済成長への貢献」や「納税額」といった尺度で判断する世の中だという。

 「それは本当に恐ろしい話で、(相模原市の障害者施設)津久井やまゆり園で入所者らが殺傷された事件にも通じます。病人であれ身体障害者であれ、あるいは余命が5年であれ10年であれ、その人にとっての人生というのは別に他人に決めてもらうことじゃない。自分の人生に価値があるのかないのかは、政権や企業経営者に決めてもらいたくないわけです。当たり前の話です」

麦畑全体の強度を上げる発想
 収束が見えないコロナ禍を巡って、菅氏は今年8月に入院対象を制限する方針をいったん打ち出した。与党内の反発もあって方針自体は修正されたものの、現実問題として自宅療養者は全国で増加。「療養」と言えば聞こえは良いが、保健所が把握していないなど「放置」に近いケースも報じられている。小田嶋さんは、コロナ禍でいよいよ人々に「自助」が強いられているとみる。

 「極端に言うと、人を助けても本人のためにならないよ、みたいな考えが新自由主義者の行き着くところだと思うんです。その意味で菅さんは、弱い人間は死ぬんだぐらいに思っているような部分、ニヒルな発想の怖さがあるように感じます」

 「いわゆる『麦踏み』と同じ理屈ですね。弱い麦は踏んでいるうちに死ぬけれど、強い麦は生き残る。だから麦畑全体の麦の強度はやがて上がるんだと。だけど、それを人間社会に応用したらダメなわけで、だから国民皆保険制度があって、年寄りだって病人だって生きている限りは面倒を見ますよ、という建前で今まで動いてきたわけです。人が生きるってそういうことじゃないですか。でも菅さんは、そういうところに対する感受性が非常に乏しい人なのかなと思ってしまいます」

DaiGo氏が差別発言する雰囲気
 国のトップが示す姿勢も影響しているのだろうか。社会の風潮にも薄気味悪さを覚えるという。

 8月には「メンタリスト」の肩書で活動するDaiGo氏が動画投稿サイトの「ユーチューブ」で、「僕は生活保護の人たちにお金を払うために税金を納めてるんじゃない。生活保護の人たちに食わせる金があるんだったら猫を救ってほしい」「自分にとって必要のない命は、僕にとって軽い。だから別にホームレスの命はどうでもいい」などと発言した。批判を浴びて謝罪したものの、こうしたことを平然と言えてしまうDaiGo氏が、若者らに人気のユーチューバーとして名をはせている現実がある。

 「下手を打って、何か口走っちゃったように見えるけど、彼にそう言わせている部分があると思うんですよ。(背後に“闇の勢力”がいるという)陰謀論めいたことではなくて。今の政権の姿勢や雰囲気が、ああいう人気を意識している、(34歳と)若いDaiGo氏に『こういう考えもある』と言わせているところがある、という意味です。実際、彼のような立場の人間からぽろりと漏れたということは、あの手の考えを持っている人が多少なりともいるということの表れだと思います。弱い者は死ねよ、国に甘えるんじゃないよ、国から何かもらおうと思っている人間はさもしいぞ、と。そんなふうに考えている人たちが増えている気がしてなりません」

メダリストへの祝福すら原稿頼みか
東京五輪の柔道男子60キロ級で金メダルを獲得した高藤直寿選手と電話で話す菅義偉首相=首相公邸で2021年7月25日午前9時1分(代表撮影)拡大
東京五輪の柔道男子60キロ級で金メダルを獲得した高藤直寿選手と電話で話す菅義偉首相=首相公邸で2021年7月25日午前9時1分(代表撮影)
 小田嶋さんは、政治家は説明責任と結果責任という二つの責任を負うと考えている。菅首相に決定的に欠けていたと指摘するのが、説明責任だ。

 そもそも用意された原稿を読むことが多く、日本学術会議の任命拒否問題では「総合的・俯瞰(ふかん)的に判断した」、コロナ下で強行した東京オリンピックを巡っては「安全・安心な大会を目指す」といった具合に、抽象的なフレーズを連発する姿が目立った。

 「官房長官時代にはいろんな不祥事にフタをする意味で、質問に正面から答えなかったり、『指摘は当たらない』と木で鼻をくくる対応を取ったりしたことが、『鉄壁』と言われていました。本当はあっちゃいけないことですが、官房長官の立場としてあり得ると思うんですよ。質問を突っぱねるガード役として、内閣を守る外壁として機能するという部分もないわけじゃないから。そういう意味で鉄壁と言われたのは、私は評価しないけど、当たらずとも遠からずというかね。でも自分が首相になってもそれじゃあ、しょうがないでしょと。国のトップが何も説明しないなんて、そんな民主主義の国が他にありますか」

 最も印象的だったのは、東京オリンピックの金メダリストに電話で祝意を伝えたときだという。菅首相は選手との通話中も時折視線を下に落とし、原稿を確認しているように見えた。

 「恐らくそのときも紙を読んでいたのでしょう。それをカメラに撮らせちゃっているのには本当にビックリしました。ねぎらいの言葉を掛けるときですら手元に原稿がないと話せない。その印象を国民に与えることを恐れていないことになります。説明能力の欠如を自分で認めているようなもので、首相としてはもちろんですが、政治家としても致命的です」

水に流さず、菅政治の総括を
 1年という短命に終わる菅政権だが、うやむやにしてはならないのが、その総括だ。

菅義偉首相の自民党総裁選不出馬について、目を潤ませながら記者団に話す小泉進次郎環境相=首相官邸で2021年9月3日午後5時55分、梅村直承撮影拡大
菅義偉首相の自民党総裁選不出馬について、目を潤ませながら記者団に話す小泉進次郎環境相=首相官邸で2021年9月3日午後5時55分、梅村直承撮影
 菅首相が自民党総裁選(9月17日告示、29日投開票)への不出馬を表明した3日、小泉進次郎環境相は記者団の取材に「私がすごい悔しいのは、総理が人間味のない方だと思われてる節があることです。全く逆で、温かい方ですね。懐深い方で、息子みたいな年の私に(身を)引くという選択肢まで含めて話をする。私に対して、常に時間を作ってくれて。感謝しかないです」と語った。目には涙が浮かび、そのシーンは繰り返しテレビで流れた。

 「あ、こういうところで点を取りにいくんだと思った」。小田嶋さんは小泉氏をそう皮肉りながら、日本社会特有の空気を説明する。「この国では去って行く人間に情を示すのは得点になるんですよ。逆に言えば、辞めると言っている人に石を投げると損をする。人間として品がないぞという話になるわけです」。その上で、「だけど」と続けた。

 「辞めるからこそ、この1年の菅政治って何だったのかを総括しないといけないはずです。総括できないのがメディアも含めた日本のすごく大きな弱点で、だから戦争責任も曖昧になっているじゃないですか。『もう済んだことはいいじゃないか』とか、『水に流そうじゃないか』という感覚が日本にはあります。実際、メディアの関心はもう『総裁選に誰が出るんだ』ということに集まっています。家庭の話に例えるなら、今は冷蔵庫が壊れてしまった状況なんですよ。どこが悪かったのかという話は家族の誰も興味がなくて、今度どんな冷蔵庫を買おうだとか、こんな機能がほしいだとか、そんな話ばかりに夢中になっている」

 刻々と状況が変わる政治については、なおのことメディアや国民は新しい動きばかりを追いがちになる。

 「でも水に流したら絶対にダメです。菅政治に対するきちんとした分析をして、菅義偉とは日本の歴史の中でどういう政治家だったのかという結論を出さないと、次の日本はやってこない。そこを曖昧にしたまま、何となく『あの人は辞めたね』『辞めた人の悪口を言うのは上品じゃないよね』という感じで、その場の雰囲気に流されて行くんだとしたら、この国はもうおしまいじゃないかと思っています」

おだじま・たかし
 1956年、東京都生まれ。食品メーカー勤務などを経て文筆業を開始。著書に「ア・ピース・オブ・警句」「小田嶋隆のコラムの切り口」「日本語を、取り戻す。」「災間の唄」など多数。

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