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生活保護者の集いコミュの人命軽んじる五輪開催に私は怒る 貧困の現場からの訴え

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https://www.asahi.com/amp/articles/ASP8272DCP81UCFI001.html

 いま爆発的に増えているのはコロナ感染者だけではない。貧困もかつてない速さと広がりで拡大している――。長年、生活困窮者支援の活動に取り組んできた一般社団法人「つくろい東京ファンド」代表理事の稲葉剛さん(52)はそう言います。貧困支援の現場の最前線はどんな状況か、そこから見えるものは何かについて聞きました。

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東京・新宿駅西口の地下道。ここで多くの路上生活者の死に出会ったことが活動の原点だ。そして、「つくろい」設立のきっかけは東京五輪の開催決定。過去、五輪の開催都市では路上生活者が排除されてきたが、それを許さない決意だった=東京都新宿区、相場郁朗撮影
 ――東京五輪が後半にさしかかるなか、東京のコロナ感染拡大に歯止めがかかりません。

 東京五輪の開催が引き金となって人の流れが増え、感染が拡大するのは予想されたことであり、私は昨年から「五輪どころではない」「五輪中止」と言い続けてきました。いま、国力のすべてを、感染対策と貧困対策に注力しないと大変なことになる、と。

 私が一番恐れているのは、感染が拡大することでコロナの終息が遅れ、雇用の回復が遅れると、貧困がさらに拡大することです。五輪の開催が強行されたことによって、感染による死者だけでなく、貧困によって死に追い込まれる人が増える。人命が軽んじられている政治に怒りをおぼえます。

自殺はどこまで増えるのか
 ――コロナの感染はおさまっても、貧困によって命を失うと。

 リーマン・ショックの時もそうでしたが、人によって経済危機の影響を受けるのにタイムラグがあります。貯金があったり、親元に戻ったりしていて、1、2年たってから影響が出てきて、困窮する人も少なくない。

 東大の仲田泰祐准教授らのグループが公表した最新の試算では、昨年3月から今年5月までに国内の自殺者はコロナ禍前の予測より約3200人増えています。また今年6月から2024年末までの失業による自殺者がコロナ禍前の予測と比べて2100人増えると指摘しています。失業率以外の要因も含めると、5千人増えることもありうるとのことです。

 給付金などの支援が打ち切られ、社会福祉協議会の特例貸し付けなどの返済が始まると、厳しくなる人が出てくるでしょう。

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つくろい東京ファンドが入居するビルの屋上からは、フィールドとなる中野区の町を見渡すことができる=東京都中野区、相場郁朗撮影
 ――国の「支援」が生活困窮者の負担になる。

 コロナ禍で、政府の最大の貧困対策が、他の先進国のような現金給付ではなく、貸し付けだったことの弊害はあまりに大きいと私は言っています。

 政府は特例貸付制度の拡充で急場をしのごうとして、貸付額を200万円まで増額しました。申請件数は急増し、貸し付けの二つのメニューの総額は1兆円を超えましたが、これは返済しなければならない金です。住民税が非課税の世帯は返済が免除されますが、この条件に当てはまるのは極めて低所得の人であり、年収200万円ぐらいのワーキングプアの人でも免除の対象にならない。「国が生活困窮者に借金を負わせてどうするのか」「貸し付けではなく、現金給付を」と私はずっと言っています。

炊き出しにあふれる人々
 ――「社会の底が抜けた」ともおっしゃっています。

 私たちと連携しているホームレス支援団体、NPO法人TENOHASIが池袋で行っている炊き出しに集まる方はコロナ前は160〜180人だったのが、今年になると300人を超え、五輪開幕翌日の7月24日は400人近くになりました。都内の他の炊き出しに並ぶ人も、コロナ前の2〜3倍になっています。

 コロナ前は、並ぶ人のほとんどが中高年男性でしたが、いまは世代、性別、国籍を問わない。1994年から貧困の現場に立っていますが、これほど多様な人が困窮している状況は見たことがありません。

 とくに目立つのは非正規雇用の若者、女性、外国籍の方です。コロナ前から社会で脆弱(ぜいじゃく)な立場に置かれていた人たちが直撃を受けている。貧困は社会の差別や不平等を増幅する形で進行していますが、これは世界でほぼ共通してみられる現象です。コロナが、格差を拡大する「不平等ウイルス」と呼ばれるゆえんです。

 相談に来られる女性は非正規雇用で解雇された方、シングルマザーの方が多い。安倍政権下、「女性活用」の名のもと雇用が増えたけれど、その多くが不安定な非正規雇用だったことが改めてわかります。

 外国籍の方はナイジェリア、カメルーンなどアフリカ諸国、ミャンマー、トルコなどアジア諸国の人たち。難民申請中の方は、仮放免中は就労が認められず、生活保護などの公的支援も受けられないため、困窮の度合いが高い。外国人技能実習生の失業はあってはならないことですが、「コロナ禍で解雇され、泊まるところもない」という相談が増えています。

 女性も外国籍の方の貧困も、コロナ禍前から社会にあったけれど、見えづらかった。それがコロナのパンデミック(世界的大流行)が日本に上陸すると歩調をあわせるかのように一気に可視化され、拡大しているという状況があります。

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つくろい東京ファンドのミーティング。協力するクリニックの看護師やボランティアたちが参加し、支援する生活困窮者の一人ひとりの情報が共有される=東京都中野区、相場郁朗撮影
ステイホームなんてできない
 ――「ステイホーム」したくても家がないという人が多い。

 昨春、緊急事態宣言でネットカフェが休業要請対象となると、4千人のネットカフェで生活している人々が行き場を失うという大変な事態になりました。他の支援団体の方々とともに、東京都にビジネスホテルを一時的に提供するよう緊急要請した結果、都がホテル確保に踏み切ったという経緯があります。

 都が生活困窮者にホテル個室を提供したのは画期的でした。ただ「確保した」ものの、あとで内容がわかると厳しい条件が付けられていて、とても使えるものではなかった。私たちは都に何度も抗議、申し入れをし、なんとか使えるようにしました。

 いまも都の一定期間のビジネスホテル提供は続いていますが、広報が不十分なため、使用は限定的です。都に限らず、行政側には「支援を届ける意思があるのかな」と思うことは多いです。

 ――困窮者からのSOSはどのようにキャッチされているのですか。

 「つくろい東京ファンド」では昨春の緊急事態宣言直後、行き場を失った人たちは、メールであればフリーWifiのあるところで使えると考えて、メールでの相談窓口を設置しました。「所持金が数十円しかない」「今日から野宿するしかない」……。2カ月で170件も寄せられました。昨年6月以降は、40以上の支援団体からなるネットワーク「新型コロナ災害緊急アクション」で受けていますが、600件以上の相談がきています。最近は「コロナで疲れきった。死ぬことを考えている」という若者の声が増えています。

 所持金がない人など、緊急性の高いSOSにはこちらから駆けつけ、生活保護などの公的支援につなぎ、安定した生活を送れるようになるまで、一人一人をサポートしています。

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ホームレスだった男性がしばらく利用したアパート(シェルター)を退去した。稲葉剛さんは寝具などを整えて次の入居者に備える=東京都中野区、相場郁朗撮影
 ――安定した生活を送るためのサポートとは。

 私は住まいの貧困の問題にこだわっているので、住まいに関わるサポートを重点的に行っています。本人が希望すれば、自分名義の住まいに入ってもらうよう支援します。路上生活者支援に携わってきた体験から、私がたどり着いたのは「住まいは基本的人権である」ということ。その理念のもと、プライバシーの保たれた住まいの確保を最優先にする「ハウジングファースト」という支援策を提唱しています。それは、感染防止の点でも有効なんですね。

 行政が誘導する民間施設は劣悪な環境の相部屋であることが多い。住みづらく、人間関係のトラブルに巻き込まれたりして、結局、路上生活に戻る人は少なくない。

 2014年に設立した「つくろい東京ファンド」では空き家・空き室を活用して、住まいを失った人たちを受け入れる個室(シェルター)を運営しています。生活困窮者の方に提供し、3、4カ月間、そこで生活をたて直してもらい、自分の住まいを確保できるようサポートしています。

 実は、設立のきっかけは13年の東京五輪開催決定なんです。これまで五輪の開催都市で路上生活者の排除が繰り返されてきたけれど、それで終わらせてはならないという危機意識が私のなかにあって。たまたま、ビルのワンフロアを安く貸してくださる方がおられ、クラウドファンディングでお金を集め、個室シェルターを開設することができました。昨春までは25室でしたが、コロナ禍で、臨時に59室まで増やしています。

 着の身着のままでも生活できるよう寝具と家電一式が備えてあり、ペット同伴でも入れる部屋も4室あります。どの部屋も満室で、数時間で、次の人が入ってくるという状況です。これまで140人以上がシェルターで自分の生活を立て直し、自分名義の住まいへと移って行かれています。運営費のほとんどは個人からの寄付でまかなっています。

生活保護バッシングとたたかう
 ――「生活保護は権利」として、活用されるよう改善を求めています。

 生活困窮者の方が使える支援制度となると、やっぱり生活保護になるんですね。最後のセーフティーネットとしてもっと使われるべきです。

 過去に3千人以上の生活保護の申請に同行しました。昨年4月にはコロナ禍で福祉事務所の窓口に出る職員が減らされるなか相談者が殺到し、「医療崩壊」ならぬ「福祉崩壊」が起こりました。福祉事務所の窓口で相談に来た人を追い返したりする水際作戦も頻発しています。何度も行政側に抗議・改善の申し入れに足を運びました。

 厚生労働省に生活保護に関する広報の強化を何度も申し入れてきましたが、その結果、昨年12月、厚労省のホームページで「生活保護の申請は国民の権利です」というメッセージが初めて掲げられました。当然のことですが、厚労省が権利として認めたのは大きいと思います。オンライン申請も導入してほしいと厚労省に要望していますが、こちらはまだ実現していません。そこで「つくろい」では「フミダン」という生活保護申請支援システムのサイトもつくり、申請へのハードルを下げるようにしています。

 ただ困るのは、所持金が数十円となっても「生活保護だけは使いたくない」という声が多いこと。「生活保護バッシング」でみられたような、制度への偏見や誤解は根強い。

 最大の阻害要因となっているのは、生活保護を申請すると親族に援助の可否を問いあわせる「扶養照会」だと思います。今年1月から扶養照会の運用の見直しを求める署名をネットで集めて厚労省に提出しました。累計で5万8千筆です。声が届いたのか、厚労省は扶養照会の運用を一部見直す通知を出しました。福祉事務所職員の事務マニュアルも改訂され、問答無用で親族に連絡することは一応、できなくなりました。

 ――支援制度の欠点を見つけるたびに改善するべく、厚労省、都庁、区役所に足を運び、交渉しています。

 私たち民間の支援団体が奔走しないといけないのは、行政の支援、セーフティーネットのほころびからこぼれ落ちる人が大勢いるからです。「つくろい東京ファンド」の「つくろい」とは、このほころびを繕う、という意味です。

 ただ、住居支援などは、本来は行政が行うべきものだと思います。この1年間、民間の支援団体は連携しあい力をふり絞り、頑張ってきました。市民の支えあいの意識、共助も高まっているとは思いますが、自助・共助ももう限界です。政府の姿、公助がまったく見えません。

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支援していた人々が眠る墓を訪れた稲葉剛さん。自身もこの場所に入ると決めているという=東京都台東区、相場郁朗撮影
コロナ後を見据える
 ――コロナ禍が終息したあと、貧困をめぐる状況はどうなるのでしょう。

 「ハウジングファースト」や生活保護の運用改善とか、十分ではないけれど、コロナ禍で達成した活動の成果があります。ただコロナが終息すると、一気に元へ戻るのではないかと、最悪の事態を想定しています。かつてリーマン・ショックのあとに貧困対策が拡充されたあと、激しい生活保護バッシングがおこったように。

 コロナ禍の苦しみを忘れてしまいたいという空気が社会全体を覆い、自己責任論が復活、貧困対策も「コロナ禍の特例措置だった」ということで縮小され、緊縮財政路線が復活するおそれがあります。

 ――バックラッシュ(揺れ戻し)ですね。厳しいですね。

 希望もあります。昨年11月に東京の幡ケ谷で路上生活をしていた女性が殴打されて亡くなるという痛ましい事件がありましたが、そのあと、私たちのところへ、路上生活者の支援情報をまとめた冊子をほしいという問いあわせが殺到したのです。「自分の近くに野宿している方がいる、自分にできることを教えてほしい」という声もたくさんありました。いままでは見えていなかった路上生活者の姿を見て、声をかけるなど行動に移している人たちがいます。

 コロナ禍では自らの生活圏に突然現れた貧困に対して、目の前から排除したい、見て見ぬふりをしたいという動きと、直視して自分にできることをしたいという動きがせめぎあっているように感じています。

 大事なのは、コロナ禍で露呈した社会の構造的な問題から目をそらさずに直視し続けること。そして、コロナ禍の人々の痛みを忘れようとする動きに対しては声をあげ、社会の中にせめぎあいをつくり続けることだと思っています。

稲葉剛さんの略歴
 いなば・つよし 1969年広島市生まれ。94年、東京・新宿の路上生活者支援をきっかけに生活困窮者支援活動に取り組む。2001年、「自立生活サポートセンター・もやい」を設立。14年、一般社団法人「つくろい東京ファンド」設立、代表理事に。認定NPO法人ビッグイシュー基金共同代表、立教大学大学院客員教授。近著に「貧困パンデミック 寝ている『公助』を叩き起こす」(文・林るみ 写真・相場郁朗)

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ホームレス経験者の社会的孤立を防ぐための居場所として運営する「カフェ潮の路(みち)」で。パートナーで「つくろい東京ファンド」のスタッフ小林美穂子さん(右)がおかみ=東京都練馬区、相場郁朗撮影

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