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生活保護者の集いコミュの「どないしたん?」73歳男性が家賃滞納で強制執行…荷物撤去の最中、現場が凍りついたワケ【司法書士の実録】

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https://news.yahoo.co.jp/articles/544b88961bcde204d6e327489cf4cbab07385869

高齢者の「家賃滞納」問題。強制執行による立退き当日、賃借人は何を語ったのか。 ※本記事はOAG司法書士法人代表・太田垣章子氏の書籍『 老後に住める家がない! 』(ポプラ社)より一部を抜粋・編集したものです。

築60年超「今にも崩れそうな長屋」に住む73歳男性
手ぶらで歩いて外出しては、自転車に乗って帰ってくる賃借人がいました。賃借人の名前は、鮎川健一郎(73歳)さん。身寄りもなく、一人でこの長屋の1軒に住んでいます。

4軒長屋の建物は、築60年以上。設備も古いため、鮎川さん以外の3軒は、新しい部屋へと転居していきました。不動産は生き物とはよく言ったもので、4軒中1軒しか使われていないせいか築年以上に建物は傷み、今にも崩れ落ちそうな勢いでした。

鮎川さんが乗って帰ってきた自転車は、長屋と隣の家とのフェンスの隙間に次々と置かれていきます。狭い敷地に建っている長屋なので、置けるスペースは限られていて、あっという間に隙間がなくなるほど自転車で埋め尽くされてしまいます。そうすると次からは自転車の2段重ね。自転車の上に、自転車が。さながら自転車のテトリスのようでした。

そもそもこの自転車、鮎川さんはなぜ乗って帰ってくるのでしょうか。無造作に積まれて使われていない状況から推測すると、「欲しかったから」「乗りたいから」という理由ではなさそうです。

盗難届が出された自転車を捜すため、警察の方は何度もこの自転車館を確認しに来られました。重なりあった中から探し出すのは至難の業ですが、それでも何台かは埋もれていたのです。ただその自転車が、誰かが盗んでその場に置いたのか、それとも鮎川さん自身が盗んだのか、決定的証拠もないため逮捕はされず警察も様子を見るということでした。

敷地の反対側は細い路地になっていて、通る人々から「積み上げられた自転車のせいで見通しが悪い」などの苦情まで来るようにもなりました。

警察がしょっちゅう自転車を確認しに来る、近隣からもクレームが来るでは、家主もたまったものじゃありません。何とか退去させられないかという相談を受けました。

母と二人暮らしだった鮎川さん。家賃の滞納額は…
話を聞いてみると、鮎川さんはこの長屋が建てられた時からの賃借人。40m2ほどの部屋に、母親と二人で住んでいました。

お母さんは20年ほど前に亡くなり、以来鮎川さん一人がここで日々過ごしています。おそらく一度も結婚はしていないのでしょう。若い頃にどこで働いていたのか、どんな仕事をしていたのか、家主は知りません。

理由は家主側の世代交代です。5年ほど前の相続で、この不動産を取得したのですが、それまでの対応はすべて先代の家主。管理会社を通さず自主管理だったので、当事者以外は何も分からず、引き継ぎもないまま亡くなってしまいました。

そのため家主は親から不動産を取得し、賃貸人たる地位を承継しながら、契約書に記載されていること以外は何も分からなかったのです。

家主が相続した段階ですでに鮎川さん以外は空室状態だったので、取り壊したいと申し出ましたが「先代の家主さんは、そんなこと言っていなかった。相続で受けたからって、すぐに出ていけとは何たることか」と反論されてそのままになってしまっていました。

敷地に自転車が積まれるようになったのは、それから1、2年経った頃です。

73歳と言えば年金世代ですが、鮎川さん自身がきちんと受給しているのか定かではありません。というのも家賃の支払いがまちまちで、安定的な収入があるとは思えなかったのです。日本の高度成長を支えた世代ですが、年金を納めていなかったのでしょうか。

自転車が増えてくるのと同時に、家賃も払われたり払われなかったり。もしかしたら若干の認知症も、入っていたかもしれません。気が付いたら5万円の家賃のところ、滞納額はすでに70万円を超えていました。

そこで家賃を払っていないことを理由に、建物明け渡しの手続きを進めていくことにしました。

「鮎川さんが警察にいるらしい」…まさかの事態が発生
鮎川さんはこちらからの書面を受け取っても、何も言ってきませんでした。私が会いに行っても、不在なのか居留守を使われているのか、一向にコンタクトが取れません。置手紙をしても、事務所に連絡もありませんでした。

この間にも敷地内の自転車は、日に日に増えていっていました。

訴訟の日まであと1週間ほどに迫った頃、家主から「鮎川さんが警察にいるらしい」との連絡が入りました。どうやらスーパーで総菜を万引きしたところを、店員に見つかってしまったようです。

警察から家主に連絡があったのは、家主に「身元引受人になってくれないか」という依頼。家主は訴訟手続きにまでこじれている最中なので「店子であることは間違いないけれど、関わりたくない」と断りました。鮎川さんには、身元引受人になってくれる親族はいなかったということでしょうか。

結局、万引きした商品の代金が少額だったこともあって、鮎川さんは自転車館となった部屋に、何事もなかったかのようにすぐ戻ってきました。

数日後の裁判の日、鮎川さんは自分の言い分を述べる答弁書も出さず、裁判所にも出廷せずで、明け渡しの判決は言い渡されました。このまま明け渡してもらえなければ、強制執行せざるを得ません。何とか任意に明け渡してもらえるよう鮎川さんのところに通いましたが、結局会うことはできませんでした。

そして家主は強制執行することを、選択しました

強制執行当日…「現場が凍りついた」そのワケは
強制執行で室内の荷物が撤去される日、鮎川さんは不在でした。執行官は室内に立ち入り、補助の人たちの手で荷物がどんどん運び出されます。40m2ほどの室内のどこにこれだけの物が収まっていたのか、そう不思議に感じるほど物が出てきます。

たとえばテニスボール。スーパーの買い物かご5つ分ほどありました。ビニール傘。使えないような物も含めて、60本以上はあったでしょうか。スーパーの買い物かごも、何カ所かのスーパーから持ち帰ったのか、種類の違うものを合わせて30個ほどもありました。ゴルフボールも、ゴロゴロとスーパーのかごに入っています。

自転車は3段に重ねられたところもあり、狭い敷地ながら建物をぐるっと囲むように80台ほどが置かれていました。これまでも何度か市が自転車を撤去したこともあるので、結局鮎川さんは百台単位の自転車に乗って帰ってきたことになります。

「収集癖だな……」

執行官が呟いたその時、新たな自転車に乗った鮎川さんが戻ってきました。

「鮎川さん? 今日、強制執行って知っていた? もう部屋には入れないよ」

執行官が声をかけましたが、鮎川さんから反応はありません。一瞬現場は凍りつきました。完全に認知症なら、強制執行するかどうかの判断になるからです。

「どないしたん?」

緊張感で固まった空気を、一人のおばちゃんの声が打ち破ります。

「もう家入られへんねん」

鮎川さんは事態を把握しているようです。今までずっと無言だったのに、顔見知りの女性とは話をするようです。

「ほな、ウチの家おいで」

そう声をかけられ、拍子抜けするほど簡単に、次の住処が見つかりました。

執行官が身の回りの物を持っていかなくてもいいのかと声をかけましたが、その問いかけも届かなかったのでしょうか。鮎川さんは、まさに着の身着のままの状態で、自転車館を後にしました。

自転車が取り除かれた長屋は、その全貌が露呈され、今にも崩れ落ちそうな勢いでした。

ホッとしていた家主だったが…また警察から連絡が来た
家主は滞納された家賃の回収も期待できず、鮎川さんに退去してもらうために訴訟と強制執行の手間と費用がかかりましたが、それでも近隣に迷惑をかけることなく終えられたことにホッとしたようでした。

「建物は、阪神大震災でもダメージ受けただろうからね。倒壊でもしたら大変。自転車だってあれだけ積まれたら、廃墟と思われて放火でもされたら一大事だったから。相続で不動産を承継したけど、正直、面倒なことを押し付けられた気がしますよ。とにかくすぐに取り壊します。それからどうするかは、ゆっくり考えます」

新米家主にとっては、強烈パンチだったのでしょう。やっと解決して、心から喜んでいるようでした。

「自分もこの長屋の家賃収入で大学まで行かせてもらったのだろうから、軽く賃貸経営っていいなと思っていましたが、建物も入居者も歳とっていくってこと、初めて分かりましたよ」

そう言ってホッとしていた家主は、建物が取り壊された頃に、また警察から電話を受けることになるのです。

家主から連絡先を聞いた警察は、私のところに電話をかけてきました。

「鮎川さんが万引きを繰り返していまして」

警察ではご飯も出してくれる、警察官も万引きに関して怒りはするものの対応してくれる、だからスーパーで安価な食べるものを万引きしては、警察に捕まることを繰り返しているようです。

「住んでいる家も、ある日突然に追い出されたと言っているのですが…。建て替えか何かですか?」

ついて行った女性宅からは、すでに出ちゃったということでしょうか。

「家がないみたいです」…警察官が明かした悲しい事情
「建て替えと言うよりは、鮎川さんが長年家賃滞納されていたので、それで裁判をしました。ご退去いただいたのは、法に則って強制執行の手続きですよ」

警察官も「そら、そうですよね……」とため息交じりの回答です。

「定住している家がないみたいです。それで頻繁に万引きしては、署に来て。生活保護とか申請して、住まいとお金を確保してくれるといいのですが、何度言っても役所に行かないんですよね」

警察も老人施設ではないので、警察でご飯を食べるために万引きを繰り返されたら、たまったものじゃないでしょう。万引きをして、警察で取り調べを受け、帰されたとしても、その足で万引きをしてまた警察に連絡があるようです。

行き場がなく、それでいて必要な情報が必要な人に届いていないのか、もしくは本人が「生活保護だけは受けたくない」と思っているのでしょうか。

警察や刑務所が老人施設のようになってきていると聞きます。夜中の110番は「淋しい」という電話も多いとのこと。どのような時間であっても電話に出てくれて、とりあえずは対応してくれる…誰かと繋がりたいと、淋しい思いをしている高齢者の最後の砦なのでしょうか。

「とりあえず最期に関わる前に退去してもらえて、本当に良かった」

そう安堵した家主。民間の家主が、背負う問題ではありません。それでも国の体制も整っていない中で、複雑な思いが残ってしまいます。

※本記事で紹介されている事例はすべて、個人が特定されないよう変更を加えており、名前は仮名となっています。

太田垣 章子

OAG司法書士法人代表 司法書士

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