生活保護者の集いコミュのティッシュで代用も…コロナ禍で失業した母親、真っ先に削った生理用品

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コロナ禍で経済的に困窮し、生理（月経）用品を買えない女性が若者を中心に増えている。女性の生理は表だって語られることが少なく「生理の貧困」を巡る問題は埋もれがちだったが、民間団体の調査などによって近年、世界的に関心が高まった。コロナ禍は特に女性に打撃が大きく、支援の動きが広がりつつある。　（田中良治）

【画像】生理用品の無償配布を実施中の自治体

　6月の夕方、北九州市小倉北区の子ども食堂「きらきら清水」が月3～4回開く食料品の無償配布「フードパントリー」（食料庫）を親子連れが次々と訪れた。約1時間、食料品のほか、母親約20人が生理用品を受け取った。

　「本当に助かります」。小中学生の子ども3人を育てる30代の女性は昨春、コロナ禍で失業。夏以降、離婚した元夫からの養育費も滞るようになった。

　今春、ようやく飲食店で働けるようになったが、収入は月3万～4万円。児童手当や児童扶養手当を合わせても月13万円前後だ。家賃と、食べ盛りの子どもたちの食費もかかる。貯金を取り崩してやりくりする。

　子どものための支出は減らしたくない。だから自分にかかる費用を極力抑えている。真っ先に削ったのが生理用品と化粧品だ。

　量販店の商品棚から最も安く、数量が多いものを選ぶ。経血量が少ないときはナプキンを使わず下着にティッシュを何重にも巻き付けて代用するが、どうしても吸収力は劣るため漏れてしまうこともある。

　きらきら清水を運営するNPO法人「Smile（スマイル）ネットワーク北九州」（山縣郁子理事長）が生理用品の無償配布を始めたのは今年4月。市が災害備蓄品を更新するのに合わせ、一部を市内7カ所の子ども食堂に提供したのがきっかけだ。以降、寄付金などを原資に生理用品を購入し、パントリーで毎回無償配布している。同法人が6月、利用者に実施したアンケートでは回答者約30人の8割が生理用品の無償配布を「必要」と答えた。

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　筑紫女学園大（福岡県太宰府市）は5月、市民の寄付金や市の助成金を活用し、学生向けに生理用品の無償配布を始めた。保健室などに常備し、学生はいつでも受け取れる。きっかけは昨年5月に実施したコロナ禍の困り事調査だ。1割を超える学生が食料など生活必需品を「買えなかった」と回答。「生理用品」を挙げる声もあったという。

　幼い頃に両親が離婚した4年生のレイさん（21）＝仮名＝は契約社員の母親の勤務日数がコロナ禍で激減。自身のアルバイト代も減り、6万～7万円だったのが今は2万円程度だ。

　さまざまなものを節約し、今年2月ごろから生理用品も我慢してきた。普段なら1日数枚取り換える昼用ナプキンは使わず、吸収量が多い代わりにかさばる夜用を昼間も通して1日1枚使う。経血が漏れないよう外出も控えた。美容院には半年近く行っていない。

　若い女性の権利向上に取り組む国際的な非政府組織（NGO）「プラン・インターナショナル・ジャパン」（東京）が今年3月に実施した調査によると、生理用品にかかる費用は1人月額数百円から千円程度だ。担当者は「ほかに生理痛の痛み止めの薬代も要る。化粧や美容なども含めて女性は男性よりお金がかかることが多い」と指摘する。

　会員制交流サイト（SNS）を見れば「スマホを持てて生理用品を買えないのが不思議」などと男性と思われる心ない書き込みが目に入る。レイさんは「生理のことを知らないからかもしれないけど、腹立たしいし、（女性は）損だな、と思う」と話した。

　自治体の「生理の貧困」対策について、西日本新聞が九州7県と各県庁所在地、政令市に取材したところ、7県市が生理用品の無償配布を実施していた。大分市は来年度実施予定。

　多くは使用期限が近づいた防災備蓄品を活用。宮崎県は県男女共同参画センターを運営する団体が市民から募集した。北九州市は備蓄品の提供のほか、市立学校の判断で貧困などにより入手が困難な児童生徒に市費で購入して渡している。

　内閣府の調査（5月19日時点）によると、全国で255の自治体が生理用品の無償配布などを実施（検討含む）。九州ではほかに福岡県古賀市や八女市、直方市が行っている。

　政府は3月、自治体委託の女性向け相談事業を行う団体への交付金を拡充し生理用品の無償配布を可能とした。本年度中に「生理の貧困」が女性の身体に及ぼす影響を調査する予定。