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生活保護者の集いコミュのこの国はどこへ コロナの時代に 財政社会学が専門 慶応大教授・井手英策さん 49歳 弱者生まない社会に

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https://mainichi.jp/articles/20210709/dde/012/040/006000c

 東京オリンピック・パラリンピック開幕を2週間後に控える中、またもや急激な新型コロナウイルスの感染拡大で、第5波到来の懸念が深まる。1年半続くコロナ禍は、これまで日本社会が抱え続けた問題を可視化した――。そう訴える財政社会学が専門の慶応大教授、井手英策さん(49)の話を聞きに神奈川県小田原市の自宅を訪ねると、多数の本に囲まれた書斎で、その見えてきたものを語り出した。

 「この国はこれまで残念ながら、危機に弱い社会をつくってきた。セーフティーネットや生活保障の機能が非常に脆弱(ぜいじゃく)で、コロナみたいなことが起こると、一部の人だけではなく、多くの人が困難に陥る社会なんです」


 コロナ禍が浮き彫りにした人々の暮らしの行き詰まり。生活保護の2020年度の申請は22万8081件(速報値)で、リーマン・ショック後の09年度以来の増加に転じた。受給世帯は64歳以下の現役世代が増えており、働く人たちの生活が苦しく、追い詰められていることが分かる。

 「失業した人のうち、要件が厳しいせいで失業給付を受けられない人の割合が、他の先進国に比べ高い。生活保護では周りの目を気にして利用をためらう人がいる。しかも行政の審査がきつく、なかなか認められない。しかしコロナ禍で『背に腹は代えられない』状況に陥り、申請する人が増えているのです」


 なぜ、いったん何かが起きると、多くの人が困窮してしまうような社会なのだろうか。「戦後の日本は(低福祉低負担の)『小さな政府』を維持してきました。国民が勤勉に働いて節約してお金を蓄え、将来のリスクや不安には自己責任で備えるという『勤労国家』です。しかし、勤労国家は高い経済成長率が続き、人々の所得が増えないと成り立たないモデルなんです」

 勤労者世帯の所得は、1997年をピークに減少傾向だ。国税庁の民間給与実態統計調査(19年)によると、年間給与300万円以下の割合は37・8%。会社員の4割近くが年収300万円以下で生活しているのだ。そんな収入が増えない低成長の時代には、自己責任型の国家は機能しないのだという。


 その中でのコロナ禍は、ただでさえ苦しい生活を送る人々の不安に拍車をかけた。20年の自殺者数は、前年比912人増の2万1081人。女性は7026人で935人も増えた。自殺は98年以降、14年連続で3万人超が続き社会問題化した。「98年はアジア通貨危機で失業者が急増し、家族を養っていた男性の自殺が問題になった。今は女性の就労が進みましたが、コロナで収入を減らした人も多い。未婚やシングルマザーも含め、家計を支える方が精神的に追い詰められたのかもしれません」

 井手さんは、多くの人が貧困に陥りやすい社会に変化したからこそ、弱者の再定義が必要だと訴える。「今は一部の人ではなく、大勢の人が苦しんでいる厳しい時代です。だから弱者を救済するという視点ではなく、全ての人の命や暮らしを保障するという発想に立たないと、危機の時代の政策としては間違った方向に行ってしまいます」


 コロナ禍で多くの人が苦しむ社会。それに対応した政策が1人一律10万円を配った「特別定額給付金」だった。約1億3000万人の全員に給付し、約13兆円を費やした計算になるが、日豪の研究チームの調査では、10万円の少なくとも7割が貯蓄されたという。「消費が伸びず経済政策的には失敗ですし、10万円程度の額では再分配政策としては不十分です。13兆円あれば、貧しい人の暮らしを守りつつ中間層の負担も軽減できた」

竹中平蔵氏=東京都千代田区で2021年5月、大西岳彦撮影拡大
竹中平蔵氏=東京都千代田区で2021年5月、大西岳彦撮影
 この定額給付金の登場で、にわかに注目を集めたのが、国民に一定の現金を給付する「ベーシックインカム」という制度だ。菅義偉首相のブレーン、竹中平蔵慶応大名誉教授は、1人に月額7万円を支給することで、「生活保護が不要になり、年金も要らなくなる」と主張する。

 1人月額7万円(年間84万円)だとすると、1億3000万人で計算すれば、年間100兆円以上が必要となり、日本の国家予算に匹敵する。「もし導入されれば、既存の社会保障制度が置き換わることになり、真っ先に狙われるのは生活保護です」。生活保護は世帯の構成や収入によって額が異なり、一律の支給額はないが、例えば東京都の18〜19歳の単身世帯で月額約12万円。「12万円もらっていた人が7万円に減る。年金をもっと多く受け取っている人も7万円に。これが100兆円もかけてやる政策ですか」。財政的にも社会保障の面からも非現実的だと、疑問視するのだ。

 そこで井手さんが提案するのが、教育、医療、子育て、介護、障害者福祉を無料にする「ベーシックサービス」という考え方だ。「病気にならない人はいません。教育は要らない、障害者にならない、介護は不要と断言できる人もいない。だから、命や暮らしに関わるサービスを全ての人に無償で提供し、その代わり、皆で負担を分かち合う。弱者を助ける社会から弱者を生まない社会に変えるのです」

 井手さんの試算だと、年間17兆円あれば、医療・介護費、障害者福祉、大学授業料、義務教育の給食費などを全て無償化できる。低賃金と指摘される介護士や保育士の給与引き上げも可能だという。さらに先進国の多くで導入されている公的な住宅手当も創設できるというのだ。

 肝心の17兆円の財源はどうするか。例えば法人税だと、井手さんによると、税率1%アップで5000億〜6000億円の税収増だ。17兆円を生み出すには、30%以上の増税が必要となり現実的ではない。

 そこで井手さんが主張するのが消費増税だ。1%は約2・8兆円の税収で、現在の10%から16%にすれば賄える計算だ。「EU(欧州連合)加盟国の付加価値税(日本の消費税に相当)の最低税率は15%と決まっている。その欧州の最低レベルまで上げる。日本の大学の学費は4年間の平均で400万円近くかかる。無償化のメリットは負担増よりはるかに大きい。医療や介護も無償化を進め、全ての人の命や暮らしを保障する社会をつくるのです」

「財源負担分かち合いを」
 「僕なんか保守系、革新系両陣営からたたかれています」。そう自嘲気味に語る井手さん。確かに消費増税の主張には、世間のアレルギーは強いだろう。政界は井手さんの思いと逆の方向に進む。立憲民主党の枝野幸男代表は消費税の時限的な5%への引き下げについて「選挙に向けた政策に盛り込んで訴える」と、次期衆院選の選挙公約にすることを明言する。実は井手さん、旧民進党の政策作りを担うなど政治との関わりが深いが、今は政党とは距離を置く。

 「5%の減税で10兆円単位の税収減ですが、1世帯あたり月数千円のお金が戻る程度です。ならば10兆円を全額低所得者のために使った方がいい」と強調する。総務省の家計調査(20年)によると、3人家族のサラリーマン世帯の食費は月7万5667円。軽減税率を抜きにしても5%減税で月4000円弱の負担減だ。

 それでは消費減税を主張する理由は何か。共闘を目指す共産、国民民主両党も引き下げを訴えているからだというのだ。「枝野さんも消費減税は格差是正にも消費刺激にもならないと分かっているはず。全ては野党共闘で選挙に勝つためです」。消費税は14年4月に税率8%に引き上げられて以降、安倍晋三政権時代に2度にわたり引き上げが延期され、19年10月に10%になった。政権与党も消費増税には慎重姿勢だ。

 なぜ消費税議論を避けるのか。「『山が動いたシンドローム』ですね。89年の参院選では消費税導入反対で旧社会党が圧勝した。野党には成功体験、一方の自民党には敗北体験なのです」。この選挙で社会党は議席を倍増させ、参院で与野党が逆転。社会党の委員長だった土井たか子さんが「山が動いた」と名言を残し、それ以降、消費増税は「タブー視」されたというのだ。

 与野党ともに「鬼門」の消費増税。このご時世に消費増税とは、聞くだけで反発を招きそうだ。だが、井手さんは自らの政策実現の希望を捨てていないという。例として挙げるのが、17年の前回衆院選。当時の安倍首相は解散理由として19年10月に予定された2%の消費増税の使途変更を挙げた。引き上げによる増収分を、国の借金返済以外にも幼稚園・保育園の無償化や、低所得世帯の子どもの高等教育無償化に使うと主張し、選挙で圧勝したのだ。

 全ての人が安心して暮らせる社会は実現できるのか。「誰だって増税は嫌ですが、将来世代に借金を背負わせないよう、私たちが今話し合って負担を決めるのです。それで自分たちもその子どもたちも、病気や介護や学費の心配が要らない社会になればいいじゃないですか」。避けることができない問題を、コロナ禍が突き付けてきたということか。【葛西大博】

井手英策(いで・えいさく)さん
 1972年、福岡県生まれ。東大大学院博士課程単位取得退学。日本銀行金融研究所、横浜国大准教授などを経て2014年から現職。15年、「経済の時代の終焉(しゅうえん)」で大佛次郎論壇賞を受賞。近著に「どうせ社会は変えられないなんてだれが言った? ベーシックサービスという革命」。

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