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生活保護者の集いコミュの失業者減、生活保護「高止まり」に見るリーマンショックの傷跡

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https://news.yahoo.co.jp/articles/0d1e90561393bd682bb6fbc1ff885f72a851ae40

 2000年代後半から、失業者が減少しても、生活保護世帯が高止まりし続ける現象が起きている。低年金や無年金で生活が困難な高齢者だけでなく、シングルマザーでも障害者でもない「その他世帯」も増加していることがデータから分かる。08年のリーマンショックの傷痕を読み取ることができるのではないか。(名古屋商科大学ビジネススクール教授 原田 泰)

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● 失業者は減少、生活保護世帯は高止まり

 景気が良くなれば失業者が減って、所得を得られない人が減少し、景気が悪くなれば所得を得られない人が増える。したがって、生活保護を受けている人の数は、景気が良くなれば減少し、景気が悪くなれば増加すると考えられる。しかし、近年、そうはいえない状況が現れている。

 なお、現在、新型コロナウイルス感染症によって、景気が悪化しているのだが、悪化してからの生活保護全体のデータはまだ公表されていない。そこで景気が良かった時期までのデータで考えてみたい。

 下の図1は、失業者数と生活保護世帯数を比べたものである。

 図に見るように、2000年頃までは失業者が増えれば生活保護世帯が増加し、失業者が減れば生活保護世帯が減少するという関係があった。しかし、03年から、その関係が崩れている。03年から07年まで失業者が減少していたのに生活保護世帯が減少せず、増加の程度がやや緩やかになっただけだった。

 その後、08年のリーマンショック時には、失業者数の増加とともに、生活保護世帯が急増した。12年からのアベノミクスの長期景気拡大を含む期間では、失業者数は順調に低下していったが、生活保護世帯数は増加していった。

 さすがに、18年には生活保護世帯は微減したが、全体の動きは高止まりである。

 なお91年から02年まで、失業者数は急増しているのに、生活保護世帯数は緩やかにしか増加していなかった。この無理が、リーマンショックの不況で一挙に顕在化したという解釈ができるかもしれない。

● 生活保護世帯数が高止まっていた要因

 なぜ、03年から失業者が減っているのに生活保護世帯が減らないようになったのだろうか。下の図2は、生活保護世帯の内訳を見たものである。

 注目すべきは、生活保護世帯のうちの高齢者世帯と、その他世帯の動きだ。高齢者世帯は、失業者数の増減にかかわらず伸びている。

 考えてみると、高齢者はそもそも働けない人が多いのだから、失業者数が減少しても働けるようになるわけではない。

 もう一つは、その他の世帯の09年からの急上昇と高止まりだ。その他の世帯とは、高齢者世帯、母子世帯、障害者・傷病者世帯を除く世帯である。

 母子世帯、障害者・傷病者が働くことが困難で、生活保護を受けやすい状況にあることは理解できる。ところが、これらを除くその他世帯によって、生活保護世帯数が増加しているのである。

 要するに、数字だけでいえば、高齢者世帯、その他世帯が増加したことが、失業者が減少しても生活保護世帯が減らなかった理由である。

● 高齢でもシングルマザーでもない生活保護

 以上述べた数字の確認をするために、生活保護世帯、高齢者世帯を除いた生活保護世帯、高齢者世帯とその他の世帯を除いた生活保護世帯、失業者数を示したのが下の図3である。

 生活保護世帯から高齢者世帯とその他の世帯を除くと、リーマンショック後の上昇シフトが消え、かつ、失業者数と生活保護世帯が同じように動いていることが分かる。

 19年には、失業者160万人で生活保護50万世帯という1980年代初と同じような状況に戻った。むしろ、90年代に失業者が急増したのに、生活保護世帯数が増えなかったのはなぜかという謎がより強調されるように見える。

 景気を良くすれば生活保護世帯数は減る。しかし、高齢者世帯とその他世帯の増加には別の対応が要る。また、90年代に生活保護世帯数が増えなかった理由も知りたい。

● リーマンで生活保護に駆け込んだ?

 第一に、生活保護の高齢者世帯が増加するのは、年金支給額が不十分だからだ。年金不足とは、過去に十分な年金保険料を支払っていなかった人がいるという問題である。

 その理由は、一つは政府の徴収能力の不足だ。もう一つは、90年代以降の長い経済停滞で、正規社員になることができず、年金保険料を払うことが困難だった人が多いという問題である。

 年金の専門家には、年金保険料を支払わなければ年金をもらえないのだから、年金会計にはなんら負担にならないと議論する人がいる。その通りだが、年金がないから生活保護を受けることになり、生活保護会計には負担になる。

 また、景気の悪化が、高齢者の雇用環境をことさらに悪化させ、結果、高齢者が働けなくなり、生活保護を受給することになることも考えられる。年金保険料の徴収と景気を良くしておくことの両方が大事だということだ。

 第二に、その他の生活保護世帯である。前述のように、その他世帯とは、高齢者世帯、母子世帯、障害者・傷病者世帯を除く世帯である。それらを除く世帯とは何か、なぜ高止まりしているのかと、厚生労働省の統計担当者に電話で問い合わせたところ、「その他世帯の内訳は分からないし、09年以降、高止まりしている理由も分からない」とのことだった。

 私の考えるところ、リーマンショックの不況期に生活保護に入った後、そこから抜け出せなくなってしまった家計ではないだろうか。リーマンショックは急激な所得減であり、かつ、そのような大きなショックがあることを日本の制度は前提としていないので、所得減少を一時的に和らげる措置が不十分だった。そこで生活保護が避難手段として用いられた。

 生活保護は、一時的な支援を受けて、保護から立ち直るのが望ましいとされている。生活保護法第1条に、「国が生活に困窮するすべての国民に対し、…(中略)最低限度の生活を保障するとともに、その自立を助長する」とある。

 しかし、生活保護には貧困の罠がある。働けば給付を減らされ、進学すれば給付を減らされる。であれば、働かず、将来の所得を高めるための進学もしないという状況に陥っているのではないか。それが高止まりに現れているのではないか。

 貧困の罠という問題は常にある。ではなぜ、その問題が09年以降に現れてきたのだろうか。それは、繰り返しになるが、リーマンショックの所得減が大きく、一挙に貧しくなり、それゆえ貧困の罠に陥る人々の数も大きくなったからだろう。

 さらに、それ以前、90年代の失業の増加にもかかわらず生活保護世帯が増加しなかった我慢が続かなくなったということもあるかもしれない。これは第3の謎の答えにもなる。

原田 泰

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