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生活保護者の集いコミュの秦正樹 「正しい知識」が陰謀論を助長する

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https://news.yahoo.co.jp/articles/cedfaf7298c9dfcda01098b0b1773c24b13f73b3

WEBサービスの利用頻度と陰謀論の受容性、さらには、政治的知識の多寡が陰謀論受容に与える影響を、新進気鋭の政治学者が実証研究で解明する。

 本稿は、いわゆるネット右翼的な陰謀論の受容性と、ソーシャルメディアをはじめとする各種のWEBサービス利用の関連について検討する。昨今、特にインターネット上におけるデマやフェイクニュースなどの意図的な政治的誤情報(political misinformation)の蔓延がしばしば問題視されている。とりわけ、二〇二一年一月の米国連邦議会議事堂襲撃事件では、襲撃した者の多くが「Qアノン」と呼ばれる米国内の陰謀論サイト利用者であったことが各メディアで報じられ、国内外に大きなインパクトを与えた。

 もっとも、こうした政治にまつわるデマや陰謀論の蔓延は、必ずしも海外に限った話ではない。日本においても、政治にまつわる陰謀論やデマは(特にWEB上で)散見される。たとえば、「世界的な巨大資本が日本の政治の中枢を支配している」といった都市伝説的な陰謀論は以前からよく見られる。あるいは、芸能人の麻薬摘発などが発覚するたびに、「政府は、何らかのスキャンダル隠しのために警察を動かして世論を煙に巻こうとしている」といった党派的な陰謀論がどこからともなくあらわれ、時に「トレンド入り」することもある。

 ただし、この種の陰謀論は、特定の政治的意見を持つ人々の間で、いわば自己消費的に広まることがほとんどである。他方で、真に問題となる陰謀論とは、特定の人種や民族などの社会的属性に対する誹謗中傷を含むような場合である。近年では、特に在日朝鮮人や韓国(人)・中国(人)に対する「根も葉もないうわさ」を吹聴する、いわゆる「ネット右翼」による陰謀論がその典型例であろう。その発端の一つには、一〇年頃に台頭した「在日特権を許さない市民の会(在特会)」があげられる。在特会は、日本社会において在日朝鮮人は不当に「特権」を有していると考え[※1]、さらにそうした政治的・社会的構造は、日本の左派/リベラル派の政治勢力が下支えしていると主張する。当初は、ジャーナリストの安田浩一(二〇一二)などの反論もあって、こうした極右運動の言説はごく一部の人々の中だけにとどまると考えられてきた。しかしその後、こうした考え方は(ネット)世論の中で急速に広まり(樋口直人、二〇一四)、実際の政治レベルでも、一部でヘイトスピーチ規制が設けられる事態にまで発展した。

 この種の言説を展開する人々がネット右翼と呼ばれることからもわかるように、極端な排外主義的陰謀論が蔓延した背景には、やはりインターネットの影響が大きくある。先行研究でも、ネット利用の頻度とネット右翼度は強く関連していることがたびたび指摘されている(高史明、二〇一五/辻大介、二〇一七)。確かに、インターネット上での排外主義的な書き込みは、未だ衰えることなく増え続けているように見えるし、「ネトウヨ」という概念が、ネットスラングから一般名詞化していることからも状況の悪化がうかがえる。

 ただし、「インターネット上」と一口に言っても、その内実は極めて多種多様である。二〇〇〇年代中盤以降では、mixiやTwitterなどの文字中心であったが、昨今では、画像や動画、音声中心のInstagramやYouTube、Clubhouseなどが流行している。あるいは、スマホの普及に伴って、アプリなどを通じた「まとめサイト[※2]」の閲覧もごく一般的になっている。

 以上を踏まえて本稿では、個別のWEBサービスの利用頻度が、いわゆるネット右翼的な陰謀論の受容性と、どのように/どの程度関連しているかについて、筆者が実施した全国アンケート調査の分析を通じて明らかにする。また本稿では、政治的な知識を持つことが、陰謀論受容の「防波堤」となりうるのかについても検討する。一般に、自らが陰謀論にひっかからないための重要な策の一つとして、一人ひとりが「正しい知識」を持っておくべきであるとされる。ただし、個人の潜在的な心理的傾向や、利用するWEBサービスの種類によって、政治的知識の獲得メカニズムは異なることも踏まえると(Tetsuro Kobayashi & Kazunori Inamasu、二〇一五/稲増一憲・三浦麻子、二〇一六)、知識を持つことで、むしろ陰謀論にふれる機会を増加させて、その種の言説を信用してしまう確率を高めてしまう可能性もある。こうした知見も踏まえて本稿では、ネット右翼的陰謀論が広く見られ、かつ多くのユーザーを抱える「Twitter」「まとめサイト」「Yahoo!ニュースのコメント(以下、ヤフコメ)」の三つのWEBサービスを取り上げて、それぞれの利用が陰謀論の受容性と結びついていく中で、政治的知識はそのストッパーとなりうるのかについて検証する。

ネット右翼的陰謀論の背景と実際
図1:ネット右翼的陰謀論の受容性に関する分布

 前述のように、インターネット上の極右的/排外主義的な陰謀論はとどまることなく広まり続けている。ただし、このような陰謀論の蔓延は、必ずしも「陰謀論者が増加していること」を直接に意味しているわけではない。実際に、「ネット炎上」に関する研究では、ごく少数の人が何度も発言を繰り返すことで炎上を演出しているに過ぎないとの知見もある(田中辰雄・山口真一、二〇一六)。あるいは、ネット右翼のボリュームに関しては、大阪大学の辻大介(二〇一七)は全体の一・八%(程度)、東京大学の永吉希久子(二〇一九)でも一・五%(程度)と極めて少数であると指摘されている。とはいえ、今や老若男女が利用するWEBサービス上で、この種の陰謀論に繰り返し接触することで、ごく一般的な人々も「多くの人が言っている」と誤認して陰謀論者化し、今後、そのような意見を有する人々がますます増えていく可能性も十分にある。

 また、一九九〇年代以降のネット右派言説に関する丁寧な歴史的分析を行う、成蹊大学の伊藤昌亮は、この点を考える上で重要な視座を与える。伊藤(二〇一九)では、従来、外国人全体に向けられていた「反日」という語が、二〇〇〇年代頃からネット右派運動の中で「嫌韓」と結びつき、二〇一〇年代以降、リベラル市民主義への敵対心も加わり、反日・嫌韓・反リベラル(左派)がネット右派を特徴づけるワンセットの言説になったとされる。

 そこで以下では、筆者が一九年三月に楽天インサイトのパネルモニター一五〇七名を対象に実施したWEB調査[※3]を用いて、とりわけ「反日」などの単語に見られるネット右翼的言説を特徴づける陰謀論の受容性に注目してデータを確認してみたい。また伊藤(二〇一九)の知見も踏まえて、本調査では、反日・嫌韓・反リベラルを軸とした「日本の左派系団体の多くは、韓国に操られている」「左派政党の議員は、韓国のために政治をしているのではないかと感じる」「マスコミはどこも韓国寄りなので信用できない」「日本には反日的な政治家や政党が多いと感じる」の四つの質問について検討する[※4]。

 図1は、四問の回答の分布を示している。これらの結果を見ると、多少のばらつきはあるものの、どの質問もおよそ二割の人が「同意」または「やや同意」と回答している。先行研究のネット右翼の操作的定義とは異なるため、その割合を直接比較することは適切ではないが、しかしそれでも本調査の二割(程度)という値は、相当に「多い」という印象も受ける。これは、「ネット右翼」そのものは少数であったとしても、ネット右翼的陰謀論を(腹の中では)受容している人が存外多いことを示唆している。言い換えれば、ネット右翼的陰謀論を受容する素地を有する、いわば「ネット右翼予備軍」まで含めれば、世論の二割程度にものぼる可能性があるといえる。

知識は陰謀論の「防波堤」になりうるか
図2:陰謀論の受容性とWEBメディア接触の関連/図3:知識量ごとのWEBメディア接触が陰謀論受容に与える実質的効果

 図1からは、日本社会にネット右翼的陰謀論に受容的な者が、世論の二割とかなり多くいることが明らかとなった。そこで、このような陰謀論の受容性とネット利用がどのように関連しているのかについて、本調査データを用いてより詳しく分析していこう。

 まずは、本稿のアウトカム(結果変数)の操作化について説明する。アウトカムは、図1で示した四つの質問を合成した上で、0を基準とするようリコーディングした得点(M=7.31,SD=4.52,Min=0,Max=16,α=.922)を「ネット右翼的陰謀論の受容度」と定義して用いる。

 続いて、アウトカムを説明するWEBメディア接触の頻度に関する変数について説明する。本調査では、「Twitter」「まとめサイト」「ヤフコメ」それぞれへの閲覧頻度および書き込み頻度を別個に尋ねている。選択肢は、閲覧頻度では「よくみる(4)」「ときどきみる(3)」「ほとんどみない(2)」「利用したことはない(1)」、書き込み頻度では「よく発信する(4)」「ときどき発信する(3)」「ほとんど発信しない(2)」「利用したことはない(1)」であるが、分析上、それぞれのサービスごとの得点を合計して「利用頻度」として用いる[※5]。

 また本稿では、単にWEBサービスの接触効果だけでなく、政治に関する知識量がネット右翼的陰謀論の受容度を低下させるのかについても検討する。本調査では、「三審制」「参議院の任期」「一一年に放送内容偏向を訴えるデモの対象となった放送局」「立憲民主党の支持基盤」に関する四つのクイズを用意しており、その合計正解数を政治知識量として用いる(M=1.53,SD=1.27,Min=0,Max=4)。すなわち、この政治知識量と、前述のWEBメディア利用頻度の交互作用項(以下、交差項)を用いて、政治的知識の「防波堤」効果について検証する。なお、キーとなる交差項はそれぞれ連続変数として捉えているので限界効果(mar-ginal effect[※6])の結果にもとづいて解釈する(Brambor et al、二〇〇六)。最後に、アウトカムと説明変数のいずれにも影響を与えうる要因として、性別・年齢・教育程度・世帯収入・職業・保革自己イデオロギーを統制変数として投入して、最小二乗法で推定した結果が図2である。図2では、Y軸上の0のラインが網かけ部分(九五%信頼区間)の上/下限とかぶっていない区間に注目する。つまり、重複しない区間内の知識量は五%水準で統計的に有意であると解釈できる。

 図2では、まとめサイト利用についてのみ、政治的知識量がおよそ一を超える場合に統計的に有意な結果が示されている。すなわち、政治の知識が全くない人(政治知識量=0)がまとめサイトを利用しても、ネット右翼的陰謀論を受容するかは定かではない一方で、知識が一定程度ある人(政治的知識量≧1)では、まとめサイトを利用するほど、ネット右翼的陰謀論を受容する傾向にあることを意味している。他方で、Twitter、ヤフコメの利用頻度は、ネット右翼的陰謀論の受容との間において明確な関連は見られない。

 では、こうしたWEBサービス利用において、具体的に、政治的知識は、陰謀論受容をどの程度「ブースト」させる効果を有しているのだろうか。図3は、以上の推定結果を用いて、政治知識が全くない場合(政治知識量=0)と最もある場合(政治知識量=4)ごとに、各WEBサービス利用頻度が変化した時に予測されるアウトカムの程度(陰謀論受容度)をシミュレートしたものである。ここでは図3で統計的に有意であった「まとめサイト」の効果について解釈しよう。


[註]
 本研究は、JSPS科研費若手研究(課題番号:18K12707)「デマの蔓延が政治的帰結に与える影響:テキストマイニングとサーベイ実験による検討」の助成を受けた成果の一部である。また本稿の内容について、Song Jaehyun氏(同志社大学)より有益なコメントを頂いた。ここに記して感謝申し上げる。無論、本稿の誤りの責はすべて筆者に帰する。

[※1]たとえば、在日朝鮮人は(日本人に比べて)生活保護の受給ハードルが低くなっているなどの主張がその典型である。

[※2]主には、盛んに議論されている5ちゃんねるのスレッドから一部を取り出してまとめたWEBサイトのこと。まとめサイトは、元の掲示板の書き込みの中から一部の歓心を買いそうな書き込みだけを抽出・整理したものであるため、仮に元のスレッドでは賛否両論があって論争的であったとしても、特定の方向の意見を、全体の意見のように見せることができる。

[※3]本調査は、北九州市立大学「人を対象とする研究に関する倫理審査委員会」による倫理審査の承認を受けた(受理番号三〇-一一)。また本調査は、性別・世代・地域について国勢調査にもとづいて割り当てた上で行い、日本の縮図に近似するよう設計した。

[※4]選択肢は「同意」「やや同意」「どちらともいえない」「あまり同意しない」「同意しない」「わからない」である。ただし、分析上「わからない」は欠損値として扱う。

[※5]これらの質問にもすべて「わからない」が含まれるが分析上除いた。それぞれの変数は0を起点として数値が高いほど利用頻度が高くなるようリコーディングしている。

[※6]各WEBメディアが陰謀論受容に与える効果に対して、政治的知識量がどの程度「有意に」条件付けられているかと理解すればよい。


[参考文献]
●Brambor, T, William, R. C., and Golder, M., 2006, Understanding Interaction Models: Improving Empirical Analyses, Political Analysis, 14(1): 63-82.

●樋口直人(二〇一四)『日本型排外主義--在特会・外国人参政権・東アジア地政学』名古屋大学出版会

●稲増一憲・三浦麻子(二〇一六)「『自由』なメディアの陥穽:有権者の選好に基づくもうひとつの選択的接触」『社会心理学研究』三二巻三号、一七二〜一八三頁

●伊藤昌亮(二〇一九)『ネット右派の歴史社会学 アンダーグラウンド平成史1990-2000年代』青弓社

●Kobayashi, T. and Inamasu, K., 2015, The Knowledge Leveling Effect of Portal Sites, Communication Research, 42(4): 482-502.

●永吉希久子(二〇一九)「ネット右翼とは誰か--ネット右翼の規定要因」樋口直人ほか編『ネット右翼とは何か』第1章、青弓社、一三〜四三頁

●高史明(二〇一五)『レイシズムを解剖する--在日コリアンへの偏見とインターネット』勁草書房

●田中辰雄・山口真一(二〇一六)『ネット炎上の研究--誰があおり、どう対処するのか』勁草書房

●辻大介(二〇一七)「計量調査から見る『ネット右翼』のプロファイル--2007年/2014年ウェブ調査の分析結果をもとに」『年報人間科学』三八号、二一一〜二二四頁

●安田浩一(二〇一二)『ネットと愛国--在特会の「闇」を追いかけて』講談社


(『中央公論』2021年5月号より抜粋)


◆秦正樹〔はたまさき〕
1988年広島県生まれ。神戸大学大学院法学研究科博士後期課程修了。博士(政治学)。神戸大学学術研究員、関西大学非常勤研究員、北九州市立大学講師などを経て、現職。専門は政治行動論、実験政治学、政治心理学。共著に『日本は「右傾化」したのか』など。

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