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生活保護者の集いコミュの「生活保護受給者なのだからパチンコを打たねば」 生活保護元受給者が送った“薬物で空白に耐えた”日々

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https://news.yahoo.co.jp/articles/823bdf1a32ebcabdcfa373ee2dc334fb45dda188

 約205万人を数える生活保護受給者数(2020年10月)。菅首相は「政府には最終的には生活保護という仕組み」があると述べたが、昨年と比べても数字は横ばいだ。生活保護受給のハードルは、条件的にも心理的にもそれだけ高い。生活保護を受給することは、どういうことなのか。実際に生活保護を経験した筆者が匿名で綴る。

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 ◆◆◆

 はじめて保護費をもらった日、その足でパチンコに行った。

 別にパチンコが好きなわけではない。そもそもパチンコに行く習慣もない。パチンコは何年も前に友人の付き合いで何回か打ったきりで、パチンコが面白いと思ったこともないし、パチンコにハマった経験もなかった。それでも保護費をもらったのだからパチンコに行かねばなるまいと思った。

 自分は生活保護受給者なのだから、パチンコを打たねばなるまい。

 パチンコ台に1万円札を吸い込ませる。そういう経験から自分の生活保護ライフはスタートした。

「生活保護」という選択肢が頭をチラ付き始めたのは2019年の初夏ごろだった。当時の自分はささやかな事業を手掛けていたのだが、自分の商才の欠如ゆえ悲惨な末路を迎えようとしていた。

 手持ちの資産は底をつきつつあり、起死回生の手段はどこにも見当たらない。スタッフに支払う人件費やオフィスの維持費などもあと2か月程度が限界だ。「ナニワ金融道」に出てくる行き詰った中小企業の社長のように金策に奔走したが、落ち目の時は全てが上手くいかなくなるもので、あらゆる資金調達が上手くいかなかった。何日か死ぬほど悩んだ挙句、事業を畳むことを決意した。

 事業の解散後、何人もの仲間たちとガヤガヤとやかましく働いた自宅兼オフィスにひとり残された。そしてこんこんと眠った。1週間。2週間。3週間。ずっと眠り続けた。食事はほとんど摂らなかった。

 オフィスを出ていかなければならない日が近づいてきた。オフィスを出た後は当時付き合っていた恋人の家に身を寄せる予定になっていたが、次第に彼女からの連絡が滞るようになった。退去日の1か月ほど前からなかなか返信が来なくなり、退去日の2週間ほど前から完全に音信不通になった。どこにも行き場がなくなった。

 この段階でようやく「生活保護」という選択肢が自分の中でリアリティを持ち始めた。家もない。金もない。体は微動だにしない。一緒に働いていた仲間も恋人も去っていった。自分には何も残されていない。残されていたのは日本国民という資格、ただそれだけだった。

生活保護の受給を決めてからは全てが迅速に動いた。役所窓口での水際作戦のことは知っていたので、福祉関連の仕事をしていた友人に申請に付き合ってもらった。彼の正確な知識と影響力により、おそらくかなり例外的なことに、ほとんど即日で保護の認可が降りた。

 家探しは難航した。いくつもの不動産屋を回るがすべての業者に断られる。「生活保護」という単語を出した途端に不動産仲介業者の顔がひきつり、ご紹介できる物件はありませんという丁重な返答が返ってくる。しかしそんな自分の隣のブースでは、年若いカップルが新居についてあれでもないこれでもないと幸福そうに語らっているのだ。そういう経験を幾度となく積んだ。

 最終的に、生活保護受給者向けの不動産会社と相談しアパートを借りた。そんな業者が存在するとネットを通じて知れたのは幸運だったのだろう。入居日が決まり、ささやかな引っ越しをした。荷物は布団一式と衣類が少々のみ。だから引っ越しはレンタカーで一往復するだけで済んだ。新しい生活が始まった。

 自分がパチンコを10年ぶりに打ったのはそんな新しい生活が始まった直後だ。久しぶりに握るまとまった額の現金。それを見て「パチンコを打たなきゃな」と思った。

 受け取ったのは家賃補助を含めた13万円ほど。そこから事前に借りていた一時金の2万円を返却し残りは11万円。その11万円のうちの1万円をパチンコ台に滑り込ませ、数年ぶりのパチンコが始まった。

 玉が左から右に転がっていく。パチンコの還元率は6割だったか、7割だったか。そんなことを考えながら打った。台の中で「新世紀エヴァンゲリオン」のキャラクターが目まぐるしく動いている。ここで大当たりしたら嫌だな、と思った。大当たりすれば、脳に「パチンコをやれば儲かる」という報酬系が形成されてしまう。それは数万円の勝ちでは到底埋め合わせることのできない損害だ。それでも1万円くらいは溶かすべきだと思った。そのくらい使わなければパチンコを打ったことにはならないだろう。

 幸いなことに、15分ほどで1万円分の玉は尽きた。そうして自傷行為は終わった。

 アパートでの生活が始まった頃から、持病の内臓疾患が本格的に再燃し始めた。激痛と出血が続き、何もできない日々が続いた。発作がない日はひたすら寝ていた。寝る以外にどうしようもなかった。もはや自分には、何の仕事も、何の目標も、何の意味もないのだ。横になり、目をつぶり、ひたすら時間が過ぎていくのを待った。毎日がその繰り返しだった。

 そのうち、薬物を覚えた。市販の咳止め薬をオーバードーズする。酩酊すると楽だった。何もない空白に耐え続ける日々に、薬物が酩酊の彩りを与えてくれた。酩酊の中ではいろいろなものに再び意味が与えられた。全て失ったと思っていたもの。無価値な自分。世界。酩酊しながら本を読み、映画を観た。久しぶりに心から楽しいと思える時間があった。

 そうして、完全に薬物にハマっていった。朝起きて、無意味な世界と無価値な自分を発見すると、すぐさまクスリを飲んだ。そうして酩酊の中を漂った。自分を責め続ける内なる声は鳴り止み、世界に再び色彩が与えられる。そうやって本を読み、映画を観て、外を散歩し、食べたいものを食べた。こうなってしまう前の世界。空白ではない世界。色が付いている世界。クスリの力に頼らなければ、もう自分はその世界にアクセスできないのだ。だからクスリを飲んだ。飲み続けるしかなかった。

 自分が依存症に両足を突っ込んでいることには、もちろん完璧に気づいていた。連続酩酊状態がおそらく何週間か続いたころ、このままではヤバいと考えた自分はクスリを断つことにした。薬物をやめ、今後について真剣に再考し、なんとか人生を立て直そう。そのようなことをおそらく酩酊中に思いついた自分は、残っていたクスリをトイレに流し、ノートとペンを引っ張り出して人生の再建計画に取り掛かった。

 そして何日か熟慮した結果、今すぐ自殺すべきだという結論が導き出された。もう自分には何も残っていない。精神と肉体にそれぞれ障害を抱え、まともな学歴も職歴もなく、人並みのことは何もできない。世界にも自分にも絶望しきっている。そして極めつけは生活保護受給者だ。自殺する以外に方法はない。

 自殺の準備を整え、踏ん切りをつけようと悪戦苦闘している間に、ふとまた手癖で咳止め薬にスリップしてしまった。また酩酊の日々が始まった。あと一歩のところまで来ていた死という救いは、そうして遠ざかっていった。

 パチンコにしても、薬物にしても、無価値な自分にふさわしいからやっていたのだと思う。無価値な自分はパチンコをやるべきだ。無価値な自分はヤク中になるべきだ。人は自分にふさわしいことをやらなければならない。生活保護受給者の自分にとって、それはパチンコであり、薬物だったのだ。

 実のところ、実際に生活保護を受給するまでは、生活保護を恥ずかしいものだなどと欠片も思っていなかった。所得が高ければ税金を納める。所得が低ければ生活保護を受給する。そして所得の決定要因は遺伝と環境…つまり運だ。納税も生活保護も、ルソー流の社会契約の一部であって、本質の部分ではなんら変わらぬものなのだと思っていた。

 実際に受給してみて、そんな頭で考えただけの戯言は全て吹き飛んだ。生活保護受給者は生きる値打ちのないクズだ。今まで欠片たりとも抱いたことのなかった思いが、自分の内面全てを埋め尽くした。

 なぜそうなってしまったのだろう。わからない。しかし当時の自分にとっては、それが紛れもないリアルな実感だった。生活保護受給者は無価値だ。人生の詰んだ敗残者だ。今すぐにでも自殺すべき残骸だ。また何かしらの理由で生活保護を受けることになれば、再びそのような感覚が自分を埋め尽くすだろう。

 幸い、生活保護は1年ほどで抜けた。緩慢な自殺のような生活を送っていたのに、なぜか内臓疾患の調子が好転し、再び働けるようになったからだ。今はなんとか福祉に頼らず自分で生活を営んでいる。

 あのとき死んでいた方が良かったのかもしれないと思うこともある。今の自分はなんとか自活しているが、別に何か人生に希望を抱いているわけではない。ただなんとなく死ねなくて、なんとなく生きているだけだ。また死にたくなって、そのときはあっけなく死ぬのかもしれない。

 生活保護を受けてから価値観が変わった。「どんな人間にも無条件で価値がある」などと、とても口に出せなくなった。あのべっとりとした無価値感。その渦中にいた自分に届く肯定の言葉などあっただろうか。

 もう二度と、あの場所には帰りたくない。

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