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生活保護者の集いコミュの「生活保護費の減額はデタラメ」と厚労省を一蹴した、大阪地裁判決の意義

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https://diamond.jp/articles/-/263877

デタラメな「裁量」は認めない
大阪地裁の明快な判断

大阪地裁において、2013年に行われた生活保護基準引き下げの撤回を求める訴訟の判決が言い渡された。これは60年ぶりのことだ 

 2月22日、大阪地裁において、2013年に行われた生活保護基準引き下げの撤回を求める訴訟の判決が言い渡された。判決内容は、原告であり生活保護のもとで暮らす人々の主張を、ほぼ全面的に認めたものであった。以下、判決骨子の全文を紹介したい。

「厚生労働大臣が平成25年から平成27年にかけて生活保護基準を減額改定した判断には、特異な物価上昇が起こった平成20年を起点に取り上げて物価の下落を考慮した点、生活扶助相当CPIという独自の指数に着目し、消費者物価指数の下落率よりも著しく大きい下落率を基に改定率を設定した点において、当系統の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性を欠き、最低限度の生活の具体化に係る判断の過程及び手続きに過誤、欠落があるといわざるを得ず、裁量権の範囲の逸脱またはその濫用があるというべきであるから、上記改定は生活保護法3条、8条2項の規定に違反し、違法である」

 2013年の生活保護基準引き下げに際して理由とされたのは、大幅な物価下落であった。その物価下落は、厚労省が独自に開発した物価指数「生活扶助相当CPI」によって導き出されたのだが、内実は「物価偽装」と呼ぶべきものであることが徐々に明らかにされてきた。

 判決は、「生活保護費は厚労大臣が裁量によって決めてよいことになっているけれど、そんなデタラメな根拠で勝手に決めるのは『裁量権』の正当な使い方とは言えません。違法です」と明確に判断した。

 この判決が確定すると、厚労大臣は2013年に遡って、減額した保護費を返還しなくてはならない。2013年に減額された保護費は、1年あたり約670億円であった。2013年8月から2021年3月までの7年8カ月分として計算すると、総額は約4670億円となる。通常、大臣とはいえ、独断でそれほど巨額の国費を動かすことには無理がある。しかし生活保護においては、可能なのだ。なぜなら、生活保護法8条がそのように規定しているからだ。相田みつを風に言えば、「生活保護費は厚労大臣のこころが決める」ということである。

厚労大臣に委ねられた
「重い責任」の中身
 2013年8月から2015年にかけて、当時の厚労大臣だった田村憲久氏の裁量によって、生活保護費の生活費分(生活扶助)の引き下げが3段階に分けて実施された。引き下げ幅は平均6.5%、最大10%に及び、多人数世帯や子どものいる世帯で大きくなる傾向があった。

 現在の厚労大臣は奇しくも、当時と同じ田村氏である。水面下で「コロナ禍で深刻化する子どもの貧困に真摯な関心を寄せ、何とかしなくてはならないと考えている」と伝えられる田村厚労相は、2013年に自らが引き下げた生活保護基準の影響、特に生活保護世帯の子どもたちに及ぼした影響を、おそらく充分に承知しているはずだ。

 そして田村厚労相は、自らの責任において、2021年度の生活保護基準を2013年度初めと同レベルに戻すことができる。

 生活保護においては、保護費を若干増額したり、制度を利用しやすくしたりするための若干の改定を行うことが、数百億円から数千億円単位の国庫支出増加につながり得る。1人や1世帯に対しては若干の改善であっても、制度利用者が100万人単位で存在するからだ。

 しかし厚労大臣は、そのような重大な判断を、国会での審査や可決を受けずに行うことができる。国民の生命や生活を守るために必要であれば、実施するしかないからだ。

 たとえば1973年は、石油危機による激しいインフレが持続し、「狂乱物価」と呼ばれた。この年、生活保護基準は2回にわたって増額改定された。そうしなくては、生活保護で暮らす人々の生命や生活を守ることができないため、厚労大臣の責任において改定が告示され、実施されたのである。2013年8月から実施された生活保護基準引き下げとは、対照的である。

 もしも田村厚労相が、保護費を2013年度初めと同等に戻し、減額された保護費7年8カ月分を当事者らに返還すれば、生活保護で暮らす直接の当事者たち200万人以上の多くは、将来にわたって田村氏に悪い感情を抱かないのではないだろうか。その決断を自民党が支えれば、自民党に対する“国民感情“が大きく変わる可能性もある。もちろん、生活保護世帯の暮らしは、子どもを含めて向上する。
 そのためには、2月22日の大阪地裁判決は確定判決となる必要がある。直接の被告とされた大阪府内の12自治体が控訴を断念すれば、確定する。といっても、その判断を実際に行うのは厚労省である。

厚労省職員に
先輩の「愛のムチ」は響くか
 2013年に行われた生活保護基準引き下げの撤回を求める集団訴訟「いのちのとりで裁判」は、2014年より開始された。現在も約900人の原告によって、全国の29都道府県で継続中だ。

 愛知県では、2020年6月に「2012年に自民党が引き下げると決めて、国民が支持したのだから、しかたない」という内容の名古屋地裁判決があった。判決を不服とした原告が控訴したため、現在は高裁で控訴審が行われている。2月22日の大阪地裁判決は、2つ目の地裁判決であった。名古屋地裁判決と合わせると、「当時、自民党と国民感情が支持していたからといって、デタラメな根拠で引き下げたことは許されない」という内容となる。

 大阪地裁判決から2日後の2月24日、大阪地裁で勝訴した原告ら、「いのちのとりで裁判」弁護団の弁護士ら、および支援者らは、厚労省に保護課職員に申し入れを行った。東京・霞が関の厚労省を直接訪れた人々も、ネット中継で参加した人々もいた。

 霞が関を訪れた原告のSさん(68歳・男性)は、申し入れの様子を次のように語った。

「今日は、厚労省からは保護課の課長補佐の方が出てました。上の人に『お前ら、行って来いよ。話聞くだけ聞いてきて、何も答えるな』と言われて来た感じでした。もともと厚生省職員だった弁護士の尾藤先生が怒ってました」(Sさん)

 弁護士の尾藤廣喜さんは、京都大学法学部を卒業後、厚生省に入省した。1970年から1973年にかけて、厚生省職員として生活保護をはじめとする制度の充実に取り組み、健保の高額医療費制度の創設にも関わった。しかし限界を感じ、転身して弁護士となった経歴を持つ。Sさんによれば、尾藤さんはこのように怒ったという。

「尾藤先生は本当に厳しく、『お前ら、ホンマに仕事しとんのか。昔は、骨のある役所の人間がおったんや。今はみんな忖度主義者や』みたいな」(Sさん)

厚労省職員の対応は、次のようなものだったという。

「もそもそと言って、『お答えは控える』と……こんなもんでしょ」(Sさん)

 尾藤さんは苦笑していた。強い口調の関西弁は、おそらく実際と異なると思われる。しかし、同席していた弁護士の小久保哲郎さんも、「厚労省の職員は、ビビってました」という。

 当の尾藤さんは、「優しく言いました」という。尾藤さんは厚労省職員に対し、自分自身も厚生省職員だったこと、そして生活保護法を1950年に作った厚生官僚の小山進次郎氏に会ったことがあることを語ったそうだ。

「小山進次郎さんが、どういう思いでこの法律をつくったのか。なぜ保護基準が、国会ではなく厚生大臣権限で決定できるようになっているか。そこを考えたことがありますか? とお話ししました」(尾藤さん)

原告が勝訴し、厚労省が敗訴した
場合の「対策」も
 厚労省保護課の職員なら、小山進次郎氏が遺した社会保障のバイブル『生活保護法の解釈と運用』を読んでいるはずだ。「『解釈と運用』には、こう書いてあります」と答える程度なら、何ら差し障りはないであろう。しかし、そういう応答はなかったようだ。尾藤さんは続ける。

「大臣の裁量権には、大臣が速やかに国民生活を反映して基準をつくるという意義があります。あなた方厚労省職員も、そういう責務を負っているのではないかと申し上げました」(尾藤さん)

 そもそも、一連の訴訟は2014年から継続しており、現在は8年目となっている。厚労省職員も、被告側証人として証言を行っている。この重要な訴訟の判決がいずれ明らかになった折の対応について、判決のいくつかのパターンを予測し、「傾向と対策」を練り上げていたはずだ。もちろん、原告が勝訴して厚労省が敗訴した場合の「対策」もあったはずである。

「各省庁の官僚が当然行うはずの判決予測について、『しましたか?』と尋ねると、厚労省職員は、渋々『しました』と認めました。しかし、結果に対してどうするか決めていたかどうかを聞くと、きちんと答えてくれませんでした。『判決に対応するのは、役人の仕事ではありませんか?』と、先輩として厚かましいけれども一言申しました」(尾藤さん)

 国側の敗訴を想定していなかったのか。想定していたけれども検討内容は言えないのか。真相は不明である。

60年ぶりの画期的な
判決は確定するか
 ともあれ、2月22日の大阪地裁判決は、「生活保護基準の低さは異常で違法」ということを認めた判決としては、60年ぶりのものであった。60年前の判決は、朝日訴訟東京地裁判決であった。当時なら、「敗戦からまだ15年、とにかく国にお金がない」という財政上の理由が認められる余地もあった。しかし現在の日本では、そういう主張は無理筋であろう。しかも生活保護基準引き下げの根拠は、厚労省内部で行われた「物価偽装」なのである。

 元厚生官僚として、尾藤さんは語る。


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「厚労省の担当者が、意図的に数字を操作したり捻じ曲げたりするのは、恥ずべきことです。今回の大阪地裁判決には、その違法性が明記されています。厚労省としては、真剣に受け止めなくてはならないのではないでしょうか。関係省庁と協議は必要でしょうけれど、その上で、判決を確定させるべきではないでしょうか。そういう当然のことを申し上げましたが、暖簾に腕押しで。厚労行政のプライドが感じられませんでした」(尾藤さん)

 尾藤さんの語り口は穏やかだが、声と雰囲気には迫力がある。厚労省職員は、さぞ怖かったであろう。

「でも、コロナ禍での厚労省保護課の対応は、評価しています。菅首相も『最終的には生活保護』と、生活保護の意義を認めています。ですから、期待を込めて、優しく言いました」(尾藤さん)

 大阪地裁判決は、愛猫家であり数学が好きな筆者にとって、多重に縁起のよい判決であった。当日の2月22日は、日本の愛猫家にとっては「猫の日」である。また、3名の裁判官のうち1名は、筆者が尊敬する数学者の1人と同姓同名である。この判決が確定すれば、コロナ禍に翻弄されて明るい見通しを持てない日本全体に、よい縁起がもたらされる。なぜなら、住民税非課税や就学援助など多数の制度が、生活保護基準と連動しているからだ。

(フリーランス・ライター みわよしこ)

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