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生活保護者の集いコミュの喘ぐ人々に生活保護の申請を躊躇させる「家族への扶養照会」という悪習

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https://diamond.jp/articles/-/260531

生活保護が必要なのに
申請できない人々の実態
 コロナ禍の中で過ぎた年末年始、そして年が明けてすぐ発令された2回目の緊急事態宣言は、生活に困窮する人々を確実に増加させている。しかし支援団体の多くは、生活保護への抵抗感に困惑している。

 生活保護の利用を困難にする国籍や在留資格などの問題がなく、誰がどう見ても生活困窮状態にあり、生活保護の利用資格があり、生活保護以外の手段が残されていないにもかかわらず、生活保護を申請することには積極的になれない人々が多いのだ。何が生活保護の利用をそれほど困難にしているのだろうか。

 年末年始、一般社団法人つくろい東京ファンドは、相談会を訪れた人々165名に対して対面式インタビュー調査を行った。生活保護に関しては、22.4%が現在利用中、13.3%が過去に利用、64.2%が利用歴なしだった。住居や食糧や医療について差し迫った支援を必要としている人々のうち約80%は、生活保護を利用できそうであるにもかかわらず利用していないことになる。

 来訪者の90%は男性、平均年齢は56歳だった。現在、生活保護を利用している人々の平均年齢は61歳、現在は利用していない人々の平均年齢は54歳。生活保護を利用していない人々は約6歳若いのだが、「大差ない」ともいえるだろう。いずれにしても、生活保護を現在利用していない人々は、本人が「働けば何とかなるだろう」と思っている場合もあれば、働けば何とかなってきたはずなのにコロナ禍でままならなくなった場合もあるようだ。

 生活保護を現在利用していない人々のうち、賃貸アパートや持ち家など安定した居住を確保している人々は35%に過ぎなかった。65%は、路上生活・ネットカフェ・簡易旅館・知人宅など、不安定な居住を強いられていた。居住だけでも、生活保護の必要性は切実なはずである。

 それでも生活保護の申請に踏み切れない背景は、どこにあるのだろうか。

生活保護を阻む最大の要因は
「扶養照会」だった
 つくろい東京ファンドは、生活保護を利用していない理由についても丁寧な聞き取り調査を行った。過去に利用したことのある人々が挙げた理由のトップ3は、「役所で嫌な目に遭った」(59%)、「相部屋の寮に入所させられた」(49%)、「家族に知られるから」(32%)である。利用歴のない人々の挙げる理由のトップは「家族に知られるから」(34%)となっており、他の理由には大差が見受けられない。いずれにしても、「家族に知られる」という可能性が、生活保護申請の高いハードルとなっているのは確かだ。

 生活保護を申請したことが家族に知られてしまうのは、生活保護法第4条に「保護は、生活に困窮する者が、その利用し得る資産、能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用することを要件として行われる」と定められているからだ。「あらゆるもの」には、親族による扶養が含まれる。第4条の2に「民法に定める扶養義務者の扶養及び他の法律に定める扶助は、すべてこの法律による保護に優先して行われるものとする」と明確に書かれている。

 もっとも、第4条の3には、それらの規定は「急迫した事由がある場合に、必要な保護を行うことを妨げるものではない」とある。実の親が大富豪であっても、現在その人が生活に困窮しているのであれば、生活保護の対象になり得る。虐待やDVから逃げてきた場合も、家族の経済状態と無関係に、生活保護で安心を取り戻すことができる。しかし、このような詳細は、十分には知られていない。

 原則として、生活保護を申請すると、扶養義務者である三親等内の親族に「あなたの親族のカツオさん(例)が生活保護を申請しています。カツオさんに仕送りや同居など何らかの援助はできませんか」という書面が送付される。これが「扶養照会」である。

 期待される援助の範囲は、実は非常に幅が広く、必ずしも「カネ」だけではない。同居して生活を支えたり、あるいは仕送りを行ったりすることが不可能なら、時に会ったり手紙を送ったりする援助、通院時の付き添いを行う援助でもよい。どのような援助も不可能なら、援助しなくてよい。そのことは、扶養照会の書面にも明記されている。しかし、生活保護費を削減する財政論的な立場から見れば、有効なのは同居と仕送り、つまり「カネ」の援助だ。
身内が生活保護を受けるのは恥」
という根強い拒否反応
 そこに、扶養照会をされた家族の事情が重なる。地域によっては、「身内が生活保護を受けるなんて恥」という意識が強い場合もある。生活保護を申請したり利用したりしたことを理由として「縁切り」するという話は、2021年現在の日本でも珍しくない。「自分が扶養します」と役所に申し出て本人に生活保護の申請を取り下げさせ、実際の扶養は行わずに見捨てるという最悪のパターンもある。

 さらに、そもそも血縁者との付き合いが絶えており、正確な住所や年齢を思い出せないという場合もある。厚労省は、「過去20年にわたって付き合いがない場合には扶養照会をしなくてよい」としている。さらに、自治体の判断で「付き合いがない」とする範囲を拡大する場合もある。東京都は「過去10年間」としている。

 扶養照会は、福祉事務所にとっても多大な負担となる。生活保護の申請から原則2週間で可否を判定し、保護を開始しなくてはならないからだ。とはいえ、東京都内の生活保護の現場で長年働いてきた経験を持つ社会福祉士の田川英信さんは、「自治体によって作業量は大きく異なるだろうと思います」という。

「扶養照会をするかどうか、どの親族に扶養照会するのかは、精査して判断します。精査の基本は、ご本人からの聞き取りです。親族を精査して絞り込んでから扶養照会する場合、それほど時間はかかりません」(田川さん)

 生活に困窮した家族の面倒を見ることは、民法上の義務ではある。しかし、「自分の身を削っても」という強い扶養義務があるのは、夫妻相互の間、そして未成熟の子に対する親だけだ。その他の「三親等内」の扶養義務は、「無理のない範囲で援助することが望ましい」という弱い扶養義務である。

「精査せず、扶養義務者の全員に機械的に照会することは求められていないのですが、そういう方針をとる自治体の場合、作業量が大きくなります」(田川さん)

現在の所在が不明な親族がいると、戸籍の附票で調査することになる。改姓されたり新戸籍が作成されたりしている場合、それを現時点まで追いかけていくことになる。2週間以内に保護の可否を判断するためには、その作業を短い期間で集中して行わなくてはならない。三親等内に親族が10人いるのなら、10人分行うことになる。

 その手間隙をかけても、自治体が財政的に期待したい「引き取ります」「仕送りします」という回答は、ほとんど得られない。東京都内の自治体で明らかにされている実績では、多くて0.4%なのだ。「皆無」という自治体もある。

「扶養照会を減らすと、新規申請の作業量が減って負担感は軽減されるでしょう。保護の開始決定までの迅速な事務処理につながると思います。その時間を、他の方の援助に充てることもできます」(田川さん)

事務作業が増え、効果はほとんどなし
それでも扶養照会を続けるか
 では、どの程度の作業量削減につながるのだろうか。関西の生活保護の現場で働く現役ケースワーカー・大川さん(仮名・30代)に聞くと、「申請受け付けから可否判定までの作業のうち、扶養義務者の存在確認・扶養を期待できる可能性の確認・戸籍調査・扶養照会の発送業務を含めて、体感で2〜3割」ということだ。

「機械的に、親族だからという理由で扶養照会をする場合は事務的負担が大きくなり、申請した制度利用者さんに配慮すると、心理的負担が大きくなるのではないかと思います」(大川さん)

 事務作業を削減するということは、ケースワーカーが単に「ラクになる」ことを意味するのではない。削減された作業量は、感情労働の負荷となる場合がある。

「『なるべく親族との関係を維持できるようにすべきではないか』と思われる場合、扶養照会はしない方向で考えます。すると、上司を説得したり、府県の監査対策を行ったりする必要があります。時には、手続き的に親族の方に扶養照会の書類を送付しつつ、ご本人から『扶養できません』と書いて返してよい旨を伝えていただくこともあります」(大川さん)

 扶養照会は、その人のその後の人生と人間関係のために、形骸化させることもできる。しかしそれならば、そもそも扶養照会がなくなればよいのではないか。

生活保護で暮らす身内を
引き取らせるための「探り」では?
 東京都東部で暮らすエツコさん(仮名・40代)は、母親の病気と父親の事業での失敗から、生活保護のもとで中高生時代を送った。幸い、担当ケースワーカーに恵まれ、高校卒業後は就労して生活保護を脱却した。その後は職業生活を手放すことなく、結婚し、子どもに恵まれた。現在は共働きと育児の苦労、そして景気の影響などに直面しつつ、毎日を送っている。

 2020年、エツコさん夫妻のもとに、扶養照会の書類が届いた。エツコさんの夫の父親が生活保護で単身生活をしているからだ。決して豊かではない生活を送っている夫妻は驚き、途方に暮れた。役所からの「親族を援助できませんか」という問い合わせは、受け取った側には「援助しないと許さない」というプレッシャーとなる場合がある。

 エツコさんと義父は、良好な関係にある。子育てや日常生活で、義父の手助けを受ける場面も多い。エツコさんは「ありがたい存在」という。そして、「いざとなれば同居」という心づもりでいる。生活保護のもとで入所できる高齢者施設の介護内容を信用していないからだ。しかし、扶養照会には当惑したという。

「厚労省の偉い方々は、結婚して家庭を持ち、子どもを育てている私たち家族を『余裕がある』とみなしたのでしょうか? 『余裕があるんだったら、公助を切らせて』ということでしょうか? 義父を生活保護から脱却させる可能性がないかということで、私たちに探りを入れてきているのでは?」(エツコさん)

 筆者は「そんなことはない」と言いたい。扶養照会は、厚労省ではなく自治体が行う。しかし同時に、「そう思われても仕方がないかもしれない」と考えてしまう。

 ともあれ、扶養照会のメリットは、行政にも市民にも見出せない。コロナ禍によって生活保護へのニーズが高まっている現在は、「止めどき」だ。止めてしまうためには生活保護法の改正が必要だが、取り扱いを「原則として扶養照会をする」から「例外として扶養照会をする」へと変更することは、厚労省の通知1枚でできる。

(フリーランス・ライター みわよしこ)

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