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生活保護者の集いコミュの生活困窮者支援にがぜん前向きになった、厚労省の不思議と本気度

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https://diamond.jp/articles/-/258108

厚労省の情報発信に見える
官僚たちの“本気”

 新型コロナの感染者が増加し、影響が深刻化する中で、昨年よりも寒さの厳しい冬がやってきた。あと数日で、年末年始の閉庁期間へと突入する。今年秋から年末にかけて「コロナ解雇」に見舞われた人々、家賃滞納などによって住居を喪失しそうな人々、あるいはすでに住居を喪失してしまった人々にとっては、例年の年末年始よりも厳しい条件が重なる年の瀬だ。

 しかし、困難な状況にあり、生き延びるための情報を得ることも容易ではない人々は、どこの誰に助けを求めればよいのだろうか。

 今年の年末年始が昨年以前と異なるのは、厚労省が本気で情報発信を行っていることだ。2020年、コロナ禍の影響が日本国内で目に見える形となって現れるのよりも早く、厚労省社会・援護局は、既存の制度の対象を拡大し、柔軟に運用する姿勢を見せ始めた。

 1950年に発足した生活保護制度は、わずか4年後の1954年に利用抑制へと方針を転換し、2020年現在に至っている。方針転換の背景は、「適正化」という名目で社会保障支出の削減を求める大蔵省と、必要な社会保障予算の確保と制度運用を求める厚生省内勢力の対立だった。この図式は、現在も「財務省 vs. 厚労省内勢力」の形で存在しているのだが、2020年は、生活保護の「適正化」方針が転換の可能性を見せた年として記憶されることになるかもしれない。

 そして12月22日、厚労省は画期的な情報発信を開始した。「生活保護を申請したい方へ」(www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/seikatsuhogopage.html)というウェブページを設けたのだ。さらにページのトップには、画像で「生活保護の申請は国民の権利です。生活保護を必要とする可能性はどなたにもあるものですので、ためらわずにご相談ください」と明記されている。権利性を明確に認めて利用を勧める文言が厚労省のウェブサイトに現れたのは、筆者の知る限り「史上初」である。

 そして、「生活保護の申請について、よくある誤解」の説明が続き、「扶養義務者に相談しないと申請できないわけではない」「すでに住居喪失していても申請できるし、施設入所は申請の条件ではない」「持ち家があっても申請できる」「必要な書類が揃っていなくても申請できる」という内容が並ぶ。

 内容自体は、生活保護の本来あるべき姿、「タテマエ」である。しかしこれらの内容は、運用の「ホンネ」の部分では、たとえば「別居している弟さんの同意がないということなら、申請は受け付けられません」という形で、申請を行わせない「水際作戦」に利用されてきた数々だ。それなのに厚労省の公式サイトは、「タテマエ」が実施されるべきであり、それに反する「ホンネ」は認められない、ということを発信し始めたのだ。クリスマスイブの2日前、クリスマスの3日前の、嬉しい驚きであった。

「自動車があっても申請できる」
若干、説明が足りないところも
 追加すべき点があるとすれば、「自動車を保有していても申請できる」および「働けるのに働いていない状態でも申請はできる」の2点であろう。特に地方において、「生活保護か車か」という究極の二択は、必要とする人々から生活保護を遠ざけてきた。

 ひとり親世帯なら「児童扶養手当」という選択肢も残されているのだが、利用が積極的に推奨されてきたわけではない。しかし、もともと車の保有については半年間の猶予期間が認められている。また、審査請求や行政訴訟では、車の保有や運転を認める決定が続いている。

 生活保護は、1950年に制度が発足した当初から、働けるのに働かないことを奨励して「惰民育成」の制度になる可能性が懸念されてきた。しかし、若く心身ともに健康で職業スキルや経験を持っているからといって、求職すれば仕事が見つかるとは限らない。求職者と求人の間の需給バランスは、時期や状況によって大きく変動するからだ。

 コロナ禍は、この当然の事実を誰もがわかる形で示し続けている。ともあれ、筆者は大声で、「車があっても申請できます」「『自分は働いて自活できるはず』と思っている方でも申請できます」と叫びたい。

さらにこのページには、「なぜ、そうしたのだろうか」と疑問が感じられる点もある。たとえば、「生活保護の申請は国民の権利です。……ためらわずにご相談ください」という文言は、テキストではなく画像になっている。画像のタイトルは「生活保護の申請は……」という同じ文言となっているため、「音声読み上げブラウザなどでは存在に気づかれない」という事態は発生しないかもしれない。

 このような箇所は、他にも1箇所ある。素直にテキストにしておき、フォントや文字装飾で同様の効果を出すことがベターではある。しかし、「その記述の存在に気づかない人がいる」という事態は回避されている。迫る年末、余っているわけではない人的資源の中で、ベストを尽くしたのであろう担当者を称賛したい。

これで「水際作戦」も怖くない?
支援団体情報につながることもできる
 生活に困窮する人の中には、まだ生活保護を申請する決意を固められていない人や、現在のところは生活保護の資格がない人もいる。厚労省は、家賃補助のみを行う生活困窮者支援制度、社協の貸付などの制度を、生活保護とともに知らせる「相談支援や生活保護などの生活支援のご案内」ページ(www.mhlw.go.jp/stf/newpage_15468.html)も設けている。

 ここには、公的支援情報とともに、「民間支援団体のさまざまな支援のご案内」というバナーもある。クリックすると、一般社団法人 社会的包摂サポートセンターの「年末年始における生活困窮者支援活動の全国一覧をアップします!」というページ(https://www.since2011.net/information/1903/)が表示される。情報はPDFにまとめられており、内容は炊き出し・生活相談・ホームレスを対象とした夜回りなど多様だ。

 とはいえ、探せばツッコミどころは見つかる。まず、情報の網羅性には若干の疑問が持たれる。東京都内だけでも、「なぜ、この団体のこの活動は載っていないのだろうか」という疑問が感じられる。なにより、東北は仙台市だけ、北関東では那珂市だけ、九州では福岡市・北九州市・鹿児島市だけの情報しかないのだ。

もちろん、その他の地域に生活困窮者がいないわけはないし、支援団体も存在する。情報が掲載されていない地域の人々は、一覧の冒頭に掲載されている電話相談ホットライン、およびチャット・メール・SNSによる相談のいずれかで、近隣の支援団体情報を得ることになるのだろうか。

 しかし、拡大しながら続くコロナ禍のもと、厚労省が率先して民間と協働する姿勢を示したこと、決して「御用団体」ではない民間支援団体を含めて情報へのリンクを設けたことは、やはり画期的な出来事である。

 実際に生活保護を申請する際には、多くの場面で「水際作戦」対策が必要だ。保護開始後も、行政による人権侵害への対策が必要になることが多い。この悲しい現実に、当事者が立ち向かって生き延び、行政が救済と人権保障という本来の役割を果たすためには、申請への同行をはじめとする支援団体の協力が欠かせない。

 いずれは、どこにいる誰であっても、身近な支援団体情報に自然にたどりつける仕組みが整備されてほしい。たとえば、コンビニの店舗に必ず近隣の支援団体情報のチラシが設置されるようになれば、それだけで状況は大きく変わるだろう。

あなたの情報発信は
誰かの生命を救うかもしれない
 東京都限定で恐縮だが、東京都は4月の「緊急事態宣言」に続き、年末年始の住居喪失者への借り上げビジネスホテルの提供を、すでに開始している(期間は2020年12月21日から2021年1月19日)。

●東京都報道発表資料:年末年始において、住まいを失った方へ一時宿泊場所を提供します
https://www.metro.tokyo.lg.jp/tosei/hodohappyo/press/2020/12/18/06.html

 制度が用意されても、窓口が閉まっているのでは意味がない。このため、窓口となる「TOKYOチャレンジネット」(https://www.tokyo-challenge.net/)は、12月29日・30日・1月2日に臨時開所される予定である
「生活保護を申請しよう」という決意を固めている方は、一般社団法人つくろい東京ファンド(https://tsukuroi.tokyo/)の「フミダン」(https://fumidan.org/)を利用すれば、すぐに申請書類のPDFを作成してダウンロードすることができる。

 申請にあたっては、その申請書を居住地の福祉事務所に届ければよい。夜間や休日なら、FAXで送付すればよい。東京23区限定だが、PDFを作成すると共に福祉事務所にFAXで送付する機能も試験運用される予定である。

 生活保護を申請するにあたり、申請書を手書きしたい方は、特定非営利活動法人自立生活サポートセンター・もやいのWebサイトからダウンロードできる(https://www.npomoyai.or.jp/download)。


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 年末年始の福祉事務所の臨時開庁を決定している自治体もある。東京23区内では、江戸川区役所が臨時開庁(https://www.city.edogawa.tokyo.jp/e004/kuseijoho/kohokocho/press/2020/12/1207-5.html)、新宿区が臨時相談窓口を設置(https://www.city.shinjuku.lg.jp/fukushi/seikatsu01_000001_00006.html)、その他いくつかの区が臨時対応を検討している。厚労省は11月24日の事務連絡「年末年始における生活困窮者支援等に関する協力依頼等について」(https://www.mhlw.go.jp/content/000697946.pdf)で、各福祉事務所に年末年始も途切れることのない対応を「お願い」している。家賃滞納等により住居を喪失しそうな方々は、特に「善は急げ」だ。12月中の申請で保護開始となる場合、12月分の家賃補助も受けることができる。FAXなら、送信終了時刻が申請時刻となる。

 生活保護は、国の制度を地方自治体が実施しているのだが、1999年の「地方分権一括法」により、機関委任事務から法定受託事務へと変更された。このため厚労省は、「国に代わって運用している以上、年末年始も福祉事務所を開けるように」と指示することはできず、「お願い」しかできない。この是非は、次の選挙での投票先と共に考える必要があるだろう。

 いずれにしても、これらの情報は、必要な人に確実に届き、利用されることによって生きる。そして、その情報のソースを確認して拡散するだけで、役に立つ可能性は確実に高まる。誰かの幸運を祈りつつ、支援情報やクラウドファンディング情報を拡散しつつ、せめて心の中だけは穏やかに新年を迎えたいものである。

(フリーランス・ライター みわよしこ)

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