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生活保護者の集いコミュの母が遺体で見つかるまでの58日 「公助」の砦は崩れた

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https://digital.asahi.com/articles/ASNDJ54VSND5UUPI001.html

 大阪府八尾市のアパートの一室で、母親(57)とその息子(24)の遺体が見つかったのは、今年2月22日の昼前だった。大阪府警八尾署は息子について〈住所・職業不詳〉と発表した。

 単身で生活保護を受けていた母の隣で、自立していたはずの息子がなぜ息絶えていたのか。

生活保護を受けていた母はその2カ月ほど前、保護費の受給日に市役所に姿を現さず、連絡が取れなくなっていた。そして、独立して働いていると思われていた息子と二人、同じ屋根の下で息絶えていた。悲劇なのか、自己責任なのか、それとも……。二人の足取りを追うルポの最終回。番外編として識者インタビューがあります。

 息子がみずから3度目となる生活保護の廃止を選び、母のもとを離れたとされるのは、その約1年3カ月前にさかのぼる。2018年11月、息子は「仕事が見つかったので、祖母のところへ移って自立を目指したい」と言って、保護を抜けた。八尾市によると、それまで生活保護を受けて同居していた母の世帯から抜けることから「世帯員削除」と呼ばれる。

 市のケースワーカーは「住民票を移した祖母の家にいると思っていた」と話し、祖母は「住民票を移させてほしいとは言われたけど、一緒に暮らしてはいなかった」と否定する。息子はどこで、どう過ごしていたのか。市はすでに生活保護受給者でなくなったため、その後の動向は把握していないという。

 じつは、市は一度だけ息子と接触していた。

「不正受給の恐れがある」
 家賃滞納で借家を追われ、ホームレスのように転々としていた母とともに突然、八尾市役所に現れたときだった。息子が生活保護を抜けてから約半年後、昨年6月のことだ。顔を合わせた係長は「薄汚れた服装が印象に残った」と振り返る。

 このとき、家主や祖母をまじえた緊急面談が開かれ、母が滞納していた家賃や、かつて市から受け取りながら使い込んでしまった転居費用をどのようにして返していくかを話し合った。

母子が遺体で見つかったアパート。入り口は道路から一段高くなっている=大阪府八尾市末広町

 収入のない母が、毎月約8万円支給される生活費の中から、使い込んだ転居費用など2万5千円を返していくのは簡単ではない。しかも、それまでの使い込みからすると、浪費癖があったと思われる。伏し目がちな母の隣で、息子は「これから仕事を見つけ、母が滞納してきた家賃を返す」と申し出たという。

 立ち会った係長はその思いを受け止めながらも、「不正受給の恐れがある」と感じていた。借金を返そうとすれば、息子は生活保護を受けないまま、生活保護を受ける母のもとで暮らし、働いても収入は申告しないだろう。そうすれば世帯の収入は変わらないため母の保護費は減ることなく、息子の働いた分が手元に残るからだ。

 その恐れがあったにもかかわらず、係長はあらためて生活保護を受けるよう息子に勧めることはなかった。「もし助けが必要になれば、息子さんから声をかけてくれると思っていたので」。そして、「薄汚れた服装」の息子にどこで暮らしているかをたずねることはしなかったという。

 面談の後、母は市から紹介された不動産屋を通じて、最後の住まいとなる末広町のアパートに移った。

 同じ町内に住む市議の越智妙子さん(67)は、この時点で二人は一緒に暮らしていた、とみている。近所で次のような話を聞いたからだ。

 「ゴミ出しする大柄な兄ちゃんの姿を何度か見た」

 「毎朝のように9時過ぎごろ、母子が自転車に乗って一緒に出かけていた」

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近鉄八尾駅の周辺では、母子の姿がたびたび見かけられていた=大阪府八尾市

 さらに越智さんが注目したのは、アパートの入り口にある段差だった。

 「測ってみたら38センチありました。道路との間にある溝も幅20センチほど。両ひざが悪い母が、一人で出入りできるとは思えません。息子が一緒にいてくれるから大丈夫やったん違いますか」

 息子が働かずに同居していれば、母ひとり分の生活保護費だけで暮らしていたことになる。

息子はいつ、母のもとに戻ったのか
 面談からさらに半年あまりがすぎた19年12月26日、母は翌年1月分の保護費を受け取りに来ず、さらに約2カ月後、二人は遺体で見つかった。

 息子はいつ、母と同じ屋根の下に戻ったのか。市生活福祉課の小森文也課長は「わからない」と繰り返す。遺体の見つかったアパートに、息子の歯ブラシや食器、靴はあったのか。「確認はしていない」。それでも、住民票が祖母のところに置かれていたことを理由に、「二人が一緒に暮らしていたとは考えていない」という。

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アパートの段差は40センチ近く。ひざの悪い母がひとりで出入りできただろうか=大阪府八尾市末広町

 ただ、説明には不可解な点がある。

 市は母に連絡がつかなくなってから遺体で見つかるまでの58日間、扶養義務者である息子に一度も連絡を取ろうとしていない。市は、母子を「とても密な関係」(係長)で、息子は母の見守り役と見ていたというのに、である。「祖母の方とは連絡がとれていたので……」と市は説明するが、住民票上、同居している息子に電話を代わってもらおうとはしなかったという。

 息子は母のそばについている。だから、母がつかまらなくても緊急性はない。何かあれば、息子から連絡がくるだろう――。そうみていたからこそ、市は息子に連絡しなかったのではないか。越智さんはそう考えている。

 だが、二人からケースワーカーに連絡が入ることはなかった。

 越智さんも知る母の「30年来の友人」という女性(67)は、「あの二人は、いつも一緒やった」と話す。

 ガスが止められたと言って風呂を借りにきたとき、ひざの悪い母がトイレに立とうとした。女性の住む木造家屋は和式のため、近くのスーパーに借りにいくことになった。息子は母に肩を貸し、黙って付き添った。

 女性が最後に会ったのは、昨年秋ごろだった。

 「(就職活動する)息子の履歴書に写真を貼らなあかんから、千円貸して」

 そう言う母に、女性は5千円と冷凍食品などを渡した。後日、5千円が入った封筒とみかんが郵便ポストに入っていた。〈おかあちゃん、ありがとうな〉。短いメッセージが添えられていた。

 女性は二人を連れていったことがあるファミレスに行くたび、切なくなる。「ずっと頼ってきてたのに、なんで最後に『助けて』って言うてくれへんかったんか……」

 その思いはケースワーカーたちも同じではないか、と越智さんは言う。「お母さんが死んでも、自分が衰弱しても、息子さんはだれにも助けを求めなかった。もちろん、市役所にも。そのことに、関係者はショックを受けている」

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ひざの悪い母が通っていた病院=大阪府八尾市

「本当の生活実態はつかみ切れない」
 八尾市では昨年度、45人のケースワーカーが1人平均128世帯を担当していた。国が標準とする80世帯の1・5倍を超える。最後に母を担当したケースワーカーは、自分の割り当てに加え、病気休職の同僚の分も含めて138世帯をみていた。

 「増員は毎年要望しているが、財源も限られているため一気には増えない」(市生活福祉課)

 しかも、経験3年未満のケースワーカーが約3割を占め、精神的なストレスによる休職も珍しくないという。市が年間計画で定めた訪問回数の達成率は、昨年度71%。訪問による調査が十分にできていないだけでなく、不在で二度手間になるのを避けるため、予告してから行くことも少なくないという。

 ケースワーカー経験者は「事前に伝えたら、受給者は都合の悪いことを隠せるから、本当の生活実態はつかみ切れない」と指摘する。

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八尾市役所。「Y」と「O」を組み合わせた市章。円は円満な市政の遂行を、円から少し突出させたYは市の将来の発展を表現しているという=大阪府八尾市本町

 八尾市は過去3年(17年度〜19年度)、大阪府の監査で「組織的な検討が十分に行われず」にいた事案や、「組織的運営管理の徹底」なども指摘されていた。この母子が死亡した事案でも、担当ケースワーカーと係長は二人だけで抱え込み、組織として情報が共有されることはなかった。

 市生活福祉部の當座宏章部長は「保護費を受け取りにきていないなど危機のサインをどうとらえるか、生活実態をどう把握するかなど、組織として反省点を今後に生かしたい。また、生活保護に限らず、聞き取りづらいさまざまな人々の声を受け止められるよう、市役所全体で相談体制を見直したい」と話す。

 二人の死後、市生活福祉課は、水道料金を滞納している生活保護受給者のリストを水道局から提供してもらうようにした。連絡がつかない受給者の安否を確かめるマニュアルづくりも、関係機関と連携して進めている。

 「公助」の最後の砦(とりで)が崩れ、二人が遺体で見つかってから10カ月。かつて担当した係長はこう漏らした。

 「正直、いまでも引きずってます」

 大阪府は12月22日、今年度の監査で八尾市に入り、母子死亡の事案も調べるという。=おわり

(破れたセーフティーネット)(諸永裕司)

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