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生活保護者の集いコミュの「冬だけ生活保護でサバイバル」を認める、北海道の柔軟な公助の仕組み

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https://diamond.jp/articles/-/250798

「冬だけ生活保護」という
北海道のサバイバルスタイル
 9月下旬から、全国で気温が下がり始め、冬へと向かう気配が色濃くなっている。全国に先駆けて冬が訪れる北海道では、本稿を執筆している2020年10月8日現在、173カ所の計測点のうち161カ所で最低気温が10℃未満となった。このうち38カ所は最低気温が5℃未満、最も低かった「ぬかびら温泉郷」は1.2℃であった。

 関東南部では12月から2月にかけての最も寒い時期に見られる気温が、北海道には10月に現れる。もちろん北海道は、これから寒さと積雪のピークへと向かう。最高気温は氷点下、最低気温はマイナス10℃以下という時期が、数カ月にわたって続く。

 しかし、北海道でコロナ禍の打撃を受けた人々には、北海道ならではの公的制度の蓄積がある。その一例は、「冬だけ生活保護」というスタイルだ。冬になると、暖房費・防寒衣料などの出費がかさみ、夏よりも生活が厳しくなる。資産が少なく、夏の所得が生活保護基準よりも若干高い世帯の場合、冬になると生活保護以下の生活となる可能性がある。このため北海道には、「冬だけ生活保護で生き延びる」というスタイルが存在する。

 たとえば札幌市の場合、月ごとの生活保護世帯数は、6月または7月に年度内で最少となり、3月に年度内最多となることが多い。普段から生活が苦しい世帯でも、生活保護の助けがあれば厳しい冬を乗り越えられる。しかも生活保護世帯数は、秋から翌年3月に向けて微増している。春から秋にかけての貯金等で冬に備えているものの、持ちこたえられなくなる世帯が徐々に増えていき、3月にピークに達する様子がよく分かる。

そのような世帯は、多数というわけではない。たとえば2019年度は、最少だった6月に5万4795世帯(生活扶助人員は6万2496人)、最多だった2020年3月に5万5250世帯(同6万5955人)であった。2020年3月はコロナ禍の影響が現れ始めていた時期でもあるが、例年、傾向は同様である。最少と最多の差は、その冬を「冬だけ生活保護」で生き延びた世帯数および人数の最多の見積もりと考えるべきだろう。生活保護を必要とする背景は、寒冷以外にも多数あるからだ。

 災害救助や紛争地の支援において、「455世帯の安全を確保した」「3459人の命を危機から救った」という実績は、世界で報道されるニュースとなり得る。日本においては、寒冷地の冬の寒さという脅威に対して、札幌市だけでも世界に誇り得る規模の人道支援が毎年行われ、健康状態を悪化させたり生命を失ったりするリスクから、各個人や各世帯を救済している。

 筆者は心から思う。日本はもっと、このことを誇るべきなのではないか。もっと世界に誇れるように、生活保護を運用すべきなのではないか。

北海道に蓄積されてきた
「共助」の数々とは
 北海道の気候には、本州以南の日本にはない特徴がある。気候区分では、本州以南の日本は温帯または亜熱帯に属するのに対し、北海道は亜寒帯である。本州以南と同じ備えでは、生き延びることができない。

 もちろん、個人や家族レベルでの備えは行われているのだが、ニーズが多ければ価格は高くなる。たとえば灯油価格は北海道ではやや高く、「北海道価格」と呼ばれている。それでも、購入しなければ生き延びられない人々は購入するのだが、灯油価格が急騰する場合もある。どうしても、公的制度による支援は欠かせない。

北海道庁や各自治体は、さまざまな公的支援制度を用意してきた。充分であったかどうか、必要とする人々に必ず届いていたかどうかについては、数多くの疑問がある。しかし、それらの制度が必要とされていたことと「ないよりはマシ」だったことは、間違いない。

北海道独自の制度
「薪炭費特別基準」とは
 生活保護においては、北海道独自の制度である「薪炭費(しんたんぴ)特別基準」が、1950年から存在している。その名の通り、冬を生き延びるために必要な薪や炭の購入費用の上乗せであった。暖房の燃料が灯油やガスとなった後も、「薪炭費」の名称はそのまま残った。

 国の制度である生活保護に対して、地方自治体が独自の上乗せを行うことについて、厚労省は「好ましくない」と考えていた様子である。2015年の薪炭費は、最も寒冷が厳しい地域の多人数世帯に対する最大額で、月額1690円という少額となっていた。2015年度より、生活保護の暖房費補助の削減が開始されると、並行して薪炭費も減額された。寒冷の厳しい地域では、わずかな金額となりながらも存続していた時期もあるが、2020年現在は0円となっている。

 この他に、非課税世帯を対象とした「福祉灯油」制度もある。形態や内容は、「1世帯あたり1シーズンに1万円の現金」「灯油110リットル分の商品券」など多様である。また、生活保護世帯に対しては、「生活保護の暖房費補助があるから除外」という扱いの自治体もある。金額や運用が充分かどうかはともかく、「福祉灯油」制度は、東日本大震災の激甚被災地などにも導入されている。

 また、燃料価格の高騰が予想される場合には、北海道庁や各自治体による価格調整の試みも行われてきた。「小泉構造改革」以来の規制緩和の流れとは逆行しているけれども、市場原理と競争原理だけで人命や生活を守ることはできない。日本の人々の多くが、コロナ禍でこのことを痛感しているはずだ。

自治体の判断に左右される
「冬だけ生活保護」
「冬だけ生活保護」というスタイルは、「北海道のどこでも可能」というわけではない。生活保護を申請すると、利用資格が審査される。この審査に“合格”し、「何もかもを失っており、利用できるものがなく、充分に貧困である」と認められれば、生活保護の対象となることができる。

 生活や通勤の足である自動車の保有や運転は認められない。生命保険も解約する必要がある。3親等内の親族に対する扶養照会もある。これらの審査の必要性と内容は、法律と厚労省が定めている。しかし、冬が来るたびに自動車を売却したり、生命保険を解約したり、親族が扶養照会をされて「仕送りできませんか」と訊ねられたりするのでは、「春まで生活保護で生き延びよう」という気にはなれないだろう。

 北海道には独自の判断で、このような審査を緩和している自治体もある。自動車の保有には、もともと6カ月間の猶予期間が設定されている。保険の解約や不動産の売却も、生活保護を申請した時点で終了させておく必要はない。扶養照会も、「相手がDV加害者である場合」をはじめ、行わなくてもよいとされる条件がいくつかある。「冬だけ生活保護」を実現するために必要なのは、自治体の弾力的な運用だけだ。

 このような弾力性が自治体にあれば、春から秋にかけては生活保護を必要としていない人々は、勤務や事業や通学を続けながら、暖房費がかさむ冬季は生活保護を活用し、春から秋とおおむね変わらない生活を営むことができる。まさしく、生活保護の目的の1つである「自立の助長」である。

生活困窮者自立支援制度では
なぜ不十分なのか
「就労を続けてきたけれども、失職したばかり」という人々を支え、自立を助長し、自立を維持することは、2013年に制定された生活困窮者自立支援法の目的である。この法律に基づく「住居確保給付金」という家賃補助も存在する。コロナ禍のもと、住居確保給付金の利用条件は緩和され、生活保護が対象としていない外国人や大学生など数多くの人々を救ってきた。しかし、住居確保給付金には暖房費補助がないため、寒冷地の冬を生き延びることは不可能だ。さらに、「最長9ヵ月」という期間の制約もある。

 冬季の暖房費は、暖房器具の種類や性能、さらに住まいの断熱性能などによって大いにバラつきがある。生活保護の暖房費補助(冬季加算)のような一律の現金給付では、不十分な場合もある。ともあれ、住居確保給付金のみを命綱としている人々には、「9カ月」の期間満了と冬が同時にのしかかることになる。誰が何をすればよいのだろうか。

 筆者には「正解」は思いつかないのだが、「使えるものは何でも使う」という方向性と、「使えるものをつくる」という方向性を、同時進行させる必要がありそうだ。一定の条件のもとで生活保護の利用条件を緩和することや、生活困窮者自立支援制度の住居確保給付金の利用期間の延長や増額を行うことは、国会の審議を経ず厚労省の判断で行える。


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 福祉灯油制度を過去に運用していた自治体は、現在も、制度自体は廃止していないことが多いはずだ。北海道が生活保護に対して行っていた薪炭費特別給付は、現在は給付金額が0円だが、制度としては生き残っている。制度が残っている場合、給付を再開することは比較的容易だ。

 冬の寒冷は、北海道だけを襲うわけではない。気候変動は、九州の温暖な地域にも氷点下の気温をもたらし、寒冷への備えが全くない地域の上下水道に大きな被害をもたらしている。夏の酷暑や台風も、それまで無縁だった地域を襲うようになった。

 お住まいの地域には、必要かもしれないのに存在しない制度が数多くあるだろう。まず、市議会や町村議会で議題にしてくれそうな議員はいないだろうか。成立しなくても、審議の経緯が残れば、実現につなぐことができる。近づきつつある台風14号の動きを気にしながら考えるべきことは、数多い。

(フリーランス・ライター みわよしこ)

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