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生活保護者の集いコミュのエアコン5万円が認められるまで 生活保護と世間の目

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浜田陽太郎
@hamadayohtaro
高齢ニッポンの行方を複眼的にとらえる
 こんにちは。浜田陽太郎と申します。ここ20年ほど、社会保障を中心に取材してきました。「大事だけど、よくわからない」と思われがちなテーマかもしれませんが、くらしと政治の距離を縮めて「わかりやすさ」を追求したいと思います。

酷暑の東京の片隅で

 それにしても、8月は暑かったですよね。エアコンなしの生活はもう考えられなくなったと思いませんか? 

 こんな質問をするのは、最近の経験をご紹介したかったからです。

 猛暑日の8月中旬。私は都内のある男性のアパートを訪ねました。仮にAさんとしておきましょう。

 マスクをしてその部屋にいるだけで、汗がどんどん出てきました。エアコンが動いていないからです。

 70歳代のAさんは独り暮らしで、身寄りはなく、最近、生活保護を受け始めました。

私は、新聞社に勤めるかたわら、地元の社会福祉協議会(社協)に「生活支援員」として登録しています。独り暮らしのお年寄りの金銭管理などをお手伝いする国の制度があり、その最末端で月に1〜2度、活動しています。

 新たに担当するAさんと会ったのは、この日が初めて。6畳一間と小さなキッチンという間取りの部屋は、窓から生ぬるい風が入ってはくるものの、やはり暑い。エアコンはあるのですが、表面が茶色に変色し、見るからに古く、Aさんは使っていないとのこと。

 テレビでは連日、熱中症で救急搬送されたり、亡くなったりするお年寄りのニュースが流れていました。

 さあ、どうしよう……。

新たにエアコンは買えるのか

 Aさんに、貯金はありません。もしエアコンが壊れていた場合、どうすればいいのか。厚生労働省や知り合いのケースワーカーに取材してみました。

 まず、現状では、様々な条件がつきますが何とかなりそうです。

 生活保護費は、少なくとも最低生活費として必要なものはすべて含まれており、エアコンの費用も月々の支給額に「薄く溶け込んでいる」というのが厚労省の説明です。なので、もし生活保護をすでに受けている人が、エアコンを買い替えるなら、保護費から少しずつ貯金して資金をつくらないといけません。

 ただし、保護が始まったばかりで持ち合わせがない人に、日々の生活費などとは別に、電化製品を買うためのお金を原則1回だけ、2万9600円(「真にやむをえない事情」があれば4万7100円)を上限に支給することが認められています。普通は、冷蔵庫、洗濯機、炊飯器の「3点セット」のどれかを購入し、リサイクルショップもよく利用するそうです。

 そこに加えて、「冷房器具」という項目が設けられたのは2018年でした。「熱中症予防が特に必要とされる者がいる場合」と条件がついていて、こちらの上限は5万1千円です。この金額は毎年改定され、今年10月からは5万3千円になるそうです。

 都心部の家電量販店で聞いてみたら、「冷房機能だけの機種」なら、工事費込みで5万3千円くらいからあるとのことでした。

 ちなみに、カネ(金銭)ではなく、役所の側が手配してモノ(現物)を渡すというのが原則です。

「クーラーは外して処分」の時代も

 実はかつて、生活保護を受けている人は、そもそもエアコンを持てませんでした。1994年には、埼玉県桶川市で「クーラー事件」と呼ばれる出来事がありました。

 生活保護を受け始めた79歳のお年寄りが「クーラー所有は認められない」という市の指示で、前から持っていた器具を取り外して、市内の電器店で1万5千円の炊飯器と交換してもらいました。しかし、その年の夏は猛暑。このお年寄りは脱水症状を起こして約40日間入院。市議会、そして国会でも取り上げられ、政治問題になりました。

 批判にさらされた市側の釈明はこうでした。国の通達で、生活保護家庭の持ち物は「当該地域の一般家庭との均衡を失することにならない」ものに限られる。判断基準は「普及率70%」で、桶川市のクーラー普及率は約70%だった。そこで取り外しを指示した――。

 ん? 普及率7割なら認めたらいいじゃないか、と思いますよね。でも、当時の国会議事録をみると、普及率がもっと高くても認めない自治体が多くあったようで、西山登紀子参院議員(当時、共産党)の質問に対して厚生省(当時)は「趣旨が徹底していなかった」と答弁しています。

 ところで、この「普及率7割」という数字は、生活保護の世帯が持つことを認められるものに関し、「一般世帯との均衡」をはかる基準として今も生きています。世間から「ぜいたくしている」と見られるかどうか、という線引きなのです。

移ろいやすい「世間」と政治

 「クーラー事件」の翌年には、もともと持っていれば「ルームエアコンの保有は認めてよい」となり、さらに2018年には「熱中症のおそれがある場合は買うためのお金は出しましょう」となったわけです。いまエアコンの普及率は9割(2人以上の世帯)になっています。

 このエアコンの例でわかる通り、生活保護で何が認められ、何が認められないかという基準は時代によって変わります。そこには、世間の目や政治の動きがからみ、制度にも影響を与えてきました。

 政治問題化は、給付改善とは逆方向に働く場合もあります。

 かつて、お笑い芸人の母親が生活保護を受けていたことをきっかけに「生活保護バッシング」が起きました。12年のことです。当時、野党だった自民党は、この動きに呼応して「給付カット」を公約に掲げ政権に復帰。13年から支給額が引き下げられました。

 当時、論説委員としてこの問題を取材していた私にはじくじたる思いが残ります。自民党の対応はあまりにえげつないと感じましたが、ワイドショーを中心にマスメディアもバッシングをあおったからです。

 「働けるのに保護を受けたと聞いた」「ブランド物を身につけている」等々、視聴者や街頭の声を、裏取りもせずそのまま流すやり方について、弁護士や貧困者の支援団体らが、放送倫理・番組向上機構(BPO)に審議を要請しましたが、「編集の自由の範囲」と門前払いになりました。私も問題提起の社説を書きたいと提案しましたが、やはり「編集の自由」をしばりかねない、という強い反論が出て論説委員室内の賛同を得られませんでした。

 さて、心配していたAさんのエアコンは、リモコンの電池を替えたら無事に動きました。ただ、本人は使いたくないという意向が強い。なぜなのか。大丈夫なのか。こちらの方は、お金だけでは解決できません。心配は続くのです。

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 24時間365日必要な仕事(エッセンシャルワーク)の一つに介護があります。コロナ禍で医療職は感謝されましたが、介護職へのリスペクト(敬意)が足りないのでは? 最近、そんな思いを込めた記事を連続で出しています。下のリンクの1本目は、そのうちの1本です。2本目は、ここ数年注目しているオランダ発オンラインメディアの記事。3本目は、東日本大震災の被災地で暮らしていたスペイン思想研究家による「大衆の反逆」の訳業について書きました。

「裁判官はちゃんと勉強してほしい」介護事故と刑事責任
30歳の英国人デスクから執筆依頼 対話促す手法に感銘
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