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生活保護者の集いコミュのコロナ禍でネットカフェ難民の明暗を分けた、自治体の「意識の差」

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https://diamond.jp/articles/-/239993

都の借り上げビジネスホテルを
活用できた自治体の認識とは
 4月7日、東京都を含む7都府県に緊急事態宣言が発令され、東京都だけで4000人とされる多数の「ネットカフェ難民」が、寝泊まりの場を失った。東京都は支援団体の要請に応じ、ビジネスホテルを借り上げて提供したが、当初は500室分しかなかった。量が絶対的に不足していた上、広報や周知の努力が十分ではなかったことも指摘されている。

 しかし自治体にとっては、良好な生活環境を提供する支援をすぐに開始できる可能性につながる。「劣悪な施設しかないけれど、とりあえずそこでガマンしてください」と言う必要はなくなるのだ。

 とはいえ、制度の活用実態は、各自治体によって大きく異なる。ネットカフェにいられなくなった「ネットカフェ難民」が公的支援を得る場合、東京都の「チャレンジネット」、各自治体の生活困窮者自立支援制度の窓口、同じく生活保護制度の窓口のいずれかを訪れることとなる。各自治体に委ねられている2つの制度に関しては、自治体の姿勢が運命を大きく左右することになる。

 東京都内のZ市にいた人々は、おそらく幸運だった。Z市のA福祉事務所では、4月16日から6月9日までの間に、住居喪失者からの約30件の生活保護申請を受け付けている。昨年の同時期と比べると、相談や申請は「体感で約1.5倍程度」ということだ。約30件のうち約20件の人々は、都が借り上げたビジネスホテルに滞在しつつ、生活保護を利用し始めた。そのうち半数は、現在もホテルに滞在している。ホテルを去った人々のほとんどは、生活保護のもとでアパートに入居したり、本人に適した施設に入所したりしている。

 係長のYさん(仮名)は、次のように語る。

「住居喪失というよりも、仕事をなくされたわけです。新型コロナで仕事がなくなり、もともと居たネットカフェなどに居られなくなったわけです」

 認識は、「事実として、災害による被災者」という感じだ。

非常事態にあたって現れた
日常の心がけ
 Z市としては、「特別な対応をした」という意識はないようだ。新型コロナに関しては、「あまり気にしていなかった」ということだ。とはいえ、対応はされている。

「ご本人さまの健康状態は、検温したり、口頭でお訊ねしたりするなどの方法で、確認しました。福祉事務所の近くの内科病院で、一緒に診察を受けていただいた方も何人かおられます」(Y係長)

 福祉事務所職員の誰かが付き添えば、その間、多忙な業務が中断される。それでもそうした理由は?

「ご本人が、『病院に行ってきてください』と言われてできる方ならいいのですが、そういう方ばかりではありません。1人での行動は、難しい方もいらっしゃいます」(Y係長)

 緊急事態宣言以前は、それでもなんとかネットカフェなどで毎日を過ごしていた人々だ。しかし、コロナ禍は「なんとか」や「ギリギリ」を困難にした。

「都の借り上げたビジネスホテルがあることをご存じで来られた方も、いらっしゃいました。すると、ご本人の意思を尊重して、ビジネスホテルを前提として考えることになります」(Y係長)

 ちなみに、Z市に用意されたビジネスホテルは、全国展開しているホテルチェーンの1施設だ。廉価で設備もサービスも簡素だが、安全や衛生には十分以上の配慮がなされており、筆者も地方出張の際には愛用している。

「ビジネスホテルに入られた方の感想は『非常によい』ということで、安心できました。この点は、東京都に感謝しています。私たちが『ここ、良いでしょう?』とお勧めできる、安定したレベルのホテルを提供してくださいました」(Y係長)

 厳しい状況に置かれている人だからこそ、落ち着いて快適に過ごせる場所を必要としているはずだ。さらに、ホテル従業員の対応も、極めて好ましいものであったようだ。

「住居喪失されて生活保護でホテル住まいされた方々と、一般のお客様とで、まったく差別がなかったと聞いています。差別はなくなればいいと思いますが、当事者でなくては本当のところは分からないでしょう」(Y係長)

 自分の記憶に照らして、激しく頷く。筆者は車椅子を利用する障害者だが、そのホテルチェーンで障害者差別らしき扱いを受けた記憶はない。

「この人を救うにはどこがいい?」
その日のうちに迫られる判断
 とはいえ、福祉事務所で自分の希望を臆せずに述べられる人々ばかりではない。意思表示に何らかのハンデを負っている人々もいる。

「福祉事務所からホテルまで、ご自分自身で行くことが難しそうな方もいらっしゃいます。すると、その選択肢を考える必要があります。シングルルームでお1人になることに、不安を抱える方もいらっしゃいます。ホテルが良いとは限らないのですよね」(Y係長)

 ともあれ、その人はすでに住居を喪失してしまっている。今晩どこで寝泊まりするのか、その日のうちに判断し、そこで寝泊まりできる状況を整えなくてはならない。

「宿泊施設の判断は、苦労したところです。お住まいを失われた事情も、コミュニケーション能力も、身体状態の自覚も、いろいろです。それを探りながら見極めながら、今晩どこにいていただくかを考えながら、対応していました」(Y係長)

 外野から見れば、生活環境の面では、ホテルが最良の選択肢であるはずだ。しかし、その人にとって最良とは限らない。

「基本、制度については知識がなく、『住むところがないから助けてほしい』と言って来られるわけです。ホテルを提示して入っていただければいいのですが、専門性の高い支援が必要な場合もありました。DVで他県から逃げてきたお母さんとお子さんもいます。すると『母子施設へ』ということになります」(Y係長)
 コロナ禍は、施設や無料定額宿泊所にも押し寄せている。ソーシャルディスタンス維持のため、定員を減らしたり新規受け入れを停止したりする対応も行われている。

「業務的には、厳しいものがありました。それぞれの方々の状態や希望をうかがいながら、提供できるメニューを並べるのは、いつもと同じです。しかし、そのメニューが限られているわけです。施設も宿泊所も空きがない中で、目の前の方にどうしていただけばよいのか……」(Y係長)

 このような状況で、都のホテル借り上げと提供が行われ、「助かった」ということだ。

自治体によって
明暗が分かれていいのか
 東京都のビジネスホテル借り上げと、住居喪失者への提供に関する報道では、「利用できなかった」「追い出された」というものが目立つ。心身の健康を損ねそうな施設を「ここしかありません」と紹介した事例も、不正確な情報を提供して実質的に退去させてしまった事例もある。その中でも、約100人を路上に押し戻してしまった新宿区の事例は、広く報道されている。

 5月下旬時点で、都は6月7日までビジネスホテルを提供する予定としていた。ところが新宿区は、滞在していた人々に対して「5月31日まで(チェックアウトは6月1日)」という情報を伝えた。6月1日は月曜日なので、チェックアウトしたその足で福祉事務所を訪れれば、適切な支援につながることができたはずである。

 しかし実際には、約90人が所在不明になり、支援されない状況となった。この問題を追求した支援団体などは、区の対応を「意図的」としている。6月9日、新宿区長名で謝罪文が公表され、利用できたはずのビジネスホテル費用の補償や引き続きの支援を行う方針が示された。ひとまずの決着は見られたものの、行政や公的支援に不信感や不安を抱いてしまった人々のその後の支援が困難になりがちであることを含めて、今後の課題は大きい。

新宿区が残した大きな課題
他の自治体から学び続ける大切さ
 新宿区の事例を話題にすると、Y係長は「コロナは関係ありません」と答えた。

「相談にきた方のお話を聞いて、どうするか。お困りのことに、ご本人がどうされたいか。私たちは、役所としてできることを提示します。ケースワーカーたちも、『ふつう』『ふだんと同じ』『件数多かったけど』と言っています」(Y係長)

 しかしながら、自治体による温度差が激しい事実はある。特に生活保護においては、「生きられる」「生きられない」に関わるほどの差異がある。


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「それは、申請に来た方の運不運では困ります。自治体による良し悪しの差があっては困ります」(Y係長)

 もちろん、公的制度は全国どこでも公平でなくてはならないタテマエだ。しかしそれは、生活保護を含め、公的福祉を「低きに合わせる」という方向で活用されてきた、強力なエンジンでもある。

「自分が当事者だったら、どうなのか。考えていただきたいですね。各自治体の噂は、見習ったり反面教師にしたりしています。私たちも、緊張感を持って取り組み続けなくてはと思っています」(Y係長)

 この態度が、日本のあらゆる自治体の当たり前であることは、多くの人々の共通の希望だろう。

(フリーランス・ライター みわよしこ)


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