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生活保護者の集いコミュの「一律10万円給付」で生活保護を放置しなかった厚労省の意外な英断

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https://diamond.jp/articles/-/235642

「一律10万円給付」でも召し上げなし
厚労省の画期的な方針転換
 新型コロナに対する緊急経済対策は、様々な論議を呼び起こした末、4月20日、1人あたり一律10万円の「特別定額給付金」(以下、一律10万円給付)という内容で、一応の決着となった。しかも、申請手続きは非常に明快かつ容易である。

 さらに4月21日、厚労省の社会・援護局保護課は「特定定額給付金は収入認定の対象としない」という内容の事務連絡を発行した。役所という存在に対する「通念」、生活保護制度の運用に関する「常識」や「相場感」といったものに照らすと、いずれも椅子からずり落ちそうになるレベルで、画期的な出来事だ。

 生活保護世帯は、生活保護基準(≒月々の生活保護費)での生活は保障されるが、それ以上の生活を営むことは基本的に認められない。通常、年金・児童手当・障害者福祉手当などの公共からの給付は、すべて収入認定(召し上げ)される。

 たとえば、それらの合計が月あたり7万円であれば、生活保護費は7万円差し引かれることになる。しかし今回の1人あたり一律10万円給付に際しては、各生活保護世帯の「使える」お金が、1人あたり10万円増える。

 とはいえ、「日本初」というわけではない。厚労省の踏襲できる「前例」は、既にあった。2009年、リーマンショックによる不況が襲った際の定額給付金だ。このとき総務省は、生活保護世帯で収入認定しないことを明確に述べている。しかし、この定額給付金が1万2000円だったのに比べ、今回は10万円、文字通りの「ケタ違い」だ。

 11年前の「1万2000円」の前例を踏まえて、「10万円」を収入認定しない扱いは、果たして可能なのだろうかと、生活保護制度の界隈にいる人々の誰もが、大なり小なりヤキモキ感を抱えていたはずだ。

「一律」給付と収入認定除外は
生活保護ケースワーカーも雑務から救う
 今回の一律10万円給付の生活保護での取り扱いに関して、影響を直接受けるのは生活保護で暮らす人々だ。新型コロナ禍で苦しくなった生活を、10万円で立て直すことができるのか、あるいはできないのか。それは、「切実」という形容を超えた問題であろう。

 しかし、各福祉事務所の生活保護ケースワーカーも、影響を避けられないという意味では「当事者」だ。取り扱いの内容次第では、事務手続きが激増し、通常業務に支障をきたすことになるかもしれない。

 もしも今回の「一律10万円給付」が煩雑な申請手続きを必要とすることとなり、さらに収入認定の対象となると、ケースワーカーたちは担当している全世帯の申請を確認し、漏れなく申請を求めなくてはならない。

 当の生活保護世帯にとっては何のメリットもないのだが、生活保護はあくまで、使えるものはすべて使った上で、生活保護基準までの底上げをする制度なのだ。公的給付金の受給資格があるのなら、申請させなくてはならない。給付されると、収入認定の手続きを行わなくてはならない。生活保護で暮らす人々の反発や落胆は、すべてケースワーカーが受け止めることになる。

 しかし今回は、「一律」の給付となった。生活保護世帯に対しても「一律」に収入認定しないこととなった。このことに対し、率直な安堵を漏らしたケースワーカーは少なくない。

 財政学の立場から社会福祉を研究している高端正幸さん(埼玉大学准教授)は、今回の一律10万円給付について、次のように語る。

「一律10万円給付は、マイナンバーによるオンライン申請、郵送された申請書を用いた郵送申請、どちらもできない場合は窓口申請することになります。自治体の事務負担を抑えて迅速に給付するために、このような方法が選ばれたと言ってよいでしょう」(高端さん)

いずれにしても、申請は必要である。申請手続きがある以上、そこから漏れる人々は必ず存在する。

「総務省がつくった申請書の様式案は比較的簡素ですが、もちろん、『申請のカベ』は重大です。ホームレス状態を含めた住民票の住所に住んでいない単身の方々、障がいや認知症などにより申請の困難な方々、DVなどで避難しており住民票を動かせない方々など、給付を必要とする度合いの高いケースこそ、そのカベに直面してしまいます」(高端さん)

立ち消えになった「30万円給付」は
本当に不要なのか
 他にも、様々なケースが考えられる。たとえば、無戸籍状態で住民登録していない人々もいる。また、日本に長年居住しており住民登録もしている外国人が、コロナ禍で失職し、就労ビザを更新できなくなることも考えられる。高端さんは、「煩雑かつ不完全な給付対象の選別を省いた一律10万円給付には、大いに意味があります」というが、問題点は他にも数多い。

「深刻な困窮状態において、一度きりの10万円の給付は気休めにさえならないことも、事実です。現在は『返済の見込みが立たないため、各種貸付制度は利用できない』『休業手当も出ず、無収入状態が続いている』『事業者で、持続化給付金や休業協力金の給付対象から漏れており、資金繰りが行き詰まる』などのケースであふれています」(高端さん)

 薄く広く、一律の「バラ撒き」によって生活を支えることは必要だが、一律10万円給付は、国としての「最低限度」と見るべきだろう。

「撤回された30万円給付のように、重点的に支える仕組みも、危機対応として不可欠です」(高端さん)

 生活保護は、すべての人の人生に含まれうる「出生」「生育」「教育」「生活」「居住」「就労」「医療」「介護」「葬祭」という要素を個別にメニュー化し、必要に応じて給付を行う仕組みとなっている。この仕組みは、生活に困窮していない人を含め、すべての人のための仕組みとして見直されて然るべきかもしれない。

小さな抵抗、小さな憤懣の声が
じわりじわりと日本を変えてきた
 長年にわたって東京都内の生活保護の現場で働いてきた田川英信さん(社会福祉士)は、今回の一律10万円給付について、次のように語る。

「総務省は、リーマンショックの際の定額給付金を土台に検討していたのかもしれません。そのときも、収入認定はしない取り扱いとなっていました。しかし、そのときの給付額は1万2000円でした。今回はケタ違いですから、『扱いはどうなることやら』と思っていました」(田川さん)

 ケタ違いだが、収入認定されないこととなったのは喜ばしい。しかし、今回こうなった理由は何なのだろうか。

「行政からの給付金は原則収入認定ということが、生活保護手帳(筆者注:生活保護に関する厚労省発行の公式ルールブック)に明記してあります。年金や、年金生活者支援給付金は、全額を収入認定しています。それとの違いは何なのか……。正直なところ、わかりません」(田川さん)

 そういう田川さんは、今回の厚労省の対応に対して一定の評価を示している。

「新型コロナ問題で、厚労省の社会・援護局は、非常に柔軟な事務連絡を次々と発出し、厳しかった運用を緩和・改善しています。総務省の基本的な考えに加え、厚労省側も頑張ったのではないでしょうか」(田川さん)

 背景として考えられるのは、生活保護のもとで暮らしている人々をはじめとする、数多くの人々による異議申し立てだ。

「2013年、厚労省は政府や財務省からの『保護基準を下げろ』という圧力に負け、物価偽装までして保護基準を下げました。しかしその結果、当事者団体や支援団体が示し続けてきた生活実態の劣悪さ、さらに、2013年の引き下げに対する国賠訴訟『いのちのとりで裁判』、そこでの岩田正美先生の証言などが、ボディーブローのように効いていたのかもしれませんね。いずれにしても、英断だと思います」(田川さん)

 2019年10月、社会福祉学者の岩田正美氏は、「いのちのとりで裁判」の原告側証人となり、名古屋地裁で証言を行った。2013年、引き下げが決定されたときに社保審・生活保護基準部会の部会長代理だった岩田氏は、当時の厚労省が基準部会を体よく利用して引き下げの口実をつくったことを、法廷で生々しく語った。

 誰もが、今いるところで自分らしく生きることを追求したいと望むだろう。あるいは、自分らしく生きられる場に行くことを望むだろう。それらの小さな小さな積み重ねが、今回の厚労省の「英断」へとつながった。そういう見方も可能かもしれない。

日本に不足しているものを
炙り出す新型コロナウイルス

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 なお現在、児童手当の増額も検討されているのだが、生活保護世帯に対する取り扱いは未だ不明確だ。明石市は独自に5万円の上乗せを決定し、5月11日に給付する予定としている。生活保護世帯に対しては、「自立更生計画書」の提出を条件に収入認定を行わない方針だ。しかし、「明石市だけ」「子どもだけ」というわけにはいかないはずだ。

 新型コロナ禍は、誰もが「ここで生きていることに救いがある」と思える日本のために、不足しているものを次々に炙り出している。今回の一律10万円給付と、生活保護世帯に対する収入認定除外は、歴史的な一歩となるかもしれない。

(フリーランス・ライター みわよしこ)

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