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生活保護者の集いコミュのれいわ障害議員の「移動支援」で考える、国際社会に理解される福祉とは

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https://diamond.jp/articles/-/211269
重度障害の参議院議員2人が誕生
問われる「移動支援」の是非
 7月21日の参院選で、山本太郎氏が率いる「れいわ新選組」から、重度障害を持つ参院議員2人が誕生した。2人の登院や議場での活動をめぐり、様々な試行錯誤が繰り返され、そのたびに活発な議論が沸き上がっている。

 現在、焦点になっているのは、2人が障害者福祉の移動支援を参院への通勤に使用することの是非だ。これまで原則として、障害者福祉の通学・通勤・営業への利用は禁止されてきた。理由は、「公費を個人の資産形成に使うことになるから」というものだった。

 是非はともかく、「障害者福祉を職業生活のために利用することはできない」という規定は、障害を持つ人の職業生活に対する大きなバリアとなってきた。公的福祉でカバーされないのであれば、家族に負担を強いるか、あるいはボランティアの好意を頼みにするしかない。移動に必要な費用を自分で支払うには、障害者はあまりにも貧乏すぎる。

 障害者作業所の連絡会としてスタートした「きょうされん」が、2016年に公開した調査結果によれば、生活保護を受給していない障害者の年収の中央値は、50万円〜100万円の範囲にあった。

 そもそも、障害者が健常者並みの収入を得ることは「無理ゲー」だ。障害があっても義務教育が保障されるようになったのは、1979年のことだった。現在50歳以上の障害者には、高校や大学どころか、小学校や中学校にも行けなかった人々が多数含まれている。当然、生活保護へのニーズは高い。「きょうされん」の調査に協力した障害者たちのうち、11%が生活保護で暮らしていた。

 生活保護は、日本のあらゆる人々にとっての「最後のセーフティネット」である。障害者にとっては、より切実だ。しかし、日本の障害者たちは自分の置かれた状況を逆手に取り、生活保護を使い倒し、充実させ、そのことによって日本の公的福祉を充実させてきた。

最低賃金には「生活保護基準を下回ってはならない」というルールがある。したがって、生活保護基準が上がれば最低賃金も上がる。同様に、生活保護のもとで障害者に適用される制度は、日本のすべての人に適用される制度の土台となっている。

 たとえば、生活保護に現在も残る「他人介護料加算」は、1970年代に重度障害者たちが交渉の末に実現させた、日本初の公的介護保障である。その障害者たちの多くは、生活保護のもとで、親の家でも施設でもなく地域のアパートで暮らしていた。家賃と生活費は生活保護費として給付されるが、介助者がいなければ買い物も入浴もできない。そのような日常生活の支援については、ボランティアを頼るしかなかったのだが、その状況を長続きさせることは難しい。

 しかし、ボランティアに正当な報酬を支払い、障害者の介護が職業として成り立つようになれば、状況は変わる。そのためには、自分の家賃や生活費とは別に、介護者の報酬を公費で保障する仕組みが必要だ。そして度重なる交渉の末、家族ではない誰かによる介護の報酬として、「他人介護料加算」が設けられることとなった。

 日本の福祉制度の源流を辿ると、「他人介護料加算」と同様に、生活保護へたどり着くことが多い。

時間をかけて繰り返される
「政府を育てる」プロセス
 日本は、2014年に国連障害者権利条約を締結した。締結にあたっては、条約に対応できるように国内法を整備する必要がある。締結後は、条約を実行しているかどうか、定期的な審査を受けることとなる。日本は2020年、障害者権利条約に関する初めての審査を受けることが予定されている。

 審査の手続きは、どの条約でもおおむね以下のようになっている。

(1)締結国政府は、指定の期日までに条約の実施状況をレポートする

(2)締結国の市民団体や障害者団体は、自国政府のレポートを踏まえて、条約委員会から政府への質問(List Of Issues: LOI)を提案するレポートを送る

(3)条約委員会は、レポートを参考にして、各国を審査する。また別途、各団体と対話する。それらの結果を踏まえて、質問リストを作成する

(4)締結国は、質問リストに回答する

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(5)締結国の回答を踏まえて、その国の各団体は、政府への勧告に関する要望を提案するレポートを送る

(6)条約委員会は、政府に対する本審査を行う。このときも、各団体との対話が行われる

(7)条約委員会は、政府に勧告を行う

国連障害者権利条約委員会の
「愛のムチ」と「愛のアメ」
 この7段階が、各国の定期審査のたびに、2年程度の時間をかけて実施される。国際社会と国内社会から各国政府に対する、「貴方、条約を締結して『守る』って約束したんですから、守れるようにしましょうよ」という“愛のムチ”だ。もちろん、条約を実質的に実行すれば評価される。“愛のアメ”もセットになっているわけだ。提出されるレポートは、政府からのレポート、各団体からのレポートを含め、原則としてすべて公開される。

 今回の障害者権利条約に関する審査では、(3)の「質問リストに関する審査」が本年9月に予定されている。(6)の「本審査」は、2020年の東京五輪後に行われる見通しだ。(2)の「市民団体・障害者団体からの質問リストレポート提出」は、7月26日に締め切られている。その日は金曜日、本連載の公開日であった。7月18日の京都アニメーション放火事件を受けて、急遽取材を行っていた私には、国連向けのレポートを準備する時間はなかった。

 しかし7月26日、目を覚まして国連のWebサイトをチェックした私は、大慌てでレポートを作成することにした。日本の障害者福祉の基盤であるはずの生活保護に関して、私が重大だと考えている事項の多くが、すでに提出されていた他団体のレポートに見当たらなかったからである。

 日本語で下書きをしている時間はない。最低限盛り込むべき事項を打ち合わせ、英文で作成し、最低限の英語のチェックを行い、ジュネーブ時間の7月26日23時57分(日本の7月27日6時57分)にレポートを提出した。徹夜の末の「滑り込みセーフ」であった。そして、このレポートは、設立したばかりの電子資料室の最初のアウトプットともなった。

日本という他国の「制度」を
どうすれば伝えられるのか
 今回、レポートを作成するに当たっては、まず日本の社会保障の構造を明確にした。

 日本の場合、障害者福祉や健康保険や年金が存在しなかった時期に生活保護制度が発足していた歴史的経緯から、生活保護がすべての社会福祉と社会保障の土台となっている。言い換えれば、他の制度の欠陥や不足は、すべて生活保護が引き受けざるを得ない。

 また生活保護は、他の福祉制度と異なり、対象者の生活を1つのパッケージとして「まるっと」支える制度であり、実施に責任を持っているのは厚労省ただ1省である。このような制度設計は、あまり類例がない(日本以外の先進国では、英国・オーストラリアなど少数)のだが、極めて合理的だ。問題は、厚労省が財源を握っているわけではないので、いつも費用が不足していることにある。

 しかしながらレポートを読むのは、日本の制度に馴染んでいるわけではない、他国の委員たちだ。障害者権利委員会には日本人の委員(石川准氏/静岡県立大学教授、視覚障害者)がおり、委員会の副委員長を務めているが、委員は自国の審査には参加しない。そこでまず、日本の障害者と障害者福祉と生活保護の関係を、歴史的経緯とともに簡潔に説明した。

 ついで、条約の条文に即して、注目してほしい事項の概況と質問リストを提案した。内容は、障害者権利条約(全50条)のごく一部、4条「一般原則」、8条「意識向上」、10条「生命に対する権利」、12条「法律の前における平等な承認」、23条「家庭及び家族の尊重」、24条「教育」、25条「健康」に絞った。

 4条「一般原則」に関する内容は、許されるなら特大フォントでゴシック体にしたかった。中心は、生活保護費の障害者加算だ。

 生活保護費のうち生活費には、様々な特別な需要に対する「加算」がある。子育て世帯に対しては「児童養育加算」、両親が揃っていないことに対しては「母子加算」がある。かつては、高齢であることに対する「老齢加算」もあった。これらは“見直し”のたびに、「そのような状況に対する特別な需要は実はなかった」、あるいは「これまで考えられていたよりも、状況に対する需要は少なかった」ということにされ、減額されたり廃止されたりしてきた。

「障害がある」という状況に対しては、障害者加算がある。この加算は実際に、障害による特別な需要のために支出されている。一例を挙げれば、移動支援を受けるときのヘルパーの食事代は、勤務先の介護事業所が支払わない場合、生活保護の障害者が支払うことになる。

 また、生活保護が認める家賃の範囲では、車椅子で動ける広さがあり、ヘルパーが待機するための部屋もあるアパートを見つけることは、しばしば困難だ。仕方がないので、家賃が高いけれども広いアパートを借りることになる。その場合、家賃と生活保護の上限との差額は、障害者加算を使い切った上、生活費も削って支払われる場合がある。その原因は、生活保護の想定している暮らしの内容が、特に住居に関して貧弱すぎることにある。

 現在の見込みでは、2023年度に生活保護基準が見直される。そのための検討は2020年度に開始される。次に削減の対象となる可能性が極めて高いものの1つは、障害者加算だ。どうしても今、このことを障害者権利委員会に伝えておかなくては――。生活保護では大学に行けないことも(24条)、それから「京アニ」放火事件で容疑者の精神疾患と生活保護歴が事件と関連づけられて報道されていることも(8条)。条約は施設収容や成年後見や搾取を禁じているのに、無料低額宿泊所が施設化し、そこで成年後見以上の管理が行われ、「貧困ビジネス」が容認される可能性も(12条)――。

生活保護の障害者加算が危機
という危惧は伝えられた

本連載の著者・みわよしこさんの書籍『生活保護リアル』(日本評論社)好評発売中
 提出してしまってから、重大なのに書き漏らした事柄の数々に気づいた。たとえば、精神障害のある子どもを監禁していた親に対しては、非常に“甘い”判決が続いている。施設や病棟で不適切な扱いや暴行を受けた障害者が死傷した場合も同様だ。日本の司法は、「障害者に対する暴行や殺人は罪ではない」と明言しているわけではない。しかし、「そのつもりだろう」と言われても致し方ない状況が続いている。

 また日本は、繰り返される生活保護費削減に関して、2018年、極度の貧困に関する国連特別報告者に対話を申し込まれているが、対応していない。これも重大だ。

 しかし今回のレポートで、「生活保護の障害者加算が危機かも」という危惧は、最低限伝えることができた。少なくとも、「何もしなかった後悔」は残さずに済んだ。このことに小さな満足感を抱いて、今後も動向を注視したい。

【参考】

●障害のある人の権利に関する条約 川島聡=長瀬修 仮訳(2008年5月30日付)

●外務省:障害者権利条約

●国連条約体データベースより 9月の質問リスト審査に向けて各国政府と市民団体・障害者団体が提出したレポートの一覧(英語)

(フリーランス・ライター みわよしこ)

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