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生活保護者の集いコミュの大阪W選で生活保護への「北風政策」は変わるか?1票の重さを考える

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https://diamond.jp/articles/-/200330

みわよしこ
阪府・大阪市の維新圧勝は
全国の生活保護をどう変えるか
 2019年の統一地方選は、4月21日の投票で最終幕を迎えようとしている。

 前半戦の“目玉“の1つであった大阪府知事・大阪市長のダブル首長選の結果、日本維新の会に所属する吉村洋文氏が新知事、松井一郎氏が新市長となった。しかし、大阪府下や大阪市内を少し歩けば、必ずしも利益を受ける人々が「維新」を支持しているわけではないことに気づくだろう。

「維新」のポスターが貼られているのは、すでに廃業した町工場や、「シャッター商店街」のシャッターが下りたままの一角や、年金生活の高齢者が住む老朽家屋であることが多い。大阪市民からは、しがらみの破壊や閉塞の打開への期待から「やはり維新」という声も多い。

 まずは、大阪府民と大阪市民の選択を尊重したい。とはいえ、大阪府と大阪市は、生活保護に関して非常に大きな影響力を持っている。特に大阪市は、独自の制度運用を行っており、厚労省から度重なる指摘を受けても“ブレない”。

 時には、「ウチをモデルに法や制度が変わるべき」という含意さえ感じられる。2012年から大阪市が開催している「生活保護適正化対策会議」の活動内容には、国への政策提言も含まれている。「その地域の民意だから、仕方ない」とは言えない。

 私見では、ケースワーカーの配置が現在の大阪市の生活保護を最も象徴している。ケースワーカーの受け持ち世帯数は、社会福祉法によって、都市部では「1人あたり80世帯」が標準とされる。現職のケースワーカーからは、しばしば「80世帯でも多すぎる」という声が聞かれる上に、「80世帯」が守られている自治体は多くない。

大阪市は、この問題を極めて大胆に解決した。生活保護世帯を、通常のケースワークの対象である一般世帯と、「とりあえず生存確認プラスアルファ」で良しとする高齢者世帯に分け、全く異なる人員配置を行ったのだ。ケースワーカー1人あたりの受け持ち世帯数は、2006年、80世帯(60歳未満)または380世帯(60歳以上の世帯)と定められた。

 2015年以降は70世帯(60歳未満)、140世帯(60〜64歳)、380世帯(65歳以上)に見直された。この後、高齢者世帯を担当するケースワーカーの業務が過重化したことから、2018年度末に再び見直され、現在は80世帯(64歳以下)および280世帯(65歳以上)となっている。

大阪市で高齢者世帯の
ケースワーカーが手薄な理由
 大阪市が、60歳未満または64歳以下の人々に対して重点的にケースワーカーを配置する大きな目的の1つは、就労支援と就労指導だ。高齢者世帯に対しては、就労を働きかけても成果に結び付きにくい。そのため、ケースワーカーの配置を大胆に手薄にしているのだ。さらに、高齢者世帯に対する訪問調査を、人件費の低い嘱託職員などに行わせ、正規職員のケースワーカーはマネジメントに専念させ、生活保護の運用に関わる人件費を削減している。

 生活保護制度運用の効果を就労によって測るのであれば、生産性の低いケースワークに対して人件費をかけないことは、解の1つだ。良く言えばメリハリの効いた人員配置だが、業務内容や適法性の面から見ると、やはり問題だ。

 厚労省からの度重なる指摘に大阪市が応じずにいるうちに、追随する自治体が現れるかもしれない。都道府県や厚労省から指摘を受けた場合は、「大阪市に前例がある」と答えれば済む。

 雪崩のような「何でもあり」の激変を止められなくなる前に、すべての有権者にできることがある。ご自身の住む街の生活保護への関心と考えを、選挙での投票行動で表現することだ。そのためには、まず、激変をもたらすパワーの正体を見極める必要があるだろう。

「仕事は増えても人は増えない」
もはや羨望の対象ではない公務員
 生活保護行政の変化をもたらしている背景の一つは、1995年以後の生活保護世帯数の増加と、行政改革による公務員定数の抑制が、同時並行していることだ。

 1995年以後、おおむね25年にわたって生活保護世帯が増加を続けている原因のうち最大のものは、社会の高齢化だ。現役時代に恵まれた雇用状況にあった人は、老後は厚生年金との「2階建て」「3階建て」の年金を受け取ることができる。しかし、国民年金のみの場合、それだけで老後の生活を支えられるわけではない。

 持ち家があれば、国民老齢年金だけで生活を賄うことが可能かもしれない。しかし健康を害すると、生活保護以外の選択肢が実質的になくなる。現役時代に年金保険料を支払い続けられる状況になかった人々は、国民年金の満額給付を受けられず、低年金高齢者・無年金高齢者となる。もちろん、生活保護は必要不可欠だ。

 いわゆる「失われた20年」や、2008年のリーマンショックの影響がなかったとしても、高齢化が進行する以上、生活保護世帯は増加する。とはいえ、「公務員定数の削減を」という行政改革の荒波の中で、ケースワーカーを増加させるわけにはいかない。さらに2005年以後は、「ケースワーカー1人あたり80世帯」という社会福祉法の標準から、法的な強制力が薄れた。

 大阪市の元ケースワーカー・Aさんは、この事情を次のように語る。

「2005年に地方分権一括法が制定され、ケースワークは自治体の裁量の大きな自治事務とされたため、社会福祉法の要員の定めは、法定基準としての縛りの効力を失いました。また介護保険法が実施されたため、大阪市は『65歳以上の被保護者については、ケースワークの必要はなくなった。見守りだけでよい』と強弁し、高齢者への配置を少なくする独自基準をつくり出したのです」

その結果、ケースワークはどう変化したか。

「実際には、高齢者も様々な困難を抱えており、生活保護費と介護保険サービスがあれば大丈夫というわけではありません。ゴミ屋敷問題など、ケースワークの必要な案件は続出ですが、丁寧に対応できる人手はありません。大阪市のケースワーカーは、苦しみ続けてきました」(Aさん)

“北風“の大阪市に対し
“太陽”で独自性発揮の地域も
 生活保護に関する大阪市の独自方針は、まるで寓話『北風と太陽』の“北風”だが、必ずしも「維新」がもたらしたわけではない。橋下徹氏が大阪市長に初当選したのは、2011年である。しかし、その後の選挙結果という形で大阪市民の民意を見る限り、“北風”を変えたいという思いは感じられない。政府が生活保護への“北風”を歓迎するのであれば、より強い“北風”を吹かせることが、地域に何らかのメリットをもたらす可能性もある。

 その一方で、“太陽”路線を見せる自治体も実在する。神奈川県小田原市は、「市民の生命と暮らしを守る生活保護」という方向性を実現しつづけている。福島県相馬市と東京都荒川区は、2018年夏の酷暑にあたり、生活保護世帯や低所得世帯へのエアコン設置補助を、全国に先駆けて積極的に行った。

 誰もが、自分の地域を誇りに思いたいだろう。どのような意味で「誇れる」地域であって欲しいだろうか。あなたの思いは、投票で示せる。

 4月21日に投票が行われる自治体で、私が最も気になっているのは、私が5歳から20歳までの時期を過ごした福岡県春日市だ。自分の出身地で恐縮だが、出身地ゆえ、情報が集まりやすく語りやすい。ご一緒に、1人の投票行動の重みを考えていただきたい。

春日市は、福岡市のすぐ南側に位置する人口11万人の小都市だ。よくある「オールドタウン化が始まったベッドタウン」の典型であるが、今後も、それほど深刻な状況は予想されない。資源は少なく、水道水を福岡市から購入している。特筆すべき産業があるわけではないものの、財政は比較的健全だ。

 その春日市は、地に足の着いた市民活動の歴史を持つが、様々な意味で転換期にある。

 1970年代から連綿と続く学童保育は、希望すればすべての子どもが利用できる状況にある。その学童保育を支えてきたのは、保護者会だ。図書館のなかった春日市が、1995年、市民図書館を設置した背景にも、市民たちの長年の運動があった。

 しかし学童保育は、人員不足から今後の存続が危ぶまれている。直営だった市民図書館は、全国の図書館関係者の尊敬を集める充実ぶりを誇ったが、2017年度に指定管理化された。現在、市内の全中学校に配置されている学校図書館司書(非常勤)も、今後は民間委託される可能性が高い。

 生活保護に関しては、特に良い話は聞かない。現状が激変する可能性は、極めて低いだろう。春日市の土地柄は、良くも悪くも保守的だ。粘り強く市民運動を担ってきた人々は、穏和で波風を望まない人々でもある。

一地方都市から考える
「あなたの一票」の重み

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 4月21日に行われる春日市長選と市議選のうち、市議選に注目すると、20人の定数に対して24人が立候補しており、そのうち女性は5人。ジェンダーバランスは問題だ。

 2015年に行われた前回の結果を見ると、投票率は45%。最下位当選者と次点の差は約70票、投票率ではわずか0.08%に該当する。棄権を予定している有権者1000人のうち1人か2人が投票すれば、今後4年間の市議の顔ぶれは変わる。小さな自治体には“しがらみ”が付き物だが、政治を動かしやすいメリットもある。

 4月21日に議員選挙を控えた地域にお住まいの方々は、ぜひご自分の地域で、「1票」や「投票率0.1%」が最下位当選者を左右する確率を調べていただきたい。必ずしも、「大都市部や人口の多い自治体の1票は軽い」とは限らない。たとえば東京23区は、区議選に関しては1票の影響力が比較的大きい。

 日本全国の生活保護の命運は、文字通り、有権者が統一地方選で投じる1票にかかっている。大阪市を見れば、そのことは明らかだろう。どうか、大切にしていただきたい。

(フリーランス・ライター みわよしこ)

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