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生活保護者の集いコミュの数百万人の「中年フリーター」が生活保護制度を破綻させるかもしれない

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https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2019/02/post-11720.php

<アルバイト3つ掛け持ちで妻子を養う、リストラで仕事と住居を同時に失う......。就職氷河期に正社員になれず非正規雇用で働き続けてきた人たちが、年金を受給する年齢になればどうなるか。これは、国家を揺るがしかねない問題だ>

『ルポ 中年フリーター:「働けない働き盛り」の貧困』(小林美希著、NHK出版新書)の著者によれば、35〜54歳のうち、非正規雇用労働者として働く「中年フリーター」は約273万人。だとすれば、同世代の10人に1人を占めていることになる。

ちなみにこの数字に既婚女性は含まれておらず、同年齢層の女性の非正規で、扶養に入るための「就業調整をしていない」人は414万人もいるため、潜在的な中年フリーターはさらに多いと推測されるという。


 この言葉にスポットライトがあたるようになったのは、二〇一五年のことだ。三菱UFJリサーチ&コンサルティングの尾畠未輝研究員の試算によれば、中年フリーターは増加の一途にあり、一五年時点でおよそ約二七三万人いるという。
 いうまでもなく、彼らは正社員に比べて貯蓄が少なく、社会保険の加入率も低い。そのまま年金を受給する世代になると、月七万円に満たない国民年金しか受け取れない。となれば、生活は立ち行かなくなり、生活保護が視野に入ってくるだろう。ところが、日本の財政はそれだけのボリュームを支える状況にない。生活保護という制度そのものが破綻しかねない状況だ。(「序章 国からも見放された世代」より)

中年フリーターがここまで増えてしまったのは、日本では新卒時に正社員になれなかった場合、そのまま非正規の職に就くことが多いからだ。そして、かつて新卒時に就職氷河期を経験した世代が、今や中年(35〜54歳)にカテゴライズされる年齢になったということである。

「就職氷河期世代」や「ロスジェネ世代」などと呼ばれた層が、正社員の職を得ることもなく、そのまま移行していったという図式だ。


自身が就職氷河期世代に属し、この問題に長年取り組んできたという労働経済ジャーナリストの著者は、「失われた10年」が「失われた20年」へと長引いたのは、雇用問題について国が本気で取り組まなかったからだと指摘する。

著者が大学を卒業したのは、大卒就職率が統計上、初めて6割を下回って2人に1人しか就職できなかった2000年。当時は「フリーターは甘い」「若者が仕事を選り好みしている」という風潮が強く、この問題は真剣に議論されることなく埋もれてしまっていたという。

その間に「若者」だった人たちは「中年」になり、そのツケが「中年フリーター」となっているということだ。しかも気づいている人は限られているものの、それは国家を揺るがしかねない問題となっている。


 中年フリーターが正社員になれない背景には、不況期に正社員の採用が絞り込まれているという事実がある。いったん非正規雇用になってしまうと「スキルが身につかない」、あるいは「スキルがついても認めてもらえない」という状態が続くため、景気が回復して求人が増えても、思うような職には就けない。(「序章 国からも見放された世代」より)

そんな中、新たな問題として浮上してきたのが「あきらめ」だという。正社員になりたいという意欲はあっても、「どうせ無理だろう」という気持ちが邪魔をしてしまうというのだ。

つまり彼らは、「がんばれば、いつか安定した雇用に就けるはずだ」と信じて努力してきたものの、評価されることはなく、使い捨てのような働き方を強いられてきた世代ということである。だとすれば、企業や社会に対する不信感が募り、意欲を喪失してしまったとしてもなんら不思議はない。

本書には著者が取材した多くの中年フリーターたちの生の声が収録されているが、そのどれもが切実だ。第一章に登場する藤田信也さん(43歳)の例を紹介しよう。数年前に失業してから、バイトを掛け持ちして家計を維持していたという人物。連日連夜働きづめで、妻と幼い子どもとはすれ違いの生活だという(なおルポ形式で紹介されている人々は全て仮名)。


 信也さんの勤務先は三つだ。全てアルバイト採用で、量販店では時給八〇〇円、飲食店で時給七五〇円、公共施設で七五〇円という条件だった。実働は一日一〇〜一二時間、ほぼ毎日休みなしでバイトを入れて、働けるだけ働く。
 それぞれの移動時間がかかるため、朝家を出て帰宅すれば寝るだけの生活だ。昼食は車での移動中、赤信号のうちに慌てておにぎりを頬張る。そうして稼ぎ出すトータルの月収は約二〇万円。そこから国民年金保険や国民健康保険の保険料が引かれると、手元に残るお金はわずか。そこへ、食料の物価上昇だけでなく、公共料金の値上げがじわじわと効いている。家賃が公営住宅で月一万円を切るからこそ、やっていける。(45ページより)

一方、「雇用が不安定なまま、四〇代になりたくなかった。このままでは、結婚はおろか老後だっておぼつかない」と焦るのは、松本拓也さん(43歳)だ。


仕事があれば、地域を選り好みすることもなく、地方の工場や小売店などで住み込みをしながら働いた。いつかは結婚して家庭を作りたいと願っていたが、一定の収入がなければ「婚活ブーム」に乗ることもできない。
 拓也さんは、飲食関係の専門学校を卒業したが、不況で就職先が見つからなかったため、レストランなどでアルバイトとして働いた。いったんは関西地方で酒の量販店の正社員になったが、すぐに会社の業績が悪化し社員はリストラされた。翌年、拓也さんもリストラの波に飲み込まれた。ここから、拓也さんにとって雇用の負のスパイラルが始まった。「即日解雇」を言い渡され、会社が借り上げていたアパートの立ち退きまで強要された。仕事と同時に住居を失ったのだ。
 貯金もなく、引っ越し費用や敷金・礼金を友人から借金した。生活費もままならず、クレジットカードのキャッシングに手をつけ、消費者金融からも借り入れ、借金は最終的に三〇〇万円に膨らんだ。
 拓也さんは仕事と住居を同時に失う恐怖を、嫌というほど味わった。
「消費者金融から借金もできない人間はアパートも借りられない」(61〜62ページより)

また、なかなか顕在化しにくいものの、中年フリーター問題が女性の労働問題、すなわち「妊娠解雇」や「マタハラ」と結びついていることにも目を向けなければならない。妊娠したことで派遣契約が満了となったり、夜勤を強いられた末に流産したりするような現実があるというのだ。


「こんなはずではなかった。つい、激しく叩くようになってしまった」
 野村多恵さん(四一歳)は、肩を落とし、ぽろぽろと涙を流しながら話し始めた。当時、子どもは四歳と一歳だった。
 多恵さんも、やはり超就職氷河期に大学を卒業している。就職率が六〇%を切る中では就職先が見つからず、派遣社員で社会人のスタートを切った。一般事務職の派遣として食品メーカーで一年働き、「派遣でもスキルをつけなければ生き残れない」と感じた多恵さんは、簿記試験を受けるなどして経理の勉強を始めた。(132ページより)

やがてIT関連会社の経理部に派遣され、大学時代から交際していた男性と25歳のときに結婚。多恵さんの年収は約300万円だったが、居酒屋チェーンで正社員として働く彼の年収400万円と合わせれば、十分暮らしていけると信じていた。

しかも派遣で3社目となった会社で2年経ったころ、上司から「このままいけば、正社員になれる」と言われた。ところが翌年に妊娠し、「出産ギリギリまでがんばりますので、よろしくお願いします」と伝えたところ、上司からは「正社員になろうっていうのに、なんで子どもつくるの?」という言葉が。

以後、上司から避けられるようになり、派遣元からは「派遣先から次の契約は更新しないと言われた」と告知される。典型的な「妊娠解雇」である。

子どもが生まれてからも、新たに見つけた仕事との両立はままならず、子育てとの両立も難しくなっていった。しかも、やがて第二子も生まれた。家計も苦しく、多恵さんは逃げ道を失っていく。


 わがままに応える余裕がなく、多恵さんは「静かにできないの?」と、娘をピシャリと叩くようになった。最初はお尻を叩いていたが、だんだん、顔や頭を引っぱたくようになっていく。一向に泣き止む気配のない息子の顔に、クッションをかぶせてしまったこともあった。
 ハッと我に帰り、「ごめんね」と娘や息子を抱いた。娘は自分の顔色を見るようになり、おどおどするようになった。(138ページより)

著者はかつて上梓した『ルポ"正社員"の若者たち――就職氷河期世代を追う』(岩波書店、2008年)のなかで、総合研究開発機構(NIRA)が発表した「就職氷河期のきわどさ」というレポートの内容を引用している。本書でも紹介されているその内容には、驚くべきインパクトがある。


 同レポートの試算(二〇〇八年時点)によれば、就職氷河期世代の非正規雇用労働者や無業者の増加によって、一九六八〜七七年生まれの世代が六五歳以上になると、潜在的な生活保護受給者が七七万四〇〇〇人にのぼるという。そこから生じる追加的な生活保護の予算は、一七兆七〇〇〇億円から一九兆三〇〇〇億円に及ぶという。このレポートが発表されて一〇年が経過した。待ったなしの状況だ。(211〜212ページより)

政治もようやく関心を寄せつつあり、特に2018年の自民党総裁選で安倍晋三首相と一騎打ちをした石破茂元幹事長は、この問題について危機感を募らせている。2040年には高齢者数がピークに達し、社会保障給付費が現在の1.6倍、介護費が2.4倍、医療費が1.7倍、年金が1.3倍もかかるようになり、日本は危機を迎えるのだと。

当然ながら、このような課題について考えるうえでも、中年フリーターの問題は無視できないだろう。

安倍政権は雇用が増えたとアピールするが、現実的に雇用の受け皿となっているのはサービス業や医療福祉分野が中心。そのため、著者は自身の造語を用い、"Wageless Recovery"(賃金なき景気回復)は避けられないと主張している。

生産性向上のためにも、非正規を正社員に転換していくことは不可欠だ。それは、中年フリーターを悪循環の中から救い出す策にもなるだろう。だからこそこの国は、そのためにできることを早急に検討する必要があるのではないだろうか。


『ルポ 中年フリーター:「働けない働き盛り」の貧困』
 小林美希 著
 NHK出版新書


[筆者]
印南敦史
1962年生まれ。東京都出身。作家、書評家。広告代理店勤務時代にライターとして活動開始。現在は他に「ライフハッカー[日本版]」「東洋経済オンライン」「WEBRONZA」「サライ.jp」「WANI BOOKOUT」などで連載を持つほか、「ダ・ヴィンチ」などにも寄稿。新刊『読んでも読んでも忘れてしまう人のための読書術』(星海社新書)をはじめ、ベストセラーとなった『遅読家のための読書術――情報洪水でも疲れない「フロー・リーディング」の習慣』(ダイヤモンド社)、『世界一やさしい読書習慣定着メソッド』(大和書房)、『人と会っても疲れない コミュ障のための聴き方・話し方』(日本実業出版社)など著作多数。

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