ログインしてさらにmixiを楽しもう

コメントを投稿して情報交換!
更新通知を受け取って、最新情報をゲット!

生活保護者の集いコミュの厚労省問題で振り返る、生活保護統計「怪しい信憑性」の歴史

  • mixiチェック
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
https://diamond.jp/articles/-/192627
みわよしこ ダイヤモンドオンライン
厚労省の統計不正問題が世間を揺るがせている。そこで気になるのが、生活保護に関する数値は大丈夫だろうか、というものだ。実際、これまでも信憑性が怪しい事例はあった

厚労省の統計不正問題で考える
「生活保護統計」は大丈夫か
 2004年以降に行われた不適切な勤労統計調査が明らかになり、1月22日には厚労省内で22人が処分された。原因は、COBOL言語で作成されたプログラムが厚労省職員によって改変されており、改変内容や結果のチェックがされていなかったことにあった。

かつて広く使用されていたCOBOL言語の技術者不足は、2000年前後から問題になり続けている。いずれにしても、体制の問題は、最新のプログラム言語や環境を導入しても解決しない。

 そうこうするうち、問題は厚労省内のみに留まらなくなってきた。総務省は1月24日、政府の基幹統計56種類のうち22種類に誤りがあったことを発表している。その中には、総務省の全国消費実態調査も含まれている。生活保護基準の決定は、5年に1回行われる全国消費実態調査の結果を参照して行われることになっている。

 生活保護に関する数値は、大丈夫だろうか。毎日のように生活保護関連の数値を眺めている筆者としては、「たぶん、あまり大丈夫じゃない」と即答せざるを得ないのだ。

 まずは、現在進行中の問題から見てみよう。

 生活保護で暮らす人々を2013年以来苦しめ続けているのは、“物価偽装”問題だ。具体的には2013年1月、厚労省が突如として発表した「生活扶助相当CPI」だ。「CPI」とは「Consumer Price Index」、すなわち物価指数のことだ。なお、“物価偽装”とは、この問題に最初に気づいた中日新聞記者(当時)・白井康彦氏の表現である。

 日本の消費者物価指数は、総務省によって計算されてきた。しかし厚労省は2013年、独自に「生活保護世帯にとっての物価指数」として、「生活扶助相当CPI」を作成して発表した。そして「約5%の物価下落が見られた」とし、これを理由として生活保護費の生活費分を平均6.5%削減した。しかしこの期間、実際に起こっていたのは物価上昇であった。

「生活扶助相当CPI」の内容や計算方法は、公表された翌月に当たる2013年2月以後、報道・政界・学術界などのコラボレーションによって明らかにされてきた。現在は、計算に用いられた品目や数量、具体的な計算方法までが明らかにされている。生活保護費を引き下げるための「物価下落」を示すためにつくり上げられた厚労省オリジナル物価指数であることは、疑いにくい。

 背景には、2012年末の総選挙があった。自民党は「生活保護基準を10%削減する」と公約し、総選挙で勝利した。「生活扶助相当CPI」は、「10%削減」を迫られた厚労省が必死でつくり上げたものである可能性が高い。もしそれが事実なら、厚労省の当時の担当者には、「6.5%で勘弁してもらったことを評価してほしい」という思いがあるかもしれない。

 生活保護に関する数字は、いったいいつから信頼を置けないものになり始めたのだろうか? 残念ながら、「最初から」だ。

「物価偽装」問題の背景にある
数字に信頼を置けなくなった歴史
 1950年の新生活保護法施行時、生活保護費はマーケット・バスケット方式で定められていた。この方式は、旧生活保護法のもとで1948年に採用された。

 マーケット・バスケット方式とは、スーパーマーケットで買い物をするように、生活に必要なモノやサービスを必要な量だけバスケットに入れたと考え、レジで精算を行うように、単価を数量とともに足し合わせて合計額を算出する考え方だ。単純明快で分かりやすい上に、他者との相対比較ではなく、絶対的に生活費を算出できるというメリットがある。

 しかし、欠点もある。バスケットに入れる品物を選ぶのは、制度を実際に利用する本人ではなく、費用の計算にあたる行政官だ。品物それぞれをどのように使用するのかも、その行政官が決める。誰かが「これだ」と決めることは、それ自体が人権上の問題を引き起こす。また勤労統計と同様、チェックがなければ果てしなく恣意的に操作できてしまう。

ともあれ1950年、新生活保護法が施行され、「健康で文化的な最低限度の生活」を保障する制度となった。とはいえ、生きるために「食べる」ことが最優先だった時代だ。マーケット・バスケット方式で行われる生活保護費の計算は、「必要な熱量を摂取できる食費、プラスアルファ」という内容であった。

 生活保護世帯の生活費は、魚は骨も内蔵も食べ、小松菜は白く硬い根も食べるという前提で計算されていた。今風に言えば「フードロス」のない食生活ということになるが、食材には食べることができないため廃棄するしかない部分が存在する。

 日本標準食品成分表によれば、マイワシの廃棄率は60%、小松菜の廃棄率は15%である。廃棄率を考慮しない場合、3尾200円のマイワシは5尾分、1束300グラムで180円の小松菜は353グラム分にあたることになる。1尾あたり・100グラムあたりでは、より安価になる。このような計算を重ねると、生活保護世帯の食費は実際よりも低く見積もられることになる。

 当時の厚生官僚・木村孜(つとむ)氏は、後に振り返って、「魚については骨まで、野菜もその根まで食べるということで、初めて必要な熱量が確保できる」というものであったことを認めている。日本全体に食物がなく、高価なヤミ食糧を購入せざるを得なかった時代だ。木村氏は「廃棄率を算入することもできなかった」と悔しげに述べている。

 とはいえ、魚の中骨や青菜の根は、細かく切り刻んだり擂り潰したりして食べたとしても、体内で消化吸収されにくい。フードロスがゼロでも、必要な熱量を確保することはできなかったはずだ。そもそも、生活保護世帯の人々が摂取する熱量の設定は、当時の一般の人々の約90%、約1350キロカロリーに過ぎなかった。

 さらに、食材の内容の選択という問題もある。たとえば、副食の野菜の半分をサツマイモとすれば、小松菜や大根のように熱量の少ない野菜が減る。さらに、サツマイモから相当の熱量が得られるため、主食のコメ・麦類が減ることになり、食費はさらに削減される。まるで「バナナはおやつか弁当か」だが、当時を知る衛生学者・篭山京氏の著書によれば、実際にそのような操作が行われていたという。

生活保護受給者数の増減は
どこまで信用していいのか
 毎月・毎年発表される生活保護世帯数・受給者数は、少なくとも、“いま”制度を利用している世帯や人々の数を示す重要な指標だ。では、増減には何が反映されているのだろうか。1955年に起こった象徴的な出来事を紹介する


1950年に新生活保護法が施行されて以来、生活保護を必要とする人々は増加する一方であった。このため、大蔵省は厚生省に保護費削減を迫り続けていた。4年後ついに屈した厚生省は、1954年に「適正化」へと政策を転換した。生活保護の世界で用いられる「適正化」とは、制度の利用を抑制することである。

 当時、駆け出しケースワーカーだった90代の人物の述懐によれば、1955年、厚生省からその自治体に対して「適正化」の指示があった。その自治体には、在日外国人が多かった。

 ある日、福祉事務所職員たちは、在日外国人集落に通じる道路すべてに見張りを立てた上で、集落内の生活保護世帯を訪問し、所在を確認した。「昼間は働いている」などの理由で自宅にいない場合、「居住していない」という理由で生活保護を打ち切った。打ち切りは、理由とともに文書で通知したが、当該地域の外国人たちの多くが十分な日本語能力を有していないことは、最初から織り込み済みだ。

 その外国人たちの多くは、生活保護を打ち切られたままになった。自殺者もいたようだが、追跡調査がされていたわけではない。当時、何も言えなかった元ケースワーカーは、現在も「いまだに心が痛む」と語る。

生活保護費に見え隠れする
「こんなものでいい」というイメージ

本連載の著者・みわよしこさんの書籍『生活保護リアル』(日本評論社)好評発売中
「いつから、生活保護に関する統計や数値に、全面的な信用を置けなくなったのか」という問いの答えは、残念ながら「最初から」だ。

 雇用統計不正による過小給付額は、最大で約500億円という。一方、2013年から2020年までの8年間で、生活保護の生活費・住居費は、1000億円以上削減される見通しだ。総額と当事者への影響の大きさは、生活保護費の方が甚大だ。個々の厚労(厚生)官僚各人の心の中には葛藤があるのかもしれないが、葛藤に理解を示すわけにはいかない。

 ともあれ、「生活保護受給者」であるはずの約210万人、生活保護が必要なのに利用できていない少なくとも約500万人を1人ずつ訪ね歩き、その後を追跡することは、誰にもできない。怪しさや疑わしさを織り込みながら、何が隠されているのかを気にしながら、公式統計を参照せざるを得ない。

 生活保護費に見え隠れする「日本の国民生活はこんなものでいい」というイメージに、ときにウンザリしながら、生活保護統計の今後を見守りたいものだ。

(フリーランス・ライター みわよしこ)

コメント(0)

mixiユーザー
ログインしてコメントしよう!

生活保護者の集い 更新情報

生活保護者の集いのメンバーはこんなコミュニティにも参加しています

星印の数は、共通して参加しているメンバーが多いほど増えます。