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生活保護者の集いコミュの「もう減らさないで」生活保護受給者の嘆願は官僚たちに届いたか

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http://diamond.jp/articles/-/164411

生活保護のリアル〜私たちの明日は? みわよしこ

安倍首相の約束通りに
現れなかった政務三役

3月19日、厚労省内の会議室では、生活保護基準引き下げを巡り、厚労省のトップと生活保護受給者が相対した。受給者の切実な声は官僚に届いたのか
 2018年度予算案の成立を目前に控えた2018年3月19日午後、厚労省内の会議室では、画期的な出来事が予定されていた。厚生労働大臣、厚生労働副大臣、厚生労働大臣政務官の政務三役が、生活保護で暮らす人々と対面し、生活保護基準と生活保護法改正案に関する意見を直接聴く約束となっていた。

 もともと2013年に改正生活保護法が成立したときの付帯決議で、5年後、つまり本年に見直しを行い、生活保護で暮らす当事者の意見を聴くこととなっていた。

 なお次年度予算案は、衆議院での可決から30日後が年度内の場合、参院での審議が終了していなくても自動的に成立する。今回は2月28日に衆議院で可決されたため、3月30日に自動的に成立する。その予算案には、2018年秋からの生活保護基準引き下げ予定が含まれている。引き下げを止めることができるのは、厚生労働大臣だけだ。

 しかし結局、政務三役は現れず、代わりに社会・援護局長の定塚由美子氏が登場した。これだけでも画期的だったと言えるかもしれない。というのは、生活保護に関する請願や交渉では厚労省職員が現れるとしても、たいていは課長補佐または課長だからだ。

 ともあれ3月19日、局長クラス、しかも全国の生活保護行政を含む公的扶助を束ねる社会・援護局の局長が、生活保護で暮らす当事者たちと直接会って肉声を聴いた。

 この会談を約束したのは、安倍首相だ。3月5日の参議院予算委員会で、山本太郎議員(自由党)の「総理、(生活保護の)当事者の声、聞いたことありますか。聞いたことがないのであればセッティングします。直接聞いていただきたいんです」という質問に、安倍首相はこう答えたのだ。

「まさにこれは担当の厚労大臣がしっかりと所管をしているわけでありますから、そうした声については担当の大臣あるいは役所からしっかりと承りたいと、このように考えております」

 男に二言はないだろう。「しっかりと所管をしている」、言い換えれば生活保護基準の決定権を持っている「担当の大臣」とは厚生労働大臣、「あるいは役所」は政務三役と解釈しなければ、決定権のある人が聴いたことにならない。

 民主党政権時、厚生労働大臣政務官だった山井和則氏(衆議院議員・希望の党)は、スケジュール調整に奔走した。しかし結局、「都合がつかない」という理由で政務三役は現れず、社会・援護局長が代理として出席した。ちなみに政務三役の「都合がつかない」理由に対しては、その場で山井和則議員が文書での回答を強く求めた。安倍首相が約束した紛れもない政務に対して、公務でもない地元日程によって「都合がつかない」ということはあり得ないからだ。

代わりに出て来た社会・援護局長は
「聴いた」というアリバイづくり?

当事者・支援者・国会議員たちの一行を前にした厚労省職員たち。左端が社会・援護局長の定塚由美子氏
 会場の会議室では、社会・援護局長の定塚由美子氏をはじめとする厚労官僚たち数名に、生活保護の当事者4名、山本太郎議員、山井和則議員、初鹿明博議員(立憲民主党)、高橋千鶴子議員(共産党)、生活保護問題対策全国会議会員の弁護士など関係者、2013年の生活保護基準引き下げに対する国賠訴訟「いのちのとりで裁判」関係者、貧困層の医療に関わる「世界の医療団」関係者等が相対した。

 本来、相対する相手は、決定権を持つ政務三役であるはずなのだ。社会・援護局長の定塚氏には、生活保護基準や、国会に上程されている生活保護法改正案(閣法)の決定権はない。決定権のない人に声を聴いてもらうことに、意味はあるのだろうか。


厚労省職員たちを前にした当事者・支援者・国会議員たち。この後、3団体がそれぞれ、生活保護に関する要望書を手渡した
 定塚氏は、「厚労省代表として、皆さんの声を大切にしたい」「生活保護基準が足りないという意見をいただいた」「生活保護基準の予算案は、これから国会で議論がされるものと思う」「私が責任を持って大臣に伝えます」「誰が聞こうと、役所として共有して判断します」といった当たり障りのない回答を繰り返すだけだった。役職柄、そうしか回答のしようがないのであろう。

 もっとも、どのように聴いていたのかは当人でなくてはわからない。眠気を我慢しながら聴く読経のように聴いたのか、人の言葉として内容を聴いたのか、「いのちの電話」のように傾聴したのか。もしかすると、生活保護に関わる社会・援護局長という責任者として、目の前の当事者たちの生命・生活・健康のために自らに課されているはずの義務を、重く受け止めつつ聴いたのかもしれないが。

なお、参議院で審議中の予算案については、私が「3月30日に自動成立するはずですが、国会での議論で変わる可能性はありますか」と質問した。おおむね同世代と思われる定塚氏は、「議論と申し上げたのは、生活保護法改正の方です。予算は成立すれば執行するのみ、参院で変わる可能性は低いです」と答えた。

 失礼な言い方かもしれないが、個人としての定塚氏は、案外正直で誠実な人なのかもしれない。問題は、厚労官僚の心の中に、最も弱い人々が生きて暮らすことに対する共感や良心や熱い思いがあったとしても、それが政策として現れることは、近年ほとんどないことだ。

「死ねということですか?」
重すぎる生活保護受給者の肉声

記者会見場で会談の様子を語る、小久保哲朗弁護士(右)と尾藤廣喜弁護士(左)。表情は厳しい
 この日、政務三役の代理である社会・援護局長に30代〜90代の当事者4名が伝えた声から、一部を紹介する。

「今、思います。生きてきた中で、何が楽しかったかなあ?」(90代女性)

「今以上節約できないのに、これ以上節約しろとは、どういうことなんですか。毎日の生活が、不安でいっぱいです。生活保護は本当に必要です。引き下げはしないでください」(90代女性)

「知り合いが新宿の甲州街道沿いで商売していましたが、大型店舗ができて、逃げるように店を潰して、生活保護になりました。借金もありました」(90代女性)

「津久井やまゆり園事件では、19人の障害者の命が元職員の『自分で意思表示のできない障害者は生きていても仕方がない』という判断で殺されました。今回の引き下げには、それと同じような印象を受けています」(40代男性・障害者)

「屋外でも屋内でも車椅子を使用しています。住宅扶助基準の6万9800円(筆者注:屋内での車椅子利用など広いスペースが必要な単身者に適用される特別基準)では無理です。やっと見つけた8万2000円のアパートに住み、差額は生活費の障害者加算から出しています」(40代男性・障害者)

「今、2013年の引き下げ訴訟のさなかです。私も原告の1人です。地裁判決すら出ていないのに、新たな引き下げをするというのは、当事者と司法をバカにしているということだと思います」(30代女性)

 女性はさらに、他の当事者の声の数々を紹介した。


生活保護での暮らしについて語る90代女性の手。着古しているが良く手入れされた衣服は、「ファッションは日々を生き抜くための鎧」という写真家のビル・カニンガムの言葉を想起させる
「障害のために安い食材を探すのが難しいので、何も食べない日もあります」

「室温40度でも扇風機だけしか使えません」

「冬は暖房を使わず、昼間も布団の中にいます。医師は、暖房を使って動くように指示していますが、暖房費がないのでできません。動きづらくなり、屋内で転んで負傷しました」

「入浴は月に1回だけです。『臭い』と不快な顔をされることもあります」

「外食費などの交際費が出せないので、交友関係が減って孤立しています」

「これ以上の節約は、『死ね』『死んでほしい』と言われているようです」

受給者を面倒がらせて
医療を諦めさせるのが目的?
 50代男性当事者は、医療の問題を鋭く指摘した。

「今度の生活保護法改正案では、後発医薬品が原則化されていますが、医療を受ける権利を脅かします。障害者の地域生活に対する政府からの妨害です」(50代男性)

 医療については、生活保護法改正案の他に、通達レベルで「薬局一元化」の全国展開がようとしている。「生活保護なら調剤薬局は1ヵ所に限る」ということだ。しかし、在庫など薬局の事情、院外処方と院内処方の医療機関の両方がある場合の扱いなど、生活保護で暮らす人々の不安は尽きない。元ベテランケースワーカーは、「目的は、不快や面倒を強いて医療を諦めさせることではないか」と見ている。

真の政策決定者に訴えるべく
関係者の奔走は終わらない

貧困問題に深い関心を寄せる東京新聞論説委員の上坂修子氏は、この日も熱心に取材していた
 会談の後、記者会見が持たれた。4人の当事者たちはそれぞれ、社会・援護局長に自らの肉声をぶつけた感想を語った。声は「聴かれた」「届いた」と感じられただろうか。

「今日の私の声は、届いていないと思います。国会答弁を見ていても、私たちの声は、聞こえていないんだと思います」(90代女性)

「障害者として、保護基準を引き下げられると、家賃が払えなくなる可能性がある実情を伝えました。家賃は今でも、生活費や生活費の障害者加算からの持ち出しになっています。身体が不自由な私にとって、住まいと車椅子は必要不可欠です。でも厚労省は『色々綿密に調べた、やむを得ない』ということ。『自分たちのやったことは正しい』と押し通されました」(40代男性・障害者)


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「国会質疑への冒涜だと思いました。安倍さんが『厚生労働大臣に聴かせる』と言ったのに、局長が来ました。局長には決定権はありません。局長と課長補佐はメモは取っていましたが、投げかけた質問に、できるかできないかは答えませんでした。私たちも消費税を払って、給料を負担しています。公務員として、答える義務があるはずなのに」(50代男性)

「声が届いたとは思えませんでした。もう節約できるところがないという声、これ以上引き下げられるということは『死ね』ということだという声を伝えました。でも、あくまでも『当事者の意見として聴きました』で終始していました。愚痴を聴いてほしいのではないんです。反映してほしいんです。反映されてこそ『聴いた』と言えるのではないでしょうか」(30代女性)

 誰かに重大な影響を与える政策決定を行うのならば、過去の影響を含め、最も影響を受ける本人たちの声、あるいは悲鳴に耳を傾ける必要があるのではないだろうか。国会議員たち、各団体の関係者らは、引き続き厚労省の政務三役が当事者と直接会談する場の設定を求めて、3月30日の予算案成立を前に、今も奔走している。

(フリーランス・ライター みわよしこ)

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