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生活保護者の集いコミュの“アルマーニ標準服”小学校のすぐそばにも存在する「子どもの貧困」

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http://diamond.jp/articles/-/160038

みわよしこ

来年度からアルマーニ監修の標準服を導入する泰明小学校。特権意識を感じるニュースとは裏腹に、中央区にも全国と“地続き“の子どもの貧困が存在する
「校長、何を考えてるの!?」
生活保護シングルマザーの怒り
『ハフィントンポスト』は、2018年2月8日に公開した記事で、東京・銀座の泰明小学校が来年度から採用する標準服についてレポートした。

 この標準服は、イタリアのアルマーニがデザイン監修を行ったもので、同記事によれば一式8万円を超える。「任意」「市販のものでも可」となっているアイテムを除くと、購入が必要なのは上着・冬ズボンまたは冬スカート・夏ズボンまたは夏スカート・冬帽子・夏帽子のみとなり、その合計金額は男子4万9896円、女子5万5512円となる。

 ちなみに現在の標準服は、同様のセットで男子1万7755円・女子1万9504円だ。男子で約3万2000円、女子で約3万6000円の値上がりである。その後の報道によれば、泰明小学校の保護者たちの間では、アルマーニ標準服への賛成・反対の両方の声があるようだ。

 とはいえ、泰明小学校は中央区の区立小学校で、区内の他地域の子どもも選択できる。もしも、貧困や低所得ゆえに標準服が購入できず、実質的に学校を選択できない可能性が発生するのであれば、それ自体が大きな問題だ。

 傷病から働けなくなり、現在は生活保護のもとで公立高校生の娘と暮らす福島市のシングルマザー・ミサトさんは、こう語る。

「そのニュースには、正直、『校長は何考えてんの!?』と思いました。公立なのに、8万円以上する制服なんて、とんでもないです。『銀座だからアルマーニ』って……」

 しかし、あくまでも「標準服」であり「制服」ではない。タテマエ上は、「買わない」「着せない」という選択肢が存在する。

「もし、娘の学区でそういう標準服が導入されたら、最低限のものだけを購入するかもしれません。娘が『それでもいい』と言うなら、購入せずに私服で通学ということになるかもしれません」(ミサトさん)

 すると、イジメの可能性が発生する。「標準服は強制ではない」というタテマエは、ホンネのイジメに対する抑止力にはならない。

 ちなみに、ミサトさんの娘・アスカさんは、努力によって給付型奨学金を獲得して高校に進学したものの、その奨学金を福島市に召し上げられた。結果として、奨学金は使えることとなり、母子が福島市に対して行った訴訟は全面勝訴に近い地裁判決が確定した。しかし、二度とない10代後半の時間は取り戻せない。

中央区にも存在する
全国と“地続き“の貧困
 実際のところ、中央区の貧困の状況は、どうなのだろうか。改めて中央区のデータを確認してみた実感は、「特別ではない日本の一部」だ。

 中央区には、2017年、971世帯の生活保護世帯が居住していた(以下、中央区に関するデータは、但し書きがない限り、電話などでの問い合わせへの回答)。2016年度、世帯の生活保護率は1.2%であった。東京都全体の3.6%に比べると、かなり低い(東京都および中央区資料より計算)。

 子どもの状況を見ると、学齢期の子どもを対象とした教育扶助を利用したのは20世帯(東京都資料による)。また、生活保護世帯よりは若干収入の多い家庭(準要保護世帯)も対象としている就学援助または就学奨励(障害児が対象)を利用した子どもたちは、小学校720人、中学校346人であった。ここに生活保護世帯の子どもたちも含まれる(ただし、生活保護費に含まれる内容は就学援助の対象とされないため、「ダブリ受給」とはならない)。

 本年2月1日現在、中央区に住む14歳までの子どもの人口は2万0583人、うち5〜14歳の子どもは1万1333人だ。学齢期の子どもが約1万1000人とすると、就学援助を利用している子どもの比率は9.7%。全国での就学援助率はおおむね15%であるから、中央区の就学援助率は低めではある。

 しかし、貧困状態にある子どもたちは確実に存在する。就学援助の利用基準は自治体によって異なるが、中央区では「所得が生活保護基準の1.2倍以下」となっており、高くも低くもない設定だ。

 歴史ある商業地域には、様々な時期と状況を背景に持つ根深い貧困の存在が珍しくない。数多くの歴史ある商業地域を持つ中央区も例外ではなく、全国と「地続き」の貧困が存在する。生活保護と就学援助のデータは、そう語っている。

 では、中央区の生活保護世帯の子どもが、「アルマーニ標準服のせいで泰明小学校に通えない」あるいは「標準服を購入せずに泰明小学校に通学せざるを得ない」という問題は、実際に発生し得るのだろうか?

まず、小学校・中学校の入学時には、全国一定額の「入学準備金」が給付される。上限額は、小学校入学時に4万0600円、中学校入学時に4万7400円だ。小学校入学時に学校指定の用具・上履き・体操服一式など、さらにランドセルを購入すると、合計金額は最低でも4万5000円程度になるようだ。しかも制服・標準服は想定されていない。原則として、それらの費用は別途、必要になる。標準服がある小学校の場合には、小学4年時の1回だけ、買い替え費用が「被服費」として用意されている。

 長年にわたり、東京都内の生活保護の現場で働いてきた社会福祉士・田川英信さんは、こう語る。

「児童全員がそれぞれ購入しなくてはならない教材費は、生活保護で扶助できるんです。しかし制服・標準服の費用を扶助することは想定されていません。これは就学援助でも同じです」

「標準服」でも着用率は100%
買えない子どもはイジメの対象に
 今回の「アルマーニ標準服」ではどうなるだろうか。

「泰明小学校では“標準服”と位置づけており、必ず着用しなくてはならないものとはされていません。すると生活保護では、制服よりもハードルが高くなります。つまり『生活保護費からは出ない』『就学援助からは出ない』ということになります。費用が負担なら、あくまでも着ないのは各家庭の自由ですから」(田川さん)

 費用が負担できない生活保護世帯、あるいは就学援助を利用している世帯では、「標準服を購入しない」という選択が現実となってしまうかもしれない。

「泰明小学校は標準服の着用率が100%のようですから、イジメの原因になるかもしれませんね」(田川さん)

 入学時に標準服(制服)を買ってもらえない、あるいはリサイクル品しかないという状況は、生活保護世帯に時折ある。子どもたちは、それが原因で肩身の狭い思いをしたり、ときにはイジメに遭ったりする。「そんなことはあってはならない」と言うのは容易だが、起こらないようにするのは至難の業だ。現在のところ、最も手っ取り早く確実な対策は、全員が新品の制服で入学できるようにすること、あるいは制服の費用負担を軽減することだ。

子どものいる生活保護世帯の多くでは、2013年の引き下げによって余裕が失われたなか、子どもの進学に備えた必死の貯金が行われている。貯金の“財源”は、月々の生活保護費のうち生活費だ。「健康で文化的な最低限度」の費用から、さらに進学に備えて貯金するということは、生活が「最低限度」以下になるということだ。2013年以後は、「子どもの進学に備えた節約で、親が健康を害した」という話も聞かれるようになっている。

 子どもの健全な生育環境を整え、学校生活などの社会生活を支えることは、充分な資産や収入のある親にとっても容易なことではない。就学援助や生活保護を必要とする親にとっては、資金力の不足がさらなる困難をもたらす。

区内の生活保護世帯に対して
どんな配慮がなされているのか?
 この事情に対し、中央区では一定の配慮が行われているようだ。ウェブページ「生活保護受給世帯への援護」によれば、区内の生活保護世帯に対して、以下の援助が行われている。

1.小中学校の学童服、運動衣購入費の支給
2.小中学校の夏季健全育成費の支給
3.お風呂の無い世帯への入浴券の支給
4.中学校卒業生への自立援助金の支給
5.小学校6年生または中学校3年生の修学旅行支度金の支給
6.就労・社会参加活動・健康増進など自立に必要な経費の支給

 このうち「生活保護制度による」と言えそうなのは、1の「学童服(小学4年時の買い替え費用)」と5のみだ。1のうち「運動衣(体操服)」は、中央区が独自に行っている法外援護(生活保護法によらない生活困窮者支援)で、対象は小学1年生〜中学3年生だ。2および3は区独自の制度であろう。4は、少なくとも生活保護制度にはない。6の内容ははっきりしないが、生活保護の生業給付(職業生活に関する支援)に区独自の制度が組み合わせられている感じを受ける。
中央区の生活保護世帯の子どもが小学校に入学する際、標準服費用は、やはり入学準備金と生活費のやりくりで捻出するしかない。しかしながら「アルマーニ標準服」には、生活保護世帯や就学援助を必要とする世帯の負担増や断念につながらないよう、経済的な手当が検討される可能性があるかもしれない。ちなみに2018年度、生活保護世帯から泰明小学校へ入学する予定の子どもは、現在のところはいないようである。

全ての子どものため
義務教育を考えなおす機会に
 いずれにしても、今議論すべきことは「アルマーニ標準服」の是非ではなく、「義務教育は無償」ということの意味と内容であろう。義務教育が無償なのは、子どもが教育を受ける権利を保障するためだ。しかし公立小中学校の義務教育だけでも、親が多大な経済的負担を強いられる「なんちゃって無償」となってしまっている現実がある。

 そもそも、小学生の標準服の意義は、どこにあるのだろうか。標準服は、「大きすぎる」「小さすぎる」「最初は白かったと思われる茶色」「落とせないシミがついたまま」「破れたまま」といった形で、家庭の状況を残酷に浮かび上がらせるものでもある。「標準服があれば、家庭環境や経済状況と無関係な学校生活が送れる」という説もあるが、事実とは思えない。


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 義務教育は、すべての子どもにとって、「人生の基盤づくりに必要なものが充分に得られる、健康で文化的な学校生活」であるべきだ。必要なはずなのに不足しているものは何なのだろうか。逆に、不要なはずなのに存在し続けているものは何なのだろうか。標準服は必要なのだろうか。不要なのだろうか。

 泰明小学校「アルマーニ標準服」の賛成派も反対派も、推進した校長も、報道を行っている記者たちも、その報道に接する人々の多くも、子どもの健全な育ちと学びに深い関心を持っていることは間違いないだろう。その関心は今後も、生活保護世帯の子どもたち、生活保護を必要としているのに利用できていない世帯の子どもたちを含む、日本のすべての子どもたちの現在と将来に、向けられ続けてほしいものだ。

【参考】

ハフィントンポスト:「公立小『アルマーニデザインの標準服』を導入 校長の独断、全部で9万、親から批判も」(2018年2月8日公開) 

ハフィントンポスト:「物議の『アルマーニ標準服』価格表が判明 夏・冬服、着替えなど一式で9万円」(2018年2月9日公開)

東京都 福祉・衛生 統計年報(平成28年度)

(フリーランスライター みわよしこ)

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