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生活保護者の集いコミュの貧困と生活保護(30) 医療扶助の最大の課題は、精神科の長期入院

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https://yomidr.yomiuri.co.jp/article/20160428-OYTET50014/

生活保護費のほぼ半分を占めている医療扶助。どういう医療に使われているのか、どんな病気が多いのか、保険医療と比べて傾向の違いはあるのか。データをもとに見ていきましょう。


 今回言いたいのは、医療扶助は入院が多いこと、その中でも精神科の入院が多いこと、しかも長期入院が多いことです。いちばんに力を入れるべき改革の課題は、そこにあります。

入院医療費のウェイトが大きい

 まず、2013年度の医療扶助費の大まかな内訳を示します(金額は「生活保護費負担金事業実績報告)から)。

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 まずわかるのは、医科の入院医療費が9506億円、全体の55.7%と大きいことです。ここには、医療機関が受け取る入院時食事療養費(食事代)、入院時生活療養費(65歳以上で療養病棟に入院したときの食費・居住環境費)も含んでいます。

 医科の入院外医療費(通院、在宅医療)は23.6%です。院外処方で薬局が受け取る調剤費(薬代、調剤技術料、薬学管理料など)も15.5%あります。医科入院外、調剤、歯科、訪問看護を合わせたものが、外来を中心にした入院外医療のほぼ総額にあたり、7424億円(全体の約43.5%)です。

人数で7%の入院患者に、費用の55%

 医療扶助を受けた人数はどうでしょうか。2013年度の「被保護者調査」のデータを示します。

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 医療扶助による入院患者は、1か月平均で12万人余り。そのうち5万人余りが精神障害で、実に42.9%を占めています。これに対し、入院外の患者は162万人余りとはるかに人数が多いのですが、精神障害の割合は高くありません。精神障害の継続的な通院の大半が、障害者総合支援法の自立支援医療でまかなわれることが大きな理由です。

人数で見ると7.1%の入院患者に、医療扶助費全体の55%余りが使われているわけです。

 最初の表にあった医科の入院費を12で割ったうえで、この表の入院患者数で割ると、平均で1人あたり月64万0663円になります(食事療養費・生活療養費を含む)。入院外の医療費総額(医科入院外・調剤・歯科・訪問看護)を12で割り、さらに入院外の人数で割ると、1人あたり月3万8143円です。入院と通院では、費用のケタが違うことがわかります。

入院診療費のほぼ3割が精神科


 医療扶助では、どんな病気が多いのか。2015年の「医療扶助実態調査」から、詳しいデータを拾い出してみましょう。この調査は、同年6月に審査された診療報酬明細書(レセプト)の診療費部分を集計したものです。レセプトは通常、前月分の診療をまとめて請求するので、このデータは、おおむね5月分の状況を示しています。

 次の表は、入院診療のデータです。「件数」はレセプトの数で、1か月の間に診療を受けた人数と考えてかまいません。「推計年間額」は1か月の請求を12倍して筆者が算出しました。「1件あたりの金額」は、レセプト1件あたりの平均診療費です。「1件あたり日数」は、1か月のうち平均何日入院していたかを示します。「1日あたり金額」は、入院していた日あたりの費用で、病気によって差があります。

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 最も多いのは「精神・行動の障害」で、件数で35.5%、金額でも28.4%を占めます。1件あたりの金額は37万円台と少し安めですが、1件あたりの入院日数が28.4日と長く、ずっと入院している患者が大半であることがわかります。患者の3分の2は統合失調症です。

次に多いのは循環器系の疾患で、件数で15.2%、金額では19.7%。その多くは脳梗塞などの脳血管障害と、心臓疾患です。

全体の平均で1件あたりの金額が46万円台と、先ほどの試算(月64万円台)より少ないのは、レセプト1枚あたりの金額である(その月ずっと入院している患者ばかりではない)ことと、食事療養費・生活療養費が入っていないためです。

外来通院は高血圧・整形外科・糖尿病が多い

 今度は、入院外(通院・在宅医療)のデータを見てみましょう。

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 一番多いのは循環器系の疾患で、件数でも金額でも22.4%。大部分は高血圧です。2番目は筋骨格系・結合組織の疾患で、件数で13.0%、金額で12.2%。これは整形外科の扱う脊椎や関節の病気が中心です。3番目は内分泌・栄養・代謝疾患で、件数で11.3%、金額で13.4%。メインは糖尿病です。

全体の平均では、ひとつの医療機関に月に2日ぐらい通院して、1回の受診に8496円かかったという計算になっています。

突出して高い生活保護の精神科入院率


 生活保護の人が医療を受けている率は、公的医療保険と比べてどうなのか。病気のグループごとの受療率を入院・入院外に分けて算出してみました。次の表に示したのは、1000人あたり・月あたりの受診人数(レセプト件数)です。分母は、それぞれの保険制度の対象者数(家族を含む)と、生活保護利用者全体の人数(医療扶助を受けていない人を含む)です。医療保険については公表分の中で最も新しい13年度の医療給付実態調査、生活保護のほうは、それと時期が近くて詳しい集計のある14年6月の医療扶助実態調査のデータを用いました。

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 中小事業所の勤め人とその家族を対象にした協会けんぽに比べ、ほとんどの疾病分類で、国民健康保険のほうが受療率が高く、とくに入院の率が高いことがわかります。後期高齢者医療制度では、さらに著しく高い受療率になっています。

 生活保護はだいたい、国保と後期高齢者の中間の数字です。生活保護は平均年齢が55.3歳(14年7月、被保護者調査)と高く、本来なら後期高齢者医療の対象になる75歳以上の人・65歳以上の障害者も多く含まれるので、当然でしょう。医療扶助の内訳で患者数が多かった入院の脳血管障害、心臓疾患、入院外医療の高血圧、糖尿病、整形外科疾患の受療率を細かく調べても、やはり国保と後期高齢者の中間の数字です。これらは基本的には、自然な状況と解釈できそうです。

 しかし、特異な数字があります。精神・行動の障害による入院です。国保で3.6、後期高齢者で5.0なのに、生活保護は23.7と飛び抜けて高いのです。

精神科の長期入院という問題


 どうして生活保護では精神障害による入院が多いのか。貧困はメンタルに影響するものの、保護の利用者が飛び抜けて精神障害になりやすいわけではないでしょう。精神障害になった結果、収入をあまり得られず、保護を受けているということでしょう。そこには、精神科の入院の長さも関係しています。

 6か月以上、あるいは1年以上の入院をする患者がいる世帯では、生活保護制度上の「世帯分離」がたいてい行われます。入院患者だけが保護を受け、他の家族は保護を受けずに経済的に自立して生活します。入院がとても長い傾向にある精神科では、その適用が多いのです。

 実際、15年6月の医療扶助実態調査では、精神障害による入院患者数(レセプト件数)のうち、1年以上の入院が67.6%にのぼります。5年以上に絞っても43.6%です。逆に計算すると、医療扶助の入院患者全体のうち精神障害は35.5%ですが、入院1年以上では74.2%、5年以上だと85.3%が、精神障害による入院です。

入院が長くなったから、生活保護を受けているという面もあるわけです。福祉事務所のほうも、いったん入院したら病院に任せたまま、退院の支援をあまりやって来なかったのです。

人権の面でも、コストの面でも

 日本は、世界でも突出して精神科のベッド数、入院患者数が多い国です。入院は最近でも約30万人にのぼり、精神病床の平均在院日数は281.2日(14年の「病院報告」)に及んでいます。

 患者の中には、長く入院した結果として意欲や生活力が低下している「施設症」や、退院して暮らす所を確保できていないために入院を続けている「社会的入院」が少なくありません。

 精神科に入院中は、保護室への隔離、身体拘束をはじめ、自由や権利を制約されることがあります。必ずしも入院が不可欠ではないのに、人生の貴重な時間を病院の中で失っていくこと自体も、幸福追求権という人権の侵害です。

 コストの問題もあります。医療扶助実態調査のデータで見ると、精神科の場合、入院にかかっている診療費は、平均で1か月あたり40万円程度と安めですが、ほかに食事療養費が必要です。医療機関に支払われる食事代は1食640円が基本で、3食とって、まる1か月入院すると、5万8000円ぐらいかかります。ほかに、生活扶助から出る入院患者日用品費(自分で使えるお金)が月2万2680円。合わせて月48万円ぐらいはかかります。

 仮に退院して、単身でアパートやマンションに住んで生活保護を受けると、生活扶助と住宅扶助を合わせて9〜13万円程度。通院やデイケアの医療扶助を加えても、多くて月に二十数万円かかるかどうかでしょう。グループホームなどの福祉系施設で暮らす場合も似たようなものでしょう。

 障害者福祉や介護保険のサービスが必要にはなりますが、そうした生活保護以外の社会的費用を考慮しても、病院より地域生活のほうが、安上がりなはずです。

 内科系や整形外科系など、精神科以外の入院患者の一部にも、同様の課題があります。

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