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生活保護者の集いコミュの貧困と生活保護(28) 生活保護とパチンコをどう考えるか

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https://yomidr.yomiuri.co.jp/article/20160407-OYTET50024/

 生活保護を受けている人がパチンコやギャンブルをするのはけしからん、という意見がしばしば自治体に届いたり、ネットに書き込まれたりします。保護費の元は税金だから浪費するな、ということなのでしょう。なるほど、気持ちはわかります。

 ただし、生活保護の利用者でパチンコやギャンブルをするのは、あくまでも一部です。その人たちも手持ちのお金は限られているので、多額につぎ込めるわけではありません。

 また、支給された保護費を何に使うかは基本的に本人の自由とされています。「過度なパチンコや公営ギャンブルは望ましくないが、余暇の範囲なら、やってはいけないという規定はない」というのが厚生労働省保護課の見解です。負けてお金が減っても、保護費が余分にかかるわけではありません。苦しくなるのは本人の暮らしです(もちろん生活が苦しくなるのは、よいことではない)。

 筆者は、そもそも実質的にギャンブル(賭博)であるパチンコの店が非常に多く、競馬・競輪・競艇などが大々的に宣伝されていること自体の是非に目を向けるべきだと思います。その結果、ギャンブル依存症という病気になり、家庭不和、生活破綻、貧困に陥ってしまう人たちが少なからず存在するのです。生活保護の人が増える一因は、ギャンブルにもあるでしょう。

 一方、生活保護利用者のパチンコなどについては、「けしからん」とその人を非難することが有効とは思えません。切って捨てるのではなく、「では、どうしたらいいのか」まで考えることが重要でしょう。ギャンブル依存症なら、治療につなぐ手助けが必要です。高齢者などで時間をもてあましているなら、ほかに前向きの「やること」をつくるよう援助するのがケースワーカーの役割ではないでしょうか。

別府市、中津市は保護費をカットしたが……

 大分県別府市の社会福祉課(福祉事務所)は2015年10月、市内14のパチンコ店と市営競輪場を調査しました。同課によると、10月に4日間の調査日を設け、35人のケースワーカー全員がそれぞれ1日ずつ見回りを行い、そこで姿を見た保護利用者25人を市役所に呼び出して、遊技場に出入りしないよう指導しました。そのうち9人には、過去にも指導して「遊技場に立ち入りません」という誓約書を出させていたことから、1〜2か月間、保護費を減額する不利益処分(生活扶助と住宅扶助のカット)をしました。同課は少なくとも25年以上前から年1回の見回り調査を行い、同様の不利益処分をしていました。12月の市議会で明らかになったことです。

 同県中津市の社会福祉課(福祉事務所)も少なくとも25年以上前から、市内のパチンコ店十数軒と場外馬券売り場を毎月1回、見回りしてきました。15年度は係長2人を含めた14人が手分けして調査。過去を含めて3回目の出入りが確認された保護利用者4人に対し、弁明の機会を与えたうえで、1か月分の保護費を減額する不利益処分(生活扶助のうち第1類費のカット)をしました。同市は、保護世帯向けのしおりに「遊技場への出入りはできません」と書いていました。4人は過去に口頭注意や文書指導を受けており、「ギャンブルだけでなく、就労努力や治療専念をしていないという問題もあった」と同課は説明しています。

 これに対し大分県は、厚労省の判断も踏まえて16年2月、別府市の不利益処分は適切でないと是正指導しました。それを受けて別府市は今後、パチンコ店などで調査は続けるものの、不利益処分はしないことにしました。中津市も同様に方針を改め、しおりから遊技場出入り禁止の文言を削除しました。両市とも当事者からの不服申し立てはなく、不利益処分の取り消しや減額分の給付はしていません。

生活態度を理由に制裁できるのか

 別府市や中津市は何を根拠に不利益処分をしたのか、厚労省や大分県はなぜ、それを改めさせたのか。直接的には法解釈の問題です。まず、生活保護法には次の規定があります。

60条(生活上の義務) 被保護者は、常に、能力に応じて勤労に励み、自ら、健康の保持及び増進に努め、収入、支出その他生計の状況を適切に把握するとともに支出の節約を図り、その他生活の維持及び向上に努めなければならない。

 生活態度をきちんとしなさいよ、という努力義務です。よく考えると白黒をはっきり線引きしにくい内容ですが、別府市や中津市は、パチンコ店やギャンブル場に行くことが、この義務に違反すると考えました。そして、次の条項による指導をしたのです。

27条(指導及び指示) 保護の実施機関は、被保護者に対して、生活の維持、向上その他保護の目的達成に必要な指導又は指示をすることができる。

2 前項の指導又は指示は、被保護者の自由を尊重し、必要の最少限度に止めなければならない。

3 第1項の規定は、被保護者の意に反して、指導又は指示を強制し得るものと解釈してはならない。

 必要なときは指導・指示ができるけれど、何でもかんでも口出しして、本人の生活の自由を制約してはいけない。まして意に反する強制はできない、というわけです。ところが、次の条文があります。

62条(指示等に従う義務) 被保護者は、保護の実施機関が、(中略)27条の規定により、被保護者に対し、必要な指導又は指示をしたときは、これに従わなければならない

2 (保護施設関係のため、略)

3 保護の実施機関は、被保護者が前2項の規定による義務に違反したときは、保護の変更、停止又は廃止をすることができる。

 あれっ、と首をかしげませんか。27条で「強制できない」と念押ししておきながら、62条では指導・指示に従う義務がある、従わないと保護の停止や廃止もありうるという。不利益処分の制裁があるなら強制です。法律そのものが矛盾した内容になっていると筆者は考えます。本来なら、不利益処分までできるのはどういう場合なのか、条文の中に考え方を明示するべきでしょう。

 さて別府市は、指導に従わなかったことを理由に、保護費の一部カットという重い制裁を加えました。

 一方、厚労省の判断はこうです。「生活保護制度にパチンコやギャンブルを禁止する規定がないのに、不利益処分までするのはバランスを欠いており、法の趣旨に合わない。60条(生活態度)だけを理由に不利益処分はできない」

 確かに、福祉事務所が必要と思えばどんな内容の指導もできる、それを守らないとペナルティーを科すというのでは、生活保護の利用者は、いわば福祉事務所の支配下に置かれてしまいます。それでは憲法の保障する個人の自由を侵害し、自立にもならないから、27条の2項・3項で、管理主義や過剰な権限発動をいましめているわけです。

 保護の停止・廃止・減額などは、生存にかかわることもあります。不利益処分ができるのは、保護の要件(資産・能力などの活用義務)に違反した場合に限られると考える法律家もいます(厚労省はその点に明確な見解を示していません)。

条例を作った小野市のその後


 パチンコ関連では、兵庫県小野市が「福祉給付制度適正化条例」を13年3月に制定しました。生活保護、児童扶養手当など福祉給付の受給者に対し、「給付された金銭をパチンコ、競輪、競馬その他の遊技、遊興、賭博等に費消し、その後の生活の維持、安定向上を図ることができなくなるような事態を招いてはならない」としたうえで、市民・地域社会の責務まで定めました。

 市民・地域社会の責務とは、<1>保護を要する者を発見した場合は、速やかに市か民生委員に情報提供する<2>不正受給の疑いや、遊技、遊興、賭博等に費消して生活の支障を常習的に引き起こしていると認めるときは、市に情報提供する――という両面性を持った内容です(罰則なし)。制定前には、兵庫県弁護士会や有識者から「監視社会を招く」「受給者への偏見を助長する」といった批判が出る一方、各地から多数届いた意見は賛成のほうが多く、全国的に注目を集めました。

 その後、どうなったのでしょうか。市によると、13年4月の条例施行から16年2月末まで、3年足らずの間の情報提供は41件。内訳は、生活困窮者への援助要請9件、金銭の費消5件(飲酒を含む)、不正受給の疑い13件(ほとんどは児童扶養手当)、その他14件(名前を挙げられた受給者がいないなど)です。大騒ぎしたわりには、拍子抜けという印象です。小野市は人口5万人足らず。生活保護は条例制定前で約120世帯、15年2月末でも149世帯187人にすぎず、パチンコ店も多くないので、もともと大きな問題があったわけではないのでしょう。

 横山成彦・社会福祉課長は「生活保護受給者でギャンブル依存症というレベルの人はおらず、指導したらやめてくれている。市民の多くは条例を冷静に受け止めていた。生活保護の世帯数が増えたのは、福祉制度への理解が広がったのも一因だろう」と話しています。

方針を変えた別府市、中津市

 話を戻して別府市。今後はどうするのでしょうか。中西康太・社会福祉課長は「不利益処分は法的に好ましくなかったと反省している」としたうえで、筆者にこう語りました。

 「これまで依存症の人の対策ができていなかったので、医療機関や自助グループにつなぐ。精神科医を招いて職員研修もした。昼間にすることがなくてパチンコしている人には、地域の活動などに参加を勧め、自分の生きる価値を見いだせるようにしたい。生活保護の人全員がパチンコしているみたいに言う人もいるが、実際はごく一部。それを理由に生活保護をバッシングするのは間違っている」

 別府市(人口約12万人)の生活保護は約3900人。人口比の保護率は3.2%(全国平均は1.7%)と高い水準です。かつて隆盛を誇った温泉の旅館、飲食店、みやげ物店などで社会保険もなしに働いていた人たちの仕事が減り、高齢になったことが大きな要因で、パチンコ店にいたのも、そういう単身女性が多かったそうです。

 中津市(人口8万人余り)も、依存症対策と「やること作り」を重視すると説明しています。

「責める、説教する」は逆効果になりかねない

 パチンコやギャンブルがよいこととは、筆者は思いません。でも、生活保護の人だけを問題にして取り締まるような方法で解決するとは考えられません。どうしたらよいのか。個人の状態を3種類に分けて検討するべきでしょう。<1>ギャンブル依存症の人<2>時間をもてあましている人<3>ちょっとした娯楽にとどまっている人――です。

 第1グループの依存症の人。非難して、説教して、反省させるという方法は、上から目線のうえ、結局のところ本人の自覚に期待することになるので、効果が乏しいでしょう。

 このままではいけない、やめようという本人の決意は欠かせないけれど、自分の意志だけでやめられないのが依存症という病気だからです。やめたいと思ってもやめられない。自己コントロールができない。勝つか負けるかというスリルが忘れられず、失った金をギャンブルで取り戻そうとする。借金を重ねる。もうやらないとウソをつく。

 ギャンブルをしやすくする手助けを周囲がやってはいけませんが、本人の人格を批判する言葉や態度は、むしろマイナスに作用しがちです。自己肯定感が下がり、「どうせ私なんて」という気持ちが強まると、うさばらしのため、またギャンブルに走ってしまいかねないからです。

 精神医学の診断基準には「病的賭博」の病名があり、保険診療の対象になります。治療にあたる医療機関が少ないのがネックで、効く薬もありませんが、スタッフとの個別の対話や、依存症に苦しむ人の集まりを通じて、ギャンブルを断ち切る援助をします。各地の「 マック 」など福祉系の依存症回復支援施設でも、似た取り組みが行われています。 GA(ギャンブラーズ・アノニマス) という当事者の自助グループの会合は、全国のかなりの地域にあります。家族や友人のグループとしては、 ギャマノン があります。

 そうした医療機関・支援施設・自助グループでは、けっして審判するような態度を取りません。たとえ、またギャンブルに手を出しても、本人を否定しません。失敗を含めて本音を明かせる場をつくり、自分の弱さを認め、誘惑を遠ざける工夫をして、やめ続けることを援助します。そういうやり方は、薬物依存、アルコール依存をはじめ、各種の依存症の回復支援に共通しています。

ひま」と「孤立」がよくない


 第2グループは、ひまな人。働いて稼ぐ能力があるとは限りません。やることがなく、孤立しているから、パチンコをしたり酒を飲んだりして過ごしてしまうのです。

 参考になるのは、大阪市西成区で、高齢単身の生活保護受給者を対象に13年7月から始まった「 ひと花センター 」という事業です。生活保護の自立支援プログラムとして民間団体に委託して行われています。経済的自立の期待できない人たちでも、社会的自立(社会参加)を促すのが目的です。畑作り、演劇、文芸、美術、ダンス、体操など多彩なプログラムが日々あり、登録者が自由に参加します。公園の草刈りや会場設営の手伝いなどボランティア活動も用意されています。利用者から「仲間ができ、日々の暮らしが変わった」「酒やパチンコが減った」といった声が出ています。

 第3グループは、娯楽としてほどほどにパチンコなどをしている人たち。これは働く能力がある場合に活用する努力をしていれば、余暇の活動として許容されるでしょう。むろん、依存症にはまらないよう気をつける必要があるし、ほかの楽しみを見つけるほうがベターです。

勝ったらどうなる

 パチンコ、ギャンブルは、全体の確率として客が必ず損をするよう作られており、当然、負けることが多いのですが、もし勝ったら、生活保護での扱いはどうなるでしょうか。厚労省保護課によると、宝くじの当選金と同様に、臨時的収入として申告する必要があり、負けた時の玉の代金や馬券代などは差し引けません。就労以外の臨時的収入なので月8000円までは控除されますが、それを超えた分は保護費が減って実質的には“没収”です。税金の場合、馬券の継続的な大量購入で、外れ馬券代を経費と認めた最高裁判決(15年3月10日)があり、経費に関して法的に争う余地はあるかもしれませんが、いずれにせよ収入申告が必要です。そんなのだれが申告するか、というのが現実ではあるものの、まとまった額が入って申告しない場合、不正受給になりえます。

ギャンブル大国でよいのか

 刑法には賭博、常習賭博、賭博場開帳図利、富くじ発売などの罪があります。バクチで金銭を失っても本人が承知の上のことなのに、なぜ犯罪になるのか。放置すると国民の射幸心をあおり、勤労意欲を低下させて経済に影響を及ぼし、金銭目的の他の犯罪も誘発されるため、と解釈されています。

 ところが競馬、競輪、競艇、オートレースの公営ギャンブルが催され、宝くじ、スポーツ振興くじも盛んに広告する。そしてパチンコ・パチスロは14年末の警察庁集計で1万1627店にのぼります。約460万台という器械の数は、世界のギャンブルマシンの6割を占めるそうです。

 14年度の売上総額は、公営ギャンブルが4兆円余り、宝くじ・スポーツ振興くじが1兆円余り。そしてパチンコ・パチスロの売上総額(推計)は、24兆5000億円という、とてつもない巨額です(日本生産性本部「レジャー白書2015」)。

  アルコールの有害使用対策に関する厚労省研究班の調査 (13年実施、2番目の報告書PDFファイルの27ページ)に基づく推計では、成人男性の8.8%、成人女性の1.8%がギャンブル依存症で、成人人口にかけると、536万人もの病的ギャンブラーがいることになります。他の先進国(1〜2%程度)よりはるかに高率で、手近にパチンコ店があるのが大きな要因とみられています。店では玉を景品に換えるだけで、第三者の景品交換所が換金するから賭博にあたらないという解釈で刑法の適用を免れていますが、どれだけの客が単なる玉転がしや景品集めを楽しむために来店するでしょうか。ギャンブルやその借金返済のために横領、窃盗、強盗、殺人などの犯罪に至った例も数えきれません。

 家庭と社会に及ぼしている影響は大きく、自己責任では片づけられないでしょう。日本はすでに世界有数のギャンブル大国。精神をむしばむギャンブル依存への対策を講じることは、疾病防止・公衆衛生の観点からも重要な課題です。韓国は、たくさんあったパチンコ店を06年に全廃しています。

原昌平(はら・しょうへい)
読売新聞大阪本社編集委員。
1982年、京都大学理学部卒、読売新聞大阪本社に入社。京都支局、社会部、 科学部デスクを経て2010年から編集委員。1996年以降、医療と社会保 障を中心に取材。精神保健福祉士。2014年度から大阪府立大学大学院に在籍(社会福祉学専攻)。大阪に生まれ、ずっと関西に住んでいる。好きなものは山歩き、温泉、料理、SFなど。編集した本に「大事典 これでわかる!医療のしくみ」(中公新書ラクレ)など。

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