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生活保護者の集いコミュのパチンコで生活保護を停止した別府市の「罪と罰」

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http://diamond.jp/articles/-/85387
ダイヤモンドオンライン 生活保護のリアル みわよしこ

014年と2015年、大分県別府市で、パチンコ店・競輪場を訪れていた生活保護利用者に対して、生活保護の停止(中断)という処分が行われた。

「よくやってくれた!」という賛辞も多数集まっている別府市の対応を、どう考えればよいのだろうか?

「ギャンブルの罰として生活保護停止」
大分県別府市で起こった出来事


大分県別府市が行った「ギャンブルをしたら生活保護停止」。同市の対応は法的に問題はなかったか
※写真は本文と関係ありません
 2015年12月15日、大分県別府市の市議会での一般質問において、驚くべき事実が明らかになった。

 別府市福祉事務所は、2015年10月5日〜30日の25日間、35名のケースワーカー(うち10人は非常勤)全員をそれぞれ延べ5日間動員し、市内の遊技場(パチンコ店13軒と市営競輪場)の巡回調査を行った。福祉事務所は、遊技場を訪れていた生活保護利用者25名に対して指導を行い、この期間に2回以上にわたって遊技場を訪れていた9人に対しては、生活保護を1〜2ヵ月停止(中断)する処分を行った。この生活保護利用者たちは、「遊技場には立ち入らない」という内容を含む誓約書を、事前に別府市に提出していたという。

 別府市は、「生活保護法第60条に基づく処分」であるとしており、3月までに同様の調査を再度行う予定であるという。また2016年度、ケースワーカーを増員して体制を強化する予定であるともいう(産経新聞報道など)。なお、ケースワーカー増員の目的が実際に「生活保護利用者のパチンコ競輪禁止」そのものなのかどうかは不明である。というのは、別府市のケースワーカー数は、社会福祉法で定められた定員を若干下回っているからだ。

 この出来事は、賛否とも大きな反響を巻き起こしている。「よくやってくれた!」という賛辞もあれば、「パチンコ競輪が生活保護法違反なのではなくて、別府市の処分が生活保護法違反では?」という批判もある。

 なお、発端となった一般質問(国実久夫議員による)と別府市役所による答弁は、まだ別府市議会の議事録には掲載されていないが、動画が公開されている。また1月6日に公開したYahoo!ニュース記事に、この動画から書き起こした質疑内容を掲載している。

 長年にわたるケースワーカー歴を持ち、現在は公的扶助論の研究を行っている吉永純氏(花園大学教授)は、別府市の対応について「根拠に乏しいと言わざるを得ません」という。また、東京都内の生活保護の職場で働くベテラン・ケースワーカーの田川英信氏も、「別府市の動きは、正直、理解に苦しみます」という。

 ケースワーカーとして、もちろん生活保護利用者のギャンブルでの浪費にも向き合ってきた吉永氏・田川氏のコメントを中心に、別府市での出来事を検討してみよう。

「ギャンブルしたら生活保護停止」は
合法? それとも違法?

 まず、最初に気になるところは、パチンコ店や競輪場に「立ち入った」を理由とする生活保護停止に、法的根拠があるのかどうかだ。根拠とされた生活保護法第60条と、「生活保護利用者が福祉事務所の指導・指示に従わない場合は生活保護の停止がありうる」と定めた第62条のうち本件に関係する部分は、以下のとおりとなっている。

第十章 被保護者の権利及び義務

(生活上の義務)
第六十条  被保護者は、常に、能力に応じて勤労に励み、自ら、健康の保持及び増進に努め、収入、支出その他生計の状況を適切に把握するとともに支出の節約を図り、その他生活の維持及び向上に努めなければならない。

(指示等に従う義務)
第六十二条  被保護者は、(略・保護の実施機関(=福祉事務所)が)被保護者に対し、必要な指導又は指示をしたときは、これに従わなければならない。
3  保護の実施機関は、被保護者が前二項の規定による義務に違反したときは、保護の変更、停止又は廃止をすることができる。
4  保護の実施機関は、前項の規定により保護の変更、停止又は廃止の処分をする場合には、当該被保護者に対して弁明の機会を与えなければならない。この場合においては、あらかじめ、当該処分をしようとする理由、弁明をすべき日時及び場所を通知しなければならない。
 少なくとも、生活保護利用者のギャンブルを直接に禁じる条文は、生活保護法全体を通じて存在しない。また、厚労省の通知等に存在したこともない。法の解釈をめぐる問題で悩む日本全国のケースワーカーから「知恵袋」として信頼されている吉永氏は、「パチンコで生活保護停止」の法的根拠を、どう見るだろうか?

「新聞報道によると、生活保護法第60条を根拠にしています。しかし、第60条は罰則がなく、訓示規定とされています。訓示規定を根拠に生活保護を停止・廃止(打ち切り)するのだとしたら、根拠のない不利益処分ですから、違法となります」(吉永氏)

 まぎれもなく、「生活保護の停止」という別府市の行為は違法であるようだ。しかし別府市には、生活保護利用者たちが「遊技場には立ち入らない」を含む誓約書を提出したにもかかわらず違反した、という主張が可能ではある。

「ですが、被保護者の何らかの非違行為を理由にした不利益処分を行うには、生活保護法第27条1項による指導指示を改めて行わなければなりません」(吉永氏)

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(指導及び指示)
第二十七条  保護の実施機関は、被保護者に対して、生活の維持、向上その他保護の目的達成に必要な指導又は指示をすることができる。
2  前項の指導又は指示は、被保護者の自由を尊重し、必要の最少限度に止めなければならない。
3  第一項の規定は、被保護者の意に反して、指導又は指示を強制し得るものと解釈してはならない。
「この生活保護法第27条1項に基づく不利益処分には、その処分が実体的に適法であり非違行為に対するバランスも取れていることに加え、手続的にも適法であるという、の2つの意味での適法性が必要です」(吉永氏)

 別府市の処分が合法的であると考えるのは、条文を見る限りは難しそうだ。

 残るのは、対象となった生活保護利用者たちが、「遊技場には立ち入りません」という内容を含む誓約書を提出していたにもかかわらず、誓約書の約束を破ってしまったことに関する問題だ。これに関しては、京都府宇治市で起こった類似の事例がある。

 宇治市では、母子世帯の母親に対して「前夫に養育費を請求します」「異性と同棲しません」「出産したら生活保護を辞退します」などの内容の誓約書を提出させていた。しかし2012年、このことが宇治市議会で問題となり、2012年11月には関与したケースワーカー18人が処分を受けた。生活保護法・厚労省通知等に規定がないにもかかわらず、生活保護利用者に何かを強要することは、本人の同意や誓約という形をとっていても許されないのだ。

「生活保護でギャンブル」を
法で取り締まることはできるのか?

 しかしながら、ギャンブルが「健康で文化的な最低限度の生活」に含まれてよいかどうかは、意見の分かれるところであろう。生活保護費のうち生活費分(生活扶助)は、単身・成人の場合、概ね月あたり7万円。5000円以上をギャンブルに使用すれば、食費や水道光熱費が圧迫されるのは間違いないだろう。競輪ならば「レースを見ることを楽しみ、最後に1000円だけ賭けてみるか」ということも可能だが、パチンコは5000円で楽しめるような娯楽ではない。

 生活保護利用者の言動は、とかく世間の批判にさらされやすいものである。「生活保護なのに○○、働いて納税している自分がかわいそう」「生活保護のくせに△△だなんて、いいご身分ねえ」の「○○」や「△△」に入りうるものは、縁日の金魚すくいで獲った金魚を飼う・100円で買ってきた花を飾る・図書館に行って本を借りてきて読む・スマホを所有する・子どもを進学校に進学させるなど、人間が行ったり「したい」と考えたりする可能性のあるもの全てにわたる。

花や図書館や子どもの進学が問題になるほどであるから、もちろん「2ヵ月に1回、低価格風俗店に行く」「1ヵ月に1回、庶民的な居酒屋で2000円程度の飲食を楽しむ」「パチンコに行く」「競輪や競輪に行く」は大いに問題にされうる。問題にする側が理由として挙げるのは、多くの場合、「一般常識」「社会通念」「庶民感情」「市民感情」「納税している自分たちとの公平感」といったものである。しかも、ギャンブルを「良いこと」と考えている人々は多くはない。「生活保護でギャンブル!」と非難することは、自分が非難される心配をせずに楽しめる、安全で手軽な娯楽でもありうる。

「ですが、パチンコ自体は合法的な行為ですし、生活保護法が明示的に禁止しているわけでもありません。『望ましい行為かどうか?』という点でいえば、確かに望ましくないかもしれません。けれども、『望ましくない』ことと『パチンコに行くことを、不利益処分を背景に禁止できるかどうか』は別の問題です」(吉永氏)

「そもそも、生活保護費でお菓子を食べようが、お酒を飲もうが、パチンコに行こうが、それら自体は咎める筋合いのものではありません。福祉事務所に市民の方から『タレこみ』の電話などがあったら、実際に、そう答えてきました」(田川市)

 法的に、あるいは行政として「生活保護でギャンブル」を禁止することは、やはり不可能なのだ。

「違法ではないが望ましくはない行動」に
生活保護制度はどう対応できるか

 しかし、

「生活保護費を受け取ったらすぐパチンコ店に直行、あっという間に保護費を使い果たし、次の保護費支給日までは命をつなぐのが精一杯」

 など、「健康で文化的な最低限度の生活」のための生活保護費を受け取って、「それって、健康? 文化的?」という使い方をしてしまう生活保護利用者は存在する。福祉事務所には、どういう対応ができるだろうか?

 現在も実務の現場にいる田川氏は、

「散財してやりくりできなくなるようであれば、アルコール依存・ギャンブル依存の問題の可能性があるとして、対応すれば良いだけの話です」

 という。さらに吉永氏は、現在の生活保護制度の原則からコメントする。

「旧生活保護法(1946〜1950)は、『勤労の怠る者』を『素行不良な者』は、『絶対的欠格者』として、最初から生活保護から排除していました(欠格条項)。しかし現行生活保護法(1950)は、この欠格条項を排し、無差別平等原理(生活保護法第2条)を採用しました」(吉永氏)

(無差別平等)
第二条  すべて国民は、この法律の定める要件を満たす限り、この法律による保護(以下「保護」という。)を、無差別平等に受けることができる。

なぜ、生活保護法から「働かざる者、食うべからず!」が消えたのか? 現在の生活保護制度を作り上げた厚生官僚(当時)・小山進次郎は、なぜ、一般市民感情に反する可能性もある法改正を、あえて行ったのか?

「欠格条項を設けなかったのは現行法の特徴なのですが、小山進次郎は『何らかの意味において社会的規律から背理している者を指導して自立できるようにさせることこそ社会事業の目的とし任務とする所であって、これを始めから制度の取扱対象外に置くことは、無差別平等の原則からみても最も好ましくない所だからである』(小山進次郎『生活保護法の解釈と運用』106ページ)としています。つまり、『そうした望ましくない行動をする人がいた場合は、ソーシャルワークによって支援すべきである』ことを含意しているのです。実態としても、ギャンブルに依存する人には明らかに依存症の方もいますし、それに近い方もいると思います。そうした利用者には、病気という認識に立って支援するのが本筋であり、強制的に禁止しても、効果は限定されるでしょう」(吉永氏)

 しかし別府市では、パチンコ・競輪に対して「生活保護の停止」という処分が実際に行われてしまった。このことは何を意味するのだろうか?

「処分を受けた人は、1〜2ヵ月、食費も住宅費もなく、医療も受けられなかったことになります。慢性疾患等のある方もおられたと思われます。パチンコ・競輪は決して望ましくはないとはいえ、これほどの罰を受けなければならないことなのかどうか、大いに疑問です。非違行為に対して行う処分は、バランスがとれている必要があります。『軽い違反行為なのに、釣り合いの取れない重い罰を科してはならない』ということです」(吉永氏)

 健康被害は当然ありうるし、場合によっては命を失うことにもつながったかもしれない。もしかすると、本人は「パチンコのために死ねるなら本望」なのかもしれないが、最低限度であるにせよ「健康で文化的な生活」の前提は生存である。生活保護制度を市民感情に配慮しつつ運用することが、生活保護利用者の生存を突き崩すとしたら、何のための生活保護であろうか?

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