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生活保護者の集いコミュの貧困と生活保護(12) 丸裸になってからの保護でよいのか

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http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/page.jsp?id=124737

生活保護を受けるときの要件のひとつは、その世帯が持っている資産の活用です。

 現金、預貯金、不動産、自動車、家財道具、掛け捨てでない保険などの保有が、どれぐらい認められるのかが問題になります。

 簡単に言うと、現金・預貯金の保有限度額については、非常に厳しいのが現状です。自動車の所有も、かなり厳しくなっています。

 一方、住んでいる持ち家や耕作中の田畑は、所有したまま保護を受けられるのが原則です。いま持っている家財道具や電化製品も、一般的なものなら、手放さなくて大丈夫です。

申請時の手持ち金の目安は、保護基準の1か月分

 生活保護の対象になるかどうかは、その世帯の1か月あたりの収入と、必要な最低生活費=生活保護基準額(家賃・医療費・介護費を含む)を比べて判断します。収入や医療費は月によって変動するので、過去3か月平均で見ますが、大きく変わる事情があれば、実情にあわせて判断します。

 そのとき、手持ちの現金や預貯金の扱いは、どうなるのでしょうか。

 結論から言うと、現金・預貯金があるとき、生活保護を申請して認められる実際上の目安は、保護基準額の1か月分です。それを上回る現金・預貯金があると、申請しても却下されます。先に手持ち金を使って生活しなさい、ということです。

 実は、厚生労働省は、資産による保護の要否判定の線引きをはっきり示していません。明示しているのは、保護を開始するとき、保護基準額の5割を超える手持ち金があれば、超えた部分を収入として認定し、最初に支給する保護費を減らすということです。

保護開始時の手持ち金は、保護基準の半月分だけ

 申請する段階で持っていた手持ち金のうち、保護基準額の5割を超えている分は、あとから保護費の減額という形で“没収”されることになります。

 結局、保護を受ける時に保有が認められるのは、保護基準額の0.5か月分にとどまります。保護基準額は、地域、年齢、障害の有無、医療費の額などによって違ってきますが、0.5か月分は単身の場合だと5万〜8万円程度でしょう。

 それを考えると、手持ち金が保護基準額の半分に減るまでは、家財道具や電化製品で足りない物を買ったり、買い替え・修理したりしておくほうが得策です。家財道具や電化製品の購入費用は、本当に最低限の物がないときや、新しい住居に住むときに一定額が出るのを除いて、生活保護で支給されないからです。いろいろな物が壊れたり傷んだりしても、修理や買い替えの費用の別途支給はなく、保護費の中からをやりくりするしかありません。実際に生活に困っている人は、そんなことを考える余裕のない場合が大半でしょうが……。

生活再建をかえって妨げないか

 手持ち金の実務上の線引きに対しては、ほとんど丸裸にならないと保護を受けられず、厳しすぎるという意見があります。保護を受けていない段階では、公的な保険料や医療費、水道代などの負担がかかります。生活費以外のお金が乏しいと、就職活動のための交通費や衣服代を出せない、医療にかかりにくいといった状況が続き、生活力が弱って精神的も追い込まれがちです。弱ってから保護するのでは、生活再建がむずかしくなるのではないか、ということです。

 保護を受け始めてからも、手持ち金が乏しいと、生活の向上や自立に向けた活動の余裕がなく、かえって保護からの脱却を妨げるのではないか、という指摘があります。

 2004年12月に出された「生活保護制度の在り方に関する専門委員会報告書」は、破産法の規定を参考に、手持ち金の保有限度額を3か月程度まで認めるべきだという多数意見を示しました。しかし、一般世帯とのバランス、国民感情、財政負担などを理由に反対する意見もあったことから、厚労省は保有限度額を拡大していません(むしろ反対に、保護基準を下げています)。

 他の先進国の公的扶助制度では、これほど厳しい資産基準は設定されていないようです。手持ち金がほぼ完全になくなってから保護するという考え方は、見直すべきだと筆者は思います。

保護費のやりくりで貯蓄するのは問題ない

 保護を受けてから、保護費をやりくりして貯蓄するのは、認められるのでしょうか。

 保護費の使い道は基本的に自由です。生活の維持向上や自立に向けた貯蓄は問題ありません。

 かつては、保護費を切りつめた貯蓄でも、資産と解釈して高額なら収入認定するという運用があったのですが、加藤訴訟秋田地裁判決(1993年4月23日、高齢の障害者が将来の介護費用として約80万円をためていた)、中嶋訴訟最高裁判決(2004年3月16日、子どもの高校進学のため満期保険金50万円の学資保険に加入していた)――を経て、運用が変わりました。

 中嶋訴訟で最高裁は「生活保護法の趣旨目的にかなった目的と態様で保護金品等を原資としてされた貯蓄等は,収入認定の対象とすべき資産には当たらない」と判断したのです。

 この裁判の影響もあって、高校・高専レベルの学校の就学費用は、2005年度から生業扶助として生活保護から出るようになりました。

 しかし、子どもの塾代や大学の進学費用は出ません。家財道具や電化製品の修理・買い替え費用、結婚費用も出ないのが現状です。あまりにも切りつめた生活をするのは問題ですが、やりくりによる貯蓄を認めるのは当然でしょう。

 なお、住宅が傷んだときの修理費、資格や技能の習得費、就労活動費、就職支度費、出産費、葬祭費は、一定の範囲で生活保護から支給されます。

生命保険、学資保険の扱い

 保護を申請したときに、解約返戻金のある生命保険に加入していると、資産として解約を求められるのが原則です。ただし返戻金が少額で、保険料も高くないときは、保険金や返戻金を受け取ったときに保護費を返還するという条件つきで、保護を受ける方法が認められています。目安としては、返戻金の額が、医療扶助を除いた保護基準額の3か月分程度、保険料が、医療扶助を除いた保護基準額の1割程度以下とされています。

 このほか、厚労省の見解は示されていないのですが、近いうちに亡くなるか重い障害になる病人がいて、やがて保険金が出る見込みのとき、入院特約があって入院の見込みがあるとき、年金特約があって年金給付が近く始まるときなどは、加入の継続を認めるべきではないでしょうか。福祉事務所が認めない場合は、法律家に相談して交渉してみるとよいでしょう。

 学資保険は、保護を申請する時点で加入している場合、解約返戻金が50万円以下なら、保有したたま保護を開始してよいという解釈を厚労省は示しています。先に述べた中嶋訴訟の事例にぴったり合わせた金額です。

 ただし保護を受けてから加入した場合と違い、満期でお金を受け取ったら原則として、申請時の解約返戻金に相当する額を返還するよう求められます。学費がどんどん高くなった中、大学などに進学するために入った学資保険でも、もともと保有していた分を没収されるとしたら、自立を助長するという生活保護の目的に反する気がするのですが、どうでしょうか。




原昌平(はら・しょうへい)

読売新聞大阪本社編集委員。
1982年、京都大学理学部卒、読売新聞大阪本社に入社。京都支局、社会部、 科学部デスクを経て2010年から編集委員。1996年以降、医療と社会保 障を中心に取材。精神保健福祉士。2014年度から大阪府立大学大学院に在籍(社会福祉学専攻)。大阪に生まれ、ずっと関西に住んでいる。好きなものは山歩き、温泉、料理、SFなど。編集した本に「大事典 これでわかる!医療のしくみ」(中公新書ラクレ)など。
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