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生活保護者の集いコミュの家賃5万3700円(東京)」は高すぎる?低すぎる? 生活保護基準部会で議論された住宅扶助の行方

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http://diamond.jp/articles/-/48368

013年1月、厚生労働省は生活保護費のうち生活扶助費を引き下げる方針を明らかにした。この引き下げは、2013年8月1日より既に実施されている。

生活保護制度を変質させ、縮小させようとする国の目論見が、生活扶助費にとどまる気配はない。生活保護制度のありとあらゆる部分に及ぼうとしている。

今回は、2013年10月から再開されている生活保護基準部会より、住宅扶助に関する議論を紹介する。生活の根幹である「住」の最低ラインは、どうなろうとしているのだろうか?

約10ヵ月ぶりに再開された
生活保護基準部会

 2013年10月4日、厚生労働省内で、社会保障審議会・生活保護基準部会(第14回)が開催された。2013年1月18日以来、約10ヵ月ぶりの開催であった。

 生活保護基準は、5年に1回、生活保護基準部会(以下、基準部会)を開催して見直すこととなっている。これは2004年12月15日、「生活保護制度の在り方に関する専門委員会報告書」で定められた。以後、2007年・2012年に見直しが行われている。

 2007年の見直しでは、生活保護基準の引き下げは行われなかった。しかし2012年の見直しにおいては、生活保護を利用しているほとんどの世帯で大幅な生活扶助の引き下げという結論となった。この引き下げは、2013年8月1日より実施されている。引き続き、2014年4月1日(注)・2015年4月1日の3回を合計して最大8%、生活扶助の減額が行われる予定である。また、2013年末に支給された年末一時扶助に関しても、大幅な減額が行われている。

 なお、引き下げの根拠とされているのは、基準部会が2013年1月21日に発行した報告書であるが、この報告書の中には「だから生活扶助等は引き下げることが妥当」という内容の文言は含まれていない。むしろ、結論を導くに至った手法の限界や問題点・生活保護当事者に支給される金額の引き下げに対する慎重論の方が色濃く見られる。なぜ、この報告書に即して、「生活扶助は引き下げられるべき」という結論を導くことができるのか。筆者には理解できない。

(注)
予定されていた引き下げ幅に対し、物価上昇・消費税率が5%から8%となることを考慮した加算が行われる結果、多くの生活保護世帯で、生活扶助の金額は微増または微減となる。ただし、物価上昇の反映は充分であるかどうか・そもそも引き下げを断行することが妥当であるかどうかなど、問題視されている点も未だ数多い。

10ヵ月ぶりに再開された基準部会は、既に2013年10月4日(第14回)・2013年11月22日(第15回)が開催されている。第14回は、筆者は抽選に外れたため傍聴することはできなかったのだが、第15回は運良く抽選に当たり、傍聴することができた。いずれの回とも、既に議事録が参考資料等とともに公開されている。

 再開された基準部会での議論の内容は非常に幅広く、ほとんど「生活保護制度のすべて」「生活保護制度の根幹」といってよい。

住宅扶助の見直し
家賃は簡単に見直せるものなのか?

 基準部会で議論されている数多くのトピックから、あえて「最も重要」といえるものを選ぶとすれば、住宅扶助に関する議論であろう。住環境は、人間の生活の根幹であり、その人の生活の基盤であるからだ。

 住宅扶助については、国は「引き下げやむなし」という結論を導きたいようである。その意向は、このように明確に示されている(「住宅扶助について」(厚生労働省社会・援護局保険課)5ページ)。

「厚生労働省においては(中略)住宅扶助のあり方について、社会保障審議会生活保護基準部会等の場において検討を開始する必要がある。

 また、その際には、被保護者等を劣悪な施設に集めて住まわせ、その意に反して利用料を搾取する、いわゆる「貧困ビジネス」に対する規制の要否・あり方についても検討が求められる」(平成25年度予算執行調査結果(財務省平成25年7月26日))

「住宅扶助基準について、一般低所得者の家賃実態との均衡を図り、(中略)の引き下げを視野に入れた専門的・技術的検証を実施すべきである」

「近年は、家賃水準の下落傾向にもかかわらず、住宅扶助基準が据え置かれている。一般低所得者の家賃実態との均衡を継続的に図る観点から、住宅扶助基準と家賃CPI(筆者注:CPI=消費者物価指数)との連動性を高めるべきである」

(以上、「平成25年度予算編成に向けた考え方(財政制度等審議会平成25年1月21日)」)

住宅扶助基準に余裕があるから貧困ビジネスに「利用」されてしまう。

 その余裕は、そもそも一般低所得者に対して均衡していないところから生まれる。

 一般低所得者と「均衡」させるべく、住宅扶助基準は引き下げられるべきである。

 財務省の主張を「霞ヶ関文学」から通常の日本語に翻訳すると、このようになりそうだ。

 家賃は、景気動向に連動して簡単に見直せるものであろうか?

 昨日住み始めたアパートの家賃は、物価がどう変化しようが、次の契約更新まで2年程度はそのままであるのが通例であろう。また、契約更新時に家賃が上がることは珍しくないが、下がることは、もし物価が下落していたとしても滅多にあることではない。家賃というものは、住人が生活保護当事者であるかどうかと無関係に、高止まりしやすいものなのではないだろうか?

 契約更新を待たずに転居する機会があれば話は別かもしれない。しかし、そもそも、民営アパートに居住している生活保護当事者が別の民営アパートに転居することは容易ではない。「ストーカーに住まいを知られ、危険な状況が続いている」などの理由がなければ、転居先の礼金・敷金等に相当する費用が住宅扶助として支給されることはないからだ。生活保護当事者は転居しにくいから転居せず、したがって家賃が見直される機会も少ない。ただでさえ高止まりしやすい家賃は、生活保護当事者においては特に高止まりしやすい。そういう構造になっているのではないだろうか?

 貧困ビジネス規制は、それはそれで重要であるし、喫緊の課題だ。しかし、それはあくまでも、貧困ビジネス業者の問題であろう。「貧困ビジネスに『も』利用されるから住宅扶助を引き下げるべし」という議論は、筆者の理解の及ぶところではない。

 では、家賃に含まれている「余裕」、貧困ビジネス業者にとっても魅力的な「余裕」とは、どのようなものだろうか? この点に関し、基準部会では、かなり深い議論が行われている。その一部を紹介したい。

東京都の住宅扶助5万3700円(上限)は
高すぎるのか? 低すぎるのか?

 基準部会委員の1人・園田眞理子氏(明治大学教授・建築学)は、第15回基準部会において、以下の指摘を行っている。

「住宅扶助は例えば東京都の単身5万3700円というのは,すごく過大ではないかというような見方もできるのですが、実はその住宅扶助の中でかなりのことが含まれているという実情があります。(略)1つはひとり暮らしの人たちが、全く1人で住宅をあてがっても生活ができない部分を、いわゆる今の言い方ですと関係資本を補うような生活支援を人的に手当てするというような部分に充当されている側面があります。その5万3700円の中から住宅の部分と、生活保護上は位置づけていない生活支援的なものに費用を割り出しているというような側面をどう考えるか」

 やや年配の読者は、往年のマンガ「めぞん一刻」(高橋留美子)のアパート管理人・音無響子を思い出される場面かもしれない。音無響子が管理人を務めているアパート・一刻館には、一癖も二癖もある問題多い人物が多数入居している。しかし、有能な管理人である音無響子の存在により、一刻館には、問題をぶつけあいつつも共存する生活コミュニティが形成されている。逆に言えば、一刻館の住人たちの多くは、このようなアパートでなければ住み続けることが困難なのである。

 対人関係や日常生活を困難にしがちな、ちょっとした精神疾患・精神障害や発達障害を持つ人々。適切な支援があればアパートで生活することも可能な知的障害を持つ人々。軽度の認知症で日常生活が困難になりつつある人々。生活保護を住宅扶助ともども利用し、民間アパートに入居している人々には、このような人々が数多く含まれている。

 さらに、生活保護世帯の約43%(2011年)が高齢者世帯であることを考えてみれば、実質的な家賃以上に家主の負荷となることがらを考慮する必要は明白だろう。園田氏は、上記の発言の後、このような発言も行っている。

「家主さんにとってみれば一種の変な言い方ですが、何かあったときの保険料というか、ちょっといい言い方ではないと思いますが、迷惑料的なものが含まれているという問題です」

 アパート探しの経験がある方々は、「高齢者はボケるし死ぬこともあるから入居しないでほしい」という家主が多いことをご存知だろう。生活保護当事者である高齢者は、「家賃の取りはぐれが少ない」という意味では家主に歓迎される存在ではあるのだが、「何かあったとき」の後始末に必要な費用が生活保護制度で得られるとは限らない。だから、高齢者を入居させるならば、家賃を高めに設定せざるを得なくなる。

高齢の生活保護当事者が入居している民間アパートには、「これで5万3700円?」と絶句するような老朽アパートも珍しくない。「生活保護制度を悪用したボッタクリ」という見方もできる。もしかすると、本物の貧困ビジネスかもしれない。でも、生活保護という「最後のセーフティネット」を利用した、ささやかな民間福祉である場面の方が、はるかに多いのではないだろうか。

 第15回基準部会において、園田氏・大竹文雄氏(大阪大学教授・経済学)はさらに、家賃市場と住宅扶助基準の関連についても議論を行った。また、岩田正美氏(日本女子大学教授・社会福祉学)は、イギリスの住宅手当(日本の生活保護制度の住宅扶助にほぼ該当)がサービス費用を含んでいることや、以前は公営住宅の家賃と住宅扶助基準が連動していたことを指摘した。しかし、ここで時間切れとなり、議論は次回へと持ち越された。

「住居」という重大な問題に関する議論は、どれだけ徹底してもしすぎるということはないだろう。結論をことさらに急ぐことなく、徹底した、なるべく多くの人々に理解でき納得できる議論が、今後も基準部会で続けられることを期待したい。

 第14回・第15回基準部会では、住宅扶助のみならず、各種一時扶助(特に、生活保護世帯の子どもたちに対する教育上の配慮との関連)・生業扶助など、数多くの重要なトピックが議論されている。本連載でも今後、引き続き、議論の内容と流れを随時紹介していきたい。

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