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生活保護者の集いコミュの廃案となった生活保護法改正案の行方は? 参議院・厚生労働委員会では何が議論されたのか

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http://diamond.jp/articles/-/38065 ダイヤモンドオンライン 生活保護のリアル みわよしこ

2013年6月26日、第183回通常国会は閉会となり、生活保護法改正案・生活困窮者自立支援法案を含む数多くの法案が廃案となった。

今回は、この直前に参議院・厚生労働委員会で行われていた審議を紹介する。参議院の議員たちは、どのような視点から、どのような審議を行なっていたのだろうか?

生活保護法改正案・困窮者自立支援法案は廃案に
それでも残る、数多くの懸念


2013年6月26日、第183回通常国会は、2時間足らずの本会議で幕を閉じた。予定されていた厚生労働委員会は、開催されなかった
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 2013年6月25日、参院で採決されると見られていた生活保護法改正案・生活困窮者自立支援法案は、採決されないまま、翌26日、第183回通常国会の閉会とともに廃案となった。

 直接の原因は、6月24日、参院予算委員会に安倍総理をはじめとする政府側の人々と自民党議員が出席しなかったことにある。6月25日午前中の参院厚生労働委員会にも、政府・自民党は出席しなかった。これに抗議する意味で、同日午後、社民党・共産党は、厚生労働委員会の議場に入場しなかった。このため、同日に予定されていた審議と採決は行われなかった。

 会期末の6月26日には、まず参議院・平田健二議長の不信任案が否決され、ついで安倍総理に対する問責決議案が可決された。この日午後、厚生労働委員会が開催される可能性はあったけれども、結局は開催されないまま、会期は終了となった。生活保護法改正案・生活困窮者自立支援法案をはじめとする法案も、廃案となった。

 この成り行きは、既に新聞などの大手メディアや参院議員数名のブログで報道されている。背景に何があったのかは、容易には理解できない。一部で報道されている党利党略など「永田町の論理」や、民主党の暗躍などの問題が、実際にあったのかもしれない。背景が何であったのかはともかく、生活保護法改正案・生活困窮者自立支援法案は、廃案となった。

 筆者は、今回の生活保護法改正案・生活困窮者自立支援法案には賛成できなかった。現在の生活保護制度に数多くの問題があることは事実であるし、生活保護に至る手前で生活困窮者を支援する制度が必要なことも事実であると思う。それにしても、これらの法案が、一般に期待されている「自立の助長」に寄与するとは思えない。

 しかし、廃案になったことを喜ぶ気分にもなれない。議論が尽くされ、「廃案とされることがふさわしい」という結論に対する合意が見られた結果としての廃案なら、喜べたかもしれない。でも今回の廃案は、妥当な議論や手続きの結果ではない。なにより、7月に実施される参院選の結果、自民党・公明党が議席の過半数を占めることになったら、さらに問題の多い形で提出され、議論らしい議論もなく採決されてしまうかもしれない。それでも筆者は、今回の廃案を、ささやかに喜びたい。問題が先送りされただけかもしれないが、事実を知る時間・考える時間・議論する時間ができたのだから。

 今回は予定どおり、参議院・厚生労働委員会で行われた議論を振り返る。

厚労省も認める
「水際作戦」の違法性


尾辻かな子議員(民主党)。鋭い質問で、厚労省・自民党から「水際作戦は違法」という回答を引き出した(「参議院インターネット審議中継」よりキャプチャ)
 2013年6月20日の厚生労働委員会では、尾辻かな子議員(民主党)による質疑が行われた。尾辻氏は、衆議院・厚生労働委員長の柚木道義議員(民主党)に対し、現行生活保護法での取り扱いが改正案でも維持されることを確認した。

 柚木氏は、

「書面で行うことが原則とされていますが、口頭による申請も、申請の意志が明確であれば従来通り認めるということでありまして」

 と、従来の扱いが変わらない旨の答弁を行った。また、田村厚労相も、

「本人に申請の意志があれば受理をしなくてはならないのでありまして」

 と、生活保護法改正案に列挙されていた書類の添付が申請時の要件ではない旨を答弁した。さらに、

「非要式行為ということでよろしいでしょうか」

 と食い下がる尾辻氏に、田村厚労相は、

「あの、要式行為ではないということで、そういうことです」

 と答弁した。


尾辻かな子氏の質問に回答する村木厚子氏(厚生労働省 社会・援護局長)(「参議院インターネット審議中継」よりキャプチャ)
 この日、尾辻氏は、厚生労働省 社会・援護局長の村木厚子氏に対しても、改正案が「水際作戦」の強化となる可能性に関する質疑を行った。尾辻氏は、道中隆氏(関西国際大学教授・社会福祉学)の著書から、「水際作戦」のさまざまな手法を引用し、そのすべてに対し、村木氏から「違法です」という回答を引き出した。たとえば、生活保護の申請者に対する、

「あなたはまだ働ける年齢だから保護は受けられませんね」

 というケースワーカーの発言に対する村木氏の見解は、

「働ける年齢だからということで保護が受けられないという一律の扱いは、窓口の扱いとしては間違っております。稼働能力があっても、現に働くところが見つからないために困窮をしているということであれば、生活保護の受給が可能なケースがあるということでございます」

 であった。

以下、

「親もしくは息子さんに面倒を見てもらってください」
「実家に帰って援助をもらってください」
「扶養義務者から援助できないという書類をもらってください」
「借金があるなら生活保護は申請できません」
「アパートの家賃が高すぎるから生活保護は申請できません」

 など、いわゆる「水際作戦」で頻発するパターンの数々に対し、村木氏は「生活保護を受給できない理由にはならない」という内容の答弁を行った。

 参院選の行方がどうなろうが、この質疑と答弁には大きな意義がある。ここで示されたのは、厚労省も自民党も、明確に「水際作戦」を肯定しているわけではない、ということだからだ。

「アメとムチ」は
就労自立の支援に有効か?

 今回廃案となった生活保護法改正案・生活困窮者自立支援法案は、生活保護当事者・生活困窮者に対し、就労による経済的自立へと強く方向づける内容を含んでいた。生活保護法改正案では、就労インセンティブ強化のため、一定の要件のもとで就職活動を行って生活保護から脱却した場合に給付される「就労自立給付金」が新設される予定であった。また、生活困窮者自立支援法案は、「新しい水際作戦の窓口となるのでは」と懸念されていた相談窓口の設置とともに、職業訓練・職業あっせん・就労の前提としての住居確保に関する内容を含んでいた。

 もし、これらの法案が成立していたら、就労自立に関して、期待されるような効果を上げられただろうか? 2013日6月21日、参議院・厚生労働委員会に参考人として出席した佐藤茂氏(釧路市福祉部生活福祉事務所生活支援主幹)の発言から、実効性のある就労支援について考えてみよう。


佐藤茂氏(釧路市福祉部)。参考人として、釧路市の自立支援・就労支援について語った(「参議院インターネット審議中継」よりキャプチャ)

 釧路市では、2002年、地元炭鉱の閉山などをきっかけとして、生活保護率が急激な上昇に転じた。2012年の釧路市の生活保護率は約5.5%で、全国平均の約3倍に達している。背景には、高齢化・産業構造の変化・深刻な不況などの問題がある。いずれも、当事者の努力や行政の力による対処には限界のある問題だ。「稼働年齢層ならば就労を」と言っても、就労先がなければどうしようもない。大規模な雇用をもたらす産業の誘致も、現在は困難だ。もちろん、不況が続けば、自治体の税収も減少する。求められる数多くの福祉施策を、予算不足の中で実施しなくてはならない現実がある。


 佐藤氏によれば、釧路市では、生活保護の「水際作戦」は行われていないという。自治体によっては、生活保護の申請書を「窓口に置かない」「ケースワーカーに渡す枚数を『1ヵ月に2枚』のように制限する」という形で「水際作戦」が行われている場合もある。しかし釧路市では、窓口に申請書を置いている。訪れた人々が自由に手に取れるわけではなないが、使用枚数に関する制限は行なっていないという。

 就労機会の少ない現実はそれはそれとして、釧路市では、生活保護の「生業扶助」を積極的に活用し、さまざまな自立支援プログラムを実施している。そこには、中学生に対する学習支援・高校進学支援も含まれている。また、生活保護世帯の高校生の子どもに対しては、就職希望であれば、運転免許の取得を生業扶助によって支援している。就職が内定しているかどうかとは無関係に、である。佐藤氏はこのことを、

「スタートラインに立たせる」

 と言う。平成24年度には、82名の高校3年生に運転免許を取得させたそうだ。うち60名以上が高校卒業と同時に就労し、生活保護廃止(脱却)となった。

 また釧路市では、母子世帯の母親の就労などについても、独自の取り組みを行なっている。高齢化の進む釧路市では、介護職の就労機会は比較的多い。しかし、介護職としての就労には、資格が必要だ。幼児を抱えた母親たちにとっては、資格取得が最初の「壁」となる。就労していなければ保育所を利用することもできないからだ。いずれにしても、経験したこともない仕事を理解し、「その仕事に就きたい」というモチベーションを喚起するところから始める必要があった。

 釧路市では、生活保護を利用している母子世帯の母親たちに対し、訪問介護を行うヘルパーに同行する機会を設けた。無免許の母親たちには、介護の仕事を行うことはできない。しかし、ヘルパーの仕事を手伝うことはできる。また、訪問先の高齢者の話し相手をすることもできる。そこで、高齢者に、

「ありがとう、楽しかった」

 と感謝されることもある。もちろん、ヘルパーの仕事を理解することができ、

「大変な仕事だけど、免許を取得して、その仕事に就きたい」

 という意欲を喚起されたりもする。

「資格を取りたい」という意志を抱いた26人の母親たちに対し、釧路市は、保育所に子どもを預けて資格取得を行う機会を提供した。うち16人がヘルパー資格を取得し、1年後までには就労したという。

 この話をしながら、佐藤氏は、

「人は変われる」

 と強調し、指導・指示だけではないケースワークの必要性、「認める」ということの重要性を述べた。

「話し合い」から
自尊感情の回復を

 この参考人発言において、佐藤氏は、生活保護当事者の自尊感情を回復させることを「大切に考えている」と語った。しかし、生活保護当事者の多くは、職業・対人関係・健康など数多くのものを失った末に、生活保護を申請し、受給者となっている。ズタズタになった自尊感情の回復は、容易ではない。本人が回復へのルートを辿りかけても、周囲の偏見や差別に傷つけられ、回復が困難になることも少なくない。再度の就労を志したとしても、生活保護経験のある求職者を採用したがらない経営者は少なくない。

 質疑で、釧路市の試みがどのように成功へと向かったのかを質問する川田龍平議員(みんなの党)に答えて、佐藤氏は

「話し合いが大切」

 と語った。佐藤氏ら釧路市職員は、住民や企業経営者と粘り強く話し合いをし、生活保護を色眼鏡で見る人々を説得したという。結果として、現在は180の企業体が、生活保護当事者の受け入れを行なっている。企業体が生活保護当事者を評価し、そのことによって釧路市から評価されるという、ポジティブなサイクルが回りはじめた結果、約1200人に達する稼働年齢の生活保護当事者のうち、約870人が自立支援プログラムを利用したという。

 とはいえ、釧路市の経済状況は厳しく、就労意欲ある生活保護当事者が自立支援プログラムを利用したからといって、すぐに就労に結びつくわけではない。佐藤氏も、「なかなか出口がない」という課題を率直に認める。それでも、

「受給者の顔が変わるのを見るのは、楽しいです。『寄り添い』だけではなく話し合いが大切です」

 と、話し合いの大切さを、繰り返して強調する。

 かつて、佐藤氏は現場で働くケースワーカーであった。その時期の受け持ち世帯数は、130〜150世帯にも達したという。その時期には、会話をする余裕は、ほとんどなかったそうだ。適切な人員配置は、福祉事務所の円滑な日常業務のためにも必要なのである。

ケースワーカーの過重な負担を
どう解決すればよいのか

 現在の生活保護制度を機能させ、就労などの自立を望む当事者を支援するためには、福祉事務所の体制の充実がどうしても必要だ。特に、現場を担うケースワーカーの増員や人員育成が必要だ。このことは、さまざまな立場の人々によって指摘されている。しかし、この1年ほど、福祉事務所の体制強化が制度に組み込まれるとすれば、

「不正受給摘発のために、福祉事務所に警察OBを配置」

「不適切な保護費使用を監視するために、福祉事務所のスタッフを増員」

 というような文脈の話ばかりだ。なぜ、このように換骨奪胎されてしまうのだろうか。


藤田孝典氏(NPOほっとプラス)。参考人として、「水際作戦」と「自立支援」という名の就労強制に対する懸念を述べた(「参議院インターネット審議中継」よりキャプチャ)
 6月21日の参議院・厚生労働委員会に、参考人として出席した社会福祉士の藤田孝典氏(NPOほっとプラス代表理事)もまた、生活困窮者を支援する立場から、ケースワーカーの増員の必要性を主張した。

 藤田氏によれば、ケースワーカーの人材育成は、まったく「間に合っていない」そうだ。日常業務での負担が過重である上、ケースワーカーの多くは人事異動でたまたま配属されただけの職員である。1〜3年が経過すれば、また次の部署へと異動するため、経験を蓄積してゆくことができない。厚労省は監査・指導・研修などで対策しているが、ニーズに対して人材育成が追いついていない。水際作戦の原因の一つは、福祉事務所の窓口を訪れた生活困窮者の「話を聞く」余裕すらないケースワーカーが、話を聞かずに追い返してしまうことにもあるという。

 次回は、藤田孝典氏へのインタビューを紹介する。社会福祉士として、生活困窮者に寄り添う支援者として、社会保障審議会「生活困窮者の生活支援の在り方に関する特別部会」の部会委員として、藤田氏は、日本の「貧困」をどのように見ているだろうか?

<お知らせ>

 本連載に加筆・修正を加えた「生活保護リアル」(日本評論社)が7月3日に刊行予定。既にAmazonで予約注文開始中。

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